R団ボスの娘   作:九戸政景

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政実「どうも、神話などに出てくる精霊や神様などが好きな片倉政実です」
ツバキ「どうも、ツバキです。精霊や神様、ね……だから、私の手持ちポケモン達もそれらの名前を捩ってつけていたりするのよね」
政実「そうだね。因みに、これからもそうしていくよ」
ツバキ「わかった。それじゃあそろそろ始めていきましょうか」
政実「うん」
政実・ツバキ「それでは、第6話をどうぞ」


第6話 VSウズヒコ&スズカ 真意を確かめる一戦

「……行こう、チコリータ」

「チコ! 」

「ワニノコ、出番だ!」

「ワニ」

「行きましょう、ヒノアラシ」

「ヒノ……」

「やるぞ、ワニノコ」

「ワニワー!」

 お互いにポケモンを出した後、私は相手の動きに注意を払いながらウズヒコ君達に話し掛けた。

「先行は譲るよ。遠慮無くかかってきて」

「……わかりました。ヒノアラシ、チコリータに『はじけるほのお』!」

「ワニノコ、相手のワニノコに『グロウパンチ』!」

「ヒノ……」

「ワニ!」

 ヒノアラシが背中の炎を更に燃え上がらせながらチコリータに向かって炎を吐き出し、ウズヒコ君のワニノコが白く輝く拳を振り翳しながらワニノコへ向かって走っていく中、私は相手の様子に注意を払ったままでチコリータに指示を出した。

「チコリータ、『ひかりのかべ』」

「ワニノコ、『れいとうパンチ』で迎え撃て!」

「チコ!」

「ワニ」

 チコリータが少し前に出ながら光輝く障壁(しょうへき)を張り、『はじけるほのお』を受け止めると、『はじけるほのお』はその場で弾け飛び、そのまま周囲に散らばってワニノコの行動を阻害(そがい)した。けれど、ワニノコはそれをものともせずに走り抜けると、同じように走ってきていたウズヒコ君のワニノコの『グロウパンチ』を『れいとうパンチ』で受け止めた。その瞬間、力同士がぶつかった事で衝撃波が生じると、ワニノコ達はお互いに距離を取り、お互いの動きに注意を払い始めた。

 ……やっぱり、ダブルバトルだと『はじけるほのお』みたいに相方にも効力を持つ技が厄介ね。でも、相手にとって厄介な技を持ってるのはこっちも同じ。それなら、それらを活用して相手の隙を窺うのが現時点での最適解。

「だから、ここは……チコリータ、『リフレクター』」

「ワニノコ、お前は『りゅうのまい』だ」

「チコ」

「ワニ」

 チコリータがもう一種類の光輝く障壁を張り、それに守られながらワニノコが『りゅうのまい』をしていると、それを見たスズカちゃんが警戒した様子を見せながらポツリと呟いた。

「かたや『ひかりのかべ』と『リフレクター』で守りを固め、かたや『りゅうのまい』でこうげきとすばやさを上げてくる……流石はジムリーダーの御子息といったところでしょうか」

「…………」

「ですが、私達もただでは負けられません。ヒノアラシ、『ほのおのちかい』!」

「ワニノコ、相手のワニノコに『みずのちかい』!」

「ヒノ……」

「ワニワー!」

 ヒノアラシとウズヒコ君のワニノコが同時に技を繰り出すと、『ほのおのちかい』は発動しなかったが、『みずのちかい』は威力を高めた状態でワニノコへ向かっていった。そして、ワニノコに当たる瞬間に『ひかりのかべ』に阻まれたが、ワニノコはその衝撃で軽く後ろに吹き飛ばされた。

「ワニノコ! 大丈夫か!」

「ワニ……ワニ、ワニワ」

「……どうやら、大丈夫みたいだな」

 ワニノコの様子を見てシルバーがホッと胸を撫で下ろす中、私はいつの間にか空に架かっていた虹に注目していた。

 マズいわね……『ひかりのかべ』で威力は抑えられたとはいえ、『ほのおのちかい』と『みずのちかい』のコンビネーションで、今相手は技の追加効果が出やすい状態になってる。となると、相手はその効果が切れる前に勝負を決めてこようとするはず。だったら、私達はそれよりも早く勝負を決めるしか無い。

