R団ボスの娘   作:九戸政景

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政実「どうも、ジョウト御三家で一番好きなのはチコリータの片倉政実です」
ツバキ「どうも、ツバキです。チコリータを選ぶと他のポケモンで補わないとジョウト地方のジムで不利になりやすいんだよね」
政実「そうだね。でも、そこは他のポケモンとの組み合わせや愛でどうにかした人もいたかもしれないね」
ツバキ「そうね。さて……それじゃあそろそろ始めていきましょうか」
政実「うん」
政実・ツバキ「それでは、第5話をどうぞ」


第5話 幾つもの出会いと新たな戦い

 翌日、朝食を食べ終えた後、私は仕事へ向かう父さんを見送ってから、自室で出かける準備をしていた。理由はもちろん、ウツギ博士の研究所に行くため。父さんが聞いたというシルバーと同じ年齢の子というのが、私の予想している通り、『ポケットモンスター』シリーズの主人公の事なのかは気にはなるけど、もしそうだとしてもそうじゃないとしてもウツギ博士の研究所に行けば出会えるような気はしていたため、まずはウツギ博士の研究所に行ってみる事にしていた。

 後はその子が転生者だった時だけど……まあ、私としては敵対するつもりは無いし、もしそうだったとしても仲良くすれば良いよね。もっとも、相手が転生者で私がR団(ロケットだん)のボスの娘だと知ったら、敵対しようとする可能性もあるんだけどね……。

「まあでも、その時はその時でどうにかしよう」

 そう独り言ちた後、私はいつもの水色のワンピースに着替え、エレン達のモンスターボールを入れる用のショルダーポーチを掛けた。そして、準備が出来た事を確認した後、私は部屋を出て、シルバーの部屋のドアをトントントンとノックした。すると、ガチャリという音と同時にシルバーが顔を出した。

「何、姉さん?」

「ねえ、シルバー。今から一緒にウツギ博士の研究所に行かない?」

「ウツギ博士……ああ、昨日の夜に父さんが言っていたこの『ワカバタウン』に住んでるポケモン博士の事か」

「そう」

「でも、なんで俺まで? 俺、行く必要ある?」

「行く必要っていうか……私がシルバーと一緒に行きたいだけ。それに、研究所では『カントー地方』にはいないポケモン達をお世話してるかもしれないでしょ? それだったら、後学のためにも見せてもらった方が良いと思うんだ。それに、しばらくの間この『ワカバタウン』に住む以上、挨拶はしに行っておいた方が良いからね」

「……なるほど。わかった、それじゃあ準備をするから、少し待ってて」

「うん、わかった」

 私が返事をした後、シルバーの部屋のドアが静かに閉められた。そして数分後、またガチャリという音と立ててドアが開くと、そこには赤いラインの入った黒い服に紫のだぼっとしたズボンというこちらもいつも通りの格好のシルバーが立っていた。

「準備出来たみたいだね。それじゃあ行こうか」

「うん」

 シルバーが返事をした後、私達は階段を降りて一階へと向かい、リビングにいた母さんに声を掛けた。

「母さん、今からシルバーと一緒にウツギ博士の研究所に行ってくるね」

「ええ、わかったわ。二人とも、気をつけて行ってくるのよ」

「「はーい」」

 私達は揃って返事をした後、玄関から外へと出た。そして、ウツギ博士の研究所へ向かう途中、シルバーは少し憂鬱(ゆううつ)そうに溜息をついた。

「はあ……」

「どうしたの、シルバー?」

「いや……今更だけど、ウツギ博士や父さんが言っていた俺と同じ歳の奴に会うかもと思ったら、少し憂鬱になってきてさ……」

「あはは、なるほどね」

「まあ、仕方ないとはわかってるんだけどさ……」

「そうだね。でも、悪い人達では無いはずだし、話をすればきっと仲良くなれるよ」

「だと良いんだけど……」

 シルバーがまた溜息をついていたその時、前方に仲良く話しながら歩く四人組の男女の姿が見え始めた。歳はぱっと見シルバーと同じくらいに見え、その事から父さんが聞いていたのがその子達の事だというのが何となくわかった。

