【試走】がっこうぐらし! RTA 学園ヒーロールート【完結】   作:haku sen

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本当は二日目を終わらせるつもりでしたが、今回の倍以上の文字数になったので、ぶった切りました。実況パート対して小説パートが約全体の七割弱を占めてるっていう......。

それと、誤字報告ありがとうございました。お陰様で早めに投稿できました。(投稿ペースが速くなるとは言ってない)
後、返信できてませんが感想も読ませて頂いてます。

今回、(小説パートが)長いです。



Part4 過去との決別

 

 

 チョーカー姉貴をビビらせることに主眼を置いた救出作戦、はーじまーるーよー。

 

 前回、いえ、前々回からチョーカー姉貴を救います詐欺をしてきましたが、今回は確実に救いに行きます。でなければ、死んでしまいますので。

 

 それに伴い、今回の救出メンバーはホモくん、シャベルという名のエンピを装備したゴリラ、気がつけば『かれら』化している要介護者の三名で行きたいと思います。(なお、実質行くのはホモくん一人という)

 

 さあ、行くぞ! みんな、丸太はも──ん、どったの? くるみちゃん?

 

 え、先輩を下ろすのを手伝ってくれだって? まだ、外に投げて無かったのか……。

 まあ、死体があるだけでSAN値が減りますし、衛生面に関しても悪いので、ここはイエス一択です。好感度も上がりそうですし。

 

 すまない、君はもう用済みなんだ。はい、せーのっ、ぽーい。……ふう、ホモくん良い仕事しました。(爽快感)

 涙ぐみながら、くるみが先輩(故)のことを語り始めますが、ロスなので軽く聞き流しましょう。まあ、元気だせって。

 

「うん……うん、ありがとな!」

 

 おう、感謝しろよな。(傲慢)

 さあ、イベントも終わったので早速校舎へと行きましょう。ここで、太郎丸をゆきちゃんに押しつけることを忘れないように。下手に着いてこられたら大変ですからね。

 

 リードという拘束具がない間は、ゆきちゃんがリード代わりになってくれます。

 そして、その綱を持つのは全てにおいて抑止力となるりーさんに任せましょう。磐石の備えとなります。

 

 これで、後顧の憂いは断ちました。安心して攻略に乗り出せます。

 

「気をつけてね、三人とも」

 

 新妻感溢れるりーさんに見送られつつ、三階の制圧を開始します。

 そろーりと校舎の中に入れば何ともおどろおどろしい雰囲気ですね。

 

 窓ガラスは割れ、廊下には屍が転がり、タールのように真っ黒となった血が──ああああああああああ!!?(絶叫ビーバー) 

 

 やべぇ……やべぇよ! 死体を片付けて無かった!

 くるみはまだともかく、ゆきちゃんに次いでクソ雑魚メンタルのめぐねえはまずいですねぇ! 

 

 発狂までしなくともSAN値がゴリゴリ減ってしまい、行動にデバフがかかってしまいます。

 そうなると危険度と難易度が跳ね上がり、下手をすれば救出どころの話ではありません。

 

 ここは、一旦めぐねえを──

 

「……だい、丈夫です。行きましょう」

 

 ──おっ? 顔面蒼白ではありますが、デバフが掛かるほどでは無いようですね。いつの間にか強化アップデートでもありましたか?

 

 まあ、嬉しい誤算ではありますが、始まってから私の知らない行動ばかりするめぐねえなので、気が抜けません。

 なので、『摺足』かつ慎重に進んでいきましょう。

 

 廊下は……ざっと二体ほどでしょうか。教室側の方は大丈夫そうですね。職員室側に集中しましょう。

 横から手が伸びてきたら堪ったものでは無いので、準備室や物理実験室などもちゃんと確認しつつ、廊下にいる『かれら』をぱぱっと片付けます。

 

 くるみちゃんは右ね。……え? 左がいいの? やっぱり、覚醒したくるみは積極性が違いますね。

 

 こちらに気がつき、手を伸ばしてきたところを横振りでそぉい! そのまま窓からボッシュートとなります。

 くるみちゃんの方は喉元を一突きで終わらせてますね。ホモくんよりか手際良いとか……やっぱりゴリラだな。(確信)

 

 さて、この調子で各部屋を確認して行きましょう。問題は不意打ちと職員室ですね。

 

 不意打ちはちゃんと警戒していれば大丈夫といえますが、危険であることに変わりないです。

 また、SAN値直葬マニュアルの心配はありませんが、気の利く神山先生がいると、めぐねえの気に効いてしまいます。

 

