【試走】がっこうぐらし! RTA 学園ヒーロールート【完結】   作:haku sen

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 RTA風の小説に挑戦してみるはいいものの、予想以上に難しく、自身の浅はかな知力が露見する結果となっております。
 思わず首を捻るような事や不快に思う描写があるかもしれないので、それらを事前に分かった上で見てください。

 


Part1  スタート

 

 

 

 

 全員を助ける(全員とはいっていない)ヒーローを地で行くRTAはーじまーるーよー。

 

(なお、今回は試走になります。本当なら試走ではなかったんですが、正直言うとガバりました。そんなもん上げんな、って話なんですが、ちょっと見たことないめぐねえとの関係があったので投稿しました)

 

 計測開始はスタート画面のはじめるを押してから。計測終了は称号およびエンディングが流れ始めたらとします。

 キャラクリは名前と性別以外はランダムで。ただ、見た目が悪いと多少なりと好感度に響くことになるので、すぐにリセットあんどスタートになります。(2敗)

 

 結局は顔。はっきりわかんだね。

 

 はい、よーいスタート。(唐突)

 

 すぐに飛ばせないオープニングが流れるので、その間に本RTAの説明をば。

 

 今も各ルートの開拓や先駆者兄貴たちがタイムを更新しているなかで、今回やるのは『学園ヒーロー』という称号およびエンディング獲得を最速で目指していきたいと思います。

 原作でもゆきちゃんが言っていた奴ですねぇ~。それを主人公に体現してもらうルートが『学園ヒーロー』になります。

 

 先に言っておきますと、これは称号およびエンディングは厳密には別になります。

 エンディングの方は普通に学園生活部としてやっていけば見られるでしょう。ただ、要介護者と名高いめぐねえの生存が必要不可欠となっております。

 なんで、すぐ自己犠牲に走るんですかねぇ?(56敗)

 

 そして、称号の方は学園生活部のメンバーは勿論のこと、そこにチョーカー姉貴こと柚村(ゆずむら)貴依(たかえ)、太郎丸を含む計六人と一匹を卒業まで導けば獲得できます。

 残念ながら、祠堂(しどう)(けい)と覚醒素材こと先輩は含みません。

 覚醒素材は単純にOBですし、くるみにはゴリラになってもらいたいですし、おすし。

 

 圭に関して行けないこともないですが、RTA的にはロスなのと、蛇足となってしまうので無理です。

 学園ヒーローだからね、仕方ないね。(なお、みーくんを救うためにショッピングモールには向かう模様) 

 

 それと、気がついた方もいると思いますが、称号獲得のための条件に主人公は含まれておりません。

 ええ、はい。主人公には恐縮ですが死んでもらいます。というか、死んで貰わないと獲得できません。

 そこは、始まってからおいおい説明致します。みんな、ヒロインたちの泣き顔は好きダルルォ!?

 

 

 おっ、オープニングが終わってキャラクリ画面が見えてますね。

 性別はステータスが平均的に高い男性を選びます。男性ならば高確率で運動部に所属している可能性が高く、所属している部によってステータス向上も見込めますし、戦闘技能(スキル)も手に入れることができます。

 

 名前は『本城(ほんじょう)幹久(もとひさ)』。略してホモくんですね。当たり前だよなぁ?

 これだけ決めたらさっさと決定ボタンを押して、始めましょう。

 かーらーのー、暗転とロードが始まりますので、まだ始まりません。

 

 あっ、そうだ(唐突)。言い忘れていましたが、俗にいう幼馴染みシステムは採用しております。

 それ、RTAにいるぅ? ガバらない? と思ったそこのアナタ。

 確かに、好感度ガバが多くなって各ルートに進行してしまうことも多々あります。

 

 だが、しかーし! 私のチャートにガバるという単語は存在しません!

