【試走】がっこうぐらし! RTA 学園ヒーロールート【完結】 作:haku sen
皆さんからゴーサインが出たので狂喜乱舞しながら初投稿です。
リアルタイムアタックじゃなくなったRTA(仮)はーじまーるーよー。
はい。上記の通り破綻していますが、練習兼調査という名目で続行させていただきます。ええ、ただの実況プレイです。
あっ、そうだ。(唐突)
これを完走した後に、チャートを組み直してちゃーんと『学園ヒーロー』ルートを最速で走るつもりなので──マグロ、ご期待ください。(太鼓の音)
と、ともかく、前回に続いて屋上にいるメンバーはホモくん、めぐねえ、ゆきちゃん、りーさん、くるみ、あと先輩の屍ぐらいですかね。
本来であれば、ホモくんが初日の夜にチョーカー姉貴を確保し、そのまま屋上へと放り込んだら太郎丸の確保に行く予定でした。
しかし、それが出来ない以上、大幅のロスです。本番の方で失敗しないように、ちゃんとメモしておきましょう。
・めぐねえルートはダメ、絶対。アウト。ロス。
よし。前回みたいにめぐねえらしくない行動を取られたら、堪ったものではありませんからね。
タイム的にも、心臓的にも、デメリットでしか無いです。
普通はゴリラことくるみが屋上まで上がって来たら、もう屋上から出てこないはずなのですが、何故か前回は降りてきました。
まあ、恐らくホモくんとめぐねえの関係性によるものだとは思いますが、ちょっと信じられなかったですね~。
めぐねえは確かに強かな女性ではありますが、それは終盤まで生き残ったら、という前提条件が必要になります。
少なくとも死亡する確率が二倍、三倍と跳ね上がる雨の日は乗り越えましょう。
勿論、あのSAN値直葬のマニュアルイベントをクリアしてからです。因みに私は二回ぐらいしか見たことがありません。(92敗)
それまでは、常時移動型ヒーラーでもあるゆきちゃんよりも役立たずなので、頑張って介護しましょう。
さて、現状としては日が落ちた後の真っ暗な屋上です。全員が柵を背もたれにしつつ膝を抱えてますね。前に置いた懐中電灯の光に照らされています。眩しい……眩しくない?
ええと、ホモくんは……ああ、もうスタミナゲージがこのゲームでは名物の真っ黒状態ですね。
つまり、スタミナは残っていません。この状態では走ることも、戦うこともままならない状態です。
前回言った『昂揚』の副作用ですね。もはや失神寸前です。
じゃけん、ここは大人しく寝ましょうね~。周りがうるさいですが、無視して構いません。
大体は、弱音を吐いてるか長期籠城を決め込むことの話し合いでしょう。あんなことがあった以上、彼女たちは眠れませんからね。
その中で熟睡するホモくん……やっぱりホモじゃないか!(確信)
まあ、そんな彼女たちに寄り添って、好感度を上げるのも一つの手ですが、次の日のスタミナと体力が微量にしか回復しませんので、パスします。
どうせ、ヒーローしたら勝手に好感度が上がるので、気にせず行きましょう。
あぁ^~、コンクリートが冷たいんじゃ^~。
おはようございます。(真面目)
……ん? おやぁ? 随分と回復してますねぇ。なぜでしょう?
