【試走】がっこうぐらし! RTA 学園ヒーロールート【完結】 作:haku sen
感想、評価並びに誤字脱字報告ありがとうございます。
今回も長くなったのでぶった切りました。
お菓子こそ至高な実況プレイ、はーじーまるーよー。
前回、購買から帰ってきたところからスタートです。
ただ、残った時間でやることはバリケードの強化ぐらいですかね。購買で手に入れたロープ等を使ってガチガチに補強しましょう。
……おーけー、大丈夫でしょう。後は、また深夜の見張りを申し出て寝ます。
やっと、真夜中の探索と経験値を稼ぐことが出来そうです。前々回は悉く邪魔され、職員室に行くはめになったかと思えば、ホモくんが弱体化して……本当に散々な目に遭いました。
しかーし! 今回こそ大丈夫です。全員、前回の
ただ、やっぱりホモくんの弱体化が痛いです。戦えないこともないですが、正面切っての戦いは避けたほうが良さそうですね。余りにも不安要素が多いです。
ここは、大人しく暗殺を中心に戦った方が良いでしょう。囲まれたら即撤退します。
後、出来れば地下の様子も確認しておきたいんですよね。
どうやって迷い込んだか知りませんが、逃げ込んだ際に『かれら』がいたりする場合があります。
疲労が蓄積された状態で相手取るのは難しく、危機を脱した直後ということもあって油断も隙も多いです。
なので、一人で動けるときに確認しておきたいんですよね。それこそ、称号を獲得する寸前で誰かしら逝ってしまうかもしれません。
目標は地下の確認およびに安全確保。それと同時にサブとして『剣術』の──
「──今日はもういいんじゃないか? 大丈夫だろ」
おっ、そうだな。(適当)
『剣術』のレベルを上げることを視野に入れて、行動していきましょう。
正直、幼馴染みシステムで最も大切だと言われる
それに加えて、ホモくんの弱体化。徐々に回復してはいますが、それでもショッピングモールの攻略は鬼門とも言え…………ん?
ちょ、あれ? ホモくーん? 寝床に入るのはまだ早いって。
夜はこれから……くそっ、動けこのポンコツが! 動けってんだよ!?(懇願)
ああっ!? そういうことか! 『かれら』が一人もいなかったから──
……おはようございます。
清々しい、良い朝ですね。全然回復していませんが。
このように、夜の内に『かれら』の存在を確認できていなかったら警戒心が薄れます。
そうなると、初回は強制的に全キャラが就寝しちゃいます。来ないと分かっているのに見張り立てても意味無いですからね、仕方ないね。
加えて、今度から見張りという概念そのものが無くなります。これは、『かれら』の生態の第一段階を理解したという証です。
これによって、次回から見張りを立てる必要が無くなり、より良く体力等を回復出来るようになるでしょう。
つまり、言ってしまえば今回から原作のような生活が本格的に始まります。
まぁ、こちらとしてはマズ味ですね。通常プレイならまだしも、効率を重視するのならば、余りやらない方がいいです。
さて、失敗を悔やんでいても先には進みません。ですが、ちょっとした憂さ晴らしはします。全員をたたき起こしましょう。(ゲス顔)
ほら、起き──
「──んっ」
ヌッ、めぐねえは起きてしまいましたか。流石は社畜の鑑でもある公務員ですね。格が違いますよ。
じゃあ、改めて他の皆を叩き起こし……なに、どうしたの、めぐねえ?