 故に、幼馴染みシステムは私にとってはステータス向上、技能獲得、初期好感度上昇などなど……メリットしかないです、はい。(ドヤ顔)

 

 それに加えて、今回のルートは誰が幼馴染みでも問題ないという強みがあるんですよ。(問題がないとは言ってない)

 まさに突き入れる穴(・・・・・・)がない──っと、始まりましたね。

 

 どうやら、学校内のようです。

 グラウンド、もしくは体育館近くならばくるみで、屋上であればりーさん、教室ならばチョーカー姉貴ですね。

 二週目以降から外になる可能性もあるそうです。場合によっては大学編の方々たちと一緒になることも、あるとかないとか。

 ゆきちゃんはどこでも沸きます。

 

 そして、今回は校舎内のどこかの廊下なので恐らくゆきちゃんでしょう。

 

「──あら? もとく……んんっ、本城くん。こんなところで何してるの?」

 

 ……ファッ!? なんで!? なんで、めぐねえが!?

 いや、もちつけ。餅をついて素数を数えましょう。

 ニイ! サン! オッケェー!

 

 ふぅ……恐らく、ゆきちゃんが来る前のフラグか何かでしょう。

 教師と生徒が幼馴染みとか妄想がはかど、ゲフンッゲフン……いや、あり得ませんからね。

 

「もうっ、めぐねえじゃなくて佐倉先生です! 少なくとも学校ではそう言うように約束したでしょう?」

 

 あんれぇー? おかしいぞ?

 今この場面でステータス画面を開くのはRTA的にアウトですが、致し方ありません。関係性を確認しておきましょう。

 …………ほほぉ、どうやらホモくんとめぐねえは従姉弟のようですね。ホモくんにとっては本当の姉のような存在みたいです。

 へぇ、こんなこともあるんですね。私は初めてなりました。後でWikiを確認しておきます。

 

 ……えぇ、何それ。チャートが崩れるんですけど? しかも、周知の事実というわけでも無いという。

 それにより、周囲の生徒たちの好感度は変わらないようです。勿論、原作キャラたちも同じです。

 そして、幼馴染みシステムで最も大事と言われている技能も貰えないという……ああもう、辞めたら? 現国の教師。

 

 はぁ~、コレわぁ、リセ案件ですわ。ここリセットポイントじゃないんだけどなぁ~。

 

 この時点で何かしらの技能も無いのであれば、アウトブレイク後がキツくなります。

 特に、ショッピングモールなどの時に苦戦するハメになります。RTA的にはそれは避けたいですね。

 

 ええ、申し訳ございませんが、リセット──しません。

 あえて、続行します。ちょっとこのめぐねえは初めてなので。

 寧ろ、本番で来られたら大変ですので、試走ということにして続行します。

 

 本番で来たときのために、今後の展開がどうなるか結果をちゃんと記録しておきましょう(向上心のある走者の鑑)。

 

「うん? ああ、私はこれから丈槍さんの補習なの。本城くんもあまり遅くまで残ってちゃダメよ」

 

 ここは素直に頷いておきましょう。

 ちなみにホモくんは剣道部みたいですね。今日は体育館を他の部活に取られているため、休みだそうです。

 

 技能は『摺足』と『剣術』ですね。

 剣術は長物などを使うときに火力を大幅に上げるのと、スタミナの消費を抑えてくれる優れものです。

 ただ、序盤に武器となる長物が大体は掃除道具などの柄になるので、くるみほど火力は期待できません。

 ショッピングモール等でそれらしい物を手に入れないと真価を発揮しませんね。

 『摺足』は隠密系ですね。かれらをアサシネイトする際に役立ちます。

 

 さてと、ホモくんをこれから操作していきますが、帰るわけにはいきません。帰ったら、文字通り帰らぬ人となってしまいます。

 なので、今からすることは、アウトブレイクに備えての各階層のロッカーチェックですね。

 これによって、この後に発生するアウトブレイク時にAIが勝手に認識して、すぐさま武器を入手することができます。物が何処にあるか確認するのが大事って、それ一番言われてるから。

 

