艦これ! 妖提督と艦娘の日々   作:d.c.2隊長

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またまた一週間ほどかかってしまいました……申し訳ありません。

今更ながら、私には軍知識は一切ありません。ご了承下さい。


川内 3ー2

 建造した艦娘や深海棲艦から戻った艦娘ならともかく、私や青葉、山城なら即戦力となれる……私はそう考えていた。しかし、それは甘い考えだったことを知る。

 

 それは、歓迎会が終わった後の自己紹介の時のこと。

 

 「提督と翔鶴さんにはさっき自己紹介したね。改めまして、川内型軽巡洋艦“川内”です。よろしくね」

 

 「青葉型重巡洋艦“青葉”ですー! 以後よろしくお願いします!」

 

 「扶桑型戦艦“山城”です。よろしく」

 

 【よろしくお願いします!】

 

 「じゃあ今度は僕達だね。改めまして、僕はこの宿毛湾泊地鎮守府の提督、八意 氷狐です。3人とは久しぶり、だね」

 

 氷狐……じゃなかった。提督の言葉を聞いた私達の頬が緩む。私は2ヶ月、2人はそれ以上の間顔を合わせることがなかったみたいだし、忘れられてないか不安になる。好きな相手が自分のことを忘れずに覚えてくれている。それが、こんなにも嬉しい。

 

 しかしそれも、彼女達の紹介を聞いて吹っ飛んでしまった。後から考えてみれば、当たり前のことだったけど。

 

 「暁型駆逐艦“電改”なのです! よろしくお願いします!」

 

 (((……ん?)))

 

 「同じく暁型駆逐艦“暁改”です。一人前のレディーとして扱ってよね?」

 

 「同じく暁型駆逐艦“響改”です……よろしく」

 

 「暁型駆逐艦“雷改”よ。かみなりじゃないから、間違えたらダメよ? よろしくね♪」

 

 「翔鶴型航空母艦“翔鶴改”です。よろしくお願いします♪」

 

 「金剛型戦艦“金剛改”デース! 川内とは一緒に提督のティーチャーをしてマシタ。ヨロシクオネガイシマース!」

 

 (((全員改になってる!?)))

 

 いや、よくよく考えてみれば当然のことだよね。この鎮守府には彼女達6隻以外の艦娘はいない。必然、出撃するのは彼女達。演習も彼女達。遠征は秘書艦以外の5人。建造はしないから資材は補給や入渠による修復以外じゃ減らないから有り余ってるハズ。“改装”しても資材的にはなんの痛手にはならない。

 

 

 “改装”というのは、ある程度経験を積んだ私達艦娘の性能を一段階上げる……平たく言えば改造のこと。妖精さん達の謎の技術により、私達は経験を積んで資材があればその性能を上げることが出来る。因みに一瞬の出来事らしく、光に包まれ、晴れたらもう改装は終わっているのだとか。私はまだ改になれないからわかんないケド。

 自己紹介の後、私達新参者は金剛達に自分達に用意された部屋に案内してもらった。私達の部屋は3人で一部屋ということらしく、山城が泊まった部屋をそのまま3人で使うみたい。因みに、私達の艤装は自己紹介の後に工廠に置いてある。この鎮守府じゃ艤装は出撃と改装する時以外は身に付けないんだってさ。ああ、提督と翔鶴さんは仕事の為に執務室に行ってるよ。

 

 そして今、私達は金剛達に荷解きを手伝ってもらっていたりする。1番荷物が少ないのが私で、1番多いのは青葉。カメラは分かるケド、後はなにがなにやらよく分からないものが締めている。そんなに持ってきてどうすんの?

 

 「それにしても……いい部屋だね」

 

 「ええ。おかげでグッスリと眠れたわ」

 

 「部屋はみんな同じ内装なのです。司令官さんはお1人なので、他の部屋に比べて狭くなっていますが……」

 

 「……そう、氷狐様は1人部屋なのね」

 

 電ちゃんの言葉を聞いて、山城が何か呟いた。荷解きに集中してたからはっきりとは聞こえなかったケド、氷狐、という言葉は聞こえた気がする。

 

 ……そう言えば、山城は提督のことを“氷狐様”って呼んでたね。実はこの呼び方、山城という艦娘のことを知っている者からすれば、例え相手が提督であっても有り得ないと言わざるをえない。なぜなら、艦娘“山城”は……。