 そうなると、一定の間めぐねぇが行動不能となってしまいますので、他の教職員がいると危機的状況に陥る確率が高いです。

 

 ですが、こちらには戦闘要員が二人もいるので恐らく大丈夫でしょう。遅くなるとチョーカー姉貴が間に合わなくなるので、ここは大胆に行きます。

 

 ……いや、やっぱりここは安全策をとった方が正解か……? いそガバ回れという言葉もあるわけだし、ここは慎重に──

 

「──パパッと調べようぜ」

 

 あっ、ちょ……なに、今回のくるみちゃん。逞しい……逞しすぎない? いくら原作でもほぼ一人で戦っていたとはいえ、それはゴリラ過ぎるでしょう。

 

「っ、かみ、やま……先生」

 

 あちゃー、居ましたね。まだ神山先生一人だけだったので良かったですが、これは来てますね。来てます来てます。

 ここはくるみにめぐねえを任せて私が片付けましょう。デスクを陰にしながら背後を取れば終わりです。

 

 ……あれ? 動かない。ホモくんが動きません。バグ? バグった?

 

「……私が、やります」

 

 え? これイベント? イベントなの? 

 

 ………………。(攻略wikiガン見)

 

 あ、はい。イベントですね。めぐねえに精神的余裕があると、稀に起きるイベントです。

 勿論、知っていましたが、如何せん『かれら』の目の前にめぐねえがいると思うと焦っちゃいますね。落ち着け、私。素数を数えることから始めましょう。

 

 イチ! ……よし。コレにて三階は解放されました。

 

 新規が来る前に机でバリケードを作るように提案しましょう。後はそれらの材料を集めるという名目でチョーカー姉貴を救いに行きます。

 後、屋上に残った二人を呼びます。ホモくんたちだけでも出来ますが、作業効率が段違いですから呼ばない理由はありません。めぐねえ、呼んできてー。

 

 さて、めぐねえがりーさんたちを呼びに行っている間に、こちらは死体を片付けておきましょう。下手にSAN値を下げる必要性も無いですからね。

 あと、二階に行く前に教室からバックを拝借しましょう。出来ればリュックサックです。無ければスクールバックでも可。ともかく、両手が空く物にします。

 

 今回は運良く小綺麗なリュックサックが手に入りました。後、適当に筆記道具類を持っておきましょう。これで準備完了です。では、中央階段からいくぅー。

 

 つくぅー。っと、結構な量の『かれら』が徘徊してますね。バリケードやチョーカー姉貴を救った後のことを考え、少し量を減らしましょう。

 

 勿論、この狭い空間で多数を相手出来ないので、下に続く階段の方にボールペンやシャーペンなど、先ほど拾った物を投げて音を出しましょう。

 ただ、筆記道具などは陽動に適さず、何度もする必要があります。時間が削られますが背に腹は代えられません。

 

 いーち、にー、さーん、しー、ごー、チッ、全部くれてやるわっ!

 

 筆箱ごと投げたところで、全員反応してくれましたね。後は、勝手に転がり落ちてくれますので大丈夫です。

 経験値は貰えませんが、定期的に狩る予定ですので問題はありません。そのまま、中央のトイレを調べましょう。

 

 んー、二日目ともなれば、それなりにチョーカー姉貴の痕跡が目視できるぐらい転がっているはずですが、ここには無いですね。

 となると、残りは購買近くの各準備室か職員室側のトイレでしょう。そうに決まっています。(震え声)

 

 ただ、突っ切るのは危険なので三階からぐるっと回ってから職員室側の階段を降ります。

 

 あ、くるみちゃんだ。ちょうどいいのでバリケードの進行状況を聞いておきましょう。場合によっては先にバリケードを作る必要性があります。

 

 ねぇ、どうなの? 進んでる?

 

「おう、教室側はもう少しだと思う」

 

 ハヤスギイ! 漢らしい返事をいただいたところで、こちらも頑張りましょう。

 階段を降りて、まず角待ちしている奴がいないかちゃんと確認します。(5敗)

 

 ……いない、ですね。どうやら、まだ学生食堂内に多く残留しているようです。チャンスですね。今の内にトイレを調べます。

 

 準備室は嫌だ準備室は嫌だ準備室は嫌だ準備室は嫌だ準備室は──

 

 ヌッ! いたぞぉー! いたぞぉーー!