んー、話があるようですね。ここは素直に従いましょう。恐らくイベントです。
まあ、これは所謂アレです。幼馴染みイベントってヤツです。めぐねえとの関係性は『従姉』ですから、従姉イベントと言ったところでしょうか。これもうわかんねぇな。
こういう風に、状況が落ち着けば関係性に伴ったイベントが発生します。
『恋人』ならば、二人っきりでイチャイチャしたり、一つ下の『親友』であれば、好感度次第では告白イベントだったり……関係によって大きく内容が変わります。
この場合は……何でしょうかね? 従姉は流石に分かりません。
「こうしてゆっくり話すのも、何か久しぶりだね」
ふーん、ただの従姉弟同士というか、姉弟同士の会話みたいなものですね。
生徒会室でコーヒーを飲みながら仲睦まじく会話をしていますが、(こちらとしては知ったことでは)ないです。
なので、この状況を利用して今日の動きを軽く説明しましょうか。
今日は、こういったイベントを消化しつつ、食料調達へ赴きます。
あのSAN値直葬マニュアルのせいで、各種パラメーターが大分削れてしまっていますが、時間経過とともに微量ながら回復していますので、余程のことが無い限り大丈夫でしょう。
コーヒーやお菓子、後は好物などによって多少は改善できるので、今のところ何とか戦えそうです。ただ、睡眠時の回復が平均以下だったのがちょっとネックですね。
やはり、根本的な解決をしない限り雨の日は危険か……。
私の経験上、後少し回復してくれればショッピングモールも何とか攻略出来るはずです。
ですので、今日中にホモくんには英気を養ってもらい、明日にはショッピングモールに……延いてはみーくんの救助に行けたら良いなと思っています。
ただ、現状として行くためのフラグが何とも微妙なんですよね。
一応ながら規定を満たしてはいますが、確実に行けるかと言うと微妙なところです。
何だかんだ言って、チョーカー姉貴や太郎丸が序盤からいますので、フラグの一因ともなる物資の枯渇は問題ないのです。
ですが、学生食堂内部にある厨房の食料庫(大型冷蔵庫)を襲撃して、手に入る食料次第では行く必要性が無くなります。
潤沢にあった場合は高確率で行く必要性が無くなり、少ないのであれば問題無く行けるでしょう。
ただ、その量が中途半端であれば説得次第で行けたりします。くっ、ゆきちゃんが幼馴染みならば『話し上手』の技能が取れたのにっ……!
……よし、予定変更です。今日中に頑張ってゆきちゃんの好感度を上げます。
今日中に技能を手に入れることは難しいかもしれませんが、好感度が高ければ擁護してくれることがあります。
つまり、『話し上手』のゆきちゃんを側に置いて説得できるということ。その場合、確率が上がりますし、『話し上手』で更に確率アップです。
最低でも『親友』まで持って行ければ擁護してくれるはず。
食料庫がある厨房の方は、明日に行ってもまだ雨の日までにはギリギリ間に合いますので、今日は積極的に交流を図っていきましょう。
今のところはヒーローとして順調(?)なので、好感度に関しては問題ないはず。そこっ! ヒーロー的な行動してた? とか言わない!
確認のためにも軽ーく、ここでステータス画面を開きましょう。
えーっと、現在の関係性は……。
糸目のまま笑顔を浮かべているりーさんは『友人』。
キリッとした笑顔を浮かべているくるみちゃんは『親友』。
にぱーっとしているゆきちゃんは『友人』。
純真な乙女の笑顔を浮かべているチョーカー姉貴は『親友』。
相も変わらず満面の笑みを浮かべているめぐねぇは『従姉』。
めぐねぇの『従姉』というパワーワード感よ。まるで姉を名乗る不審者を彷彿とさせますね。
いや、違う。そうじゃない。
りーさんは分かる。くるみちゃんも分かる。ゆきちゃんも分かる。めぐねえはそもそも変わってないからスゲーよく分かる。
だが、チョーカー姉貴はどういう事だああ~~~~っ!?
なんで『恩人』じゃあねぇーんだよォオオオオオッ!!?
どういう事だ! どういう事だよッ!?
……ふぅ、失礼。取り乱しました。ちょっと、振り返って見ましょうか。
圧倒的な恐怖と命の危機を感じているところに颯爽と現れるホモくん。
それによって助かったチョーカー姉貴は、腰を抜かしてしまい、そのままホモくんの背中に乗って救出された……と。
これは……普通に『恩人』になるのでは? というか、通常プレイではこれで『恩人』になるはず何ですけど……んん~?
…………まま、ええやろ。こっから『恩人』になるから。(震え声)
「ふぁ~……あっ、お、起きていたのね、幹久くん。それに、先生も」
さて、貴重なりーさんの欠伸をスクショしたところで幼馴染みイベントも終わり、ぼちぼちみんな起きてきましたね。全員が揃ったところで軽く朝食と行きましょう。
まあ、野菜中心のものになりますが、前回の購買で取ってきたお菓子等がありますので、まだマシと言えます。
「わーっ! お菓子だー!」
「朝からお菓子か……」
ゆきちゃんが好きだからです。
「……きゅうりの横にうんまい棒があるのは何でだ?」
ゆきちゃんが好きだからです。
「幹久くん……あの、レタスの上にポテチを置くのは、ちょっと……」
ゆきちゃんが好きだからです。
「ま、まあ……多少はね? 仕方ないところもあるし、お昼はちゃんとしたものだから」
ゆきちゃんが(略)。
いやぁ、コレばっかりは仕方ないですね。そういった技能なんて持ってないんで、軒並み酷評を貰ってしまいます。そもそも、(料理じゃ)ないです。
だが、しかーし。
「いただきまーす!」
お前の事が好きだったんだよ! (大胆な告白)
そう、ゆきちゃんなら喜んで食べてくれます。かわいいし、優しいし、こんなことで好感度が上がるとか、天使かな?