ああ、なるほど。堅くて冷たいものが暖かく柔らかいものに変わってますね。
所謂、好感度イベントです。特定のキャラの好感度が高いと睡眠時に同性なら添い寝、異性ならば膝枕、と睡眠時の回復効果を大幅に上げてくれるものです。
このタイミングでこの好感度イベントは旨味ですね。恐らく、めぐねえだからでしょう。
ゆきちゃん、りーさん、くるみ、等の同年代による幼馴染みだと初日は絶対にこういったイベントは起きません。
プレイヤー側からだと見えませんが、彼女たちにもちゃんと精神的パラメーターはあります。
その数値が高いと精神的に余裕が無い状態を表し、高いままだと、普通は起きるはずのイベントが起きません。場合によっては狂気イベントが代わりに起きます。めぐねえならばトイレの中で発狂したりする、アレですね。
その有無は表情から察することが出来ますので、注意深く見ておきましょう。このゲーム、表情の変化に力を入れすぎだろ、と思えるぐらい凄いです。
運営が変態なのか、随分と美少女たちの絶望顔をこれでもかってぐらい見せつけてくるんですよね~。いいぞ、もっとやれ。(人間の屑)
まあ、このイベントは嬉しいですが、太郎丸がいれば毎日それと同じ効果を得られますので、無理して好感度を上げる必要もありません。
ただ好感度が異常に低いと、異性という理由を建前に別室となります。それによっては、主人公が孤独と疎外感によってデバフが掛かりますので注意しましょう。
では、目が覚めたところで校舎の中へといくいくぅ~。
単独行動は彼女らの好感度を下げることになりますが、二日目はまだ大丈夫です。それらしい理由は一杯ありますからね。
ただ、三階を確保したら自重しましょう。一番好感度が高いキャラと運命のナイロンロープで繋がれてしまいます。
そうなると、行動に制限が掛かるので面倒なことになるでしょう。紐ルートも嫌いじゃないですがね。
後、嫌われていたら繋がれるのは無機物になります。残念ながら無機物ルートはありません。(無慈悲)
っと、行く前に少量の野菜を食べましょう。野菜はものによっては水分も一緒に取れるものもあるので、全体的に微量ではありますが、回復します。ステータスに『ベジタリアン』が付いていると、効能が上がるんだとか。
……おっと、扉を塞ぐロッカーのことを忘れていました。
どかさないといけませんが、多少大きな音を立てても大丈夫です。
彼女らは先ほど寝たばかりなので、物理的に起こさないと目を覚ましません。なので、ちょっとずらしてギリギリの隙間を空けましょう。
ここで、ギリギリにして置かないと、何処からともなく湧いた『かれら』に寝込みを襲われます。なんでや。(3敗)
三階は……全然いないですね。早朝のため、まだ少ないようです。
ただ、教職員たちは朝早くから来ていることが多いため、慎重に行きます。
今回、チョーカー姉貴こと柚村貴依の確保に向かいます。職員室は時間があれば、場合によっては害となるマニュアルをどうにかしますが、無理そうならば諦めましょう。
だってホモくん、今回は普通の人なんだもん。
その場合は申し訳ないですが、めぐねえに発狂して貰います。まっ、初期好感度高いからどうにかなるっしょ。(ゲス顔)
話を戻しますが、アニメ版にて強烈な印象を残した彼女。なんとゲーム版であれば救うことが可能です。その可能性をちゃんと運営側が残してくれているんですよね。
長くとも三日目の朝、最低でも二日目の夜まで生存が確認できるようにちょっとした痕跡を残しています。まあ、初見では無いので気にする必要はありません。
基本的にはトイレの個室などに息を潜めているらしいですが、固定では無いようです。
個室、ともかく鍵が掛かる部屋で籠城していることが多く、時には外にある運動部の部室にいるとか、いないとか。
そして、チョーカー姉貴が三階にいないことは前回確認済みですので、そのまま二階に降りま──せん。
右側の階段から二階へと降ります。時間は有限ですが、『かれら』が少ないこの時間帯で、尚且つこちらは一人。
ええ、はい。絶好の稼ぎポイントです。加えて、ホモくんは三階のロッカー位置を確認していますので、すんなりと武器を確保出来ます。
ごまだれー……チッ、しけてやがんな。
その途中で教室を調べることを忘れずに。大体、居残り組がいますので背後を取れそうであれば、アバーッ! っと断末魔を上げることなくサクッとやります。
怖いなぁー、怖いなぁー、チラっ……いない! 次ィ!
チラっ……いるぅ! いるいる!
……チラっ、ほらぁ! ほらほら! やっぱりいるんだよ!