 

 痕跡がありました。チョーカー姉貴はこのトイレの個室に隠れているようです。

 

 ふふっ、では鬼畜兄貴たちお待ちかねのビビらせターイムです。(最大の無駄)

 

 入り口から順に、コンコンとノックしていき──

 

「──お前……女子トイレに入るかよ? 普通」

 

 くるみちゃんさぁ……ねぇ、あのさぁ……てか、いつの間に着いてきてたの。

 

「──だ、誰か……そこにいる、の?」

 

 ……はーい。チョーカー姉貴救出でーす。

 

 チョーカー姉貴こと柚村(ゆずむら)貴依(たかえ)という戦利品を持って三階に戻りましょーねー。

 え? なに? 腰が抜けて動けない? しょーがねぇーなぁー、これ以上時間の無駄も出来ないので抱っこしましょう。

 

「……そこは、お姫様抱っこじゃないのか?」

 

 両手が塞がるだろうがっ! だからゴリラなんだよ!?(暴論)

 

 はぁ……チョーカー姉貴を救出した後は、そのまま見栄えしないバリケード作りですので、チョーカー姉貴について話しておきましょうか。

 

 彼女は性能的に見れば、オールラウンダーと言えます。

 りーさんには劣るものの全体を纏める発言力があり、不和を防ぐムードメーカーでもあり、多少なりと戦闘も出来るオールマイティ。

 

 ただ、やはり各々にはどうしても一つ劣ってしまうのが欠点でしょうか。

 ですので、適所に配置を換えていき、各キャラたちと相乗効果を得られるように上手く動かしましょう。

 場合によっては何かに特化していない主人公より優秀になります。終盤になるともはや彼女が主人公してたり、してなかったり……これもうわかんねぇな。

 

 しかし、喜んでいるばかりではありません。チョーカー姉貴が来たことによって、今いる生存者は合計で六人プラス一匹になります。

 

 ただでさえ、ホモくんというイレギュラーもいるので、物資を圧迫していくのは目に見えて明らかです。上手いことやらなければ雨の日の前に物資が尽きてしまいます。

 先にショッピングモールに行くのもありですが……難しいところですね。

 

 雨の日は本当に何が起こるか分かりません。それぞれ違う動きをする各キャラを守るというのは至難の業と言っても過言では無いでしょう。

 キャラが増えるイコール守るべき対象が増えるので、非常に悩ましいところです。

 因みに『適応者』ルートならば、玄関に仁王立ちしているだけで終わります。生物兵器は伊達じゃない。

 

 さて、そうこう話しているうちにある程度バリケードが完成しましたね。ただ、これは未完成ですので運が悪いと普通に『かれら』によって崩される可能性があります。なので、夜以外はしっかりと見回りをしましょう。

 

 バリケードが築かれたところで、強制的に暗転あんどロードが入りました。どうやら、夜のようです。二日目もそろそろ終わりそうですね。

 

 っと、言ったところで今回はここまでです。

 ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 § § §

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、幹久(もとひさ)……ちょっといいか?」

 

 それは、校舎へと足を踏み入れる直前のことだった。

 バットの握り具合を確認し、気を張っていた幹久に躊躇いながらも声を掛ける胡桃(くるみ)

 

「ん? ああ……別にいいけど」

 

 幹久は胡桃の背後にいた(めぐみ)の目配せに気がついて、大事なことなのだろうと判断し、そのまま了承した。

 屋上の端まで二人はお互いに言葉を掛けること無く歩く。

 そして、太陽光パネルによって物陰となった場所まで行くと、そこには、地面にかけられたビニールシート。

 

 否、そのビニールシートは不自然な凹凸が出来ていた。まるで人型のような凹凸が。

 

「……悪いけど、コレ(・・)を下ろすのを手伝ってくれない?」

 

「下ろすって……いいのか?」

 

 幹久はすぐに察しが付いた。そのビニールシートに包まれたものが何なのか。

 だが、それよりも驚いたのは胡桃の言った『コレ』という言葉。

 

 詳しくは知らないが、このビニールシートに隠れたものが胡桃にとって何かしら大切なものだったのは知っている。

 だからこその疑問。何であれ……例え、それが無粋だったとしても確認せずにはいられない。

 

 本当にいいのか? ……と。

 

 胡桃は少しだけ間を置いてから顔を伏せて無言で頷いた。

 ならば、それ以上は聞くまい。彼女が良いと言うのならそうするまでだ。

 

 二人はそのビニールシートが被された物体の端をお互いに持ち、柵の上へと持ち上げる。

 そして、それを幹久が思っていた以上に胡桃はあっさりと屋上から投げ落としたのだった。

 

 抵抗もなく落ちていくソレを、胡桃は最後まで見ること無く空を仰ぐ。

 

「……私、さ……先輩のこと、好き、だったんだ……」

 