 あと、このとき周囲の反応で見た目の良し悪しがわかります。

 プレイヤーからすればどれも美形ですが、ゲームの中はちゃんと区別されているので、初めてやる人は注意しましょう。(2敗&大事なことなので二回目)

 

 ……ふぅーん、ホモくんはどうやらイケメンの分類に入るみたいですね。ちょっとした行動でも女子生徒が声をかけてきています。

 ただ、RTA的にはロスなのと、ホモなので無視だよ、無視。

 

 一階のロッカーにはめぼしいものはありませんでしたね。じゃあ、次は二階に行きましょう。動けってんだよ!(豹変)

 

 はい、着きましたね。では、ごまだれー……はい、変わらず掃除道具だけです。

 基本的にはそーふなどの掃除道具が入っているのですが、偶にそれ以外のものも入っていたりすることがあります。

 まあ、今回はありませんでしたね。偶にですから、入っていないことが当たり前です。(震え声)

 

「きゃあぁぁぁぁっっ!!」

 

 おっ、始まりましたね。ここでチキンセーブを挟みましょう。

 ……いや、もうRTAでは無くなったので、しなくてもいいです。

 大体、一階のロッカーから調べていけば、三階を調べきった際に始まるように時間を調整されております。

 

 運営側がこの時間でやれることをしとけよ、って暗に指示しているんですよね。

 まあ、初見でわかるわけねぇだろ、って話なんですが。

 

 さあ、ここからが本番です。プレイヤースキルの見せどころさんでもあるので、見とけよ見とけよー。

 阿鼻叫喚が目の前に広がっていて、ホモくんが恐慌状態寸前ですが、その尻をヌッ叩いてロッカーまで移動させましょう。

 

 その中にある、そーふという名のモップを逆さに持って構えさせます。房糸が付いている方で構えさせてはいけません。(1敗)

 後はくるみことゴリラが覚醒素材を運んでくるので、それまでこの場を凌ぎましょう。

 

 オラッ! ジュウなんて捨ててかかってこい!

 怖いかこのクソッタレめ!

 けっ、アバズレが。

 おまえは最後に殺すと約束したな? あれは──

 

「ッ! 本城! 何やってんだよ!?」

 

 来ましたね。さっさとくるみを屋上へと向かわせましょう。

 成人近い男性を背負ってここまで来れるとか、やっぱゴリラだな。(確信)

 

「っ、……ごめんっ!」

 

 ここまでの戦闘はいわゆるチュートリアルです。このとき、やられそうになると原作キャラの誰かしらが強制的に屋上まで運んでくれます。

 つまり、ここからは普通にガメオベラとなるので気を引き締めていきましょう。

 

 後、初日は戦闘による経験値が稼げません。

 アウトブレイクした初日は所謂、無限湧きなんですが過去にそこで馬鹿みたいに稼いだ兄貴が居まして……お察しの通り運営側がアップデートという名の罰則をしました。

 故に、ここで経験値を稼ごうとしても薄味以前に無味となります。

 

 じゃけん、ここは大人しくチクチクやっておきましょうね~。

 チョーカー姉貴は……いませんね。この場にいないということはどこかのトイレに引き籠もっているのでしょう。

 システム上、一日か二日は大丈夫なので安心して、後で助けに行けます。

 

 ……よし、そろそろフェーズ2に移行します。

 先ほど、ホモくんは初めて人を殺したので、SAN値がヤバイところまで減っています。

 そうなると、罪悪感や混沌とした環境下から『恐慌状態』という行動を制限するデバフがかかります。

 

 おっ、それとプラスしてホモくんの脳内でエンドルフィンがドバーしてますね。

 興奮と昂揚……まあ、アレです。最高にハイッ! て奴です。

 戦闘終了後は体力という概念が吹き飛びますが、戦闘が継続している限り体力が減らない状態ですね。

 

 うーん、これもそうそう起こるモノじゃ無いんだけどなぁ~。まあ、ええやろ、

 しかし、これで問題ありません。寧ろ、敢えてこうしました。

 

