新連載はなんと艦これ!
私の妄想より生まれし艦これワールド、是非ともお楽しみ下さい。
それは、今より遥か先の……数多ある未来の内の一つ。
その日まで、世界は多くの平和と少しの闘争で回っていた。少しの国が内戦を起こし、多くの国が平和を享受する。内政の問題はあろう。目に見えない闇もあろう。それでも、世界には確かな平和が存在した。しかし、その平和は何の前触れもなく壊された。
深海棲艦(しんかいせいかん)。
突如として海から現れた“それ”等は、瞬く間に世界の海、空を征した。海に出る船はそれ等に見つかれば瞬く間に沈み、空を飛ぶ乗り物もまた同じように落とされる。外国に逃げることは出来ず、輸入輸出も満足に出来なくなってしまった。
当然ながら世界は反抗した。現存する兵器を使い、好き勝手されてたまるかと士気を上げて挑んだ。
数はあった。士気も高かった。かつての戦争よりも技術力が進んだ兵器もあった。世界に住む人々は思ったことだろう……これでまた、平和は訪れると。気軽に海外へと遊びに行き、空から雲の絨毯を眺め、母なる海の大きさを全身で感じられる日が来るのだと、誰もが安堵した。
しかしそれは、すぐに絶望へと変わる。
彼を知り己を知れば百戦殆うからず、ということわざがある。敵についても味方についても情勢をしっかり把握していれば、幾度戦っても敗れることはない、という意味のことわざだ。
味方については、世界は各国で把握していた。各国の思惑による情報操作はあれど、国々でしっかりと把握出来ていた。しかし、敵……深海棲艦に対して、それは当てはまらなかった。人類は、世界は敵のことを全く解っていなかったのだ。
戦闘機が機銃から弾幕を放った。それはまるで豆鉄砲にしか見えないほどにダメージを与えられず、敵の意識を引く程度の効果しか得られなかった。
大量のミサイルを放った。それは敵に当たる前に、その生物的な、かつ機械的な身体から放たれる弾幕によって撃ち落とされ、生き残って直撃したとしても傷一つ付けることは叶わなかった。
血迷ったのか、それとも蛮勇か、大量の爆薬を搭載して特攻した兵士達がいた。それは多くがミサイルと同じ運命を辿り、敵に辿りついてもやはりダメージはなく、その命を儚く散らすこととなるだけであった。
そこまでして、ようやく人類が敵の情報を手に入れる。その情報は単純明解、こちらの攻撃を、敵は一切受け付けないということ。そして、敵は最初に発見したもの以外にも存在するということ。
最初に発見したものは、小さな……大きさを例えるなら、ゴムボートほどの大きさの黒い何かだった。その何かだけで、人類はこれまでの被害を受けたのだ。
続いて発見されたのは、それよりも一回り大きなものだった。更にそれよりも一回り大きなものが発見された。やがて人間サイズのものまで発見され、しかしその全てに対して人類は為すすべもなく敗北していった。
誰が発見したか、海の底から現れ、凄まじい勢いで平和を破壊していったその存在を世界は“深海棲艦”と名付けて恐怖の象徴とし、世界に絶望が訪れた。誰もが感じたであろう世の終わり。それが現実になるのはそう遠いことではないと、誰もが思った。
しかし、奇跡は起きた。
その存在は、深海棲艦と同じように突然どこからともなく現れた。戦線が崩壊し、敗走していた軍隊の窮地に降り立った複数の人影。それは全てが少女の姿をし、全てが人間サイズになった砲台に機銃、まるで第二次世界大戦の際に用いられた戦闘機のようなものがついた弓、果てには甲板を描いた巻物と珍妙な出で立ちをしていた。
ある少女は背負った砲台から火を吹かした。玩具のようなそれから響く轟音はまさしく本物……そして放たれたものは、人類では傷一つ付けられなかった深海棲艦の装甲をあっさりと貫き、沈めた。
ある少女は手にした機銃を放った。それは少しずつ深海棲艦の装甲を穿ち、やがて身体の各所から爆発を起こした敵をこれまた沈めた。
ある少女は、腰にある発射口から魚雷を放った。海に落ちたそれは凄まじい速さで敵へと向かい、直撃した敵は水しぶきと共にその姿を消した。
ある少女は、巻物から戦闘機の絵が描かれた紙に光を纏わせた。テレビで見るようなファンタジックな光を帯びた紙は独りでに空を飛び、ラジコンのような大きさに実体化し、敵へと爆撃を開始した。
ある女性は、戦闘機のついた矢を空中へ向けて放った。矢は戦闘機の部分とそうでない部分に別れ、戦闘機は先のものと同じように爆撃や機銃による攻撃を開始した。
時間にしてみれば、ほんの数分の出来事。しかし、窮地を脱した兵士達には永遠にも思えた。
