マサル、ジョウトへ行くってよ。   作:井ノ下功

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うずしお−2

 ――伝説のポケモン、ルギア――

 

 美しい白銀の滑らかな体。背びれのような突起は深海の色。ゆったりと広げた翼はダイマックスを疑うほど大きくて、カッと見開かれた瞳は深淵の漆黒。長い首を悠々と廻らせて、マサルをその視界に収めると、

 

「――!」

 

 神威を感じさせる音波がびりびりと洞窟を揺らした。

 マサルの背筋がぞくりと粟立った。手足がかすかに震え出したのを、意識的に抑えこむ。右手で胸元をぎゅっと握りしめて、左手でベルトのボールを触る。

 

(すごい……プレッシャーだ……)

 

 カラカラの喉に重たい唾を無理やり流し込み――スイッチを切り替えた。頭の中が冷え切って、不安と恐れが消え去る。ここにあるのはポケモンとの真剣勝負、それだけだ。

 

(ひこうは確実かな。あとはみず? いや、ドラゴンかも。わからないな。けど、)

 

「戻れ、リザードン」

 

 みずタイプかもしれない相手にリザードンは危険だ。

 

「いっておいで、カビゴン!」

 

 限られた陸地の上で、カビゴンが両腕を広げて吠えた。

 

(まずは相手の出方を見よう)

 

 それに触発されたように、ルギアがもう一度咆哮し――バトルの火蓋が切って落とされた。

 ルギアが口を大きく開けた。そこに水の塊が凝縮していく。

 

(ハイドロポンプか!)

 

 放たれた激流の弾丸を真正面から受けて、カビゴンは二三歩後退した。

 

(すごい威力だ……)

 

 とくぼうに自信があって、タイプ的にも不利ではないカビゴンが、ここまでHPを削られるなんて。

 

「たくわえる! ――もう一回!」

 

 深く息を吸ったカビゴンの背中は二回りぐらい大きくなったように見えた。

 

(たべのこしで回復しながら、少しだけ耐える――)

 

 一つ羽ばたくたびに大風が起き、吹き飛ばされそうになるのを耐えながら、マサルは目を凝らした。

 ルギアが空中で二撃目の体勢に入った。

 

「カビゴン、右だ!」

 

 マサルの声に合わせてハイドロポンプを避ける。地面が削れて、飛び散った岩の欠片が水と一緒に降りかかった。だがマサルは、水に濡れた服にも岩で切れた肌にも目をくれなかった。

 

(やっぱりみずタイプか? だとしたらリザードンは駄目。フライゴンも駄目だ。でも、この距離で当てに行くには――)

 

「よし、カビゴン、戻れ! ――いこう、インテレオン!」

 

 カビゴンとは正反対のすらりとした体を持つインテレオンが、湖に飛び込んだ。

 こうかはいまひとつでも仕方がない。捕獲が目的なのだから、むしろ削り過ぎない方が都合もいい。

 

「ねらいうち!」

 

 湖の中から打ち出された水がルギアの翼の付け根に突き刺さった。

 

(――……?)

 

 わずかに、だが、ルギアの体勢が崩れた。

 

(いまひとつ、じゃなかった……?)

 

 眉間にしわが寄る。

 

(みずタイプじゃない? それなら一体――)

 

 考え込んだ隙を突くように、ルギアが構えを変えた。

 

「――!」

「んっ!」

 

 ぐわん、と世界が歪んだ。

 

(じんつうりき?!)

 

 技の余波を受けたマサルはぐっと足を踏ん張って、倒れそうになったのをこらえた。捻じ曲げられた水の中からインテレオンが飛び出してきて、マサルの前に膝をつく。

 

(けっこうくらったな……)

 

 だがこれで分かった。明らかに、別タイプのポケモンが出せる威力じゃない。

 

(ひこうとエスパー。それなら!)

 

「戻れ、インテレオン!」

 

 すばやさはインテレオンの方が上だった。つまり、

 

「ウーラオス!」

 

 彼の方が早く動けるということでもある。

 勢いよく飛び出たウーラオスが水面を蹴った。

 

「うっぷんばらし!」

 

 鋭い拳が翼に打ち込まれて、ルギアが呻き声を上げた。巨体が斜めに傾いて、風を掴み損ねた翼が空を切る。

 

「よし、今だ!」

 

 マサルは空のモンスターボールを掴み、大きく振りかぶった。

 

「――こおりのつぶて」

「っ!」

 

 氷の塊が腕に当たって、マサルはボールを取り落とした。

 









※実際のデータ上では、ルギアはダイマックスポケモンよりだいぶ小さいです。まぁそのへんは雰囲気で……誤魔化されてください……。


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