 ぽつぽつと途切れながらも言葉を零す胡桃。それに幹久は気まずそうにしながらも、無言で聞く姿勢を取った。

 

「陸上部に入ったのも、割と不純でさ……私、マネージャーって感じじゃあ無いだろ?」

 

「だろうな」

 

 まさか、即答されるとは思っていなかった胡桃は目を見開き、ムッとしながら幹久の胸元を小突いた。

 

「何だよ……そこは嘘でも……否定しろよなっ」

 

 嗚咽も交えながらも、文句を言った胡桃の目元には大粒の涙が溜まっていく。

 一度、緩んだ栓は言うことを効かなくなり、決壊したダムのように溢れてきた。

 

 それを、幹久は無言で受け止める。

 

 女が泣いているというのに慰めもしないのか、と思いつつも胡桃はそれが今は嬉しかった。

 

 自分はただ聞いて欲しかっただけかもしれない。あの時、言えなかった言葉を誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。

 

 叩く。何度も……何度も何度も関係の無い幹久を叩いた。

 涙を流しながらどうしようもない悲しみを幹久にぶつけた。そして、気がつけばその胸元で泣きじゃくっていた。

 

 どのくらい時間が経ったのだろうか。数十分、いや数分かもしれない。

 ただ、胡桃は自分でも驚くほど短時間で心に区切りが着いていた。

 

「少しはスッキリした?」

 

 泣き終えた女に掛ける言葉としては、何とも無粋だ。そんな(なり)して女の扱いに慣れてないらしい。

 だが、今は生やさしい声を掛けられるよりも、無粋な言葉の方が心にすんなりと入り込んだ気がした。

 

「うん……うん、ありがとな!」

 

 目元を手で拭って胡桃は笑う。随分と晴れ晴れとした笑顔を浮かべて。

 

 胡桃にもう迷いは無い。シャベルを肩に担いで胸を張る胡桃の後に幹久は軽い笑みを浮かべて着いていった。

 

「お待たせ、めぐねえ」

 

「大丈夫……そうですね、くるみさん」

 

「うん、コイツのお陰でスッキリした」

 

 そう言って胡桃は幹久の背中を強めに叩く。堅く、筋肉質な感触が返ってきて、若干手のひらが痺れる。

 一皮むけた様子の胡桃に、慈はほっとしたように肩の力を抜き、そしてまた気を引き締めた。

 

 三人はお互いに頷き合って、各々持つ自分の武器を握り直す。

 そして、今まさに内部へと向かおうとした瞬間。足下へと纏わり付くように動き回る小さな生存者が三人の行き足を阻んだ。

 

「わんっ!」

 

「おっとと、太郎丸か。お前も一緒に行きたいのか?」

 

 舌を出して、尻尾を振る太郎丸に胡桃はしゃがみ込んで乱暴な手つきで撫でる。

 それに、太郎丸は気持ちよさそうに目を細めた。

 

丈槍(たけや)、ちょっと」

 

 その横でやり取りを見ていた幹久は由紀(ゆき)を手招きで呼んで、太郎丸を指さす。

 何となく意図を察した由紀は無防備な太郎丸の背後を取って、その脇腹に腕を通すとそのまま太郎丸を抱き上げる。

 

「太郎丸は私たちとお留守番だからねー」

 

 特に暴れることなく大人しく由紀の胸元に収まった太郎丸を見届けて、幹久は軽く金属バットをくるりと回す。

 

「三人とも、気をつけてね」

 

 不安と憂いが入り交じった悠里(ゆうり)の声に見送られて、三人は屋上へ続く階段を降りていき、三階へと足を踏み入れる。

 

「……っ」

 

 そして、廊下に転がる多くの死体を見て言葉を失い、表情を青ざめた。

 想像以上の光景に、口元を抑え、顔を青白くさせた慈は小刻みに肩を震わせた。

 

「めぐねえ」

 

 そこに置かれる暖かい手。その手は震えておらず、力強さをしっかりと感じさせた。

 

「……だい、丈夫です。行きましょう」

 

 幹久は慈の次に胡桃の方に視線を移す。その顔は青ざめているが、慈ほどでは無く、スコップを握る手に震えは無い。

 三人は音を出来る限りたてないようにして歩き左右を見た。教室の方は床に伏せる『かれら』と思わしき死体だけ。

 

 その逆、職員室側は二人ほどの『かれら』が力なく立っているのが見えた。

 

「っ……!」

 

 胡桃はその片方を視界に納めた時、思わず唇を噛み締めた。

 

 親しい友人の末路にしては、余りにも悲惨過ぎる。

 

