【試走】がっこうぐらし! RTA 学園ヒーロールート【完結】   作:haku sen

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アンケートありがとうございました。頑張って完走して、再走して、失踪します。

ちょっと今回は短めです。



Part3 大人の意地

 

 

 涙目で激おこなめぐねえを宥めるところ始まるRTA……ではなく、実況プレイ。はーじーまるーよー。

 

 

 一部の兄貴たちに刺さりそうな、というか刺さった挙げ句、数多くの鬼畜兄貴たちによって泣かされ続けためぐねえを画面一杯に広げてスタートです。

 

 先に伝えておきますが、本番で活かすために出来る限り短縮出来るところは短縮していきます。前回までのことは忘れること、いいね?

 

 さて、この状態はどうやら好感度イベント……か、単純にイベントのようです。その証拠にレバガチャしてもホモくんが動いてくれません。

 このままでは、鬼畜兄貴歓喜の映像を垂れ流しにするはめになります。

 

 そんな皆さまのためにぃ~……え? 別にこのままでいい?

 

 ……そうですか。でしたら、ちょうどいいですね。

 この硬直状態を使ってステータス画面を開きましょう。このゲームは戦闘やイベント時でもステータス画面を開くことができます。 

 ただ、ゲーム自体は現在進行形で動いておりますので気をつけましょう。(1敗)

 

 えーっと……はい。右画面が泣いているめぐねえで、左画面がホモくんの簡易ステータスと各キャラたちの関係性が表示されています。

 

 今、ホモくんが所有している技能(スキル)は『剣術』、『摺足』……しかありませんね。本来ならばこの欄に幼馴染みボーナスとして各キャラの技能が手に入ったんですが……まあ、仕方ありません。無いものは無いので。

 ここで、『摺足』にスキルポイントを振っておきましょう。雨の日には役立ちませんが、それ以外は腐ることも無いので安定感が増します。

 

 そして、各キャラの関係性の欄にはデフォルメされた彼女たちの顔が映し出されており、その横にどういった間柄か簡潔に書かれています。

 残念ながら好感度を数値として見ることは出来ませんが、優しいことに、そのデフォルメされた表情で判断できるので有難いですね。

 

 表情は喜色(きしょく)愁色(しゅうしょく)憂色(ゆうしょく)生色(せいしょく)……怪人百面相も真っ青なほど多岐に渡って表現されており、正直に言えば判別が着いておりません。有難くも無ければ、優しくもありませんでした。(絶望)

 

 中には怨色(えんしょく)と呼ばれる恨み顔もあるのですが、普通に怒っているようにしか見えず、りーさんに寝首を掻かれたプレイヤーも少なくないでしょう。(6敗)

 

 そして、現在の関係性は……問題なさそうですね。

 

 糸目のりーさんは『知人』。

 

 まさかり──ではなく、かっこいい笑みを浮かべてシャベルを担いだくるみは『友人』。

 

 へちょ顔を晒しているゆきちゃんは『知人』。

 

 そして、右では泣き顔、左では満面の笑みを浮かべるめぐねえは『従姉』となってます。

 

 何となく表情から好感度を察することが出来ると思います。

 この関係性は他にも『恋人』や『親友』。そして『他人』というものがあり、各イベントを終えると関係性が更新されていきます。

 

 幼馴染みシステムを採用していると初期好感度が高く、最初から『幼馴染み』と表記され、笑顔満点である場合も多いですが……『従姉』ってなんぞや。

 ……まま、ええやろ。幼馴染みと従姉は一緒みたいなものです。きっと。(切望)

 

 ただ、注意しなければいけないのが、関係性がこうだから大丈夫だろう、と思ってはいけないことです。特に『親友』と表示されている時ほど注意が必要です。

 二人以上『親友』または『恋人』という関係性があると、そのデフォルメされたキャラたちの背景に暗雲が立ち込める時があります。

 

 俗に言う修羅場イベントですね。ここに表示されているのはあくまでも主人公との関係性なので、各キャラの仲が良いとは限りません。

 

 滅多に起きることはありませんが、りーさんとゆきちゃんが仲悪いとか、くるみとめぐねえが仲悪いとか……イレギュラーな存在でもある主人公次第では、偶に関係性が崩れるので注意しましょう。

 