さて、
ゆきちゃんのすることが土いじりなら土いじりをし、太郎丸と遊ぶというのなら太郎丸と遊びます。
つまり、ゆきちゃんのすることに追従する形で動いていきます。これも、好感度稼ぎのため……誰だよ、ヒーローすれば好感度がガバらないとか言ったヤツ。
え? お前だろって? 仰る通りです。
話は戻りますが、この土いじりという名の菜園の手入れ、これは生命線の一つなので割と重要です。
なので、ちゃんと専門家であるりーさんの指示に従いましょう。下手をするわけにはいきません。
「幹久くん、そこの培養土持ってきてくれない?」
了解しました! ホモくんにお任せ下さない!
「おお~! もとくん力持ち!」
ダルルォ!? 上限削れていようがコレぐらいなんてことないっスよ。
「じゃあ、今度はこっちにもお願いできる?」
おっしゃ、土は任せろー。(バリバリ)
……ふぅ、こんなもんですかね。
「ありがとう、助かったわ」
……あれ、これりーさんの好感度が上がっただけじゃね? それはいけません。ほら、ゆきちゃん、お菓子よー。
「ありがとう!」
可愛い。ゆきちゃんの好感度上げたいなら、やはりこの手に限りますね。
さて、もう昼なので昼飯にしましょう。
っと、言ったところで今回はここまでです。
ご視聴ありがとうございました。
§ § §
「──よし、こんなもんだろ」
それを、軽く指で弾くように触れば、弦楽器にも似た音が鼓膜を揺らした。
「くるみ、そっちはどう?」
ちょうど階段を上がろうとした胡桃に上から声がかかる。
胡桃が階段を昇りながら顔を上げれば、こちらを見下ろす
「こっちは大丈夫、そっちは?」
「ええ、こっちも問題なさそう。これで多少は安心出来るわね」
二人は足並みを揃えて月明かりに照らされる廊下を歩く。
そして、前方に見えてくるのは小さい正方形の形をした人工的な光。それが、生徒会室の扉から伸びていた。
その人工的な光が漏れている扉を開けば、「おかえり!」と元気の良い声が二人を出迎える。
「おかえり、二人とも。大丈夫だった?」
「おう、アレだったらそう突破されることも無いだろ」
あれほど頑丈な壁だ。『かれら』と対峙したことがある胡桃は、束になって迫ってきても大丈夫だろうと率直に思った。
「まあ、でも一応は見回った方がいいよな」
長机を二つ合わせた大机を囲むようにして座る全員に、
「でも、二階にアイツら居なかったけど?」
大机の中央に置かれたチョコレート菓子を手に取りながら、
「……そうね。確かに、姿が見えなかったわ」
悠里もそれに合わせて中央のお菓子に手を伸ばして、貴依の主張に同意をする。
「なんで、居なかったんだろうね?」
既に大量のビニールの包みを目の前に広げる
「何で……でしょうね。もしかして夜は帰っている、とか?」
由紀の疑問に眉間の皺を寄せ、深く思考を巡らせる慈は中央のお菓子の山に自然と伸びる手に気がつき、ちょっとだけ恥ずかしそうにしながら小さい物を手に取った。
「今日はもういいんじゃないか? 大丈夫だろ」
最後にうんまい棒を手に取った胡桃は大雑把に幹久の提案をそう締めくくった。
「本城、気持ちは分かるけど……身体が持たないんじゃない?」
胡桃の言葉に続くようにして言った、貴依の言葉に幹久を除く全員が同意するように首を縦に振った。
ほぼ全員が前のような睡眠を取れていない。
何かと忙しい慈は似たようなことがあれど、学生の身でこのようなサイクルで睡眠をすることなど、経験に無かっただろう。
故に、その身体と脳は想像以上に疲労を蓄積していた。
「……だな。扉を完全に閉め切って、朝確認する感じで行くか。それで問題ないよね、めぐねえ?」
「……えっ? そ、そうね! 今日はゆっくりと休みましょうか」
視線が中央にあるお菓子に向いていた慈は慌てたように、幹久の言葉に反応する。
それは、誰がどう見てもお菓子を欲しているのが分かった。
「どうしたの、めぐねえ?」
「めぐ……先生も遠慮せず食べればいいのに」
由紀と貴依の言葉に慈は肩をビクつかせる。