 休日は一緒に遊び、陸上では互いに競い合い、学校でも笑い合った仲だ。浮かび上がる思い出は山ほどある。それこそ、語り尽くせないほど。

 

「……俺が左を。恵比須沢は右を頼む」

 

「……いや、私が左をやる。私がやらなきゃダメだ」

 

 そんな気遣いはいらない。目を背けていられるほど、今の世界は優しくないはずだ。

 

「っ、あ」

 

 そう意気込みながら提案をはね除けたのは良いものの。

 改めて、対峙してみて思うのはただ一つ。

 

 ──怖い。ただただ単純にそう思った。

 

 だが、その横でしっかりと剣を構えるようにして金属バットを持つ幹久の力強さというか……頼もしさのようなものを感じて、恐怖で狭まった視界が大きく開く。

 震えを抑えるようにシャベルの柄を握り直し、引ける腰を元に戻して前を向いた。

 

 ゆっくりと呻きながら近づいてくる『かれら』に、胡桃は力一杯シャベルを突き出す。

 がむしゃらとも言える大雑把な攻撃は、運良く喉元に深々と刺さり抉った。

 

 シャベルから伝わってくる不快な感触。

 それに、背筋を凍らせて、悲鳴が上がりそうになるも、奥歯を噛み締めて悲鳴を上げないように我慢した。

 ずるり、喉元からシャベルを抜くと、友人だった存在は声も上げる事無く崩れ落ちた。

 

 それに、胡桃は呟く。

 

「……ごめん」

 

 懺悔するように、胡桃はシャベルの先端に付着した血を見ながら、聞こえてもない死体に謝罪する。

 

「くるみさん」

 

 その悲しげに俯く胡桃に慈は後ろから包み込むように抱きしめる。

 

「……辛かったら、いつでも言ってください」

 

「うん……ありがとう、めぐねえ」

 

 胡桃はやんわりとその抱擁から抜け出すと、しっかりとした足取りで幹久の隣に立った。

 幸い、これ以上の『かれら』はおらず、最奥の職員室前へと何事も無く進むことが出来た。

 

「後は、ここだけ……か」

 

「だな。パパッと調べようぜ」

 

 ここに来て、何か感傷深いものでもあったかのように呟く幹久に胡桃はバッサリとそう言い切った。

 

 そして、扉の取っ手に指を掛ける。

 

「え、ちょ、まっ──」

 

 小言で何かをいう幹久を無視しつつ、胡桃は音をたてないように扉をスライドさせた。

 職員室の中は他とそう変わらず、タールのように黒い血が地面にべっとりと付いて、散乱した書類や物が床に散らばっている。

 

 そして──

 

「──っ、かみ、やま……先生」

 

 職員室のなかに居たのはたったの一体。

 しかし、それは慈にとっては恩人のような存在でもあった同僚の成れの果て。

 

「……二人はここに」

 

 込み上げてくる慈の気持ちなど知らないと言わんばかりに突きつけられる言葉と進行を阻むように伸ばされた腕。

 

 慈は咄嗟にその腕を掴んだ。

 幹久は視線を神山の成れの果てから外さずに、困惑したように名前を呼んだ。

 

「めぐねえ?」

 

 何故だかは分からない。ちゃんとした理由も思い浮かばない。

 だが、これは、自分がどうにかしなければいけない事だと思った。

 

「……私が、やります」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──バリケード?」

 

「そう、バリケード。机とか重ねて紐か何かで縛れば、それなりに安全じゃないか?」

 

「あー、なるほど?」

 

 幹久の提案に自身の思うバリケード像を思い浮かべながら二人はその提案を聞き入れる。

 

「じゃあ、りーさんたちも呼ぶのか?」

 

「呼んどいた方がいいかな。めぐねえ頼める?」

 

「ええ、それは構わないけど……」

 

 慈の視線は廊下へと向けられる。それに釣られ、二人も廊下に目を向ければ、冗談でも気分が良いとは言えない惨状が広がっていた。

 

「……少し、時間をおいてから降りてきてくれた方が助かるかな」

 

「そう、ね。その方が良いと思う」

 

 いずれ二人もこのような惨状を目にすることがあるだろうが、それは今で無くとも良いだろう。

 

 そうして、めぐねえは屋上へと向かい、悠里と由紀に状況を説明しに行き、幹久と胡桃は時折悲痛な表情を浮かべながらも、死体を窓の外へと放り出した。

 

「っと……あれ、幹久?」

 

 最後の一体を外へと投げ捨て終わった胡桃は、姿が見えない相方の名を呼ぶ。

 しかし、返事は無く、その代わりに聞こえてきたのは教室の方からの物音。

 胡桃は音のした教室を覗き込むようにして様子を探ると、そこには明らかに他人の私物を漁る幹久の姿があった。

 

