☆の色がオレンジから黄色に……ちとショックですが、応援して下さる方々の為、頑張って書いていきます。
「……」
「うーあーうー♪」
食堂から出た後、私と司令官は執務室で書類仕事に勤しんでいた。他のみんなは遠征……見送る時に響姉から物凄い羨ましそうな、妬ましそうな目で見つめられたケド。金剛さんにも睨み付けられ……そうになったところで川内さんに目潰しをされていたわね、チョキで。響く悲痛な叫びの中、司令官と翔鶴さんだけがほんわかとした雰囲気を纏っていた。
そんな場面から1時間ほど経った今、私は司令官を見ながら頭を抱えていた。目の前には、ご機嫌な様子で書類仕事をしているちっちゃい司令官の姿。その姿と言ったらもう……もう……っ!
(可愛すぎる……!)
普段の大人の司令官も、甘いものが好きだというどこか子供みたいなところがあって大人な感じと混ざっててとてもイイんだけど、今の司令官は純粋に子供なので可愛くて仕方がない。しかもそんな姿を私が1人占め状態……だけど落ち着くのよ雷、私は司令官の力になりたいの。頼られたいの。私が手を止めたらダメなのよ……そういえば、司令官はどれくらい書類仕事は進んでいるのかしら。
「ねえ司令官、書類仕事の進み具合はどう? 見てもいい?」
「うー♪」
相変わらず何を言っているか分からないケド、笑顔で首を縦に振って頷いてくれたので司令官に近寄って書類を見る。するとそこに書いてあったのは……書類に書くべき文や署名ではなく、1つの絵だった。
描いてあるのは、辛うじて金剛さんと川内さんだと分かる絵に、恐らく黒い長い髪に大きな赤いリボンの女の子、または女性、金の長髪の女性、緑色の髪の女の子。そして……黒いセーラー服とおさげが肩にかかっている女の子か女性の絵。そこに司令官らしき男の子の絵が描いてある、まるで集合写真のような絵だった。
「……もう、ダメじゃない司令官。これはお絵描きする為の紙じゃないのよ?」
「うー?」
「こんなことをしたらめっ、よ?」
「あーうー……」
右手の人差し指を立てて軽く叱ると、司令官はしょんぼりとして肩を落とす……落ち着け、落ち着くのよ雷、甘やかしてはダメ、悪いことをしたら叱るものなの。今私は怒っているの。だから司令官の頭を撫でようとする右腕よ鎮まりなさい……っ!
「……ふぅ。司令官、お絵描きするならこっちの紙で……」
何とか右腕を鎮めた私は、また司令官が大事な書類にお絵描きしないように適当な紙を取りに秘書艦用のデスクまで行く。そうして紙を取り、司令官のところへ向かうと……さっきお絵描きして私に怒られてしょんぼりしていた姿はどこにもなく、真剣な表情で書類に何かを書いていく司令官の姿があった。その速さは凄まじく、司令官が書くべき書類……普段より数が半分は少ない……が見る見るうちに減っていく。まさか、また絵を書いているんじゃ……と思って確認してみたケド……完璧の一言。さっきのお絵描き騒動は何だったのかしら。
「いかずち。うーうー」
「え? なに? 司令官」
「うーうー」
「ん? あっ、書類か」
突然声を掛けられ、何を言われたか分からずに聞き返すと、司令官は秘書艦用のデスクを指差した。何を言いたいのか分からなかったケド、司令官のデスクの上に未記入の書類が無くなっていることに気付く。どうやら書類のおかわりが欲しいみたいね……って司令官ばかりやらせたらダメじゃない。そう考えた私は司令官に新しい書類を持っていき……自分も司令官に負けないように書類仕事に勤しむのだった。
現在の時刻はヒトヒトゴーサン……11時53分。早めに午前の書類仕事を切り上げた私と司令官は、遠征から帰ってくるみんなを待ちながらお昼ご飯の用意をしていた。朝と同じく私は割烹着姿で、司令官は私の予備の割烹着を着ている。ちゃんと司令官用のエプロンがあるんだけど、あれは大人の時の司令官用。遠征に言ってる姉妹のエプロンを勝手に使う訳にもいかないので、私のモノを使っているのよ……ってだから、なんで私だけ割烹着? 自分で選んでおいてなんだけども。