 まあ、主人公が異性だと起こりやすいだけなんで大丈夫です。ホモくんはホモですし、ヒーローにさせますのでガバりません。(慢心)

 

 何故、そこまで好感度関係に自信があるのかと言うと、ある一定の条件を満たすことで『親友』や『恋人』とは別枠として『恩人』という関係性が解放出来るのです。

 

『恩人』は……また長くなるので今回は省きます。

 

 ともかく、ピンチを助けたり、彼女たちの精神的支柱になったりすれば、関係性が『恩人』となる確率が高いので、どんどん恩を売りつけてやりましょう。

 

 おっ、動けるようになりました。どうやら説教が終わったようですね。

 では、改めてチョーカー姉貴を救いにいきま──せん。というか、今はもういけません。

 

 無理を押して単独行動をすれば、それこそ監禁ルートが解放されますし、場合によっては要介護者であるめぐねえが助けに来て、めぐねえが噛まれてしまいます。なんでや。

 

 そして、もう時間帯が登校時間を過ぎ始めてるんですよね。説教が長過ぎんよ~。

 今の時間帯は『かれら』も徐々に集まってきており、大変危険です。なので、今からすることは一番好感度が低いキャラと交流を深めつつ、三階の解放フラグを立てましょう。

 

 それとなく、何時までも屋上は……的な発言をしつつ、三階の状況を伝えておけば、三階へ赴くことが出来るようになります。

 夜までにはチョーカー姉貴を救いにいきましょう。今日の夜が最後のボーダーラインです。

 

 さあ、それまでは太郎丸を見習って現状一番好感度が低いキャラ……ゆきちゃんとりーさんですが、ここはりーさんに尻尾を振ります。媚びると言っても過言ではありません。

 

 りーさん自身のガードが堅く、警戒心も高いので、最初は些細なことからの積み重ねで信用を得るようにしましょう。

 彼女、ぽやっとしているかと思いきや、後ろで組んだ手に護身用の武器が……なんてこともありますからね。

 ただ、落としてしまえばただの若妻になりますので、気になる人はプレイしてみましょう。

 

 え? ゆきちゃん? 大丈夫です、気がつけば上がってます。

 

 では、りーさんに話しかけましょう。へい、そこのお姉さん! 私とお話し──

 

「──ねぇ、本城くん! この子の名前は太郎丸でいいよね!」

 

 あのさぁ……ここは適当にイエスで。当たり前だよなぁ? 

 名前は変えられたりしますが、やっぱりここは王道を征く太郎丸でいきましょう。

 

 ただ、お前のせいでチョーカー姉貴を助けられなかったんだからな。

 

「ウゥ……わんっ、わんっ!」

 

「あっ、太郎丸!」

 

 なんで避けられる必要があるんですかね。(半ギレ)

 

「あははっ! 助けた本人なのに嫌われてるのかよ!」

 

 ウッソだろ、お前。お前がいないと睡眠時の回復効果に天と地の差があるだが? 責任とれんの? おお?

 まあ、後でムツゴロウさんかチョコラータさんを見習いながら撫でて上げましょう。それだけで、きっと尻尾を振ってくれます。

 

「本城くん、どうぞ。あ、丈槍(たけや)さんと恵比須沢(えびすざわ)さんも」

 

「あっ、きゅうりだ! ありがとう、りーさん!」

 

「り、りーさん?」

 

 あぁ^~、いいっすね。その笑顔を曇らせたい。(人間の屑)

 

 太郎丸が来たことによって、精神的に余裕が生まれ始めていますね。ゆきちゃんによる交友イベントです。

 余裕が出ると、ゆきちゃんが率先して全員の和を繋げていってくれます。常時移動型ヒーラーで好感度も上げてくれるとか……誇らしくないの?