 

 

 

 シスコンとして知られているから。

 

 

 

 つまり、山城は姉に当たる艦娘、扶桑型戦艦ネームシップ“扶桑”のことが好きで好きで提督なんか眼中にない……と言ったら極端だけど、そういう艦娘なんだよね。それは提督……氷狐であっても変わりはない。実際、生まれた直後は氷狐に対して好意的ではあったけど……その時の白夢大将の秘書艦だった扶桑の方に行ったし。なのに、今は氷狐様と呼んでた。私がいないところで何かあったのは間違いないね……悪いことではないみたいだけど。

 

 「氷狐様の部屋ってどこにあるのかしら?」

 

 「この部屋を出て右の2つ目の部屋だよ」

 

 「1つ目のルームは私と翔鶴のルームデース」

 

 「3つ目の部屋は私達4人の部屋よ。いつでも来ていいからね!」

 

 「ふむふむ、部屋割りは把握しました。ところで、今日の予定はどうなっているのカナ? まさか歓迎会と荷解きで終わりってことはないでしょうし」

 

 青葉が言ったように、その2つだけでやることが終わりなんてことはないハズ。持ってきた目覚まし時計で時間を確認してみれば、今の時刻はマルキュウニーサン……9時23分。本部にいた頃なら、私は雑務の真っ最中……もしくは秘書艦の仕事から逃げてきた北上が山田総司令に見つかって連れて行かれるのを笑いを堪えながら見ている頃かな。

 案の定これで終わりではないみたいで、私達新参者との交流を図る意味も兼ねて翔鶴さんを除いた8人を4人ずつに分けて遠征を行うらしい。ただ、山城は戦艦ということもあってか遠征の経験がないことが発覚した。なので、山城とは遠征のベテランでもあるという暁、響、雷と共に長距離の練習航海を行い、残りの私こと川内、青葉、金剛、電は警備任務を行うこととなった。

 

 「では司令官さんに遠征に向かう報告をしてくるのです」

 

 「あ、それ私がやってもいいかしら?」

 

 「ふぇ? はい、いいですケド……」

 

 「ありがと。誰か執務室の場所を教えてくれない?」

 

 

 「いいよ。響が案内するよ」

 

 山城が響と共に部屋から出る。その様子をみんなはポカンと眺めていた。役割を取られた電は展開に着いていけてないのかキョトンとしている。可愛い……。ただ、この中で私と金剛だけが、山城と響が出て行った扉を真剣に見つめていた。

 

 私と同じく、山城が生まれた瞬間と姉妹艦の扶桑好きを見て知っている金剛は、山城の変わりように疑問を抱いているハズ。その考えが正しいと証明するように、金剛は私にそっと寄り添い、耳元に話し掛けてきた。

 

 「山城、何かあったんデスカ? 提督の呼び方も気になりマスシ、提督ラバーズではなかったハズデスガ」

 

 「なにその提督ラバーズって。まあそれはともかく、私も知らないよ。今日久々に会ったんだし、会った時からああだったし。そっちこそ何か知らないの? 山城は昨日から居たんでしょ?」

 

 「確かに居ましたが、山城が来たのはナイトの11時。ルームを用意したのは提督デスシ、案内したのは翔鶴デース。それに、山城が居ると知ったのはモーニングデスシ、その時に少し話したくらいで、提督の話は出なかったデース」

 

 ええい、相変わらずどこぞの芸能人みたいな喋り方をして分かりづらい言い回しをする。まあ分かることは分かるんだけどさ……って今はそういう話をしてるんじゃなかった。

 とはいえ別に悪いことをしてる訳でもない。白夢大将の鎮守府で何かあったとしても、私が本部にいた時は別に何かしらの報告が上がった訳ではない……少なくとも私は知らない。それにもう異動したんだし、あまり以前のことを探るのもね。今は……ちゃっちゃと遠征に行くとしよっか。

 

 

 

 

 

 

 「警備任務と言っても、制海権を得た鎮守府近海を巡回するだけなんだよね」

 

 「でも大事なことなのです」

 

 「勿論分かってるよ。制海権を得たからと言って深海棲艦がいなくなった訳じゃないしね」

 

 「でもお散歩気分ですよねー。私としましては、提督に着いてた方が色々面白いことが起きそうなので鎮守府に居たいですが」

 