「何、してるんだ?」

 

 思わず声を掛ける胡桃。それに幹久は答えることなく、教科書などが入ったリュックサックをひっくり返して空にした。

 

 そして、それを背負うと誇らしげにこちらを見る。

 

「……ごめん、意味が分からない」

 

「だろうな。意味なんてないし」

 

「えぇ……」

 

 なんだこいつ、という胡桃の視線を物ともせず幹久はその横を素通りしていった。

 

「おい、何処行くんだよ?」

 

「下に材料集め」

 

 なるほど、と思うと同時に大丈夫なのかと心配になるが、くるくるとバットを器用に回している様子を見ていると、心配ないだろうと思えてきてしまう。

 本来なら一人で行かせるべきではない。最悪な事態が脳裏を過ぎるが、胡桃は何故か幹久なら大丈夫だと確信があった。

 

 故に、胡桃は遠のく幹久の背中を何も言わず見送った。そして、手に持つシャベルに移し、軽く振るう。

 

「……こう、か?」

 

 幹久がやっていたように、手首や腕全体を上手く使ってシャベルを回そうとした……が。

 

「──あっ」

 

 手のひらからすり抜けていくシャベルを見ながら、そんな声が出た。

 

 そして、聞こえてくるのは思わず耳を塞ぎたくなるけたたましい金属音。

 

 瞼をぎゅっと瞑り、両肩を跳ね上げさせた胡桃は咄嗟に前を見た。

 ……幹久の姿は見えない。どうやら、今の失敗は見られていないらしい。

 

 だが、ほっとするのも束の間。今度は背後から慌てた様子で降りてきた慈を含む三人の対応に慌てる。

 

「あ、いや! 大丈夫、大丈夫だから! ただ落としただけだから!」

 

 少しだけ頬を赤らめ、急いで地面に落ちたシャベルを拾う。

 

「本当に大丈夫なの、くるみ?」

 

「大丈夫、ホントに」

 

 心配そうにこちらを見る悠里に胡桃は全身を見せるかのように両手を広げて怪我が無いことをアピールした。

 

「良かった。それじゃあ、バリケードを……って、もとくんは?」

 

 胡桃の身に何の異常が無いことを確認した慈は、胸をなで下ろしながら提案者である幹久の姿が見当たらないことに気がつく。

 

「ああ、幹久なら必要な物を集めに行った。多分、すぐ戻って来るだろ。私たちはそれまでに……教室側から机を並べていくか」

 

 胡桃は荒れた教室を見る。それに釣られ慈たちも教室を見て、素朴な疑問を口にするように由紀が胡桃に質問する。

 

「これ、全部の机を廊下に出すの? くるみちゃん」

 

 残りの場所も考えれば、恐らく教室二個分は考えておいた方が良いだろう。

 

「おう、多分そのぐらいは必要かもな」

 

「それを私たち四人で?」

 

「四人で」

 

 元気よく即答する胡桃に悠里……いや、胡桃だけではない。

 慈も由紀も、そして、言った本人も思った。

 

 これこそ、男手が必要では無いのだろうか、と。

 

「……よし、やるぞー!」

 

「ラ、ラジャー!」

 

「わんっ!」

 

 胡桃の掛け声に戸惑いながらも由紀は便乗して、その声に反応した太郎丸が由紀の胸元で吠える。

 

 それに、悠里と慈は互いに顔を合わせ、軽く笑いあった。

 

「あ、でも太郎丸は逃げないようにしててね、ゆきちゃん」

 

「はーい」

 

 幸い、太郎丸が由紀に懐いているということもあって、最悪な事態に陥ることは無く、作業は順調に進んでいく。

 いくらか弱い女子とはいえ、四人もいればそれなりの速度でバリケードの基礎が出来上がっていった。

 

 後、もう少しといったところで中央階段から上がってくる幹久と、机を運ぶ胡桃がちょうど鉢合わせる。

 

「お疲れ。どんな感じ?」

 

「おう、教室側はもう少しだと思う」

 

 抱えた机を持ちながらそういった胡桃に幹久は驚いたような表情を浮かべた。

 

「随分と早いな」

 

「まあ、四人も居るし、中身も空だしな」

 

 何時もなら入っているはずの教科書類が入っていなければ、そこまで重たい物では無い。

 

「そっちは?」

 

「イマイチ。流石に購買まで突っ切る訳にもいかないから、あっちから回って行こうかな、って」

 