 虹からウズヒコ君達へ視線を移した後、私は視線を逸らさずにシルバーに話し掛けた。

「シルバー」

「……何、姉さん?」

「シルバーはひたすら『りゅうのまい』でワニノコの事を強化してあげて。その間、私達がサポートするから」

「……わかった。それじゃあ頼んだぜ、姉さん」

「ええ」

 返事をした後、私はチコリータに指示を出した。

「チコリータ、ヒノアラシ達に『あまいかおり』」

「ワニノコ、お前は連続で『りゅうのまい』だ!」

「チコ!」

「ワニ」

 揃って返事をした後、チコリータはヒノアラシ達へ向けて『あまいかおり』を飛ばし、ワニノコはその後ろでひたすら『りゅうのまい』を続けた。すると、それを見たウズヒコ君達は焦ったような表情を浮かべた。

「このまま『りゅうのまい』を続けられたら厄介だな……」

「はい……なので、一気に勝負を決めてしまいましょう」

「ああ。だったら、まずはサポーターのチコリータからだ。ワニノコ、『あまいかおり』を躱してチコリータに『れいとうパンチ』!」

「ヒノアラシ、あなたも『あまいかおり』を躱してからチコリータに『ニトロチャージ』です」

「ワニ!」

「ヒノ」

 ワニノコ達はそれぞれのトレーナーの指示に頷くと、指示された技を使いながら『あまいかおり』を躱し、同時にチコリータに攻撃を仕掛けた。

 ……良い動き。でも、それだけじゃ私達は倒せない。

「チコリータ、上に跳んで躱してから『はっぱカッター』」

「チコ!」

 チコリータは攻撃が当たる寸前のところで上へ向かって軽やかに跳ぶと、自分を見上げるヒノアラシ達に『はっぱカッター』を飛ばした。

「ヒノ……!」

「ワニ……!」

「ヒノアラシ!」

「ワニノコ!」

 ウズヒコ君達の声がバトルフィールド中に響く中、私は視線を逸らさずにまたシルバーに声を掛けた。

「シルバー、『りゅうのまい』は合計で何回できてる?」

「……四回」

「そう。それなら、充分。それじゃあシルバー、そろそろお願いね」

「わかった」

 シルバーは静かに頷くと、右手を前に出しながら自分のワニノコに指示を出した。

「ワニノコ、ヒノアラシに『アクアジェット』」

「ワニ」

 ワニノコが静かに返事をし、その体が水に包まれると、ワニノコは目にも止まらぬ速さでヒノアラシに向かって突進した。

「しまっ──」

「仕留めろ、ワニノコ!」

「ワニ」

 そして、ワニノコがヒノアラシにぶつかると、ヒノアラシは後ろへ大きく吹き飛ばされ、スズカちゃん達の後ろにあった木に激突し、その場には濃い砂煙が立ちこめた。

「ヒノアラシ! 大丈夫ですか!?」

 スズカちゃんがヒノアラシに向かって声を掛ける中、砂煙は徐々に消えていった。そして、砂煙が完全に消えた瞬間、私達の視界に入ってきたのは地面に倒れ込むヒノアラシの姿だった。

 ……流石にこれは耐えきれないよね。

 そんな事を考えていた時、ウツギ博士はヒノアラシのところまで走っていき、その状態を確認すると、ヒノアラシを抱きかかえながらゆっくりと戻ってきた。そして、スズカちゃんにヒノアラシを渡すと、静かに口を開いた。