「うーあーうー♪」
「……」
楽しそうな司令官の声を聞きながら、チラチラと司令官に目を向ける。見た目は子供でも能力は大人のままだということは書類仕事の時に良く分かった。私が1枚終わらせる頃には司令官は7枚終わらせてたし、書類のミスまで指摘された。それでも今の司令官は、見た目は私と同じくらいの子供。今使っている包丁やピーラーで指を切ったりしないか心配で心配で仕方がない。故に、私は司令官の動きや危険に対して注意しているのだ。
「あいっ!」
「う?」
「え、お~……」
そんな風に司令官に意識を向けていたせいか、包丁で指を切っちゃった。と言っても私は艦娘だからそんなに深くは切れないし、大事には至らない。血は出るけど……艦娘の身体は人間と似通っているらしいケド、それもまた謎よね。弾薬や燃料、鋼材を補給するのは艤装だし、私達が直接口にする訳じゃない。ボーキサイトは食べるらしいケド……翔鶴さんしか食べない。因みに、フライドポテトみたいな見た目で出てくることもあれば、なぜかステーキみたいな状態で出てくることもある。出すのは妖精。どうすればそんな状態になって出てくるのか……怖くて聞けないわね。
「あむっ」
「ふぇあっ!?」
そんな取り留めもないことを考えていたら、いつの間にか近くにいた司令官が私が切った指を口にくわえていた。それはもうパクリと。しかも傷口をちゅぱちゅぱと音が出るくらい舐められてる……違う、違うわ司令官。それは本来なら私がやる役なの!
包丁で指を切った司令官が痛そうにしてる時に私がそっと指を自分の口に導いて、上目遣いに司令官の顔を見ながら傷口を舐めて血を舐めとって、司令官が『そんなことしなくてもいいのに』とか言って私が『私がやりたかったの』とか言っちゃって、そのまま何とも言えない雰囲気の中で2人はちょっと幸せな空気の中で料理を再開する……少し心の距離が縮まったことを感じながら……そんなストーリーが鉄板なのよ司令官!
「ちゅう……んむんむ」
「……いえ、これはこれで……」
そうよ、良く考えなさい雷。さっきのは大人の司令官に私がやるからいいのであって、今のちっちゃい司令官には当てはまらないわ。私と同い年くらい、もしくは僅かに下くらいの見た目の司令官が私の指を舐めているというこの状況……時々どこか心配そうな目でチラチラと私の顔を見て一生懸命に……ちょっと口の端から唾液が垂れてるし……指から伝わる背中に走るような小さな痺れが妙に心地良くて、どこか背徳的な……あ、なんか頭がふわふわしてきた。私がそんな状態になっていると、ようやく血が止まったのか司令官はちゅぽんっと音を立てて口を離した。
「うー♪」
「……うん」
これはこれで……イイかも。
あれから少し経ち、私達がお昼ご飯を作り終わった頃に遠征に出ていたみんなが帰ってきた。尚、私達とは言ったケド司令官は途中でみんなのお出迎えに行っていたので一緒に食堂に入ってきたわ。司令官は私達が遠征、出撃から帰ってきた時には絶対にお出迎えしてくれる。更に、最も活躍した艦娘……俗に言うMVPの艦娘には抱き締めて頭を撫でてくれるご褒美もある。これは司令官が“頑張ってくれたからご褒美をあげる”とだけ言ったことに対し、私達が勝手に“じゃあMVPの艦娘だけご褒美を貰おう”と決めたことが始まり。司令官は全員に……というつもりだったんだろうケド、私達が誰か1人の方がやる気が出ると押し通した。
そして食事時。遠征だからMVPはなし……とは行かない。遠征から帰ってきても勿論ご褒美はある。貰えるのは……ジャンケンで勝った人だったりするのよね。秘書艦だとジャンケンに参加することは出来ないのよね。今回勝ったのはどうやら山城さんみたいで……。
