【試走】がっこうぐらし! RTA 学園ヒーロールート【完結】   作:haku sen

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感想、評価並びに誤字脱字報告ありがとうございます。

ここで重大なお知らせです。ぶっちゃけ、今回が本編的には最終回となりますので、初投稿です。

何とか慌ただしくなる前に投稿できた……。





Part10 生者の行進

 

 

 怪しげな空模様の下でお送りする実況プレイはーじーまるーよー。

 

 おはようございます。(真面目)

 

 うーん、やはり全然回復しませんでしたね。夜更かししたのも原因ですが。

 まあ、いつも通りと言えばそうですし、回復したとしても高が知れています。

 

 さて、朝起きたら何時ものルーティン(コーヒー)をしつつ、皆様、窓をご覧下さい。

 

「一雨、来そうね」

 

 Exactly(そのとおりでございます)。まあ、午後から降る予定ですが。

 

 はい、遂に来ました最大最悪の雨の日。条件次第では高校編にて一番の難易度を誇ります。

 一応、その条件には満たしていないものの、ホモくんの弱体化の影響でそれに近しい難易度にはなっている模様。

 

 そして、勝利条件は一定時間経った後に放送を流すことのみです。

 あと勝利とは言えませんが、誰か一人犠牲になることで『かれら』を退けることもできます。

 

 勿論、そんなことをすれば目的の称号も取れませんし、通常プレイにおいても大打撃を食らうはめになるでしょう。

 

 つまり、如何に下校促す校内放送まで時間を稼ぐことが出来るかが勝利の鍵となります。

 放送に関しては『かれら』の生態について第二段階まで理解しているので、めぐねえ辺りが思い付いてくれるでしょう。

 

 場合によっては外で時間を稼ぐはめになりますが、今のホモくんならば何とか保つはずです。

 なので、今回やるべきことは最初にバリケードと各種武器の点検……くらいですかね。

 

 ぶっちゃけ、雨の日がヤバイと分かっているのはプレイヤーだけですから、操作しているホモくんをあれこれ誘導は出来ても、その肝心のホモくんは何も分かっていません。

 

 故に、対策がコレだけしか出来ないんですよ。二回目以降ならばともかく、今回は初めてですから。

 

 では、方針も固めたところで動きましょう。平和ボケした面を晒しているホモくんを動かします。

 

 バリケードの方は……特に問題なさそうですね。昨夜に仕事した甲斐もあって、殆ど無傷です。

 後は足止め用にボール等があれば良かったんですが、今回は見つかりませんでした。まあ、これも運なので仕方ありません。

 

 武器の方は……うーん、何とも言えませんね。保つには保つでしょうが、ギリギリ壊れるかもしれない……そんな曖昧な耐久値ですね。祈りましょう。

 

 くるみちゃんのシャベルは不壊属性(デュランダル)神造兵装(公式チート)ですので気にしなくて大丈夫です。

 

 はい、もうやれることがありません。後は本当に座して待つしか取れる行動が無いです。

 

 とはいえ、元々事故率も大変多く、ここで誰かしら脱落してしまったプレイヤーも数多くいるでしょう。

 仕様とはいえ、この事前の準備が殆ど出来ないのも難易度を上げている一つの要因だと思います。

 

 後はもう本当に祈りましょう。数多くあるファンブルもそうですが、屑運を引かないことにも祈ります。

 

「あ、洗濯物!」

 

 あ、武器! 

 

 そうでした。バリケード前にて防衛線を張るのでくるみちゃん以外の武器が必要です。

 めぐねえは枝切り鋏はあったはずなのでいらないとして、ゆきちゃん、りーさん、チョーカー姉貴は……仕方ありません、床ホウキや懐かしきそーふと言った初期装備で行きます。

 

 隙間から『かれら』を棒のようなもので押し出せば、時間稼ぎは出来ますので十分でしょう。

 

「──ちょっと、待って……何か変な音がしないか?」

 

 おっ、流石くるみちゃん。どうやら気がついたみたいですね。

 

 生徒会室の扉をそっと開いて様子を見ると、そこにはB級ホラー映画さながらの量がバリケードに押し寄せていました。 

 いや、これはB級ホラーよりも多いですね。コストかかってんなー。

 

 ──んなこと言ってる場合じゃねぇ!? コイツはヤベぇぞ!

 

 ちょ、想像を遙かに超える量なんですけど!? ここでこんな量が出てくるなんて、ある意味運が良いですね!

 

 今ならガチャ運も良さげな気がする! 絶対に入っていない木刀とかも入ってる気がするぅっ!