 空のままのリュックサックを見せつけながら幹久は階段を上りきる。

 

「そっか。まあ、あんまり無理すんなよ」

 

「りょーかい」

 

 若干疲れ気味のまま職員室側へと歩いて行く幹久を見ながら胡桃は「大丈夫か、アイツ」と呟き、後で様子を見に行こうと決めてバリケード作りに勤しむ三人に近づく。

 

「これで足りそう? りーさん」

 

「ええ、恐らく。幹久くんは何て?」

 

「イマイチだってさ。後、ちょっと疲れてるみたいで……私、様子見てくるよ」

 

 夕方の駅のホームから出てくるサラリーマンのような雰囲気を纏った幹久の後ろ姿を見ながら、胡桃は壁に立てかけていたシャベルを手に取る。

 体力的にはまだまだ余裕はありそうに見えるが、精神的に疲れ始めているのだろう。

 

 それは、悠里も感じ取っており、その二人が分かるのだから当然、慈も分かっていた。

 しかし、二人にここを任せておくのは危険だ。故に、慈はくるみに軽く頭を下げる。

 

「くるみさん、もとくんをよろしくね」

 

「おう、めぐねえも気をつけてな」

 

「もうっ、佐倉先生です!」

 

「えー、幹久は良いのに?」

 

「そ、それはっ」

 

 思わぬ返しに口ごもる慈。それに、胡桃は今にも舌を出しそうな悪戯っぽい笑みを浮かべて幹久の後を追いに行った。

 

「ふふっ、一本取られましたね。先生」

 

「はぁ、先生と言ってくれるのは悠里さんだけですよ......」

 

「どうしたの、めぐねえ?」

 

「……ほら」

 

 しょんぼりする慈とくすくすと笑う悠里。その二人のやり取りに疑問符を浮かべる由紀の三人は、少ししてからまた作業に戻るのだった。

 

 

 

 

 胡桃が幹久の後を追って、職員室側の階段を降りきると、そこにはトイレの前で膝を着いて、地面を見ながら眉を顰める幹久の姿があった。

 

 そして、胡桃が声を掛ける前にトイレへと入っていく。

 その後を追って胡桃も周囲を警戒しながら、トイレ前へと辿り着き、思わず「マジかよ」という声を零す。

 

 少し視線を上に上げれば男女を表すシンボルが描かれており、幹久が入っていたと思われるのは赤色の……つまり女子トイレ。

 胡桃も入ってみれば、そこには神妙な顔つきで今にも個室を調べようとしている幹久がいた。

 

 正直、引いたと言っても過言では無い。でも、コイツもやっぱ男なのだろうと内心思いつつも、そこまで軽蔑する気持ちは湧かなかった。

 

 だが、それとは裏腹に自分でも驚くほど呆れた声が出る。

 

「お前……女子トイレに入るかよ? 普通」

 

「っ、ストップ」

 

「はぁ?」

 

 焦った反応をするかと思いきや、幹久は口元に立てた指を当てて歯を見せた。

 予想とは全然違う反応。そして、その静かにというジェスチャーが何を意味するのか理解した胡桃は手に持ったシャベルを構える。

 

 何を勘違いしているのだろうか。彼より自分の方が煩悩に塗れているような気分になる。

 

 後で謝ろうと心に決めながら、こちらを手で制する幹久が個室に一歩足を近づけた、その時。

 

「──だ、誰か……そこにいる、の?」

 

「っ!?」

 

 声が個室の方から聞こえた。

 震えて聞き取り辛いが、間違いなく生きた人間の声だった。

 

「三年の本城幹久だ。大丈夫、今は危険じゃない」

 

 人を落ち着かせる声とは真逆の力強い声で言った幹久。この場合、それが正しいのかは分からない。

 ただ、個室の中に隠れていた彼女にとっては、それが正解だったようだ。

 

 力強い生気を感じさせる幹久の声に誘い出され、カチャリとロックが外される音が響く。

 そして、慎重に、ゆっくりと開かれた個室の扉から出てきたのは、死人のように疲れ切った表情をした女子生徒だった。

 

「おいっ、大丈夫か!」

 

 シャベルを床に寝かせ、胡桃はその女子生徒に近づき支えるように肩を持つ。

 

「わ、私っ、何が起きたのか……そ、それで、取り敢えずここに隠れてっ! そしたら……っ!」

 

 彼女が何を見たかは分からない。ただ、トイレの床にこびりついた赤黒い血と、それが線状に出口へと続いていることから、何となく想像はついた。

 

「取り敢えず、三階へ行こう。アイツらが来ないとは限らない」

 

