月が真上で輝く夜。真上に伸びた岩場の戦場にて。
ホットロッドは今日も完勝している。スタースクリームに勝ち、アイアンハイドにも勝って……そういえば勝手にサンドストームが落ちていったけれど、あれはなんだったんだろう。
今回もそうだが、戦闘のほとんどをホットロッドに任せてしまった。申し訳ないと言えば、戦いは俺とスターセイバーに任せてほしいと言われた。そんなことはできない。せめて彼のサポートができるように頑張る所存だ。
今回助けたマイクロンはグラップの相棒となった。名前はリフトだ。よろしくね、リフト。
ホットロッドの所に集まったグラップが、しげしげと剣を見つめる。
「しかしすげえなスターセイバー……」
ホットロッドが得意げに剣を回した。
「まだまだ序の口。これからの戦いが見ものだぜ」
「ホットロッド」
「司令官」
コンボイ司令官だ。無事合流できてよかった。司令官は落ち着いた声で、ホットロッドを諌めた。
「気をぬくな。奴等も必ず手を考えてくる」
だが、若き戦士は聞く耳を持たない。
「心配いりません。長く続いたこの戦い、この剣が終わらせてくれます」
ー本当にそうかな?
からかうような声色が不愉快で眉をひそめる。戦争が終わることは良い事だ。それをからかうなんて腹が立つ。いつも助言だけ言っていればいいのに!
「おい、どうした?」
どうやら不満が表情に出ていたらしい。グラップに心配されてしまった。私は手を振って「問題ないよ」と応える。
基地で留守番していてくれたラチェット、ラッド、カルロス、アレクサに迎えられて帰還する。今回も勝ってみんな大喜びだ。私たちも気分がいい。士気も高くて基地内の雰囲気は上々。このまま勝ち進んでくれればいい。しかし、今のままスターセイバーにばかり頼っていてはダメだ。
基地の整備は決してサボらず、今まで以上に銃の腕を磨くようになった。
「精がでるな」
「コンボイ司令官」
訓練場に司令官がやって来た。慌てて敬礼すると朗らかに笑って「休んでいい」と仰られた。
「君はいつも頑張っているな。向こうでもそうだったのかな?」
「あちらでは、常に無茶を求められました。必要だったんです。だから何かしていないと落ち着かなくて……そのせいかもしれません」
「なるほど。ここでは休むことも仕事のうちだ。無茶はできないぞ」
「はい。心得ております」
そうだ。休む必要があることもわかっている。でも、今はホットロッドに置いていかれないように、サポートできるように頑張りたかった。
その頑張りが報われる時は、思ったよりも早く訪れた。
とある島。私たちはデストロンと会敵していた。
「さっさと始めようぜ」
ホットロッドが敵を煽る。それを司令官が注意するけれど、効果が薄い。
「ホットロッド、気を抜くな」
「気合いはばっちり。スターセイバーが奴らを切りたくてうずうずしてるんだ。……いくぜ!でやああああ!!!」
ホットロッドは敵に飛びかかった!しかしサンドストームに撃たれて、勢いを失う。再び飛んでサンドストームを切った。見事な一撃だ。
これでサンドストームは戦闘不能になった。その勢いのまま敵を倒していくかと思ったが、目の前にスタースクリームが立ちはだかった。
「まて、私が相手だ!」
「ほう、面白え」
余裕の態度で構える黄色の戦士に対し、今度はグラップが諌めた。
「ホットロッド」
聞いていなかったのか、応える者はいない。
この時は珍しく、敵側から声援があった。
「やれー!スタースクリーム!!叩きのめせ!」
メガトロンからの声援だ。スタースクリームは気を引き締めているだろうと思ったが、なんだか嫌そうな顔をしている。仲が悪いのか?