 

「本城くんはもとくんって呼ぶね! めぐねえが言ってたし!」

 

 おっ、そうだな(適当)。愛称が付くなら何でもいいです。上手いこと調整すれば、彼女たちにホモと呼ばせることも可能だとか。変態だな。

 

 さて、みんなで和気藹々と野菜を貪っているなか、ホモくんに世間話をするかのように三階の状況を言わせましょう。ホモはせっかちだから、仕方ないね。

 

「……だな。このままずっと屋上に、ってわけには……いかないもんな」

 

 ここで、くるみが覚醒していると漢らしく賛同してくれます。そうすれば、後は多少なりともゴリ押しで行けます。めぐねえも渋々従ってくれるので問題ありません。

 ただ、三階を解放する場合めぐねえは確定で着いてきますので、くるみかホモくんで護衛する必要性があります。

 

 事前に教室方面は片付けていますので、新規が来ない限り職員室方面に集中できるでしょう。

 そうなると、比較的に楽なので余程のイレギュラーが無い限り大丈夫です。

 

 よーし、腹ごしらえも済んだところで三階の解放へと乗り出しましょう。

 昼時であれば学食の方に『かれら』が集まっておりますので、戦闘音も届きにくいでしょう。

 その際、バリケードも作ると思うので、机の回収と称して二階の調べてない方を探索します。

 

 つまりはチョーカー姉貴の救出ですね。

 

 っと、いったところで今回はここまでです。

 

 ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 § § §

 

 

 

 

 

 

 

 

 屋上に響く乾いた音と痺れる手のひら。

 だが、それ以上に(めぐみ)は泣きたくなる自分を堪えて、唖然としている幹久(もとひさ)を睨み付けた。

 

「もとくん。なんで私が怒っているか……分かってる?」

 

「えっ……あー、っと、まあ……はい」

 

 察しの良い子だ。自分がどうして怒られているのか瞬時に理解したのだろう。

 ただ、周囲の様子を……由紀(ゆき)胡桃(くるみ)悠里(ゆうり)など他人の視線を気にしているのはいただけない。

 

「もとくん!」

 

 両頬を両手で挟み、しっかりと面をこちらに向かわせる。

 きょとんとした表情でこちらを見下ろす彼と、それを怒った表情で見上げる自分。

 

 昔に比べて随分と背が伸びたせいか、今やこうして見下ろされることも多い。

 声も低くなり、体格も随分と逞しくなった。

 幼い頃とは逆の構図になったが、それでも自分にとっては今でも可愛らしい弟分であることは変わりない。

 

「えっと……ごめん、なさい。めぐねえ」

 

 ああ、本当に自分は彼に甘い。

 あんな危険なこと……命を失うかもしれないことを彼はしたというのに、その顔を見ると怒る気が失せる。

 

 言いたいことが一杯あった。心配と失う恐怖から生まれた怒りを言葉としてぶつけるつもりだった。

 だが、今は寧ろ、彼を叩いた罪悪感が自分に重くのし掛かっている。

 

 そして、それと同時に浮かんだのは多大な安心感。

 

 それが、怒りを包み、言葉を詰まらせる。どうやら、自分はとことん教師には向いていないらしい。

 今回は私情を多分に含んではいるものの、こうなる前から生徒を怒ることが出来なかった。

 

 それが、彼に変わっただけでここまで怒りを霧散させることになるとは……。

 

「わんっ!」

 

 何処か気まずい雰囲気のなか、人間の事情など知ったことでは無いと言うように足下から鳴き声がした。

 

「あー、まあ……目が覚めたらコイツが鳴いててさ。ちょっと気になったから助けに行ってた。怪我はしてないみたい」

 

 手を彼から外し、足下で尻尾を振る小さな柴犬に身を屈めながら手を伸ばす。

 柔らかく、つるりとした手触り。それに加えて心地の良い暖かさが手を通じて伝わってくる。

 

 生の実感。自分が生きているということを改めて感じさせてくれるようだった。

 

「ハッ、ハッ、わん!」

 

「あっ」

 

 自分の手のひらをすり抜けて、走り出す柴犬。

 そして、こちらの様子を不安げに見守っていた由紀たちの方へと向かい、その胸元へと飛び込んだ。

 

「わわっ!?」

 

「あら、随分と人懐っこいのね」

 

 由紀は胸元に飛び込んできた柴犬に驚きの声を上げ、警戒も躊躇いも無い柴犬の様子に悠里は首を傾げる。

 

「多分、どっかの誰かが世話をしてたんだろうな」

 

 悠里の疑問に当たり障りの無い答えを出した胡桃は、由紀の胸元で暴れる柴犬を突きながら笑みを浮かべた。

 

「ちょ、くすぐったいよぉ~! ははっ!」

 