その慈の仕草に思い当たることがあった幹久は、気がついたことそのまま口にした。
「ああ、確かにこんな時間帯にお菓子とか食べたら太るかもね」
「うっ!」
頬杖をつきながら、何気なく言った幹久の言葉に反応する慈。
否、反応を示したのは慈だけでは無かった。
中央に伸びた手を瞬時に戻す者。お菓子を口に含もうとしたまま固まる者。そっと自身が食べたお菓子の包みを隠す者。下を向いて押し黙る者。
全員、反応は違ったが、共通して押し黙り、お菓子に手を伸ばさなくなったのは確かだ。
「……ごめん。デリカシーに欠ける発言だった」
近しい存在に向けて言った言葉が、この場にいる全員に効いてしまったことを瞬時に察した幹久は、同じように下を向いて謝罪の言葉を口にする。
「本城……アンタ、空気読めないとか良く言われない?」
「……良く言われる」
その貴依の指摘に答えた幹久の言葉を最後に、その事に触れる者は誰もおらず、そのまま各々やるべき事やって床に就くのだった
「……んっ」
慈は朧気な視界を揺らしながら、上半身を起こす。
視界、意識、どちらも鮮明になった辺りでもう朝になったことを認識する。
そして、その視界の端で動くものを確認して小さくか細い声で言った。
「──おはよう、もとくん」
「おはよう、めぐねえ」
体操服の上着の袖を腰に巻いて、背伸びをしている幹久を視界に収めながら慈も同じように上半身を伸ばした。
そして、幹久は他も起こそうと行動に移そうとするが、それを慈は唇に立てた指を当てて制止の意を示す。
首を傾げつつも、素直に応じた幹久に慈はまたジェスチャーで隣の生徒会室に行くように指示をした。
幹久を先に行かせ、自分もなるべく音を立てないように準備すると部屋を出て、待っているであろう生徒会室へと向かう。
扉を開けば、鼻先を擽るコーヒーの香りと人工的な光とはまた違う暖かみのある朝日が慈を出迎える。
「どうぞ」
「ありがとう」
席に着くと同時に目の前に置かれるコップ。
それを両手で包み込むように触れば、じんわりと手のひらを通して感じる熱さ。
幹久も慈の前に座り、コーヒーに手をつける。
「こうしてゆっくり話すのも、何か久しぶりだね」
「入学式以来だっけ?」
「えー、覚えてないの? 去年の正月以来だよ」
それを聞いても、未だに首を捻る幹久に慈は仕方ないかと思う。
あの時、話したのは取るに足らない事だったのだから、忘れていたとして可笑しくは無いだろう。
学校はどうだとか、友達と上手くやっているのかとか、今思えばまるで母親のようなことを聞いていたと思う。
そんなつもりは無いのに、つい気になって聞いてしまうのだ。
「本当に……随分と大きくなったね」
気がつけばそんな言葉が口に出ていた。自分でもビックリするほど勝手に出た言葉に幹久は目を丸くし、そして笑った。
「ははっ、お母さんかよ。めぐねえは逆に老けたな」
「むっ、もとくん! 例え、近しい仲でも言っちゃいけないことがあるんだよ!」
それこそ、女性に対してそれはNGワードの一つと言っても過言では無い。昨日のこともそうだ。女性が気にしていることを口に出して言うなど……。
「ごめんごめん、今度から気をつけるよ。親しき仲にも礼儀あり、だもんね」
「……ちゃんと分かってるのに、体現出来てないのは減点かな~」
そう言うと彼は何も言わず笑顔を見せる。
昔からそうだった。悪戯がバレた後はそうやって屈託のない笑顔を浮かべる。
それに、みんな毒気を抜かれて怒ることが出来なくなる。
しょうがない、仕方ない、と彼の笑顔に釣られてこちらも笑顔が浮かんでしまうのだ。
彼の笑顔はきっとこの状況でも前を向かせてくれる力がある。
なら、私に出来ることは……大人として子供の笑顔を守るのは当然の義務だ。
「もとくん、絶対に何があっても守るから……ううん、みんな守ってみせるから」
それは何時の日か心に決めた一つの意地。今、それを口にしたことによって、その意地は覚悟へ変わった。
何が何でもこの子たちだけは守ってみせるという覚悟へ。