 そうだ……せっかくだから、あの子達にウツギ博士の研究所がどこか訊いてみよう。

 そう思った後、私は歩くスピードを速くしながらその子達に声を掛けた。

「ねえ、君達ー!」

「え?」

 その内の赤い上着に黄色いズボン姿で黄色と黒の帽子を被った男の子は、不思議そうな声を上げながら振り返ったと思うと、突然私の事をボーッと見始めた。

 あはは……まあ、いきなり知らない人から話し掛けられたらそうなるよね。まずは自己紹介からだね。

 クスリと笑いながらその子達に近付いた後、私はペコリと頭を下げた。

「いきなり話し掛けてごめんね。私はツバキ、『カントー地方』の『トキワシティ』から来たんだ。そしてこっちが、弟の……」

「……シルバーだ。よろしく……」

「……あっ、俺はヒビキっす。そして、こっちにいるのは俺の幼馴染みで……」

「どうも、コトネです!」

「……ウズヒコ、です」

「スズカといいます。どうぞ、よろしく」

「うん、よろしくね」

「そ、それで俺達に何か用っすか……?」

「あ、えーとね……私達、ウツギ博士の研究所に行こうとしてたんだけど、どこにあるか知ってるかなーと思って」

「ウツギ博士の研究所……あ、それなら俺達も行くところだったんで案内しますよ! 良いよな、お前達?」

「うん、もちろん!」

「断る理由は……無いな」

「そうですね」

「ふふ、ありがとう」

「どういたしまして! それじゃあ早速行きましょうか」

「うん」

 ヒビキ君の言葉に返事をした後、私達は話をしながらウツギ博士の研究所に向かってまた歩き始めた。そして歩く事数分、一軒の建物が見えてくると、ヒビキ君はニッと笑いながら私に話し掛けてきた。

「見えてきましたよ! あれがウツギ博士の研究所っす!」

「あれが……ねえ、ウツギ博士の研究所にはどんなポケモンがいるの?」

「それはもう色んなポケモンがいますよ!」

「そっかあ……それは楽しみだなぁ。私もポケモンは何匹か持ってるけど、やっぱり色々なポケモンを見られると思うと、スゴく楽しみかも」

「あ、ツバキさんってもうポケモンを持ってるんですね?」

「まだ9歳だから正式にはポケモントレーナーじゃないけど、イーブイとシャワーズとサンダースとブースターとラプラスを持ってるよ」

「ラプラス……そういえば、昨日のニュースでアサギ港に入港した船についてきたラプラスを巡ってトレーナー同士のバトルがあったってニュースで言ってたけど、ツバキさんは何か知ってます?」

「うん、知ってるよ。だって、そのラプラスは私のとこの子だし、そのバトルをしたトレーナーの内の一人が私だから」

『……え?』

 ヒビキ君達が揃って疑問の声を上げる中、私はクスリと笑ってから経緯を話した。そして、話を終えると、ヒビキ君はとても怒った様子を見せた。

「そのレクトって奴、だいぶ自分勝手な奴だったんすね!」

「あはは……まあね。けど、こうして無事にレインの事は保護出来たし、後は保護している間、レインを好きに泳がせてあげられる場所さえ確保出来れば申し分は無いかな」

「あ、そっか……ラプラスは体の大きいポケモンだから……それなりに大きい場所じゃないと泳がせられないんだ……」

「なるほど……」

「そういう事でしたら、ウツギ博士にお願いしてはどうでしょうか?」

「ウツギ博士に?」

「はい。ウツギ博士の研究所には水タイプのポケモン達用の大きな湖がありますから、そこでならラプラスものびのびと泳げると思うんです」

「なるほど……たしかにそうかも。良いアイデアをありがとうね、スズカちゃん」

「ふふっ、お役に立てたようで何よりです」

 ベージュのジャケットに白いロングスカート姿の黒いポニーテールの女の子、スズカちゃんが上品な笑みを浮かべる中、その隣に立っている藍色の上着に薄紫色のジーンズ姿のウズヒコ君は少し不思議そうにヒビキ君に話し掛けた。

