強き絆の心とありふれない魔界の王候補の異世界道中記 作:カオスサイン
EPⅠ「異世界トータス」
Side晶
「くう!?…皆は大丈夫なのか?!」
「あたた…」
「御主人怪我はないか?!」
「あ、ああなんとかな…」
「何だったんだ今のは一体?…」
「いや…俺にも全く分からん…」
魔法陣に教室が一瞬にして包まれ、しばらくして目を覚ました俺は他の魔物の襲撃によるものなのかと思ったが一範囲だけに絞って放てる呪文を持っている魔物など心当たりが無く、リースや他の本も無事である事を確認済みなので違うと思い周囲を見渡すと全く別の場所に俺達はいた。
どうやら巻き込まれたクラスメイト達は皆無事なようだが…
「此処は何処なんだ?…」
俺達は儀式の祭壇を行う様な場所にいた。
これって真逆…
「これはようこそおいで下さいました勇者様方!我々の世界トータスへ!
私は聖教教会の神官であるイシュタル・ランゴバルドと申す者」
「…」
俺達の前に何処からどう見ても胡散臭さしか感じないジジイがそう言いながら現れた。
そうだ、リースとガッシュのタッグで叩きのめしてやったデカイ口叩いてた割には超弱かったフェインみたいなそんな感じの。
「トータス?我々の世界?…」
「どう考えても異世界召喚だとしか考えられないですね…」
クラスメイトが疑問を口にするとハジメがそう結論付ける。
「貴方方は我等の創造神「エヒト」様の下された神託によって召喚されました。
詳細は王城へ御案内している間にお話し致しましょう」
ジジイは気色悪い笑みを浮かべながら何故俺達がこの世界に呼び出されたのかを語っていく。
要約するとこうだ、この世界の人間が急激に力をつけてきた魔族によって滅ぼされそうになっているから神様の言葉通り俺達に戦争に加担しろとの話。
俺の戦友達が聞いたら間違い無く皆口を揃えてこう言うだろう。
「ふざけないで下さい!」
うんうん!って愛子先生が言うのかい!
まあ、先生という立場上もあって言わない筈がないか。
あんま威厳がないけど…。
その後、あの空っぽ野郎がジジイの頼みを聞くとかアホな事を言い出した為に俺は反論する。
「おい、空っぽ偏り偽善野郎お前ふざけてるのか?
戦争したけりゃ勝手にお一人でどうぞ。
少なくとも俺はこの馬鹿げていて無益でしかない戦争になど手を借したりするつもりは微塵も無いぞ!」
「馬鹿げている?君こそ何を言っているんだい?この世界の人達は実際に窮地に陥っているんだぞ!」
はああこの馬鹿は…俺はさっきのジジイの態度といい今の空っぽ野郎の言葉に心底呆れた。
俺達が行っている魔界の王選定の戦いとこの世界が行っている戦争は大いに訳が違う。
俺達の行っている戦いにはそれぞれが思い抱く王になる為にという意義がある。
一方のこの世界が行っている戦争には明らかにそれが無い。
ジジイのあの気色悪い表情を見た限りこの世界の神(笑}の言葉に疑いなど微塵も持っておらずさも当然といった態度のいわゆる使い走りのような奴だ。
それだけでその神が神と呼ばれるべきではない碌でもない奴だという事に十二分に確信が持てた。
「ならテメエは敵だとされている魔族の人達の立場にもなってみろよ。
テメエの言っている事は片方の言い分しか聞かないで一方的に滅ぼすと言ってるのと同じ事なんだぞ?
大体、窮地に陥っているのなら何故全くの無関係、無縁でしかない俺達じゃなくて戦い慣れている筈のこの世界の人達に力を与えないんだこの世界の神って奴はよ?」
「そ、それは…色々と事情があるんだろう?!」
「そんな答えしか出ないのならテメエの偏った偽善に皆を巻き込もうとするな!
テメエとこれ以上問答する事は無い」
「なんだと!?…」
あのジジイを見ているとそういう事は一度も無いのだろうと俺は確信していた。
空っぽ野郎は喚くが俺は完全に無視を決め込む。
そして俺達は王城へと連れられ其処で歓迎を受ける事になるが…この国ハイリヒ王国の国王だという人物がジジイの手にキスしているのを見てドン引きした。
リースも後に「妄信に陥り民を正しき道へ導くべきである王族の誇りを忘れた愚か者」と酷評していた。
一方、狂っているであろう神の教えに惑わされずにしっかりと自分の考えを持ち得ている王女様であるリリアーナさんや少し危うい感じはするがまだしっかり修正が利くであろうランデル王子とは友達となった。