 そして、ここが最大の難所の一つでもあり、最初のリセットポイントでもあります。

 

 今回、ホモくんには噛まれてもらいます。

 

 はぁ? 何言ってんだコイツ? と思うかもしれませんが、かれら化してもらう必要があるんです。

 まあ、厳密に言えば『かれら』ではありません。『適応者』といった分類のナニカになってもらいます。

 

 この作品に限らず、似たような作品にはお約束事のようにそういったシステムが存在しています。

 所謂、生体兵器(B.O.W.)の先駆けですね。

 極まれにウイルスに適合するんですよ。確率的にもそう多くありませんが、天文学的なものではないので十分可能性はあります。(88敗)

 寧ろ、ホモくんといったオリジナルキャラクターほどなりやすい傾向にあったりするとか。運営が黒幕だった……?

 

 この『適応者』になると、全ステータスが日を追うごとに上昇していき、最終的には上限が伸びていきます。

 後半まで行けば、かれらの頭部を握りつぶす握力、屋上まで跳び上がれるほどの跳躍力、車にも追いつける脚力、骨折も半日で治る回復力などなど……どこぞのアメコミヒーロー顔負けの化物になれます。

 

 後、技能で『アンロック』というものも得ることができます。

 これは、自身で身体のリミッターをオンオフ出来るスイッチのようなものです。

 それによって、超人も超人、スーパー野菜人になれます。(なれるとはいってない)

 

 たかし……失礼、噛みました。

 ただし、時間が経てばたつほどホモくんの自我が薄れていきます。加えて、想像も絶する飢餓に苛まれますが、それはどうにかなります。肉ならそこら中にあるからね。

 

 自我が薄れる、イコール、かれらと同類になります。寧ろ、同類より厄介な存在になるでしょう。

 最終的にはスタぁーズぅー、とか言いながら学園生活部のメンバーを襲うようになっちゃうんですよ。

 なので、ホモくんには最終的に火に巻かれて死んでもらう必要がありんす。

 

 ……と、まあ長ったらしく説明しましたが、コレ、もう試走なんだよなぁ。

 まあ、気を取り直して、ホモくんをかれらに一歩近づけるために物理的にも近づいて貰いましょう。そうなると、対抗フェーズが始まります。

 

 ここで恐慌状態が付いていないと運動部ならば対抗フェーズが発動しませんので注意。

 動きがノロイかれらに対して、腐っても運動部ならば回避できちゃうんですよね~。

 それと、深手を負うようなモノでもいけません。場合によっては、そのままアニメ版の太郎丸のように衰弱死してしまいます。

 なので、ホモくんにはかれらが甘噛みしてくれる程度の抵抗をさせましょう。

 

 

 へへへへ……そーふも必要ねぇや。へへへへ、誰がテメェなんか……テメェなんか恐かねぇ!!

 

 ──野郎、ぶっころしてやぁぁぁぁぁ!!

 

 ……えっ、いや、ちょ、複数はらめェ! なんでぇ!? なんでよっ!? そうならないように位置取りしたじゃん!?

 

 おまっ、……隠れてんじゃねぇぇぇぇぇ!!?

 

 あわ、あわわっ。ど、どうしよう!? いや、待て。

 ここを……こうして、こうするじゃろ? そうするとこうなって……こうなるんじゃ。

 

 ──やべぇ、状況が悪化した。

 

 くそっ、HA・NA・SE☆! こうなればゴリ押しじゃあぁ! 元、脳筋プレイヤーをなめんなよぉ!?

 

 オラオラオラオラオラッ!! ……よしっ! さあ、バッチェ来い! 噛めオラァ!

 

「──もとくんっ!!」

 

 め、めぐねえ!? なんでぇ!? もう屋上組が降りてくるはず無いじゃん!?

 初日はもう屋上から出てこないのに……てか、要介護者(めぐねえ)を守りながら甘噛みとか無理じゃない!?