「そういえば、ヒビキ。さっき、ツバキさんに話し掛けられた時、少しボーッとしていたようだが、何かあったのか?」

「えっ……い、いや! 何も無いぞ!?」

「そう言って、実はツバキさんに見とれてたんじゃ無いの~?」

「そ、そんな事──って、この質問、どっちで答えても俺が損する奴じゃないか!」

「ふふ、そうですね」

「そうですね、じゃないって、スズカ!」

 軽く顔を赤くしながらヒビキ君が少し怒った様子を見せる中、私はそんな四人の微笑ましい光景に思わずクスリと笑ってしまった。

「みんな、本当に仲良しなんだね」

「ええ、まあ。それぞれ家も近いですし、親同士も仲が良いですから、お互いの家同士で何かやるのはしょっちゅうだったりするんす」

「……所謂(いわゆる)、家族ぐるみの付き合いって奴か」

「そうなるかな。でも、これからはツバキさん達もその仲間になりますからね」

「仲間、か……うん、やっぱり良いね。その言葉は」

「それに関しては同感です」

「ふふ、そうですね」

 そんな会話を交わしながら歩く事更に数分、ウツギ博士の研究所に着くと、ヒビキ君は研究所の自動ドアの前に立ち、開くと同時に中へと入っていった。そして、それに続いて私達も中に入っていくと、そこには眼鏡を掛けた一人の若い男性の姿があった。

「ウツギ博士、今日も来ました!」

「おお、みんな、いらっしゃい。おや……そちらの二人は新顔だね」

「初めまして、『カントー地方』の『トキワシティ』から来たツバキといいます」

「……弟のシルバーです」

「『トキワシティ』……ああ、サカキさんのところのお子さんか! 初めまして、私はウツギ。この研究所でポケモンの研究をしているんだ。二人ともこれからよろしくね」

「はい、こちらこそよろしくお願いします」

「……よろしくお願いします」

 私達の自己紹介が終わると、ウズヒコ君は少し警戒したような顔をしながら私に声を掛けてきた。

「ツバキさん……ツバキさん達のお父さんってもしかして……」

「そうだよ。『ロケット・コンツェルン』の会長にして『トキワシティ』のジムリーダーのサカキだよ」

「『ロケット・コンツェルン』の会長で……」

「ジムリーダー……!? それじゃあ、ツバキさん達ってスッゴいお金持ちなんじゃ……」

「あはは……まあ、そういう事にはなるけど、あまり気にしなくて良いからね」

「あ……了解っす」

「わかりました」

 ヒビキ君とコトネちゃんが驚きを隠しきれない様子で答える中、ウズヒコ君とスズカちゃんはやっぱりといったような表情を浮かべながら私達の事を見ていた。

 ……この様子やさっきのウズヒコ君の警戒したような顔から考えるにウズヒコ君達は私と同じ転生者の可能性があるかな。まあ、私はウズヒコ君達とは敵対するつもりは無いし、少しずつ警戒を解いていけば良いよね。

 そんな楽観的な事を考えた後、私はポーチの中からレインのモンスターボールを取り出しながらウツギ博士に話し掛けた。

「ウツギ博士、一つお願いがあるんですが、良いですか?」

「うん、何かな?」

「このモンスターボールの中には、群れからはぐれた子供のラプラスが入っているんですが、時々で良いのでこちらの研究所の湖で泳がせてあげて欲しいんです」

「子供のラプラス……もしかして、昨日のニュースで言っていたラプラスの事かい?」

「はい、その通りです」

「なるほどね。そういう事なら喜んでその申し出を受けさせてもらうよ。私もラプラスを間近に見る機会はあまり無いから、良い経験になるしね」

「ウツギ博士……ありがとうございます」

「どういたしまして。それじゃあ早速湖まで案内するよ。皆、ついてきてくれ」

『はい』

 揃って返事をした後、私達はウツギ博士の後に続いて研究所の外へと出て、そのまま裏手へと回った。すると、そこには様々なポケモン達がのびのびと暮らしており、その様子からポケモン達が何の不満も無く暮らしているのがハッキリと分かった。