 ごまだれー……ですよねー!! はい、三人ともコレ持って、握って、押しのけて!

 

「おい! こっちヤバイぞ!」

 

 ああ、マジか。マジなのか! ゆきちゃん、チョーカー姉貴は職員室側見てきて!  

 りーさんとくるみちゃんは中央階段! 私とめぐねえは教室側!

 

 ぬわああぁぁぁっ!! ここで時間を稼げなかったらヤバイ!

 仮にホモくんが残って時間稼ぎしても、ギリギリ間に合わなくなっちゃうぅぅぅ!?

 

 頑張れ頑張れできるできる絶対できる頑張れもっとやれるって!

 気持ちの問題だ頑張れ頑張れそこだ!

 そこで諦めるな絶対に頑張れ積極的にポジティブに頑張る!

 北京(?)だって頑張ってるんだから!

 

「──階段はもう無理だッ!!」

 

 諦めんなよ! 諦めんな、お前!!

 どうしてそこでやめるんだ、そこで!!

 ダメダメダメ! 諦めたら! あと、ちょ──

 

「──本城!!」

 

 あはぁーん。

 

 チョーカー姉貴たちも早くない!? てか、ここもヤバイ! 決壊する!?

 

「めぐねえ!」

 

「あっ」

 

 やばっ! 間に合うかっ!? ──うわっ、めっちゃ減った! くっそ体力持ってかれた! てか、いい加減に離れてよっ! 変態めっ!

 

「も、とくん……?」

 

 やっぱり、要介護者の名は伊達じゃなかったぜ。いやぁ、今のは本当に危なかったですね。何とかホモくんシールドでめぐねえは無事です。

 

 さあ、さっさと放送室へ行きましょう。まだ大丈夫! まだ挽回の余地はあります!(STAP細胞並感)

 

「本、城……っ!?」

 

 何でチョーカー姉貴がショックを受けているんですかね?(半ギレ)

 

 めぐねえといい、チョーカー姉貴といい、何なのもうっ!? てか、志村うしろぉー!?

 

「──グゥッ! わんっ!」

 

 た、太郎丸ー!? ナイスゥ!! 最高かよっ! ついでに、私も助けてくれませんかね?

 

「太郎丸!」

 

 テメェ、コラ! お菓子をくれてやった恩を忘れたか!?

 

 いや、もういいです! そのまま、めぐねえをそっち側へそぉい!

 

 早く放送してっ! どうなっても知らんぞ! ホモくんがなっ!

 

「幹久!!」

 

 馬鹿野郎お前俺は勝つぞお前!! 俺に勝とう──やっぱ、無理っ!?

 

 と、取り敢えず大半は釣れましたが、流石にこの囲まれた状況は不味いですねぇ!

 

 切り抜けるには、ちょっとした小技をするしかありません。先ほどのように噛み付かれた場合に限って、振り払うことができます。

 

 その時の無敵時間を使って、そのまますり抜けるというちょっとした小技があるんです。

 

 でも、体力的にちょーギリギリなんですよね。場合によってはそのまま、群がられて飲み込まれます。

 ……ぬぅ、イチかバチかですが、もうそれしかありません!

 

 さあ、目指すは層が薄い場所! そこに突撃し、振り払いモーション時の無敵時間を利用して切り抜けます。

 

 持ってくれよっ、ホモくんの身体……っ! いづっ!? 離してぇ!! よし、そのまま抜け──あぶっ、あぶねぇ!? 

 

 へっ、リュックサックぐらいくれてやるよっ!

 

 ……ふぅ、何とか死なずに囲いから抜けられました。噛まれた後、また掴まれたのは焦りましたが、何とかなりましたね。

 

 後は念のために放送室から『かれら』を離しつつ、地下へ向かいましょう。

 

 ああ、もう画面真っ赤。これ大丈夫かなぁ……うーん、大分ギリギリですが、何とか地下までは来られました。

 

 もう全てがギリギリですね。弱体化してなかったら、もうちょっと余裕があったんですけど。

 

 取り敢えず、ここら辺に……お、あったあった。抗ウイルス剤です。それを素人とは思えないモーションで自身に注入します。

 

 これ、他のキャラにも言えることですが、明らかに訓練を受けた後みたいな……何度もやったことがある風に手慣れている感が半端ないんですよねぇ……。

 

 まあ、そんなことはどうでもいいんですよ。

 

 本当は死ぬ運命にあるホモくんには使いたく無かったですね。仕方ないとはいえ、一度は噛まれても大丈夫というアドバンデージをここで失うのは大きいです。

 

 ──むっ、むむっ……どうやらホモくん、間に合わなかったみたいです。

 

 体力的にギリギリでしたから、いくら『かれら』化しなくとも傷が深ければ、意味ないですからね。まさか、アニメ版の太郎丸にホモくんがなるとは。

 

 はぁ、本当に全てがガバガバの参考動画にすらならない駄作でしたね。

 ただ、お陰様で随分と勉強になりましたし、研究も進められたなと思います。これらは全て視聴者様たちのお陰です。

 

 そして、先駆者兄貴たちの偉大さと、後続に続く新たな兄貴たちに感謝と応援の言葉を──ん? んん~?