「いくぜ」
二機のトランスフォーマーが合図を待ったその時、不敵な笑い声が辺りに響いた。
「フハハハハ、フフフ。面白くなってきたな。暇つぶしには丁度いい。」
丘の上にそのトランスフォーマーはいた。
「誰だ貴様は」
「ワシか?ワシの名はデバスター。久しぶりだな、コンボイ」
「え?司令官、一体?」
「フハハ、コンボイを戦いの道に引き込んだのはワシだ。もう遠い昔だがな」
「そうだ。私は彼に戦いを教えられた。もう遠い昔だ」
数分、司令官とデバスターとかいうトランスフォーマーの昔について想像する。一体、二人の間に何があって、敵味方に分かれているんだろうか。思考の渦は敵側の声によってかき乱される。
「さっさと始めようぜ!貴様らの思い出話など、私には関係ない」
デバスターは笑った。
「スタースクリーム、お前の言う通りだ。派手なみせもの、たのしみにしているぞ」
「見世物じゃねえ!これが終わったら貴様のその口を八つ裂きにしてくれる!」
「フハハハハ!楽しみにしているぞ!コンボイ、手を出すなよ」
そう言って司令官を睨みつける眼光の圧は、私にとっては背筋にひやりと冷たい汗が流れるようだった。
再びメガトロンがスタースクリームに声援を送る。
「いけー、スターセイバーを奪いとるのだ!」
それにデバスターが吠えた。
「メガトロン!お前も黙っていろ」
その一言でメガトロンさえも黙らせた。一体何者なんだ。あの人は。
ー最も信頼のおけるトランスフォーマーですよ。
……信じられない。今日は声の調子が悪いようだ。敵なんて信じられるわけないのに。
そうこうしている間に戦闘が始まった。
「行くぞ!ホットロッド!とおー!」
空中でぶつかり合う!司令官が言うように、気迫ではスタースクリームが優っているようだ。2撃目。ホトロが傷つく。私はいてもたってもいられなくなった。
「ホットロッド、頑張れ!」
3撃目。持ち直したホトロがスタースクリームの剣を切った!
やった、あれでもう戦えない!
勝負が決まったとき、デバスターが止めた。
「そこまでだあ!」
スタースクリームが吠える。
「邪魔をするなあ!デバスター!!」
「スタースクリーム、自分の甘さがわからんとはなあ」
「何い!?」
くってかかろうとする若き剣士にものともせず、デバスターはホットロッドに語りかける。
「ホットロッド、勝ったと思うな。お前の力ではない、その剣の力だ」
「なんだと?次はお前だ!相手になれ!」
「よせ、ホットロッド!」
「フハハハハ、では少し遊んでやるとするか」
デバスターが纏っていたマントを脱ぎ捨てて、ホットロッドの前に立った。老人のくせになんて迫力だろうか。司令官よりも後ろに立つ私がこれだけ圧倒されるんだ。直接対決しているホットロッドはもっと凄まじく感じているだろう。
それでも彼は引かなかった。
「遠慮しないぜ」
「フフフ……気合いをいれろよ」
「でやああ!!!」
ホットロッドの先制。弾かれる!そして突き飛ばされた!
「ホットロッド!」
追撃するデバスターにカウンターを入れるが。
「おらあああああ!!」
腹に一撃を食らってしまう。
「気合いを入れるとはこういう事だ」
ホットロッドが倒れた。
なんてことだろうか!今まで無敗だった彼が倒れてしまい、私は慌てて側に駆け寄る。
ラチェットに習った通り、傷の具合を見てみた。……うん、大丈夫。どれも致命傷になっていない。少し動けないだけだ。
デバスターはその様子を眺めて、くるりと身を翻し去っていった。
「また会おう」
「デバスター!スターセイバーを拾え!」
そうだ、スターセイバー!あれを取られてはならない。私が顔を上げると、司令官がすでに防いでくださった後だった。
メガトロンが忌々しそうに顔を歪める。
「メガトロン様あ!マイクロンパネルを手に入れました!
「退却だ!」
「はっ!」
デストロンは消えた。すぐにグラップが駆け寄ってくる。
「ホットロッド大丈夫か!」
「大丈夫です。立てますか?」
「ああ、問題ない」
ホットロッドに肩を貸そうとするが、彼は優しく笑って遠慮した。代わりにグラップが肩を貸している。
「遠慮しなくていいのに……」
「遠慮というより、あれは意地だな」
コンボイ司令官がそう仰った。
仲間に意地を張る必要なんてないのに。
〈つづく〉