 

 ……なっ、なにィー!? あの悪質なタックルはッ!?

 

 あっ、ええい、離さんかい!! テメェはそのまま逃げんかい!

 

「ダメっ! 絶対っ! ほら、早く!!」

 

 えっ、ちょ、強っ!? 力強くない!? ゆきちゃんに次いで弱小キャラのクセしてツヨない!?

 

 あ、待って、お願い! 先っちょ、先っちょだけでいいから! 

 

 

 ちょっと軽く噛んでくれるだけでいいからぁぁぁぁぁ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………ええ、はい。現在、屋上にて無傷のまま生還しております。

 まぁ、好感度以外のガバは起きるって言ったし(言ってない)、何とかなるやろ。

 

 嘘です。(手のひらくるー)先ほど言った適合者ルートでなければ相当キツいです。

 そもそも、適合者ルートでなければこの近くにいる太郎丸を救うのが困難になります。

 

 あの子、割と簡単に捕まっちゃうんですよねぇ……。そこに、ある程度戦えるホモくんがいないと原作同様、ゆきちゃんの目の前でブシャー案件になります。

 全員に精神的ダメージを与える上に、終盤において各キャラの生存確率が大幅にダウンしてしまいます。

 理由として、太郎丸が生きていると、アニメ版のように原作キャラの窮地を救ってくれる優秀なお助けキャラに様変わりするんですよ。

 

 つまり、称号獲得のためにも太郎丸の生存は必須です。それを確実とするための適合者ルートなんですが……ええ、見ての通り破綻してしまいました。

 まあ、ある程度流れは掴めましたし、チャートの改善点なども見えたので、良しとしましょう。

 

 試走はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 

 あ、今回のめぐねえってどうなるんでしょうね? ちょっと進めて────

 

 

 

 

 

 

 

 § § §

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 胸の内にある不安を押し殺しながらも、現代国文の教師である佐倉(さくら)(めぐみ)は補習を受けていた生徒、丈槍(たけや)由紀(ゆき)と共に屋上へと向かった。

 本来なら閉まっているはずの屋上に続く扉を開き、様子を伺うようにして覗き込む由紀が言う。

 

「鍵、空いていたね」

 

「あ、すいません」

 

 その声と開ける音に反応したのか、こちらにむかって声がかかる。

 

「また、閉め忘れていました。鍵掛けて貰えますか?」

 

 日の沈む直前の赤い光に照らされて見える一人の女子生徒。

 首に掛かるタオルと手にした軍手、そして、右手にある如雨露から彼女が園芸部の子だと慈は察する。

 

「わぁー、すごーい!」

 

 由紀は目の前に広がる屋上のプランターに植えられた食用の植物を見て感嘆の声を上げる。

 太陽に向かって伸びるように育つ多種類の植物は、夕日の光に照らされてキラキラと輝いて見えた。

 

「あ、園芸部の人ですか?」

 

「ええ、見ての通りよ。アナタは見学かしら?」

 

「はい! トマトすっごく美味しそうだね!」

 

「食べたい?」

 

「いいの!?」

 

 二人の微笑ましいやりとりを見ながらも、慈は先ほど母から送られてきた不安を煽るメールを確認する。

 

悠里(ゆうり)さんは、いっつも一人で菜園の手入れをしてるの?」

 

 水をあげながら、ふと疑問に思った由紀が彼女、若狭(わかさ)悠里(ゆうり)に問いかける。

 それに、悠里は立ち上がり首を横に振りながら否定した。

 

「ううん、今日はどうしてか、誰も来ないのよね」

 

 そのやりとりの裏で、慈は母に電話を掛けていたが、その心配性の母が一向に電話に出る気配が無い。

 不安に駆られ、その連絡先の一覧からまた新たに電話を掛けるべく、その名前の欄をタップする。

 

 プルルルッ、と聞き慣れた電子音。しかし、それが途切れること無く、慈の鼓膜を同じ音がずっと揺らし続ける。

 