 由紀の顔を舐める柴犬に、悠里と胡桃は微笑ましい笑みを浮かべながら、その柴犬を可愛がる。

 さっきと打って変わった雰囲気にもう怒る気も無くなった慈は、横で穏やかな笑みを浮かべる弟分の脇腹をつねった。

 

「い゛っ!?」

 

「今回はこれで許してあげます。ただ、もう二度とこんなことしないようにっ! いい?」

 

「わ、分かりましたよ……佐倉先生」

 

「……もうっ」

 

 こういうときに限って。と思いながら慈は幹久の服を見て顔を曇らせた。

 白いワイシャツに赤黒いシミがいくつもある。

 

 血だ。昨日から付いていたものも多いが、明らかに真新しいシミがあるのが分かった。

 きっと、『かれら』と戦ったんだ。そして、もう動かないように……。

 

 そんな時だった。くぅー、と聞き馴染みのある音が聞こえる。いや、聞こえたのではなく鳴った(・・・)のだ。

 

「えっと……野菜はありますから、ご飯にしましょうか」

 

「っっ! ……はい、そうしましょう」

 

 悠里の気遣いが羞恥に追い打ちをかける。

 顔を真っ赤に染めて俯く自分に対して、その横では笑い声を押し殺すのに必死になって震える幹久がいる。

 キッ、と睨み付けながら慈は野菜を収穫する悠里の手伝いを申し出た。

 

 それに、続いて幹久も手伝いを申し出ようとしたとき、その進行を阻むようにして目の前に現れる柴犬。

 

「ねぇ、本城くん! この子の名前は太郎丸でいいよね!」

 

 由紀が柴犬を前面に突き出しながら笑顔でそう言った。

 

「うん? ああ、いいんじゃない?」

 

「やったぁ! ほらほら、恵比須沢さん!」

 

「良いのかよ……」

 

 何処か適当な返事をした幹久に由紀は喜び、それに反対していたくるみは苦い表情を浮かべる。

 

「良かったねー、太郎丸!」

 

 向きを変え、太郎丸に満面の笑みを浮かべながら名前を言う由紀。それに感化されたのか、幹久が太郎丸に手を伸ばした、が。

 

「よし、ほら太郎──」

 

「ウゥ……わんっ、わんっ!」

 

「あっ、太郎丸!」

 

 幹久が太郎丸を撫でようと手を伸ばした、その瞬間。

 

 太郎丸は唸り声を上げ、警戒を示すように吠えると、由紀の胸元から飛び出て地面へ降りる。

 由紀は慌てるが、太郎丸は大人しく座っていたので、そのまま跪いて「よしよし」と撫で続けた。

 

「──丸……た、太郎丸ー? おーい、太郎丸ー?」

 

「あははっ! 助けた本人なのに嫌われてるのかよ!」

 

 幹久は余程ショックだったのか、表情を固めたまま名前を連呼する。だが、その名前を呼ばれている太郎丸は由紀に大人しく撫でられたままで、幹久の方を見向きもしなかった。

 その一連の場面を見ていた胡桃は腹を抱えて笑う。

 

「みんなー、こっちに来てー」

 

 そんな楽しい時間を遮るように聞こえてきた悠里の声。

 特に行かない理由もなく、そのまま太郎丸も連れて悠里たちの方へ行けば、悠里と慈が野菜が入れられた竹箕(たけみ)を持っていた。

 

「本城くん、どうぞ。あ、丈槍さんと恵比須沢さんも」

 

 差し出される長く緑色の野菜。誰しもが見たことはある野菜を受け取りながら由紀は笑顔を浮かべる。

 

「あっ、きゅうりだ! ありがとう、りーさん!」

 

「り、りーさん?」

 

 呼ばれたことも無い愛称に悠里は困惑して、オウム返しをしてしまう。

 それに、由紀は笑みを深めて大きく頷いた。

 

「うん! 悠里さんだからりーさん! ……ダメだった?」

 

「えっ、ああ……ダメじゃないわ。これからよろしくね、丈槍さ……ううん、ゆきちゃん」

 

「私もくるみでいいぜ」

 

「分かった! これからよろしくね、くるみちゃん! りーさん!」

 

 それに便乗して胡桃も親交を深めていく。

 

「本城くんはもとくんって呼ぶね! めぐねえが言ってたし!」

 