 

 あっ、これ適応していますね。精神的デバフが消え去り、ステータスの上限が振り切れているのが何よりも証拠です。

 

 ただ、もうホモくんの体力が回復に追いつきそうに無いんだよなぁ~。しかも、これじゃあ介錯エンドも無いじゃん。

 いや、まあ仮にこのまま続いていたら、恐らくめぐねえ的な立場になるでしょうから、死んでおいて正解でしょうね。抗ウイルス剤無いし。

 

 はぁ……最後の最後でも変な運を引くのは走者としての運命(さだめ)なのかも知れませんねぇ……。

 

 というわけで淡い期待も消えゆくなか、申し訳ない程度の試走した感想ですが────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 § § §

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ダメだっ、めぐねえ!!」

 

「いや、離してっ!! まだ、もとくんが外にッ!?」

 

「本城はっ……! もう、本城は無理だ!」

 

 手を伸ばす先には誰もいない。そこにあるのは閉じられた扉だけ。

 だが、慈は閉じていく瞬間にまだ幹久が──否、自分のせいで残った幹久の姿をハッキリと捉えていた。

 

 左右から抑えられているのに、慈は尚も手を伸ばし続け、果てには扉の向こう側へと行こうとしている。

 

 しかし、慈を抑えている胡桃と貴依、そして由紀と悠里はハッキリとその扉の裏にいる存在を認識していた。

 

 ガリ、ガリ、と扉を引っ掻くような音と動物のような唸り声。

 

 扉を開けた先にいるのは『かれら』だ。幹久じゃない。それだけは分かる。

 

「幹久っ、なんでっ……! なんでだよっ!?」

 

 胡桃は慈を抑えながらそう叫ぶ。溢れてきたものを止めることなく、吐き出し続けた。

 

「もとくんっ! もとくんっ!!」

 

 手を伸ばす。手を伸ばし続ける。

 

 守ると誓った。この命に代えても守って見せると心に決めていた。

 

 なのに、なんで──

 

 

『──そっか。なら俺はめぐねえを守るよ。どんなことからも、俺が守る。それなら皆でハッピーエンドを迎えられる……かな?』

 

 

「──あ、ああああああぁぁぁぁぁっっ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どのくらい、時間が経ったのだろうか。

 一時間? 二時間? いや、半日以上?

 分からない。時間という概念自体を脳が理解していない。

 

 ただ、気がついたときには外の静寂とすすり泣く声だけが鼓膜を揺らしていた。

 

「……めぐ、ねえ?」

 

 赤く充血した胡桃の目と力無い言葉に返事を返さず、ふらりと立ち上がる。

 

 そして、当たり前のようにドアノブに手をかけた。

 

「先生!」

 

 悠里の切羽詰まった声が背中に突き刺さる。

 だが、突き刺さっただけ。その言葉の意味が分からない。

 

 だから、慈はごく自然に……普段取りに、扉を開いた。その先にある危険など分かっていないように。

 

「……っ」

 

 誰かの息を呑む音が聞こえる。

 廊下は酷く汚れ、人影も無く、こちらも同じく静寂が広がっていた。

 

 それに、慈は呆然として立ち尽くし、虚空を見つめていた。

 不気味なほど静寂が三階を包んでいる。あの大群は幻覚で、これまでの生活も妄想だったと言われても疑いはしない。

 

 それほどまでに、自分たちが置かれている状況が理解できていなかった。

 

「ああ……皆で、また掃除しないとね」

 

「……は? めぐ、ねえ?」

 

 胡桃たちは慈が何を言っているのか理解できなかった。

 

 この光景を見て、思ったことが掃除?