 出口から外を伺っていた幹久がこちらに視線だけ向けながら言う。

 

「だな、ほら掴れ」

 

 胡桃は女子生徒の腕を自身の首に回して立ち上がる。そして、歩き出そうとしたが、想像以上の重たさに女子生徒を見た。

 

「ご、ごめん。足が……」

 

 ダラリ、とまるで芯が抜かれたように力無く地面に着く彼女の足。

 小刻みに震えてはいるが、いくら頑張って力を込めようと、その足が身体を支えることは無かった。恐らく、緊張が解けて腰を抜かしてしまったのだろう。

 

 こんな時に、なんて思わない。寧ろ、腰を抜かしていて当たり前とも言える状況だ。

 

「……恵比須沢、リュックを持ってくれ」

 

「あ、ああ、分かった」

 

 その状況を見た幹久が背負っていたリュックを胡桃に手渡すと、そのまま女子生徒の前で屈んだ。

 意図を察した女子生徒は倒れるように幹久の背中に抱きつき、その首元に両手を回す。

 

「……そこは、お姫様抱っこじゃないのか?」

 

「えっ?」

 

 ちょっとした自分の乙女な考えが思わず言葉として出る。

 

 それに、きょとんとした幹久と似たような意味を含んだ視線を向ける女子生徒の様子を見て、ハッとした胡桃はわざとらしく咳払いをした。

 

「んんっ……気にしないでくれ」

 

「……ああ、うん」

 

 頬を赤く染める胡桃を余所に、幹久はそのまま抵抗もなく立ち上がり、左腕だけ彼女の膝裏へと通すと、右手にバットを持った。

 階段はすぐそこだが、万が一と言うのもある。合理的で、安全面を考慮した運び方だ。

 

 ……うん、幹久の考えが一番正しい。お姫様抱っこなど、もってのほかだろう。

 

 胡桃が出口から頭を出して周囲を見る。幸い、近くにいない。

 振り返り、幹久を見ながら頷いて先に行くよう促す。

 音を立てず、しかし、素早く動く幹久の後を胡桃は守るように追った。

 

 特に問題無く三階へと戻ってきた二人は、作業をしていた三人に手を振りながら呼びかける。

 そして、幹久の背負っているものに気がついた三人は驚愕に顔を染めた。

 

「も、もしかして、たかえちゃん!?」

 

「ゆ、ゆき……? ほ、本当に、ゆきだよ、な?」

 

 彼女、柚村(ゆずむら)貴依(たかえ)を知っていた由紀は、思わず抱きつきそうになるが、貴依が居る場所は幹久の背中。

 涙を浮かべ、どうすれば良いのか分からなくなった由紀は最終的に側にいた悠里に抱きついた。

 

「うわあぁぁ! 良かったよぉぉぉ!」

 

「ゆきちゃん……」

 

 悠里は由紀の背中に手を置き、あやすように優しく抱きしめる。

 その泣いている由紀を見て、貴依も込み上げてくるものがあったのだろう。

 

「うっ、うう……」

 

 静かに幹久の背中で涙を流した。

 

「もとくん、取り敢えず校長室へ。そこにソファがあるから柚村さんを横にさせてあげて?」

 

「分かった」

 

「ほら、ゆきちゃん。一緒に行きましょう」

 

「うんっ……!」

 

 胡桃は校長室に入らず、その扉の真横に立ってシャベルを持ったまま壁に寄りかかる。

 

 そうして、少しすればすぐに幹久も出てきた。

 

「……で、どうだった?」

 

 要領を得ない胡桃の問いかけ。しかし、その要領を理解していた幹久はその問いに淀みなく答えた。

 

「さあ? 多分、これから調べるだろう。そこら辺は若狭が上手いことやるさ」

 

 どうやって『かれら』が出てきたのかは分からない。ただ、噛まれたら『かれら』になるということは、初日から大体察しが付いていた。

 

「それもそうか……ああ、後、お前がいるんじゃあ、脱がすもんも脱がせられないもんな」

 

「やめてくれ……ただでさえ、肩身が狭いんだから」

 

 気まずそうに後頭部を掻く幹久に、胡桃は悪戯な笑みを浮かべて脇腹を肘で突つく。

 

「さっ、バリケードを作ってしまおうぜ」

 

「だな......終わらせよう」

 

 二人はお互いに武器を手に持ち、バリケード作りへと集中するのだった。

 

 

 




ちょっとしたくるみ主体パートになりました。

後、若干各キャラの性格などが掴みきれていないので、口調等いろいろと可笑しいですが、大目に見てくれると投稿速度があが────。
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