「ここのポケモン達……本当に幸せそうですね」

「はは、そう見えたのなら良かったよ。世話をすると決めた以上、ポケモン達には幸せに過ごして欲しいからね。ポケモン達の生態系に合わせた環境作りやポケモンフーズ作りには余念が無いようにしているよ」

「なるほど……」

「さて……そろそろ着くよ」

 その言葉通り、私達の目にとても広い湖が映り、湖では様々な水タイプのポケモン達が思い思いの行動をしながら過ごしていた。

 ここならレインも楽しく過ごせるかも。よし……!

 私はレインのモンスターボールを握り直すと、スイッチを軽く押した。

「レイン、出てきて」

「キュー」

 レインはモンスターボールから出てくると、そのまま私達の目の前に着地し、嬉しそうな笑みを浮かべながら私の頬に頭を擦りつけてきた。

「ふふっ、レイン。くすぐったいよ」

「キュー♪」

「これがそのラプラスか……子供だからか少し体格は小さいけれど、とても元気そうだね」

「はい。昨日もご飯をよく食べていましたし、病気という事は無いみたいです」

「そうか。さて……それじゃあそろそろ湖に入れてあげようか」

「はい」

 ウツギ博士の言葉に返事をした後、私はレインの事を見ながらニコリと笑った。

「レイン。あなたがのびのびと泳げるようにここの研究所の湖を使わせてもらえる事になったから、少し入ってみてもらえるかな?」

「キュー!」

 レインは元気よく返事をすると、湖に向かってのしのしと歩き始めた。そして、ゆっくりと湖の中に入り、スーッと少し泳ぐと、とても気持ち良さそうな顔で「キュー♪」と鳴き声を上げた。

「うん、気に入ったみたいだね」

「ははっ、それなら良かったよ。さて、それじゃあそのラプラスには少し泳いでおいてもらうとして……皆にはまたちょっとついてきてもらおうかな?」

「ん……ウツギ博士、もしかして俺達に何か見せたい物でもあるんすか?」

「そんなところだね。実は……研究のために新人トレーナー用のポケモンを二匹ずつ取り寄せていてね。それがついさっき届いたところだったんだ」

「新人トレーナー用のポケモン、って事は……!」

「ああ。草タイプのチコリータと炎タイプのヒノアラシ、そして水タイプのワニノコさ」

「おおー! ウツギ博士! 早く見たいっす!」

「ははっ。よし……それなら早く戻るとしよう」

 ウツギ博士のその言葉に揃って頷いた後、私は気持ち良さそうに湖を泳ぐレインに声を掛けた。

「レインー! 私、ちょっとウツギ博士達と一緒に行くところがあるから、湖のポケモン達と仲良くしながら待っててねー!」

「キュー!」

 レインが大きく頷きながら答えた後、私はウツギ博士達と一緒に研究所の中へと戻った。そして、ウツギ博士の研究室に入ると、机の上には蓋の開いたトランクと6つのモンスターボールが置かれていた。

「ウツギ博士……あのモンスターボールの中にチコリータやヒノアラシ達が入ってるんすね……!」

「ああ。さっきも言ったように、元々は私の研究のために取り寄せたポケモン達だったんだが……ここにせっかく六人もいる事だし、一匹ずつ君達にプレゼントしよう」

「ほ、本当ですか……!?」

「ああ。ただし、彼らの事を大事にしてくれよ?」

『はい!』

 揃って返事をした後、私達は机に近付き、どのポケモンを貰うか相談を始めた。

「それで……どうする? エレン──イーブイやレインをもう持ってる私は最後に残った子でも良いけど……」

「あ、それなら私も後回しで良いかな。ウチにはもうルリリのリリーがいるし……」

「そうなると、俺達が先に選ぶわけか……」

「それじゃあ、それぞれ欲しいポケモンを指名してみるか」

「そうだな」

「二匹ずついるわけですから、余程の事が無い限り、被らないと思いますし、私も良いと思います」

「よし……それじゃあせーのっ、で言うぞ。せーのっ……!」

「「ヒノアラシ」」

「「ワニノコ」」

 ヒビキ君とスズカちゃんがヒノアラシ、シルバーとウズヒコ君がワニノコの名前を挙げると、私とコトネちゃんは顔を見合わせてクスクスと笑い合った。

「それじゃあ、私達がチコリータだね」

「はい。でも、チコリータになってくれて良かったかも。私、初心者用ポケモンの中では一番チコリータが好きですし、リリーが進化した後の事を考えたら、草タイプのチコリータの方がバランスも良かったですから」

