マサル、ジョウトへ行くってよ。   作:井ノ下功

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閑話:ふいうち

「やあ、キバナ!」

 

 にこやかにリザードンから下りたダンデを、しかめっ面のキバナが出迎えた。

 

「よーお、ダンデぇ」

「どうした? 顔がしわくちゃピカチュウだぞ」

「お前らさぁ、自分らの希少価値分かってる?」

「何の話だ?」

 

 顔中に疑問符を貼り付けているダンデに、キバナは溜め息をつきながら「一週間前のバトルタワーの動画! くっそ長ぇ感想戦だよ感想戦!」と怒鳴り声を出した。

 

「ああ! ……あれがどうしたんだ?」

「あんな貴重な情報を無料で大放出してどーすんだって話だよ! 百歩譲ってお前はまだいいとしても、マサルは毎年チャレンジャーを迎え撃つ立場だぜ?! この間一回目の防衛を果たしたばっかの新米チャンピオン! なのにあんだけ自分のクセとかなんとか話しまくったら、不利になるに決まってんだろ?!」

 

 本気でマサルを心配している様子のキバナの背中を、ダンデはばんばんと叩いた。

 

「平気さ、キバナ! マサルはそう簡単には負けないぞ!」

「そーだろうけど」

「万一負けたとしても、絶対に這い上がってくるぜ。――這い上がれなかったら、そこまでの奴だったってだけだ」

「っ……」

 

 キバナは言葉を詰まらせた。ダンデの目は本気の色を讃えていた。彼は時々こうやって、誰よりシビアな一面を見せることがある。バトルに関しては特に――。

 自分がひるませたことに気が付いたのか、ダンデはパッとキバナを見上げると、眼光をやわらげた。

 

「なに、心配はいらないさ。マサルがどんな奴か、君だってよく知っているだろう? 君を負かし、オレを負かした少年だ。たった三十分程度じゃ彼の全部は語り切れないし、オレたちがこうしている間にも新しい戦い方を編み出してるぜ、きっと」

「……そーだな」

 

 自分が一度も勝てていないこの男から平然と勝ち星を奪っていって、へらへら笑っている少年がマサルだ。心配するだけ損だったのかもしれない、とキバナは息を吐いた。

 

「あー、それで思い出した。マサルにさぁ、ワイルドエリアの一角を占拠してバトルの練習すんのやめろって言っといてくんねぇ?」

「なぜだ? いいことじゃないか」

「いや、一人で完結してる練習ならいいんだよ。でもアイツさぁ、野生のポケモンに自分の特訓手伝わせてるみてぇでさ……おかげで、げきりんの湖にいる連中のレベルがめきめき上がっててな。この間調査に行ったら、平均レベルが80超えてた……」

「あー……」

「いやオレさまとかお前ならいいぜ? でも一般トレーナーが知らずに入りこんだら、マジで死にかけるぞ?」

「……注意しておこう」

 

 言外に“無駄だろうけど”と漂わせながら、ダンデは頷いた。

 

「それで、今日のエキシビションマッチのことなんだが――」

 

 と本題に入りかけた、その時。

 

『マサルから電話ロト~』

「――噂をすれば、ってやつだな」

 

 出てもいいか、と目だけで問いかけると、キバナは軽く頷いた。

 

「もしもし、マサル。ちょうどいいところに――」

『あ、もしもしダンデさん? ちょっと僕ジョウト地方に行ってきます。それじゃあ!』

 

 ブツッ、ツー、ツー、ツー……。

 

 隣で聞いていたキバナが目をパシパシさせた。

 

「……なぁ今ジョウトに行くって言ってなかったか?」

「……オレの幻聴だと思ったんだが、キバナにもそう聞こえたか?」

「そう聞こえた」

「そうか……」

 

 事実を飲み込んで――次の瞬間、大人二人は揃って「あああああああの馬鹿!」と叫びながら頭を抱えた。

 

「アイツはニュースを見てねぇのか?! オイ!」

「ロトム! リダイヤルしてくれ、リダイヤル!」

「ジョウトっつったら今話題じゃねぇかよ! ニュースでも新聞でもネットでも――」

 

 とキバナが開いたネットニュースの一面には、大きな見出しが躍っている。

 

『ロケット団の復活! 毎晩襲われるジョウトの町々、被害甚大』

 

 目的不明。規模不明。とにかく夜陰に乗じて町を襲い、ポケモンを使って人を傷付けているのだと報じられている。

 他地方の人間は出来るだけ近寄らないように、とも書かれていた。

 

「――見てねぇっつーのかよコレを! 馬鹿かアイツは!」

「駄目だキバナ、どうしよう! 通じない!」

 

 ダンデが単独のヨワシみたいな顔になっていた。握りしめたスマホからは、『ただいまリザードンに乗って移動中ロト~。お急ぎの方は諦めるロト~。その内折り返すロト~』と、ロトムの声――を真似したマサルの声が流れ出ている。

 

「なんっだその音声! ムカつくなぁクソッ!」

「うん、オレも今初めて殺意とかいうのを感じたぞ!」

「そうか! 人間らしくなったなダンデ!」

「どういう意味だキバナ?!」

 

 ひとしきり騒いだ二人は、荒くなった息をようよう整えて――

 

「……とりあえず、ジョウトの知り合いに連絡しておくぜ……キバナ、君からも時々電話をかけてやってくれ」

「りょーかい。本っ当に人騒がせな奴だよなぁ……チャンピオンってやつはみんなこうなのかな……」

「ん? オレがいつ人を騒がせた?」

「チャンピオンになった直後にワイルドエリアに消えていって、二週間戻ってこなかったことを忘れたのか?」

「あれは普通に遊びに行ってただけだぜ!」

「……帰ってきたら、マサルも同じこと言いそうだな……」

 

 そーゆーとこだぜチャンピオン、とキバナは口の中で呟いた。

 

 







キバナさんとダンデさんの会話かくのたーのし〜(ちょっと違和感あるけど目を瞑る)

次はそのうち上げます。

ヨワシ(たんどくのすがた)の顔するダンデさんと、ロトムの声真似で煽ってくるマサルくんを誰かくださいお願いします。
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