短いですが、これで投稿させてください。
その日、新しい仲間が加わった。
「疾風に勁草を知る。俺の名はダブルフェイス。ただの流れ者よ」
キザな言葉を言うものだな、とはじめは思った。
苦手でも得意でもないタイプのトランスフォーマーだ。だが、子どもたちには優しくていい奴だと思う。
彼は、仲間になったその日の内に、子どもたちとも打ち解けていた。ビークルモードはバイクの姿だ。マイクロンに運転させて、その背後に子どもたちを乗せる。安全でなおかつスピードを出して荒野を走り、主にカルロスやビリーとジムを楽しませた。
子どもたちが帰った後は、基地の整備だ。まだまだ手を入れなければならない箇所はたくさんある。
ある場所の整備を終えてコントロールルームに報告に戻ると、ラチェットからあたらしい仕事を貰った。
「ダブルフェイスとH-2を見てきてくれ」
「わかりました。こっちよ、来て」
ダブルフェイスは黙ってこちらに付いてきた。隣に並んで、道すがらH-2について簡単に説明する。
「あそこはね、皆んながよく使う区域なの。射撃場や整備用の部品なんかが置かれているわ。見て来いって言われたのは、あなたを案内することと、いつでも整備できるよう今から慣れておけってことだと思う。よく使われる分、壊れやすいの。だから定期的に整備を行っているわ。今回も小さな破損とか、不具合があれば、直します。大きいものはラチェットかグラップじゃないと無理ね。……ここまでで、何か質問ある?」
「アンタは?まだ名前すら聞いちゃいない」
「私はギャラクシースター。元々ファイヤーロード部隊にいたの。だけどワープ事故に巻き込まれてしまって、気がついたら地球にいたわ。それからコンボイ部隊に助けてもらって、お世話になっているの。あなたは、どこから来たの?」
「風に誘われて、ここまで来たのさ」
「そう」
キザだなあ。
彼の言葉を軽く流して、前を歩く。キザな奴はファイヤーロード部隊にはいなかった。血気盛んなサイバトロンと、デストロンからサイバトロンに鞍替えした荒くれ者たちならいたが。
なぜ元デストロンが複数人所属しているかと言うと、数十年前の戦いがきっかけだ。
彼らデストロンが味方に裏切られた。私たちファイヤーロード部隊は生きているトランスフォーマーをとにかく助けた。意識を取り戻したとき、デストロン兵たちはファイヤーロード隊長に感謝を述べて、部下になったのだ。
ファイヤーロード隊長に敬意を払う彼らに、サイバトロンの仲間たちは少しずつ歩みを寄せていった。
世話好きで信じやすい仲間たちの気質のおかげで、デストロンから寝返った仲間たちとの溝は深くならず少しずつ埋まり、仲間と呼び合えるようになった。
懐かしい。みんなに会いたいな。今頃どうしているかな。
無事を祈り、安全圏に逃げていることを願う。
H-2区域についたので、ダブルフェイスに一つずつ説明していく。
彼は、熱心にとは言えないが、真面目に説明を聞いてくれた。飲み込みが早く、適度に質問をしてくれる。実際に簡単な整備を頼んでみると、手際よく直す。要領がいいらしい。
「上手ね。これならすぐに色々任せられそうだわ」
「そうか。そいつはよかった」
紫の彼は特にホットロッドと仲良くなった。馬が合うという奴だろう。ダブルフェイスの的確なフォローのおかけでホットロッドの攻撃は面白いほどに刺さる。連続でマイクロンたちを助けられたのがその証拠だ。
二人は連携を深めるため訓練を共にした。仲はさらに深まり、二機は行動をともにすることが増えた。
新しい通路を整備中、その話題に触れた。
「またホットロッドがいませんよ!?ついでにダブルフェイスだって……もう、信じられません!」
ギャラクシースターは、基地の整備という重要事項をサボる二機に怒っていた。任務達成、遂行に不可欠なのはもちろん。加えて自分たちが快適に生活するために整備は必要だ。それなのに、彼らときたら仕事を人に任せてしまうなんて!
「そういやそうだな。まっ、いつものこった」
「ホットロッドはそうでしょうけど、ダブルフェイスは違います。彼がこの基地に馴染むという意味でも、仕事には意欲的に取り組むべきでしょう!」
「ギャラクシースター、まさかホットロッドがただサボっていると思っているのか?」
「いいえ。こういう時でも戦闘訓練をつんでいることはわかります。というか信じています。ですけど、それはそれです!サボりはサボり!」
真面目に怒るギャラクシースターに二機はやれやれと頭を振った。
「そんなんじゃ頭の回路が切れちまうぜ?」
「グラップ!ふざけないでください!……二人のコンビネーションがこのチームの要になってきている事ぐらい、私にだってわかっているんです」
「そうだな。二機の成長ぶりは目を見張るものがある。だから、今は戦闘訓練に重きを置いてもいいと我々は考えている」
「サボっていても、やる事やってますものね。それはわかっているんですけど、私は落ち着けません」
「真面目だな、ギャラクシースター」
「それが取り柄ですからね」
この時は思いもよらなかった。
まさかあんな大事件が起こるなんて。
〈つづく〉