「もとくんも出ない……どうして?」

 

 本城(ほんじょう)幹久(もとひさ)。母の妹の子供であり、弟のように可愛がっていた従弟の愛称を口にして、慈は生唾を飲み込む。

 

 形容しがたい不安と焦燥が慈の身を蝕んでいくのを感じながら、今一度電話を掛けようとしたその時。

 

 手に持つスマホが揺れ動き、着信を示す音を鳴らす。

 ディスプレイに映った名前は同僚であり、先輩でもある神山先生。

 慈は躊躇いも無くその電話に出た。

 

「もしも──」

 

『──大丈夫っ!? 佐倉さん、今どこに居るの!?』

 

 

 ドンドンドンッ!!

 

 

「ッ!?」

 

 その突如、力強く叩かれる屋上の扉。

 力強さや何度も連続で叩く音から、その人物の焦燥が伝わってきて、今の状況がただ事ではないことを顕著にしていた。

 

「何だろう?」

 

「ほかの当番の子かしら?」

 

 それに対して暢気とも取れる発言をする由紀と悠里。しかし、それは状況を分かっていないからだ。

 ただ、そんな二人の言葉が自身のこの不安も勘違いかもしれないという風に思わせてくれる。

 

「はーい、今開けるよー」

 

 だが、そんな淡い期待もスマホから聞こえてきた神山の声でかき消された。

 

『屋上!? なら鍵を締めて、絶対誰も入れないで!! 職員室は──』

 

 切羽詰まった声が途切れ、代わりに聞こえてきたガラスが割れる音と悲鳴。

 それで理解した慈は恐る恐る扉の方を向く。

 

 そして、扉を開けようと駆け寄る由紀に制止の声をかけた。

 

「待って!」

 

「……めぐねえ? でも、開けてあげないと」

 

 言葉が出ない。もしかしたら、という思いが言葉を詰まらせる。

 

「誰か! お願い、開けてっ!」

 

 その時、扉を叩いていた主であろう声が聞こえた。

 聞き覚えのある声。最も厳密に言えば先ほど聞いた声だ。

 慈は急いで鍵を外し、扉を開く。

 

恵飛須沢(えびすざわ)さんっ!?」

 

 開ければ予想通りの人物がいた。しかし、その背には血の滲む運動着を着た男子。

 

「早く! 鍵を掛けて!」

 

 息も絶え絶えになりながら焦燥に任せた言いよう。やはり、どう考えてもただ事ではない。

 

「何が、あったの……?」

 

「酷い怪我……っ! 早く保健室につれて行かないと!」

 

 しかし、悠里の倫理的な言葉は彼女、恵飛須沢(えびすざわ)胡桃(くるみ)の言葉で断ち切られる。

 

「下はダメだ! 下は……もうダメなんだ……」

 

 諦観に尽きたように呟く胡桃。

 

「なに、あれ……?」

 

 それと同時に聞こえてきたのは恐怖に震えた由紀の声だった。

 屋上の手すりに掴まりグラウンドを見下ろす由紀。それに釣られ慈もグラウンドを見る。

 

 そして、後悔した。

 

「急に、みんな……あんな感じになって……すぐ陸上部も巻き込まれて、先輩が……」

 

 人が人を襲っている。

 生徒が生徒を襲って、食べているようにも見える。

 

「そしたら、本城が三階であいつらと戦ってて……私、アイツに言われたまま逃げてっ! ……わ、私は……っ!」

 

 震えた両手で胡桃は顔を覆う。その言葉通り受け取れば彼女は恐らく本城という生徒を見捨てたのかもしれない。

 

 ……本城?