「ヒノアラシ、戦闘不能。ウズヒコ君&スズカちゃんチームは、残るはワニノコだけだね」

「……そうですね。ウズヒコ君、申し訳ありませんが後はよろしくお願いします」

「……ああ、任せておけ」

 ウズヒコ君がより真剣な表情を浮かべながらこちらを見る中、私はシルバーに話し掛けた。

「シルバー、そろそろ『ひかりのかべ』が消える頃だけど、『リフレクター』はもう少しだけ残るから、ダメージを気にせずに攻めるなら今の内だよ」

「……わかった。それじゃあ姉さん、サポートは任せたぜ」

「了解」

 頷いた後、私はチコリータに指示を出した。

「チコリータ、『あまいかおり』」

「チコ」

 チコリータが返事をしてから再び『あまいかおり』をウズヒコ君のワニノコへ向けて放ったが、ワニノコは躱す様子を見せなかった。

『あまいかおり』を避けなかった……? という事は、何か他に策があるという事になるけれど、この状況を打開する策なんて……。

 ワニノコが『あまいかおり』を避けなかった事を私が怪しんでいたその時、シルバーは余裕綽々といった様子で一歩前に踏み出した。

「『あまいかおり』を避けなかったなら、後は攻めるだけだ! ワニノコ、もう一度『アクアジェット』!」

「ワニ」

 そして、ワニノコが『アクアジェット』を使ってウズヒコ君のワニノコへ向かって突進していったその時、ウズヒコ君がニヤリとしたのを見て、私はウズヒコ君の狙いに気付いた。

 ……なるほど、狙いはそれだったのね……!

「くっ……間に合ってよ……! チコリータ、ワニノコ達の間に『はっぱカッター』!」

「チコ!? チ、チコ……!」

 チコリータは一瞬戸惑ったものの、すぐにワニノコ達の間の地面に『はっぱカッター』を打ち込むと、その衝撃でバトルフィールド中に土煙が上がった。

「なっ!? ワニノコ、『アクアジェット』は中止だ!」

「ワ、ワニ……」

 土煙が上がった事でシルバーは急いでワニノコへ指示を出した後、納得出来ないといった様子で私に声を掛けてきた。

「姉さん! 何を考えてるんだ!?」

「……シルバー、今のは少し遅かったらワニノコが一発で戦闘不能になってたよ」

「なっ!? それって、一体──」

 その時、シルバーはハッとした様子を見せると、ウズヒコ君の事を警戒し始めた。

「アイツ……そんな事を考えてたのか……!」

「うん。だから、少しだけ待ってて。すぐにワニノコが活躍出来るようにしてあげるから」

「……わかった」

 シルバーが静かに頷きながら答えていると、砂煙の向こうからウズヒコ君が話しかけてきた。

「……勝てるチャンスを自ら潰すなんて……シルバーの言う通り、何を考えているんですか?」

「……さてね。けど、不利に見せ掛けて罠を張っていたあなたに言われる筋合いはないかな?」

「……なるほど。()()に気付いていたから、『はっぱカッター』でワニノコの『アクアジェット』を邪魔したんですね」

「そう、もしかしたら一発逆転が出来るかもしれないあの技があるから、シルバーのワニノコは迂闊(うかつ)に動かせない。私達だけでも勝てなくはないけど、確実に勝つためにはシルバー達の力が必須だから」

「……そうですか。なら、やはり倒すべきはツバキさん達からですね。ワニノコ、チコリータに『れいとうパンチ』!」

「ワニ!」

 ウズヒコ君の指示を聞き、ワニノコがチコリータに向かって走ってくるのを見た後、私はチコリータに指示を出した。

「チコリータ、躱してから『はっぱカッター』」

「チコ」

 チコリータは静かに頷くと、上に跳んで『れいとうパンチ』を躱し、『はっぱカッター』を放った。けれど、ウズヒコ君はそれに対してニヤリと笑うと、落ち着いた様子でワニノコに指示を出した。

