強き絆の心とありふれない魔界の王候補の異世界道中記   作:カオスサイン

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EPⅢ「大迷宮の激闘と悲劇 前編」

Side晶

「ハジメ、そっちにいったぞ!」

「ああ、任せて!」

オルクス大迷宮の攻略に向かう日が訪れた。

俺達は難無くハジメ達の的確な援護や空っぽ野郎の働きもあって二桁台の階層へと早々に到達を果たしていた。

尚、ここまで俺は一度もリースの魔本を開いていない。

元の世界で敵対した魔物からこの世界に呼び出されて唯一恩恵を受けた魔力を行使してラーニングした術で粗方のこの世界の粗方の魔物は倒せていた。

そろそろ力をセーブしとかないといけないな。

そう思い後退していると空っぽ野郎と白崎さん達が居る方向からゴーレムの様な魔物ロックマウントが現れる。

「香織達を怖がらせて…許さないぞ!【天翔閃】!」

「あの馬鹿!…」

ロックマウントがどこぞの大怪盗みたいな少々キモイ動きをしてきた事から女性陣が気色悪く感じたのか少し蒼褪めていた。

それを恐怖したのだと勘違いした空っぽ野郎が大技をロックマウントに撃ち込んだ。

がその余波の衝撃で階層内の天井が危うく崩落しかけた。

それでメルドさんにこっぴどく空っぽ野郎が説教されていたのはいうまでもない。

「ん…あれ何だろ?」

ふと白崎さんが奥の壁際で何かを発見したようだ。

それは青白い輝きを放つ石の塊だった。

「キラキラしてる…!」

「ほう、アレはグランツ鉱石だな。あれ程のサイズは滅多にお目にかかれないレアアイテムだ」

どうやらその鉱石は装飾品に主に使われるレア素材の一種らしく女性陣は目を奪われていた。

「だったら俺達で取ってやろうぜ!」

其処で此処まで碌に支援もしていない檜山グループが鉱石を採取しようと言い出す。

「あ!?待て、安全確認も済んでないんだ!レアアイテムだからといって迂闊に手を出すのは危険なんだ!それ自体が罠である可能性も高いんだぞ!」

「♪~」

メルドさんがそう慌てて警告を促すも檜山は聞こえないフリを押し通して鉱石に触れようとしている。

くっ!?奴を止めようにも此処から術を撃ったら皆(空っぽ野郎と屑山グループの面々以外)を巻き込んでしまう!…

力をセーブした事がこんな形で仇になるとは…そうこうしている内に檜山の手が鉱石に触れる。

「「!?」」

「やはりトラップだったか…うっ!…」

その瞬間、鉱石が起点となってやはり仕掛けられていたトラップが起動してしまい眩い光を放った。

光が止み俺達が目を開けると吊橋のある場所に全員が飛ばされていた。

「階層強制ワープトラップだと!…此処は一体何階層なんだ?!いやそれよりも早く撤退を…」

「団長!何かが此方へと向かって来ています!」

「ム!?…」

現在地を冷静に把握し撤退しようと考えていたメルドさんだったが、騎士団員の報告を受けて前方から何かが出現し此方へ向かって迫って来ている事に気が付く。

「ま、真逆あの魔物は!?…」

それは俺達が居る吊橋にギリギリ入れるかといった巨大なサイズを誇ったトリケラトプスの様な魔物とそれに従うかのように沸き出て来たその他の大量の魔物の軍勢だった。

「…」

どうやら使わねばならない時が来たようだな…。

そんな俺の意図を汲み取ったリースも静かに頷いた。

 

Sideハジメ

「間違い無い!あのデカイ魔物はベヒモスだ!」

「やはり!…では此処は六十五階層なのか!なんてことだ…」

唯一誰よりも多くの知識を得ていた僕がそう告げるとメルドさんが現在地を絞る。

「メルドさん!あのデカイのが一番ヤバイ魔物でしょう?だったら俺があれの相手をします!

他の皆は取り巻きの魔物達を!」

光輝がいの一番にベヒモスに立ち向かおうとしていた。

「馬鹿を言うんじゃない光輝!あの魔物は今のお前達の実力では到底勝てる見込みは無い!」

「俺達は確実に強くなっています!任せて下さいよ!」

「そういう事を言っているんじゃない!此処にはこれまでの戦いの消耗が響いている者も居てこれまでの階層と同じって訳にはいかないんだ!

お前の無謀で他の者達の動きを阻害してどうするんだ!

それよりも撤退を促すのが最優先事項だ!」

「うッ!?…」

漸くメルドさんの言葉の意味を理解した光輝は渋々と引き下がった。

「と言った所で素直に撤退させてはくれまいか…」

なんとか時間を稼いで負傷者を下がらせるには至ったが残された者達が此処から撤退するには非常に困難であった。

「グオオオー!」

「不味い!?」

「「『全ての敵意と悪意を拒絶する、神の子らに絶対の守りを、ここは聖域なりて神敵を通さず!』【聖絶】!」」

眼前に荒々しい咆哮を上げながらその悪魔の如き牙を振り下ろそうとする。

白崎さん達が咄嗟に防御魔法を展開し防ごうと試みる。

「グアァー!!」

「くうっ!?…」

「皆、俺に任せろ!」

「光輝!?あの馬鹿!…」

がベヒモスの猛攻は想定以上のもので彼女達が展開した聖絶には段々とヒビ割れが起きていた。

天之河君がそれを見て咄嗟に聖剣を構えて突撃したが…

「うわっ!?…」

「光輝!?くそっ!?…」

ベヒモスの圧倒的なまでの力に異世界召喚による恩恵を誰よりも受けている筈の天之河君ですらも抑え切れずに吹き飛ばされてしまう。

このままじゃ白崎さん達が…錬成で援護しようとしたもののベヒモスに対する恐怖で体がいうことを聞いてくれない。

「「キャア!?」」

「「皆/香織!?」」

そうこうしている内に遂には聖絶が突破されてしまいベヒモスの牙が魔法発動後の硬直で動けない白崎さん達に迫ろうとしていたその時であった。

「【クワル】!」

「グギャアー!?」

「!?」

そう聞こえたかと思うとベヒモスの顔面目掛けて鋭い水晶の塊の様な物体が降り注いでいった。

その攻撃の直撃を受けたベヒモスは苦痛の声を上げる。

「よっと!おい恐竜モドキ野郎よくもここまでやってくれたもんだな…まあこれ以上此処から先へは行かせねえけどよ!」

「強大な敵勢存在を確認!更なる追撃に入ります」

その攻撃を繰り出したであろう人物達が眩い輝きを放つ薄青緑の本を構えながらベヒモスの眼前へと着地した。

 


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