誰が信じるであろうか。年端もいかぬ少女が、成人したばかりであろう女性が珍妙な姿で、しかし人類が打つ手のなかった謎の敵を圧倒的なまでに蹂躙したなどと。
ある兵士に取っては、娘と同じ。ある兵士に取っては、恋人と同じ。ある兵士に取っては、孫にも等しいその姿。だがその姿から感じるのは、歴戦ともいえる風格。
ある意味で敵以上に謎。しかし、人類が初めて深海棲艦に対して勝利を収めたこの日から、人類と彼女達は手を取り合い、永きに渡って共に戦いの日々を歩むことになる。
その少女達は、自らを艦隊娘……艦娘(かんむす)と名乗った。
艦娘達が現れてから、数十年の時が流れた。人類と深海棲艦の戦争は、まだ終わってはいない。だが、どうにか戦争と呼べるくらいには拮抗していると、人類は判断していた。
数十年も経てば、ある程度の知識や情報は溜まる。人類は深海棲艦と艦娘に対して、ある程度の情報を得ることが出来ていた。
艦娘。それは、第二次世界大戦時に活躍した艦が人々の思いにより擬人化した、一種の九十九神。駆逐艦、軽巡洋艦、重雷装巡洋艦、重巡洋艦、航空巡洋艦、戦艦、航空戦艦、軽空母、水上機空母、正規空母、装甲空母、潜水艦、潜水空母などの多種に渡るそれら全てがその名を持つ女性であり、現在まで男性型は発見されていない。深海棲艦と戦うことのできる唯一の存在である。
深海棲艦。突如として現れた人類を脅かす敵であり、その正体は艦娘曰わく、負の感情の塊。戦争で死んでいった兵士達や民間人、不当に捨てられた道具や碌な扱いを受けなかった道具などの怨念とも称すべきそれらが合わさり、かの敵を生み出したのだという。当初から現在まで艦娘を覗き、人類は対抗する術を作り出すことは出来ていない。
この2つの共通点は、正か負かの違いはあれど“思い”が世に形として現れたということだ。どうにも出来ない敵を生み出したのは人類であり、それに対抗出来る味方を生み出したのも、また人類なのである。
神や妖(あやかし)を信じて崇め、恐れた時代を忘れた人類が得た科学で対抗出来ず、忘れた不可思議な存在によって助けられるとはなんと皮肉なことか。
それはさて置き、手を取り合った人類と艦娘の両者は、ある体制を取ることで協力しあっていた。それは人類から“提督”と呼ばれる役職の者を出し、その者に艦隊と称して複数の艦娘達を率いさせるというものだ。
艦娘は姿形こそ人間の女性であるが、その身体能力と戦闘力は人間とは比べ物にならないほどに高い。腕相撲をしようものなら腕が折れるどころかもげるし、殴り合いなら殴った手が砕け、殴られればミンチになる。勿論人間側が。
しかし艦の九十九神故なのか、基本的に艦娘は提督の指示に従うし、食事や排泄は必要ない。変わりに燃料や弾薬、鋼材と言った資材を糧とする。被弾すれば入渠して修復する必要がある。しかしながら普通の食事も取れるし、女性としての価値観や感覚もあるので甘味は好物、入浴大好き、羞恥心や恋心まで存在する。極端に言ってしまえば、男性との性行為だって可能である。無理に迫ればこの世から抹消されるであろうが。
それもさて置き、燃料や弾薬の補給や艦娘の修復、果ては改造や建造と言った技術は人類側にはない。それらを可能にするのが、艦娘と同じ時期に現れた存在……通称“妖精”である。
いつから現れたのか、どこから来たのか、なぜそんな技術を持っているのか、それら全てが謎。分かっているのは、とてつもない技術力を誇り、艦娘と同じく人類の味方であるということだ。
人類は艦娘と妖精の力を借り、平和を勝ち取る戦いの日々を過ごしている。だがその日々に終わりは、見えない。
かつて60億とも70億とも言われた人類は、その数を10分の1にまで減らしているという。提督の数は1000を越えた辺りで、その中でも歴戦の……となれば100人にも満たないだろう。
このままでは一世紀か、二世紀か、それとももっと遠くか、もしくは逆に近い未来で、人類は負ける。そう予見する者は多い。
しかし、人類も、艦娘も諦めたりはしない。戦争の日を乗り越え、平和の日々を知り、敵が己が生んだものと知ったが故に。
世界は、今日も平和を勝ち取る為に戦う。
さて、長々と綴り、人類&艦娘vs深海棲艦という形の戦いを推してきたが……実のところ、このお話では微妙に違う。
このお話は、とある場所に着任することになった……“人とは違う存在”の提督と、何人かの艦娘達がほのぼのと、時に甘く過ごしながら成長し、一生懸命にその生を歩んでいく。
ただ……それだけのお話。
まずはプロローグ、いかがでしたでしょうか。
今後も多大な独自解釈、設定が含まれていきますのでご注意下さい。