「ワニノコ、『グロウパンチ』で『はっぱカッター』を打ち消せ!」

「ワニ!」

 その指示に従ってワニノコは『グロウパンチ』で次々と『はっぱカッター』を打ち消していき、それと同時に少しずつこうげきを上げていった。

 ……今のでたぶんこうげきは上がりきったはず。となると、私達が勝利するには相手からの攻撃を受けずにダメージを与えきるしかない。幸いにも相手は『あまいかおり』で回避率が下がっている上、シルバーのワニノコは『りゅうのまい』でステータスが上がってる。となれば、やっぱりシルバー達に最後の一撃を決めてもらうのが一番ね。

 そこまで考えた後、私はシルバーに声を掛けた。

「シルバー、もう少しだけ『りゅうのまい』って出来そう?」

「それは出来るけど……」

「それなら、『りゅうのまい』でワニノコの強化をお願い。その間に相手の隙を見つけてみるから」

「……わかった。それじゃあ頼んだぜ、姉さん」

「ええ」

 シルバーの言葉に返事をした後、私はチコリータに指示を出した。

「チコリータ、『リフレクター』」

「チコ!」

 チコリータは大きく頷きながら返事をすると、再び『リフレクター』を張った。そして、それを終えた後、ウズヒコ君は警戒した様子で私に話しかけてきた。

「また『リフレクター』……何を考えているんですか?」

「そんな事、話すわけないでしょう?」

「……そうでしょうね。けど、守っているだけでは勝てませんよ」

「わかってる。だから、そろそろ攻めさせてもらう。チコリータ、『はっぱカッター』」

「チコ」

 チコリータが『はっぱカッター』を放つ中、ウズヒコ君は落ち着いた様子でワニノコに指示を出した。

「ワニノコ、『れいとうパンチ』で打ち消せ」

「ワニ!」

 ワニノコが返事をした後、『れいとうパンチ』で『はっぱカッター』が全て打ち消されていくのを見ながら私はシルバーに話し掛けた。

「シルバー、『りゅうのまい』による強化の進捗状況は?」

「……これ以上は上がらないところまできたはずだ」

「……わかった」

「姉さん、何か隙は見つかったか?」

「……まだ。でも、シルバーのワニノコが残してる最後の技さえ噛み合ってくれればいけるはず。シルバー、ワニノコが覚えてる技をもう一度教えてもらっても良い?」

「ああ。ワニノコが覚えてるのは──」

 シルバーからワニノコが覚えている技を教えてもらった後、私はウズヒコ君の動きに注意を払いながらこの後の展開について考え始めた。

 残ってるのは『あの技』。となれば、残ってる技で決めようとした方がダメージは大きい。だけど、今のままじゃそれを決めようとした瞬間にワニノコは戦闘不能になってしまう。つまり、この作戦に必須なのは、一度でも良いからウズヒコ君の狙いを崩す事。でも、一体どうやって……。

 ウズヒコ君の狙いを崩す方法についてあれこれ考えていたその時、「姉さん」とシルバーから話し掛けられ、私は考えるのを一度中断してからシルバーに返事をした。

「何、シルバー?」

「……俺に考えがある。だから、協力してくれ」

「……わかった。それじゃあサポートは任せて」

「ああ、ありがとう」

 シルバーがお礼を言った後、私はチコリータに指示を出した。

「チコリータ、『はっぱカッター』」

「チコ」

 チコリータがウズヒコ君のワニノコへ向かって『はっぱカッター』を放つと、ウズヒコ君はそれを見ながら小さく溜息をついた。

「……無駄ですよ。ワニノコ、『れいとうパンチ』」

「ワニ!」

 ワニノコは再び『れいとうパンチ』で『はっぱカッター』を次々と打ち消した。そして、全てを打ち消したその時、ウズヒコ君はとても驚いた様子で声を上げた。

「なっ……! ワニノコがいない!?」

「……さっきと同じ手だったけど、これで良い? シルバー」

「ああ、バッチリだよ。姉さん」

 シルバーはニッと笑いながら答えると、ウズヒコ君のウズヒコ君の()()に回っていたワニノコに指示を出した。

「ワニノコ! 『かみくだく』!」

「ワニ」

 その指示と同時にワニノコが一瞬でウズヒコ君のワニノコに近づき、そのまま噛みつくと、その衝撃でウズヒコ君のワニノコは大きく吹き飛ばされ、バトルフィールドをゴロゴロと転がった。