 「面白いことと言っても、提督の隣を賭けたキャットファイトくらいしか起きないデスヨ。自分で言うのも何デスガ」

 

 あれから2時間くらい経ったかな。現在警備任務中の私、電、金剛、青葉の4人はのんびりと会話しつつ、かといって油断することはなく周囲に気を配り、電探にも注意しながら鎮守府近海を巡回していた。でも、ついこないだ制海権を得ただけあってか深海棲艦の姿を見ない。気配もないし、電探に反応もない。平和だね。

 

 このまま散歩気分で続けるのは、あんまりいいことじゃない。それに、この遠征は昼食には間に合うように帰投するようにと提督から言われている。現在の時刻を確認すると、ヒトヒトゴーナナ……11時57分。昼食は午後1時からだったかな。

 

 「そろそろ戻りますね。じゃないとお昼ご飯に間に合わなくなりますし」

 

 「了解です! お昼ご飯は誰が作るの? 朝は提督と雷ちゃんが作ったと聞いたケド」

 

 「私が作ろうか?」

 

 帰投する途中の会話で私がそう聞くと、電と青葉は何やらこちらに顔を向けた。金剛は……特に反応はない。まあ彼女は私が提督の家事の先生だったことを知ってるから当然と言えば当然かな。

 

 懐かしいなぁ……最初は包丁すらマトモに使えなかったのに……危なっかしくて見てられなくて、ついつい手を出しちゃったんだよね。手を出したというのは、別に殴ったとかそういうことじゃなくて、密着して提督の手を掴んで、私が動かして材料を切ったりしたということ。提督は私よりも背が高いから、材料が見えづらかったっけ。

 

 「川内さんは、お料理がお上手なのですか?」

 

 「あれ、言ってなかったっけ? 提督に炊事掃除洗濯、家事全般を叩き込んだのは私だよ?」

 

 「そういえば、歓迎会の時に提督が“川内先生”って言ってましたねー」

 

 「川内のクッキングはとっても美味しいデース! 私もよくティータイムのケーキやスコーンなどのデザートを作ってもらいマシタ」

 

 「提督のおやつをあんたが分けて貰ってただけでしょ」

 

 もう1人の先生役に書類仕事を教わっていた時の休憩時間や、3時におやつを作っては持っていって一緒に食べたっけ。その時にもう1人の先生や金剛が現れては提督に強請って分けて貰って、途中から4人分作るようにしたんだよね。場所変えても探し当てるし。おかげで2人きりになれる時間が私が家事を教える時だけだった……なるほど、それぞれの分野を教える以外の時間は2人きりにさせないという心算だったのか。今頃気づくなんてね。

 

 それはさておいて、今は早く帰らないとね。じゃないと作る時間が足りなくなるし……そう思いながら帰路を進んでいると、航海練習を行っている山城達4人を見つけた。何やら山城の艤装から黒煙が吹き出している……何かあったのかな。

 

 「山城!」

 

 「あ、川内さん……みんなも」

 

 「艤装から煙が……何かあったんですか?」

 

 「遠征中に深海棲艦と出くわしてね。駆逐艦や軽巡洋艦ばかりだったし、数も少なかったから難なく撃退は出来たんだけど……」

 

 話を聞けば、山城達は遠征中にはぐれであろう深海棲艦の艦隊と遭遇し、交戦状態に。暁が言ったように駆逐艦や軽巡洋艦ばかりだったらしく、難なく撃退はした。しかし、その交戦中に相手の放った弾が運悪く山城の砲身に直撃し、中破してしまったのだとか。航行自体には問題ないケド、武装が使えなくなったから用心しながら帰投しているところを私達が見つけたということみたい。

 

 「夜戦でもないのに駆逐艦と軽巡洋艦に中破させられるなんて……しかも赴任したその日に入渠確定……不幸だわ……」

 

 「ホラ、元気出しなよ。そんな暗い表情じゃ、司令官が心配するよ?」

 

 「帰投したら、すぐにドック入りしてね? 大丈夫、高速修復材使って貰えるように司令官にお願いするから」

 

 「……うん」

 