 

「先生……何、言ってんの? 掃除なんてどうでもいいじゃん! アイツが……っ! 本、城がぁ……!」

 

 貴依が声を荒上げ、その名前を口にし、言葉を詰まらせる。

 それは、詰まらせるというより言葉が嗚咽に変わったように思えた。

 

 悲しくて、信じられなくて、心から溢れた涙がまた流れ始める。

 

 涙が止まらない。先ほど枯れるほど流したというのに、まだ溢れ出てくる涙が信じられない。

 

「貴依ちゃん……」

 

 由紀が側に寄り添い、慰めるように背中を摩るが、その手は震えており、彼女の頬にも同じものが流れていた。

 それを見て、慈は何を思ったのか覚束ない足取りで前へ歩き出した。

 

「先生! 佐倉先生! っ、くるみ……?」

 

 止めようとした悠里を胡桃が手で制止する。首を横に振り、慈の背中を見ながら言った。

 

「今は、そっとしておこう。私、も……ちょっと時間がほしい」

 

「くるみ……」

 

 込み上げてくるものがある。

 貴依の言葉と涙で理解し、また認識して、現実を見て、それを否定したいかのように涙で視界をぼやけさせる。

 

 悠里もまた同じだった。

 下を向き、手を震わせ、床に落ちる滴をただ見送って……そして、彼女たちは慈の後を付いていった。

 

 また、静寂とすすり泣く声だけがその世界を占める。

 だが、それもすぐ終わる。慈が止まり、彼女たちも止まり、目の前に現れたのは見慣れた扉。

 

「生徒会室……」

 

「大丈夫、きっと、大丈夫……もとくんはここにいるから」

 

 うわごとを言うように、そう思い込むように……慈はそう言って扉を開けた。

 

 扉を開けた先には何時もと変わらない姿を残した内装で、言ってしまえばこうなる前まで居た時と何一つ変わっていない。

 生活感溢れるというか、ありふれた部屋というか……本当に一つも変わっていないのだ。

 

 廊下との格差が激しすぎる。余りにも隔絶し過ぎて、頭がこんがらがる。

 だからだろうか。一瞬だけ、何時もの席に幹久が座っているように見えた。

 

 こちらに気がつき、笑みを向ける幹久の姿が薄れ、消えていく。

 

 それが、決定的だった。

 

「もと、くん……もとくん?」

 

 いない。いない。何故、いない? 

 

 何時もいた。扉を開ければ何時も彼がいた。

 いつもと変わらない笑顔を浮かべて「めぐねえ」と呼んでくれるはずだ。

 それに何時も自分はお決まりの言葉を告げて、一緒に笑い合うはずだ。

 

 なんで、どうして、私は──

 

「──先生、幹久くんはっ……もう、いないんです」

 

 分かっている。分かっているとも。

 そんな現実、自分が一番分かっている。

 だけど……だけど、どうしても信じたくなかった。

 

 そんなことは無いって、そんな現実はないって……『本城幹久』がいないって思いたくなかった。

 

 そうしないと心が保たないから。そうしないと心がきっと壊れてしまうから。

 

「ごめん、なさい。ごめんなさい……っ! みんなっ、ごめんなさい! 私が守るって言ったのにっ、私っ!! 私がっ!!!!」

 

 守ると言っておきながら守られて。

 

 今もこうして泣きじゃくって、頭ごなしに謝罪の言葉を口にして。

 

 何が先生だ。何が大人だ。何が家族だ。

 

 佐倉慈は子供どころか、身内の一人も救えないただのボンクラだ。

 

「めぐねえ……私はめぐねえに守られたよ」

 

「──えっ?」

 

「めぐねえが居たから私はここにいるんだよ?」

 

 膝を付いて泣きじゃくる慈を正面から抱きしめて、由紀はそう感謝の言葉を口にした。

 

「そう、だよ……私だってめぐねえのお陰で助かったんだ」

 

「先生、自分ばっかり責めるのはやめなよ。抱え込むのもさ」

 

「先生……私は、私たちは先生がいたからこそ、今日まで生き残れてきたんです。それは、きっと幹久くんも同じはずです」

 

 違う、それは幹久がいたからだ。胡桃も貴依も幹久が救ったではないか。

 

「めぐねえ──いつも、おつかれさま」

 

「めぐねえ、おつかれさま」

 

「先生、お疲れ様」

 

「先生、お疲れ様です」

 

「……っ、わ、私は…………────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと、ゆきちゃん。どこ行くの?」

 

「わっ──おっとっとっ!」

 

 急に呼び止められ由紀はバランスを崩し、危うく階段から転びそうになった。

 

「だ、大丈夫?」

 

「もうっ、めぐねえが急に呼ぶからー」

 

「めぐねえじゃなくて、佐倉先生でしょ?」

 

 何時ものやり取りに二人は笑う。そして、由紀は「あっ」と声を上げた。

 