……ふぅ、計六体ほど居ましたがどうにかなりましたね。お陰様でレベルアップ......では無く、スキルポイントを獲得しました。
一定量の『かれら』を倒すと、レベルアップはしませんがスキルポイントを貰えます。それを、ステータスに振るも良し、
ただ、スキルポイントを使って新たな技能は獲得出来ませんので、初期ステータスと幼馴染みシステム、後は原作組との好感度が大変大事になっておりまする。
まあ、詳しい話は後ほど安全な場所でスキル振り分けするのでその際に。
やはり、初日で『かれら』を一人でもヤっていれば、精神的ダメージも少なくて済みますので、まだSAN値には余裕がありますね。
狂気度を抑えるために『不殺』プレイもできるそうですが、正直オススメしません。めぐねえは確実に死んでしまいますし、それに追従してくるみも噛まれ、最悪りーさんか主人公で介錯するはめになります。(3敗)
原作でもギリギリですからね。他はそこまで不殺プレイをしてないので分かりません。
よーし、右側の掃討はある程度終わりましたので、安心して階段を降りましょう。
……うーん、やはり二階は三階に比べて多いですね。それでも、この時間帯ならまだ少ない方です。
フム、なら先に降りてすぐ近くにあるトイレを調べましょう。
大体は声を掛ければそれらしい反応が返ってきますが、敢えて私はノックします。
もうRTAじゃないのでタイムを気にせず、じっくりと恐怖を与えていきましょう。(満面の笑み)
入り口から順に、コンコン……コンコン……ドンドンッ!! ……あり?
音で短い悲鳴の一つや二つ上げるんですが……鍵は閉まってませんね。
男子トイレに入っているかと思いきや、こっちにも居ませんでした。たくっ、悲鳴の一つや二つ聞かせろってんだ。(豹変)
となると反対側のトイレか、中央のトイレ。後は各準備室でしょうか。
……うわ、めんど──んんっ、ちょっと武器が心許ないですね。ですので、このまま一階へと降りましょう。
『摺足』の
一階まで降りれば、すぐ目の前に渡り廊下があるので、そのままそちらへと行き、ぐるっと回って部室へと向かいましょう。ここで、向かうのは野球部の部室一択です。
はい、おわかりの通り確定で金属バットが手に入ります。
かさばらず、耐久力もあり、攻撃力も申し分ないとか……誇らしくないの?
まあ、『剣術』の真価を発揮するわけではありませんが、モップと比べたら全然違いますからね。ですが、くるみのスコップには勝てません。(絶対)
この辺にぃ~、いい金属バットぉ、あるらしいんすよ。
おっ、ありましたね。(唐突)
ちゃんとグリップテープも巻かれています。勝ったな、風呂に入り──ません。いや、ちゃんと入りますが、その前にチョーカー姉貴を救いにいきます。
ただ、ここで思い上がってはいけません。周辺をちゃんと見てから出ましょう。(2敗)
『かれら』は……いませんね。では、いざゆか──
「──わんっ!」
誰だ、お前は!?
……え? うそ、お前、太郎丸か……?
お前、こんなところにも湧く──
「──わん! ウゥ、わんわんっ!」
バカッ! おまっ! バカヤロウッ!!?
アアアアッ!! もう、寄って来ちゃったじゃん!? どうすんのコレ! どうすんのっ!?
ええい、仕方ありません! 予定変更です!
太郎丸確保ォ! それと同時にGO! 逃げるんだよォ! スモーキーッ!
来た道を回れ右しながら全速前進DA☆! コーナーを攻めて、華麗にターン! からの、階段を駆け上がりーYO!
後は、このまま階段を上っていけば……ちょ、太郎丸!? 暴れんなよ……暴れんな! と同時にGOォォォォォALッ!! 決まったアァァァァァ!!
「っ、もとくん!」
やったよ、めぐねえ! 私はやってやりまし──痛いっ! なんでっ!? 誰にもぶたれたこと無いのにっ!?