「それに関しては私も同じかな。因みに、ヒビキ君達はどうしてそのポケモンを選んだの?」

「俺は最終進化のバクフーンが一番好きっていうのもありますけど、やっぱりガンガン攻めていくのが好きですから!」

「私は少し現実的な意見になってしまいますが、この『ジョウト地方』のジムを制覇するには、炎タイプのヒノアラシがパートナーであった方が多少は楽だからですね」

「……最終進化のオーダイルが、カッコいいと思ったから」

「俺はいずれ『うずまきじま』にいるというルギアに会いたいと思っているので、それには水タイプのパートナーが良いと考えたからです」

「なるほどね。それにしても……ヒビキ君とシルバーは、だいたい同じ考えだったんだね」

 私がそう言うと、ヒビキ君はニヤニヤとしながらシルバーの肩を静かに抱いた。

「へへ、俺達気が合うな!」

「……偶然、意見が合っただけだ」

「それでも、意見が合ったのには変わりないだろ。なあ、兄弟~」

「誰が兄弟だ! というか、この手を放せ!」

「へへっ、やーだよーだ!」

 いつもの落ち着いた感じとは違って子供らしくムキになるシルバーと悪戯(いたずら)っ子のような笑みを浮かべながらシルバーの言葉をのらりくらりと躱すヒビキ君は、本当の兄弟のように見え、その姿に私は思わずクスリと笑ってしまった。

 ヒビキ君とシルバー、性格は対照的だけど、きっと本当に心の内を明かし合えば、誰にも負けないスゴいコンビになっちゃいそうだなぁ……。

 私がそんな事を考える中、ウツギ博士はシルバーとヒビキ君の姿を微笑ましそうに見てから、手をパンパンと打ち鳴らした。

「はいはい。じゃれ合うのはそこまでにして、まずはポケモン達に挨拶をしないと」

「……っと、そうだった。ウツギ博士、どれがどのポケモンのモンスターボールっすか?」

「右端に寄せてあるのがチコリータ、中央がヒノアラシ、左端がワニノコだ」

「中央……って事は、これだな」

「ふふ……初めてのポケモンという風に考えると、なんだか感慨深いですね」

「……同感だな」

「……これが俺の初めてのポケモン……」

「後でエレン達にもチコリータの事を紹介しないと……」

「リリーとチコリータ、仲良く出来るように私が色々サポートしてあげられるように頑張ろう……!」

 それぞれポケモンが入ったモンスターボールを持ちながら思い思いの言葉を口にした後、私達は一斉にモンスターボールのスイッチを押した。そして、ポケモン達が出てくると、シルバー達はそれぞれのポケモン達に声を掛け始め、それを見てから私も目の前にいるチコリータに対してニコリと笑いながら声を掛けた。

「チコリータ。私はツバキ、あなたのトレーナーだよ」

「チコ……?」

「いきなりの事で戸惑ってるかもしれないけど、私はあなたと仲良くなりたいと思ってる。せっかく一緒にいるなら、仲良くした方が良いからね」

「チコ……」

「チコリータ、こんな私だけどこれからよろしくね」

「……チコ!」

 握手をするために差しだした右手をチコリータは頭の葉っぱで優しく包むと、人懐こそうな笑みを浮かべた。

 ほっ……どうやら、チコリータとのファーストコンタクトは上手く行ったみたいだね。それにしても……レインの時といい今回といい初対面のポケモンから私は高確率で懐いてもらえてるけど、これって何でなんだろう……?

