強き絆の心とありふれない魔界の王候補の異世界道中記 作:カオスサイン
Side晶
「さあ、早く行こう香織!」
「…」
一番面倒な時に来てしまったか…空っぽ野郎はさも当たり前の事の様に白崎さんに共に迷宮探索の続きに行くべきだと誘いをかける。
だが当の彼女はまるで「お前は何を言っているんだ?」とでも言いたげな表情で空っぽ野郎を見ていた。
「えっと…私行かないよ?」
「へっ?…」
白崎さんの返答が予想外だったのか空っぽ野郎は間抜け面をする。
「あ、迷宮に行かないって事じゃなくてね…天之河君達についていく気はないよって事なんだけど…」
「何故なんだい香織!?はっ!?真逆君は…!」
慌てて訂正した白崎さんの言葉の意図に空っぽ野郎は漸く気が付いたのか叫んだ。
「南雲を探しに行くなんて言う気じゃ…」
「そうだけど?…それと天之河君に心配してもらわなくて大丈夫、今の私には…」
「何を馬鹿な事を言っているんだい君は!?南雲はあの時死んだんだぞ!」
白崎さんの言葉を遮り空っぽ野郎は喚く。
純粋な心配からだろうが今の彼女には只の戯言にしか聞こえない。
「天之河君こそ勝手な事言わないでよ!ハジメ君はこの世界の知識を誰よりも身に着けていたの!それは私もよく知っている。だからこそ私は彼がそれを生かして生き延びている事を信じているの!」
「か、香織?よく考え直してくれ、な?」
白崎さんの叫びに空っぽ野郎は驚くもなだめようと彼女に手を触れようとした時だった。
「【ロズル】!」
「な、何っ!?…」
空っぽ野郎の足元から樹木が突然生え出して彼を拘束する。
今のは間違い無く彼女の力だな。
「さっきから黙って聞いていれば全く…天之河ってホンット融通が利かないわね…」
「そ、園部!?こ、これは一体何の真似なんだい!?」
準備を整えてやってきていた園部さんがカルーラの術を発動させたのだ。
空っぽ野郎は喚く。
「あんまり騒がない方が身の為よ。いくら他より耐性があるあんたでも怪我じゃすまなくなるわよ?」
「!そ、その本は!?…」
園部さんを目にした空っぽ野郎は彼女が持っていた魔本の存在に漸く気が付く。
「ああ、コレ?カルーラの力を解放させる事が出来たからって譲り受けたのよ。欠道君にね」
「なっ!?…」
「あんまり暴れられて時間をロスしたくないからこのまま私達の話を聞いてくれないかしら?」
園部さんが告げた言葉に驚く空っぽ野郎に彼女は話を続ける。
「白崎さんも言ったかもしれないけど私や妙子も一緒に南雲の事を探しに行く為にこの国を出るつもりだから」
「なっ!?そんな事他の皆が許すと思うのか!?」
「許すも許さないも南雲の事を一切信じていない連中に何を言われようが関係無いじゃない!
カルーラもういいわ」
「分かった」
「うわっと!?」
園部さんは呆れながらも術の発動を止めさせて空っぽ野郎を解放する。
「か、香織!お、俺達と一緒に来てくれるよな?な?」
カルーラの術から解放された空っぽ野郎はまだ希望があるとばかりに白崎さんに詰め寄る。
だが…
「お断わり致します」
「え?」
当の白崎さんはやはりというか絶対零度の微笑みを浮かべて空っぽ野郎を突き離していた。
「き、聞き間違いだよな?なあ…」
「【ビライツ】!」
「!?」
そんな白崎さんの態度を見ても尚諦め悪く詰め寄ろうとした空っぽ野郎だったが足下スレスレに何かが撃ち込まれた事で驚いて慌てて止まる。
白崎さんの背後に控えていたエルジョの術によるものだった。
「これ以上俺のパートナーの邪魔をしようというのなら俺が貴様を叩きのめしてやろうか?」
「な、何故君まで!?…」
エルジョは構えを取りながら空っぽ野郎に怒りを見せていた。
一方の空っぽ野郎は真逆白崎さんまでもが魔本の持ち主になっているとは思わなかったのか驚愕していた。
「なんでって私がエルくんの本を読めたからだよ。
南雲君は今も助けを待っているの!これ以上私達を足止めしようというのなら天之河君でも容赦は出来ないよ!」
「そ、そんな!?…」
白崎さんのその一言によって空っぽ野郎は意気消沈しその場に項垂れた。
「余計な話も終わった所で警備に見つからない内にさっさと行くぞ」
「そうね、ほんとにタイムロスでしかなかったわね」
「うん!あ、先生達には後で伝えておいてね。天之河君」
話が終わった事で未だ項垂れたままの空っぽ野郎を放っておき俺達は王宮を早急に出たのだった。