えぇー? …………えっと、はい。なんか、今にも泣きそうな表情で怒っているめぐねえをバックに、今回はここまでです。
ご視聴ありがとうございました。
§ § §
夜の帳が下りて、周囲を闇と無音が包み込む。
もう慣れてしまった血の匂いが、肌寒い風とともに自分たちを撫でた。
慈はそれが気持ち悪くて、彼女たちもそう思っているのでは無いかと懐中電灯に照らされた教え子たちの方を見る。
左腕に抱き着いた
そのさらに向こう側には膝を抱え、顔を埋めている
全員、想像も出来ない状況に混乱し、怯え、肉体的にも精神的にも疲れ切っていた。
ぎゅっ、と抱きつく由紀を抱きしめ返すように自身の身体を寄せる。
「めぐねえ……?」
涙で濡らした目元が赤く腫れぼったくなっている。
ふと、視線を感じて顔を上げれば胡桃と悠里が不安げな表情でこちらを見ていた。
「だ、大丈夫。……大丈夫よ、みんな。きっと助かるから」
根拠も無いその言葉を無理やり作った笑顔で覆い尽くす。
しかし、彼女らの表情は晴れない。寧ろ、何処か心配そうにこちらを見ていた。
どうして、という疑問が浮かび上がる前に肩を叩かれる。
振り返れば、こちらを疲れ切った表情で見る
「めぐねえ……そんな泣きそうな顔で言われても……みんな、不安になるだけだと……思うよ?」
「えっ……?」
言われて顔を触る。
触って自分の表情が分かるような特技は持ち合わせてはいないが、それでも顔の筋肉が強張っているのが分かった。
どうやら、自分は笑っているつもりで、全員の不安を煽る表情を浮かべていたようだ。
「……ははっ、本城。お前も似たようなもんだよ」
「マジ? それは……やばい、な」
疲れ切った笑い声を上げる胡桃に、幹久も釣られて乾いた笑みを浮かべる。
「それを言うなら、みんな同じよ……ねっ?」
「うん……うん! 悠里さんの言うとおりだよ。だから、ね? めぐねえも無理しなくていいんだよ?」
「っ、別に、無理は……」
由紀と悠里の言葉が心に突き刺さる。
今、この場にいる大人は自分だけ。周りは全員守るべき存在。
その守るべき存在に弱みをみせてどうなる。不安にさせるだけだ。
頼れるのは自分だけ。頼られる存在も自分だけなのだ。
だから、弱みをみせるべきでは──
──ごとっ、と小さく音がした。
思わず反射的に音の鳴った方を見る。心の内にあるのは『かれら』かもしれないという恐怖。
だが、それは悠里の言葉で別の恐怖へと変わった。
「本城、くん?」
音が鳴ったのは自分の左側。つまり、幹久が何かしらしないと音が鳴らないはず。
「おい、本城……?」
胡桃の声。だが、反応が無い。
まさか……という嫌な予感が脳裏を過ぎったとき。慈は直ぐさま幹久の前へ移動し、
「違う……違うっ! もとくんは……大丈夫っ、だからっ……!」
『かれら』とは違う。自分の
でも、もし……もし、彼が『かれら』になったら……もし、そのようなことがあれば、私が──
「──佐倉先生、大丈夫です。落ち着いてください……ほら」
「っ……あ、ぇ?」
悠里に促され、腕に込めた力を抜いていく。
そうすれば、何処か苦しそうに寝息とも取れる呼吸をした幹久の姿。
彼は死んだように眠りに落ちていた。
「本城くんに怪我が無いことは、みんなで確認したじゃないですか。だから、大丈夫ですよ」
きっと、という言葉を悠里は喉元で飲み込んだ。
何もかも分からない状況で、戦っていたという幹久が本当に大丈夫なのか確信は無い。
だが、今はそうでも言わないと慈が落ち着かないと感じ取った悠里は、不安を押し殺してそう告げた。