「ワニノコ!」

 そんなワニノコの姿を見て、ウズヒコ君がワニノコに声を掛けたけれど、ワニノコは仰向けになりながら目を回しており、その姿にウツギ博士はふぅと息をついてから私達の方へ手を挙げた。

「ワニノコ、戦闘不能。よって勝者は、ツバキさん&シルバー君チーム」

 そのウツギ博士の声を聞き、ウズヒコ君がワニノコへ駆け寄る中、私は嬉しそうに走り寄ってきたチコリータの事を優しく抱き上げた。

「お疲れ様、チコリータ。よく頑張ってくれたね」

「チコ! チコ、チコチコ!」

「ふふ、初めてのバトルで勝ててあなたも嬉しいみたいだね。私もなんとか勝てて本当に嬉しいよ」

 バトルに勝てた嬉しさを噛みしめながらチコリータに対してニコリと笑っていた時、ふとある事を思い出した。

 そういえば、この子にまだニックネームをつけてなかったっけ……。この子だけニックネームをつけないのも可哀想だし、後で良いニックネームを考えてあげないと。

 チコリータを見ながらそんな事を思っていた時、「ツバキさん」と声を掛けられ、私がそちらに視線を向けると、そこにはそれぞれのパートナーを抱きかかえているウズヒコ君達の姿があった。

「ウズヒコ君、スズカちゃん。良いバトルをありがとう」

「こちらこそバトルをして頂きありがとうございました。今回のバトル、とても良い経験になりました」

「それなら良かったよ。そういえば、ウズヒコ君。ウズヒコ君が狙っていたのって、やっぱり『カウンター』だよね?」

「はい。ワニノコの技には特殊技が無いみたいだったので、『カウンター』を使えば『りゅうのまい』で上がった物理技の威力を倍にして返し、シルバーのワニノコを一撃で倒せると思ったんです」

「やっぱり、ね。だから、私はそれを阻止するために『はっぱカッター』を指示し、どうにか止めた後、ウズヒコ君達が反応できないレベルまで早く動けるようにするため、シルバーとに更に『りゅうのまい』を使うようにお願いをした。そして、シルバーが打開策を思いつき、それが私の考えと一緒だろうと確信した後、ワニノコを後ろに回り込ませるためにその時間稼ぎとして『れいとうパンチ』で『はっぱカッター』を打ち消させ、その隙にシルバーがワニノコにこっそり指示を出して、ウズヒコ君の背後に回らせたってところかな。」

「なるほど。ところで……バトル中も少し思ったんですが、バトルの最中のツバキさんはなんだか雰囲気が変わりますよね?」

「あ、うん……私、何かに真剣になっていたり、集中している時にはちょっと話し方とかが自然に変わっちゃうんだ」

「そうだったんですね」

「うん。それで、私達とのバトルで確かめたい事があるって言ってたけど、それって私とシルバーがR団のボスのサカキの子供だからっていうのと何か関係ある?」

「はい。サカキという名前を聞いた時、まさかとは思いましたが、やはり私達の勘違いでは無かったんですね」

「そういう事だね」

「……ツバキさん、あなたのお父さんがR団のボスとして何をしているかは知っていますか?」

「もちろん、知ってるよ。表向きは『ロケット・コンツェルン』の会長や『トキワシティ』のジムリーダーという役職についているけど、裏では様々な悪事に手を染めている事も全て知ってる。でもね、二人とも。これだけは信じてほしい。父さんは二人が思っているよりも悪い人では無いって事を」