 

「っ、本城! 本城幹久ですかっ!? 恵比須沢さん!!?」

 

 危機迫る勢いで胡桃に詰め寄る慈。

 胡桃は見たことも無い様子の慈に驚きながらも、首を縦に振った。

 

「め、めぐねえっ!?」

 

「佐倉先生!?」

 

 背後から聞こえる由紀と悠里の声。しかし、その声に反応している暇は無い。

 慈は振り返ることも、言葉を返すこともなく、気がつけば扉の方に走っていた。

 

 その行動は先生、いや、大人として失格だろう。

 今のところ唯一の安全地帯とも言える屋上の扉を私情で開き、ここにいる全員を危険に晒したのだ。

 大人という括りでは収まらない。人として最低だ。

 

 でも、それでも慈は動いた。なぜか勝手に身体が動いた。

 

「──もとくんっ!!」

 

「っ! めぐ、ねえ!?」

 

 階段を降りた先に彼はいた。

 

 臓腑が転がった血まみれの廊下。吐き気を催す死臭。未だに鳴り止まない悲鳴と怒号。

 そんな中で、彼は血塗られた状態で『かれら』と対峙していた。

 かれらの首元に腕を当てて防いではいるものの、状況としては今にも噛み付かれそうになっている。

 信じられない光景を目にしながらも、慈の目には彼がしっかりと映っていた。

 

 恐怖に震える身体を制して、一歩足を踏み出す。

 

「──来るな!! めぐねえ、来ちゃダメだ! そのまま屋上にッ!!」

 

 それと同時に聞いたことも無い彼の鋭い怒声。彼は自分自身が死への恐怖に震えながらも自分を守ろうと行動していた。

 その姿はまるで──

 

 服の裾を握りしめる。恐怖で頭がおかしくなりそうな状態で、慈は突き動かされるままに行動した。

 

「っ!」

 

 噛み付こうとしている生徒だった存在に身体ごと当たる。

 横合いからの衝撃にその生徒だった存在は簡単に倒れた。

 

「めぐねえ! 逃げろ! 俺はいいから!」

 

「ダメっ! 絶対にっ! ほら、早く!!」

 

 尚も戦おうとする彼の手首を掴んで、引きずるように屋上へと続く階段を上がる。

 背中に虫が這いずるような感覚を背後から受けながらも、何とか屋上の扉へとたどり着き、幸いまだ空いていた扉に転がりこんで直ぐさま閉めた。

 

「めぐねえっ!!」

 

 扉を背にして座り混み、両肩を上下させる自分の首元に抱きつく一人の小柄な少女。

 嗚咽を耳元で鳴らし、抱きしめる腕の力が増していく。

 その背を弱々しいながらも摩るようにすれば、やっと安堵の気持ちが込み上げてきた。

 

 彼女越しに横を見れば、彼も頭を垂れて呼吸を整えようとしている。

 その腕は見て分かるほど震えており、どれほどの恐怖を味わったのか、嫌でも理解させていた。

 

 正面を向けば、混乱と恐怖に表情を染めた二人の女子生徒の姿。

 その片方は頬に血が付いており、側には血を流す男子とスコップが転がっていた。

 

「先生、学校も、外も、これからどうしたら……先生? 先生!」

 

 ああ、何ということだろう。今日は……。

 

 今日というこの日は、最悪の日常の始まりなのだろうか。

 

 

 

 

 




 実際に書いてみて分かりました。これは、無理。

 更新されないから自分が書こう、などと意気込んで開始そうそうに超えられない壁に阻まれる現実。

 チャートという名の構成、原作をゲームと見立てるための設定、RTAパートと小説パートのすり合わせ、差別化を図るための工夫......上げれば枚挙に暇がないでしょう。
 淫夢ネタに関しても詳しく無いことから、コマンドーネタで代用していますし。

 RTA、小説、どちらも知識不足でした。数多くの先駆者様たちの作品を参考にしたにも関わらずこの低クオリティーです。

 ただ、書いていて楽しかったです。そこに関してはまだ意欲があり、心も折れておりません。

 皆様の知恵を少しだけ著者に頂ければという打算があって、この拙い作品を投稿させていただきました。

 故に、試走という形にしております。
 厚かましい願いと思っていますが、どうかよろしくお願いします。


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