「そうだよ、めぐねえ。本城くんなら大丈夫。だって強いもん」
それに便乗して……というよりは自分の知っていることを率直に言って、由紀は笑う。
「……ああ、そうだよな。優秀で、人気者で、剣道も……えーっと、どう、なんだ?」
「恵飛須沢さん……」
「うっ、だ、だって! 知らないもんは知らないし……」
悠里の信じられないような視線に、いたたまれなくなった胡桃は語尾を弱めてそっぽを向く。
ああ、自分は本当に……。
「めぐねえ?」
心配そうな声と表情をする由紀に、慈は涙を流しながら、やっと自然に笑った。
「ふふっ……これじゃあ、先生失格です、ね」
一人でパニックになって、生徒に慰められて……本当に自分は教師失格だ。
でも、それでも……今は彼女たちに甘えよう。
「良かった……本当に、良かったぁ……」
今度は幹久の頭を優しく胸に抱きしめ、慈は安堵するように涙を零した。
「お、おお……なんか、めぐねえ……私たちの知ってるめぐねえじゃない気がする」
「そうねぇ……随分と本城くんに入れ込んでいる気がするわ」
「えっ、めぐねえと本城くんって……」
「ち、違います!!」
あらぬ方向に流れそうになった会話を焦るように否定する。
涙を拭き、膝元に幹久の頭部を乗せて、改まって座り直した慈は少しだけ声を弾ませながら語った。
「本城くんは……いいえ、もとくんは私の従弟なんです。ですから、弟のような存在で......」
「え!? そうなの!?」
「へぇ、やっぱそうなんだ」
「言われてみれば、似てる……かも?」
驚愕する由紀とは違って、事前にそういった噂を知っていた胡桃と悠里は確信を得たように納得する。
「知ってたの二人とも!?」
「いや、確か噂で
「そうね。私もその噂は聞いたことあったけど……ある意味、本当だったわね」
それに、慈は苦笑いを浮かべる。
「学校では言わないようにっ、て言ったんだけどね? 気がつけば、皆から『めぐねえ』って言われてしまってて……お陰様で教頭先生から距離感が近い、って怒られましたよ」
「そうだったんだ……でも、めぐねえはめぐねえだよねっ!」
「もうっ……佐倉先生でしょう?」
くすり、と笑みが零れる。何時もの日常を想起させる一連のやりとりは、少なくとも恐怖を和らげることが出来た。
「あーあ、気持ちよさそうな寝顔しやがって……こいつは」
軽く笑った全員は胡桃が言ったその言葉を皮切りに、幹久の寝顔を覗き込む。
「あら、意外と寝顔は子供っぽいのね」
「むぅ、めぐねえ、私も!」
「え? で、でも」
幹久と由紀を交互に見る。さすがに二人一緒に膝枕が出来るわけもない。
だが、幹久をこのまま床に下ろすのは阻まれる。しかし、それでは由紀が……と、オロオロし始める慈に胡桃が助け船を出した。
「なら、私が代わりにしてやるよ!」
「えぇー? 恵飛須沢さんのは……なんか、堅そう」
「お前なぁー!?」
朗らかな笑い声が屋上に響く。これから起きる過酷なことを考えれば笑っている場合じゃないだろう。
それでも、彼女たちは何時までも続いたはずの……当たり前の日常を思い出すように笑った。
そして、その笑い声が収まっていくのと同時に、現実も徐々に理解し始める。
こんな、たわいもないやり取りで腹を抱えて笑えるほど、彼女たちは追い詰められていたのだ。
「これから……どうなっちゃうんだろうな」
地面を見ながら独り言のようにぽつりと呟いた胡桃の言葉が、嫌と言うほど重くのし掛かるのだった。
──んっ! わんっ!