「……どうしてそう言えるんですか?」

「いつも父さんのポケモン達の目を見てきたからだよ」

「ポケモン達の目を?」

「うん。ポケモン達は、私達人間が考えているよりもずっと繊細で、人間の行いによっては本当に心を閉ざしてしまう事もあるの。でも、父さんのポケモン達は違う。父さんのポケモン達は、常に澄んだ目をしているの。時にはR団の悪事のために力を振るう事もあるみたいだけど、それでも父さんがポケモンの事を心の奥底では大事に思っている事をあの子達は知っていて父さんの事を心から信じてる。それに、レインの件だって『ロケット・コンツェルン』のネットワークを利用してどうにかしようとしてくれてる。たしかに、私が娘だからとか良い人のフリをして信じさせて後で利用しようとしてるって考える事も出来るよ。けれど、私はそう思わない。これは家族だからじゃなく、サカキという一人の人物が私にとって信用をしても良いと思える人だから、私は父さんの事を信じてるんだ」

「ツバキさん……」

「まあでも、二人が父さんの事を疑うならそれは仕方ないと思う。さっきは信じてほしいなんて言ったけど、私の考えを強制するつもりは無いからね」

 ニコリと笑いながらそう言うと、ウズヒコ君とスズカちゃんは顔を見合わせ、お互いに小さく息をついてからまた私の方へ顔を向けた。

「ツバキさん、正直な事を言うなら、まだあなたのお父さんを心から信用するのは無理です」

「…………」

「けれど、ツバキさんとシルバーとのバトルを通じて、そしてさっきの話を聞いて、俺達は少しだけなら信じてみても良いかなと思えました」

「二人の戦い方は、ポケモン達の事を道具として扱うような戦い方ではなく、本当にポケモン達を自分のパートナーとして見て戦う方法だった。俺達が確かめたかったのは、それだったんです」

「二人とも……」

「ですが、もしもあなたのお父さんがこの先の未来で大きな悪事に手を染め、私達にそれを止める力が備わっていたその時は、全力であなたのお父さんを倒します」

「うん、それで良いよ。私も父さんが本当に間違った事をしたら、止めるつもりだからね。たとえ、それが原因で父さんと仲違いをする事になってもね」

「……わかりました。ツバキさん、改めてこれからよろしくお願いします」

「よろしくお願いします、ツバキさん」

「うん、こちらこそよろしくね」

 そして、ウズヒコ君達と固く握手を交わした後、私はウズヒコ君達と一緒にバトルの観戦による熱が冷めやらぬ様子でシルバーと話すヒビキ君とそれを苦笑いを浮かべながら見ているコトネちゃんのところへ向かった。

 

 

 

 

 その日の夜、私はその日の日記をつけながら机に向かっていた。

 ふう……今日も色々な事があったなぁ。そういえば、ウズヒコ君達が同じ転生者なのかについて確認をしなかったけど、父さんがR団のボスだという事を知ってる辺り、多分そうなんだろうなぁ。

「まあ、父さんの事を少しは信じてもらえたようだし、これで多少は安心かな」

 そんな事を独り言ちながらふとポケモン達の寝床がある方へ視線を向け、新しい仲間であるチコリータのリアがスヤスヤと眠る姿を見て、私は安心感からクスリと笑った。

「リア達は初心者用ポケモン達の中の優等生達だったとはいえ、ちゃんとバトルをしたのはたぶん初めてだったろうからね。リアにはゆっくり体を休めてもらおうかな」

 そして、椅子から立ち上がり、窓際まで歩いていった後、私は綺麗に輝く月を見上げた。

 いつまでこの『ジョウト地方』にいるかはわからないけど、いる間はヒビキ君達と一緒に楽しい毎日を過ごしていこう。

 夜空に浮かぶ青白い月を見ながら、今日出会ったヒビキ君達の姿を思い出しつつ、心の中でそう誓った。




政実「第6話、いかがでしたでしょうか」
ツバキ「今回の話ではウズヒコ君達が転生者なのかについては明かされなかったけど、いずれは明かされるのかしら?」
政実「うん、そうなるね」
ツバキ「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「それじゃあそろそろ締めていこうか」
ツバキ「ええ」
政実・ツバキ「それでは、また次回」
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