 そんな事を考えていた時、「あの、ツバキさん」とスズカちゃんから声を掛けられた。

「うん、何?」

「私と……ポケモンバトルをして頂けませんか?」

「スズカちゃんと? 別に良いよ。私、この子ともっと仲良くなりたいし、それなら一緒にバトルをした方がお互いの気持ちも感じ合えるからね」

「……ありがとうございます。それでは──」

「それなら、俺もその後でバトルをさせてもらっても良いですか?」

 そう手を挙げながら言ったのはウズヒコ君であり、その様子にヒビキ君は少し驚いたようだった。

「ウズヒコ、自分から意見を言うなんて珍しいじゃんか」

「ああ、まあな。けど、そのバトルを通じて少し確かめたい事があるんだ。スズカ、お前もそうなんじゃないのか?」

「……流石はウズヒコ君。その通りです」

「……やっぱりな。という事で、俺ともバトルをお願いしても良いですか?」

 真剣な眼差しを向けながら訊くウズヒコ君の様子に私はウズヒコ君達が確かめたい事が何かを察したような気がした。

 ……もし、それが私の考えている事だとしたら、私だけよりもシルバーも混ぜた方が良いよね。そう思った後、私はシルバーの方をポンと叩いた。

「それなら、私とシルバー、ウズヒコ君とスズカちゃんのコンビでダブルバトルをする事にしない?」

「……は? ちょっと、姉さん!? 俺はやるなんて一言も──」

「……良いですよ」

「……私も問題ありません」

「って、お前達まで!」

「ダブルバトル、かぁ……! くぅー……! なんだか燃えてくるなぁ!」

「あはは……なんだかスゴい事になったけど、どっちも頑張れー!」

「お前達も……はあ、こうなったら腹を(くく)るしか無いか……」

 シルバーが諦めた表情を浮かべながら溜息をつくと、ウツギ博士はそんな私達の事を見ながらニコニコと笑った。

「それじゃあ、早速バトルフィールドに案内するよ。皆、ついてきてくれ」

 そのウツギ博士の言葉に頷いた後、私達はウツギ博士からそれぞれのパートナーポケモンが覚えている技を教えてもらってから、ポケモン達をモンスターボールにしまい、また研究所の外へと出た。そして、バトルフィールドに着いた後、私達はそれぞれ向かい側に立ち、バトルをする準備を始めた。

「さあて……シルバー、頑張っていくよ!」

「……姉さん。本当に何のつもりだよ……」

「……シルバー、たぶんだけどね、ウズヒコ君とスズカちゃんは、父さんがR団のボスだという事を知ってるよ」

「……は? どうして!?」

「……そこまではわからない。でも、このバトルを通じてウズヒコ君達は何かを確かめようとしている。だったら、私達はそれに全力で臨むだけ」

「……そうだな。姉さん、何かあったらサポートを頼む」

「……うん、任せてよ、シルバー」

 シルバーの言葉に頷いた後、私達はモンスターボールを構えながらウズヒコ君達の方を向いた。そして、ウズヒコ君達もこちらを向いた後、ウツギ博士は私達を交互に見ながら静かに口を開いた。

「それでは、これよりダブルバトルを始めます。使用ポケモンは一体ずつ、どちらかのポケモンが先に全て戦闘不能になった時、試合終了とします。両者とも準備は良いかな?」

「はい」

「……大丈夫です」

「俺も大丈夫です」

「同じく大丈夫です」

 その言葉に頷くと、ウツギ博士は大声を上げながら両手を高く挙げた。

「それでは……バトル、スタート!!」




政実「第5話、いかがでしたでしょうか」
ツバキ「次回はウズヒコ君とスズカちゃんとのバトル。恐らく父さんがR団のボスだという事を知っているウズヒコ君とスズカちゃんとのバトルの勝敗、そしてバトルの先に待っているのはいったい何なのかしらね」
政実「それは次回のお楽しみという事で」
ツバキ「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さてと、それじゃあそろそろ締めていこうか」
ツバキ「ええ」
政実・ツバキ「それでは、また次回」
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