「おう、好きに呼んでくれ」

 

「お前……さっきから適当過ぎないか?」

 

 太郎丸といい、愛称といい、何処か生返事の幹久にくるみは思わず肘で脇腹を突いた。

 その生徒たちのやりとりを見ていた慈は日常で浮かべていたのと同じ微笑みを携え、口を開く。

 

「じゃあ、私は──」

 

「めぐねえは、めぐねえだよ?」

 

「だな」

 

「同じく」

 

「ふふっ、そうね」

 

「──……ええ、はい。分かってましたよ」

 

 少ししょんぼりした慈を見ながら、瑞々しい採れたての野菜を頬張る一同。

 

 だが、その笑顔も長くは続かない。各々が野菜の味の感想を述べながらそれを実感し、ハッキリと理解した。

 

 このまま野菜だけではやっていけない、と。

 

 そして、それを代弁するように幹久が自身に配分された野菜を食べ終えて言葉にする。

 

「さっき三階を見てきたけど、チラホラ奴らがいる程度だった。今はどうか分からないが……少し様子を見に行かないか?」

 

「……だな。このままずっと屋上に、ってわけには……いかないもんな」

 

 ぽきり、といい音をたてながら噛み折ったきゅうりを飲み込みつつ、胡桃はその案に肯定の意を示す。

 

「でも、それは……」

 

 それに難色を示すのは慈だ。

 

 ハッキリと言って危険であることには変わりなく、加えてそれを率先してやろうとしているのが、まだ子供の範疇にいる教え子たち。

 教師として、唯一の大人として、その意見には大手を振って肯定の意を示すのは憚れた。

 

「遅かれ早かれだよ、めぐねえ。やるなら、まだ動ける体力が残ってる今がいい」

 

 多分、正論だろう。きっとこの状況下であれば、その判断が一番正しいと思える根拠がある。

 

「大丈夫だって、めぐねえ! 私と幹久で何とかするからさ」

 

 勝ち気な笑みを浮かべながら胡桃は慈の肩に手を置いた。

 確かに二人ならば大丈夫だと思う。胡桃はともかく、幹久ならば大丈夫だろうと思える実績が少なくともある。

 絶対というものは無いが、それでも幹久なら問題なく、その次に動ける胡桃も彼の足を引っ張ることは無いだろう。

 

 大丈夫、きっと。

 

 そう自分に言い聞かせ、二人に任せようとしたとき。肩に置かれた胡桃の手が震えているのを感じ取り、慈は覚悟を決める。

 

「──分かりました。ただ、私も行きます。二人だけに任せるわけにはいきません」

 

「なっ! めぐねえ!?」

 

 驚きの声を上げる胡桃の手を取りながら、慈は思う。

 

 そうだ。一体、何を考えていたのだろうか、自分は。

 

 二人に任せる? 子供であり、守るべき二人に任せると?

 

 違う、違うだろう。それこそ、自分が先頭に立つべきだ。

 先頭に立ち、率先して自分が動くべきなのだ。例え、恥を晒すことがあっても大人の自分が動かなくてどうする。

 

「そう、だな。めぐねえがいれば大丈夫。何たって俺たちの先生だし」

 

「ちょ、幹久!?」

 

 付き合いの長い彼の事だ。自分のことをよく分かっている。

 何を言っても引き下がるつもりはない。自分が頑固なことぐらい一番よく分かっているし、その次に彼は自分のことを知っている。

 

「大丈夫、大丈夫。何とかなるって!」

 

「はぁ、その根拠はどこから来んだよ……」

 

 笑う幹久に嘆息する胡桃。

 それとは別に心底心配であることを隠そうともしない由紀と、不安げな表情を浮かべる悠里に慈は力強く笑って見せた。

 

「大丈夫、大丈夫だから、二人とも。私が何とかしてみせるから」

 

 これは、最早意地のようなものだ。

 ここにいる全員、何が何でも守って見せる。

 

 そう心に決めた慈は、少なくとも今は震えていなかった。

 

 

 

 




あんまり設定などを長ったらしく説明するのもアレかなー、と思ったので省いています。そもそも、深く考えれていませんので、矛盾だらけになるんですよね......。
なので、ほぼ流し見てもらって大丈夫です。

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