「めぐねえ、貴依ちゃん見なかった?」

 

「柚村さん? それなら確か実験室にいたと思うわよ?」

 

「ありがとう! むむっ、この匂いはっ!」

 

 先ほどから廊下まで香る匂いに釣られて由紀は実験室へと向かっていく。

 慈は苦笑いを浮かべながらその駆けていく由紀を見送り、そのまま階段を上がり、屋上の扉を開いた。

 

 思わず目を細めたくなるほど眩しく暖かい太陽の光を手で遮りつつ、足を踏み出せば声が掛かってくる。

 

「あっ、先生。どうしたんです?」

 

「めぐねえ、どうしたの?」

 

 似たような言葉が違う方向から聞こえてきた。

 物陰から顔を出したのは首にタオルを巻いた悠里と、シャベルを持つ胡桃の二人。

 

「二人とも、お疲れ様。ちょっと、ね」

 

 慈が手に持つ物を見て二人は納得いったような声を上げて、そのまま作業へと戻っていった。

 

 緑が囲む道をそのまま真っ直ぐ進めば、見えてくるものがある。

 そこだけ緑が無く、代わりにあるのは不格好な十字架。

 

 勿論、そこに死体は無い。その下には何も埋まっていない。

 あるのは周りを埋め尽くす彩り豊かな花と十字架にかけられた自分のペンダントだけだ。

 

 慈はそこに新たな色の花を一輪だけ置く。そして、両手を合わせた。

 

 思い出すのは、あの日のことやその前の細やかな日常のこと。色褪せない大切な思い出の数々。

 

「──佐倉先生。あっ、す、すいません!」

 

 感傷に耽っているとき、そんな風に自分を呼ぶ声が聞こえた。

 声のする方へ振り返れば、若干申し訳なさそうにしている声の主が立っていた。

 

「いえ、別に大丈夫よ。それで、どうしたの? 直樹(なおき)さん」

 

「えっと、この辺に太郎丸を見ませんでしたか?」

 

 彼女──直樹美紀(みき)は手に持つ赤い首輪を持ったまま、困ったように訪ねてきた。

 

「あら、また首輪を外して逃げたの?」

 

「はい、随分と器用みたいで……」

 

 はあ、と疲れたようにため息を吐く美紀に慈は笑みを浮かべて、一緒に探すことを提案した。

 

「ありがとうございます、佐倉先生。あの、本当にすみません。大事な時に声をかけてしまって……」

 

「ふふっ、いいの別に。ちょうど戻ろうとしてたところだから」

 

 毎日のように来て、また思い出して、それを繰り返しているだけ。

 どちらかと言えば、冥福を祈るというより、自分を安定させるための行動とも言える。

 

「その、本城、先輩はどんな人だったんですか? 噂は知っていますが……」

 

「もとくん? うーん、一言で表すなら……天然?」

 

「て、天然? ですか……そ、それと、もとくん(・・・・)とは?」

 

「あっ、そっか。でも、ちょっと長くなるから、ご飯の時にでも話しましょうか。ほら、太郎丸も探さないとね?」

 

「あ、はい! 楽しみにしています!」

 

 彼女の反応が楽しみだ。あの時の由紀みたいな反応をするのか、それとも胡桃や悠里みたいに大方勘づいているのか。

 

 そして、彼のことを知った彼女がどういった印象を持つのか……きっと、今日も楽しい一日になる。

 彼がくれた今日も楽しく過ごせる。

 

 それが、私に出来る唯一の恩返しだと信じて、今日も生きている。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「た、太郎丸! 何処からそのリュックサック持ってきたの!?」

 

「ん? どうしたー、ゆき?」

 

 




本編は一応これで終わりです。まあ、死亡フラグを乱立させてましたし、大体二話三話あたりでこういう終わりにしようと決めてました。

ただ、まあめぐねぇを幼児退行させるか、させないか途中まで迷いましたし、最後のゆきちゃんからのお疲れ様発言はちょっと違うかなーって思ってたり。

まだ色々とありますが、また後日ある視点のものを投稿する予定ですので、それらが終わったらちゃんとした感想を的なものを投稿して、失踪──ゲフンゲフン、再走する予定です。

そして、最後のアレは番外編の伏線というか、ぶっちゃけ後日談的なもののプロローグというか。
なので、最後の方は時間が飛んでます。具体的にはショッピングモール関係は丸々カットしており、めぐねぇ生存のアニメ版的な? 風に思っていただければ。

番外編はまっちくり~。後、番外編を含めて二、三話程度は更新する予定です。

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