「…………そっか。なら俺はめぐねえを守るよ。どんなことからも、俺が守る。それなら皆でハッピーエンドを迎えられる、かな?」
「──……もうっ、そこは自信持ってハッピーエンドって言わないと」
少しだけ小っ恥ずかしく感じた慈は、それを隠すようにコップを口元に持って行く。
その様子に気がついた幹久も、自分が随分と恥ずかしいことを言ったことに気がつき、同じようにそっぽを向きながらコーヒーを口にした。
気まずい空気がその場を包む。何か、話題を振ろうと慈が口を開いたその瞬間。扉が開かれ、眠たげな表情を浮かべた悠里が入ってきた。
「ふぁ~……あっ、お、起きていたのね、幹久くん。それに、先生も」
二人がいたことに気がついた悠里は咄嗟に開いた口を手で隠す。
まだ慈は良い。だが、幹久、異性ともなれば話は変わる。
眠気が急速に羞恥へと変わり、顔が自然と赤らんだ。
「おはよう、若狭」
「おはようございます、ゆうりさん」
二人は何も見なかったように朝の挨拶をする。
「おはよう、ございます」
それはそれで嬉しいが、恥ずかしさというのは見て見ぬフリをしてくれる気遣い、というのが助長させるものである。
そんな悠里の気持ちは余所に、その背を追うようにして胡桃や貴依と言った残りのメンバーも起きてきた。
「おはよう、三人とも早いな」
「……おはよう」
「おは、よう……」
それぞれ、何時もの場所の椅子に腰を下ろす。未だ眠たそうな由紀は椅子に座った途端、上半身を机に倒した。
「朝食にするか。若狭、野菜あったっけ?」
「ええ。というか、野菜しか無かったと思うけど?」
幹久に言われるがまま、悠里は収穫していた野菜を並べていく。
その前で顎に手を当て、眉間の皺を寄せながら何かを考える幹久は、ふと天啓を得たかのように持っていたリュックサックを漁りだした。
そして、そこから取り出したのは何種類かのお菓子。
「──こんなもんかな」
紙皿に盛り付けられた野菜に加わるスナック菓子。随分と異質で、違和感を禁じ得ない。
そして、その朝食に各々は多種多様な反応を示した。
「わーっ! お菓子だー!」
好意的な反応を示す由紀は野菜と共に添えられたお菓子の数々に瞳を輝かせる。
しかし、好意的な反応を示したのはその由紀だけ。
「朝からお菓子か……」
「……きゅうりの横にうんまい棒があるのは何でだ?」
「幹久くん……あの、レタスの上にポテチを置くのは、ちょっと……」
諦観に近い何かを思う者。少し的を外れた疑問を抱く者。野菜への冒涜だ、とでも言いたげな表情を見せる者。
反応は違えど、気持ちは大体共通していると言ってもいいだろう。
「ま、まあ……多少はね? 仕方ないところもあるし、お昼はちゃんとしたものだから」
「野菜だけよりかは、マシだろ?」
確かに、マシではある。理屈は分かるし、理解も出来る。
だが、これは……と、余りにも異質で見たこともない光景に口を閉ざしてしまう。
「──いただきまーす!」
ただ、由紀は喜々爛々とその朝食を口にした。
そんな由紀の姿を見れば、拒絶を示した三人も渋々と手をその朝食へと伸ばす。
味に関して、まあ、相反する二つを合わせないで食べれば問題は無い。それに、確かに味気ない野菜だけの食事にお菓子が加わっただけで、随分と見違えたようにも思えた。
そんな変わった朝食を終えた全員は各々やるべきことを決めるため、飲み物を片手に話し合う。
「私は、あのマニュアルが他に無いか職員室を探してみるね」
「ああ、じゃあ私もそれ、手伝うよ」
慈と貴依は他に職員用緊急避難マニュアルが無いか探しに職員室へ。
「見回りは私に任せてくれ。終わったら、そっちと合流するよ」
胡桃は見回りとバリケードの確認及び慈たちの手伝い。
「なら、私は畑の手入れね」
「私も手伝うよ、りーさん!」
「同じく。力仕事もあるだろう」
残りの悠里、由紀、幹久は今や生命線の一つとも言える屋上の菜園の手入れへ。
「じゃあ、今日はそれで行きましょう。あっ、お昼にはまたここに集まってね」
「「はーい」」