 さめざめと涙する山城にそれを慰める響と雷。構図としては泣いてる大人が子供に慰められてるという図。中破したのはまあ、運が悪かったとしか言えないね。私みたいな軽巡洋艦や駆逐艦よりも厚い装甲を持つ戦艦は、基本的には戦艦による砲撃や空母から発進する艦載機からの爆撃くらいじゃないとロクにダメージを与えられない。だけど、私の大好きな夜戦なら至近弾を当てやすくなる上に魚雷も見えづらくなるから直撃させて轟沈させることだって可能になる……んだけどそれはあくまでも夜戦の話。昼間だと本当に豆鉄砲みたいな感じになる。

 

 ただ、山城がされたみたいに砲台に直撃させれば攻撃力を下げることは出来る。砲台そのものの耐久力は戦艦の装甲よりは低いし、上手くやれば弾薬の誘爆を狙える。深海棲艦がそこまでの考えがあったのかは分からないケド、流石に運が悪かったとしか言えないね。

 

 そんでもって、山城のことを考えてゆっくりと鎮守府に帰ってきた私達。出迎えてくれたのは……提督と翔鶴さんの2人だった。

 

 「みんなお帰り。遠征ご苦労様」

 

 「司令官!山城さんが……」

 

 「っ……ごめんなさい、提督……初日なのに……」

 

 「あーうー……謝らなくていいよ山城。無事、とは言えないケド……帰ってきてくれてよかったよ」

 

 泣き崩れる山城を、提督はそう言って抱き締めた。ちょっと羨ましいケド、仕方ないかな。もしも私が山城の立場なら……相当落ち込むと思うし。異動初日に遠征で中破。場所が場所なら……考えたくもない。

 

 だけど、提督はああして抱き締めてくれる。愛情で包んでくれる。落ち込んだ心に対する最高の良薬……ある意味では麻薬だけどね。

 

 「山城は先に入渠しておいで。その間にご飯の用意を……」

 

 「あの……提督」

 

 「なに?」

 

 「その……入渠が終わるまでずっと一緒にいてくれません? 今は……提督と離れたくなくて……」

 

 「あーうー……仕方ないね。みんなは先に食堂へ行ってて。僕は山城と一緒に行くから」

 

 【了解!】

 

 私達の返事を聞くと、提督は山城の手を引いて軍港から去っていった。私達はその姿が見えなくなるまで見届けた後、工廠で補給をして艤装を置いて食堂へ向かう。その道中、私は頭の片隅で昼食の献立を考えつつ、同時にさっきの山城のことを考えていた。

 

 提督と離れたくないからと、提督と共に入渠ドックに向かったであろう山城。その姿に、私はどこか違和感を覚えていた。山城は姉の扶桑のことが好きで好きで堪らないというシスコン戦艦。どこかの鎮守府では提督に求婚された山城がいて、その返事が“自分の心は姉のモノだからごめんなさい”という……因みに噂では、その提督はショックで1週間寝込んだとか。

 

 それはさて置き、あそこまで提督に寄る山城というのはどうにも違和感がある。手を取る時、まるで縋りつくような……どこか必死に見えた。提督に抱き締められた時、一瞬だけ強張ったような気がした。提督に手を握られた時、まるで救われたような顔をしてた。

 

 思えば、山城は提督がいない時はどこか落ち着きがなかった。そして提督が現れたら、我先にと提督に近寄った。あれじゃまるで……いや、そうと決まった訳じゃない。もう少し様子を見よう。別に害はないんだし……でも……。

 

 

 

 「なんか……イヤな感じだなぁ……」

 

 

 

 自分の中に浮かんだ言葉のせいで、胸がざわざわとイヤな予感がすると告げていた。

 

 

 

 

 

 

 「川内特製、炒飯と餃子に野菜炒め! 召し上がれ!」

 

 【いただきまーす!】

 

 「デリシャス! 腕は落ちてないみたいデスネ」

 

 「流石司令官の料理の先生……司令官と同等……いや、それ以上の味だ」

 

 「「美味しい~♪」」

 

 「……川内さん!」

 

 「なに? 雷」

 

 「弟子にしてください!!」




二回ほど大型建造をしましたが、陸奥と飛龍という結果に終わった作者です。ようやく雷ちゃんが60を超えました。ケッコンカッコカリが見えてきましたよー。

川内のお話は川内視点で進み、山城がどうなるのやらという話となっております。次回は超展開になるやもしれませぬ←

そういえば、一言付き評価にて私の前作、子狐幻想記から見続けて下さっているというコメントがありました。作者として嬉しい限りです。今後も皆様に楽しんで頂けるよう一層励んで参ります。

では(*゜∇゜)ノ
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