「う、ううん……?」
鬱陶しいと思えるほどの光量が、瞼の裏に隠した瞳を刺激する。
それと同時に聞こえてくる煩わしい犬の鳴き声。
今、何時だろうか? という素朴な疑問は、視界に映る見慣れない朝の光景で瞬時に吹き飛んだ。
そうだ、自分たちは昨日何とか屋上まで逃げ延びて、そして──
「──っ!? もと、くん?」
寝ぼけた頭が瞬時に覚醒する。自身の膝元にあるはずの重みが無く、代わりにあるのは両肩に掛かる由紀と胡桃の両名の重みのみ。
急速に冷えていく背筋に反比例するかのように全身から汗が吹き出た。
「皆! 起きて!」
「……ん、んん? どうした? めぐねえ」
目を擦りながらも最初に起きた胡桃。
とりあえず、起きた胡桃に由紀を預けて立ち上がり、周りを見渡した。
──いない。少なくとも屋上で見える範囲にはいない。
どうして? なんで? という疑問が頭を埋め尽くしていくが、その埋まる前の空白に浮かんだ一つの声。
それは、声というよりは鳴き声だ。
そう、そうだ。犬。犬の鳴き声がしたんだ。
「めぐ、ねえ、え?」
ぼちぼち目を覚まし始める由紀と悠里を確認しつつ、慈は柵に乗り出す勢いでグラウンドを見た。
「……あら? 本城くんは?」
「へ? ……まさかっ!?」
悠里が気づき、胡桃が理解する。
二人、いや、全員が慈と同じようにグラウンドに目を向ける。
それは、慈が見ていたから、という心理的なものがあったが、それが逆に功を奏した。
「おいっ! あそこ!」
胡桃が指を指しながら叫ぶ。
ギリギリ、それも校舎の陰に隠れる後ろ姿しか見えなかった。
だが、あの素早く動く姿は緩徐となったこの世界では嫌というほど目立った。
「っ、あの、バカッ!」
胡桃は焦るように手すりから離れ、躊躇いを見せながらも、血の付いたシャベルを手に取る。
「恵飛須沢さん! 私も行きます!」
「めぐねえ……でも」
分かる。分かっている。言い淀む気持ちや由紀や悠里の心配する表情の理由はよく分かる。
なぜなら、自分でも分かるほど震えているからだ。
「めぐねえ……」
「……大丈夫。大丈夫だから、ゆきちゃん。若狭さんと一緒に待ってて?」
これが蛮勇というものであったとしても……自分は行かなければいけない。
例え、この行動が近い未来、後ろ指を指されることになろうとも、この行動は自分が一番に動き出さなければいけないことだ。
全員に視線を合わせ、お互いに頷き合う。
「あっ、先生ちょっと待ってください」
悠里が何かを思い出したように倉庫の方へと向かっていった。
それから、少ししないうちに両手で何かを抱えて戻ってくる。
「先生、あの……一応は、持っておいた方が良いかと……」
「……はい。ありがとうね、若狭さん」
それは、持ち手が長く伸びた枝切り鋏だった。
あのグラウンドに見えた『かれら』がもう人では無いことは分かっている。
だからこそ、身を守る武器。
……出来れば使いたくは無い。人を攻撃、ましてや生徒であった存在に殺意を向けることなどしたくない。
だが、いずれはその選択を迫られる時が絶対に来る。遅かれ早かれ、必ず。
「行こう、めぐねえ」
「はい」
胡桃の言葉にしっかりと頷いて慈は屋上に唯一繋がる扉へと向かう。
だが、近づいた辺りで扉の向こうが騒がしくなった。
「っ!」
『かれら』か。もしくは、ここに居ない幹久か。
はたまた、新たな生存者か────
「──わんっ!」
「……えっ」
その間抜けな声は自分か。それとも、他の誰かだろうか。
ただ、全員がその予想もしていない可愛らしい生存者に緊張が解ける。
「あっ、ちょ、お前は小さいからいいけど……いたっ! 脛打った!」
その後、金属バットを持って扉の隙間を通り抜けるのに苦労する幹久の姿を見て、思わず倒れそうになった。
こちらが唖然としているなか、彼は何食わぬ顔で片手を上げながら言う。
「あ、めぐねえ。おはよう」
変わらない。何時もと変わらない笑顔をじわじわと浮かべ始めながら言うのだ。こちらの気も知らないで。
「っ、もとくん!」
どうしようもない怒りが込み上げてくる。
そして、気がつけばその笑顔を浮かべる幹久に近づいて、手を振りかぶっていた。
小説パートはめぐねぇを主軸に描いていますが、各キャラの心情も自身が持ちうる語彙力で出来る限り、丁寧丁寧丁寧に描いて行きたいと思っています。
ちょっと描写がくどいかな?