慈の言葉を締めとして全員が、先ほど言った目的のために動き始めた。
澄み渡る青空に燦爛と浮かぶ太陽が、屋上で育てられた植物たちを照らす。
心地の良い晴れ模様のなかで、額に汗を浮かべながら作業をする悠里は一息つきながら、首に巻いたタオルで顔を拭く。
「こんなものかしら」
何時ものように、こんな状況になる前からやっていたことを何処か新鮮な気持ちでやっていた。
「りーさん! 変な虫がいる!?」
「クウゥ……」
そんな声が明後日の方向から聞こえてくる。
声のした方向へ振り返ればしゃがみ込みながら、太郎丸と一緒にその虫を恐れながら見ていた。
変な虫……悠里からすれば虫そのものが変なものに感じる。そして、由紀が言う変な虫とは恐らく何度も見たことがある種類のものだろうと確信を持って思った。
「ゆきちゃん、別に気にしなくていいわよ」
故にそう言う。既に対策をしていることに注意を割く必要が無い。
「幹久くん、そこの培養土持ってきてくれない?」
今度は逆の方向に視線を動かし、そう言った。
すると、そこで同じく作業をしていた幹久は声に反応し、視線を一度自分に向けて、そのまま端に積み上げられた土のうに移動させる。
「一個?」
「そうね……二袋お願い出来るかしら?」
幹久は一旦作業する手を止めると、土のうがある方向へ赴き、そのまま二袋いっぺんに持ち上げて見せた。
「おお~! もとくん力持ち!」
由紀から感嘆の声が上がる。
男子、それも運動部に所属しているのだから普通かもしれないが、土のうの重さを知っている悠里は由紀と同意見の言葉を心の中で思った。
「ここでいい?」
「ええ、ありがとう。流石は男の子ね」
「どういたしまして」
特に誇示する訳でもなく、世辞の言葉も淡々と受け取る姿勢は一見冷たいように思えるが、悠里からすれば好印象の分類に入る。
だからだろうか。つい、それに頼ってしまう。
「じゃあ、今度はこっちにもお願いできる?」
「こっちに二つ? 了解」
「私も手伝う!」
また同じように二つ持とうとする幹久にストップをかけた由紀は、張り切るように土のうを持とうとし、想像以上の重たさに「重いぃ~」と苦悶の声を上げた。
それを横で見ていた幹久はその姿に加虐心でも刺激されたのか、由紀の持つ土のうを片手で支えたり、支えなかったりして反応を楽しみ始めた。
そして、その行動に由紀が怒るギリギリを見計らって二つとも持ってみせる。
それに何とも言えない表情を浮かべる由紀だったが、その表情の節々には楽しさのようなものが滲み溢れているのは見れば分かった。
「二人ともー、遊んでないでさっさと終わらせましょう」
「はーい!」
「りょーかい」
間延びした返事が返ってくる。
前の時が楽しくなかったわけではない。学校行事よりかはやりがいもあったし、楽しいとも感じていた。
だが、今の悠里は前の日常より充実感を得ていた。
何とも皮肉なことだ。非日常が日常を彩るスパイスとなるなど、考えたことも無い。
不安はずっとある。ふとした時に恐怖で身体が竦むこともある。
しかし、それでも今この時間は罪悪感を抱くほど、充実した何かを感じていた。
「ありがとう、助かったわ」
「ふっふっふっ、これぐらいどうってことないよ」
「わんっ!」
得意げに胸を張る由紀と肯定するように吠えた太郎丸。
「いや、運んだの俺……」
隣で土のうを地面に下ろした幹久は、信じられないとでも言うようなそんな言葉を零した。
クスッと思わず笑みが零れる。こんなたわいもないやり取りが殺伐とした状況を彩らせるのだ。
「──むっ、それは!」
「幹久くん、お菓子持ってきてたの?」
作業を終わらせ、校舎内に戻ろうとしたときのことだった。
唐突に幹久が何時ものリュックサックからお菓子を取り出して、誇らしげに由紀と自分にお菓子を手渡してきたのだ。
「ありがとう!」
「え、ええ……ありがとう」
何故? という疑問と同時に、やっぱり男の子って良く分からない、と悠里は心の中で思った。
ポイントは純真な乙女の笑顔。チョーカー姉貴はもっと流行っていい。流行らせコラ!