「普段の氷狐君もいいけれど、小さな氷狐君というのもいいわね」
「~♪」
司令官を膝の上に乗せながらご飯を食べていたりする。山城さんが時々司令官の頭を撫でると、司令官は気持ちよさそうに目を細める……私もしてあげたら喜んでくれるかしら。あ、響姉と金剛さんが羨ましそうに山城さんを見てる。電と暁姉も似たようなものだけど……翔鶴さんと青葉さんはそうでもなさそうね。川内さんは……山城さんの隣に座ってるからたまに司令官と山城さんを見て優しく笑ってる。お姉さんオーラが溢れているわね。
この鎮守府に所属する艦娘の中で司令官のことが異性として好きなのは、青葉さんを除いた全員。勿論私も含む。翔鶴さんは分かりづらいケド、多分司令官のことが好きだと思う。時々さりげないアプローチをしていることはちゃんと知っているんだから。
それはさておき、私は午後の予定について考える。午後からもやることは基本的に午前中と変わらない。私と司令官は書類仕事だし、他のみんなは遠征に向かう。ただ、午前中に処理した書類の中に気になるものがあった。
“大型建造用建造機設置完了報告書”
大型艦建造機……文字通り、大型艦を建造する為の建造機。鎮守府に最初から備え付けられている建造機では建造出来ないような艦船を建造出来るモノで、その際に使用する資材の量は最初からあるモノよりも遥かに大量にいる。幸いというか、この鎮守府では司令官が建造を全くと言っていいくらいしてないから資材はたっぷりある。大型建造に資材を最大投入しても、10回は出来るくらいには。かと言って建造するかどうかは司令官次第なんだけど……司令官は建造機から艦娘の声が聞こえないと建造しないって公言してる。
私を建造した時は私がこの鎮守府に、姉妹達と司令官の元に行きたいって言ったから……らしい。建造の際にはそういった声を発した艦娘がいると、適量の資材を投入すればその艦娘が確実に来てくれるんだって。私以外に建造されたのは暁姉と翔鶴さん、この鎮守府以外だと山城さんと青葉さんだっけ。つまり、司令官が建造したのはたったの5人……他の提督達に比べて圧倒的に少ない。イコール戦力が少ない。
私達駆逐艦が4人、軽巡、重巡が川内さんと青葉さんの1人ずつ、戦艦1人、航空戦艦1人、正規空母1人の合計8人。フルメンバーで構成出来るのは艦隊1つだけ。全員改装して経験を積んでいるとは言え、あまりに少ない。それに、深海凄艦も出撃する海域が遠くなるに連れて強くなってきてる。最近では“鬼”や“姫”といった圧倒的な強さを誇る深海凄艦まで現れているとか……流石に私達ではそんなものが現れる海域にはまだ行けないでしょうケド。
ここは将来を見据えて司令官に建造を促すべきよね……秘書艦として。
お昼ご飯の後、私達は全員工匠にやってきていた……うん、司令官に建造しない? って聞いたら1発OKだったの。ちっちゃい司令官翻訳艦(命名響姉)こと翔鶴さん曰わく、午前の仕事中に声が聞こえたから元々全員集まる午後にやろうと思っていたんだって……タイミングがいいのか悪いのか、判断に困るわね。しかも大型建造……どんな艦娘が来てくれるのかしら。
「司令官、今回はどんな子なの?」
「うーあーうー、あーうー」
「翔鶴さん、通訳頼むね」
「私達じゃ分からないデース……翔鶴が羨ましいデスヨ」
響姉は苦笑し、金剛さんは羨ましげに翔鶴さんに通訳を求める。ちっちゃい司令官の言葉は翔鶴さんにしか分からないから仕方ないんだけど……いいなあ翔鶴さん。私も司令官の言葉を理解したい。だって、分かり合ってるって感じがするもん。
「駆逐艦のみんなみたいな背丈の子で、手にボウガンみたいなものを持っているんですって。駆逐艦の子かもしれませんね」
「大型建造なのに?」
司令官は既に妖精さん達に資材を投入するように指示してるみたい……って妖精さんも司令官が何を言ってるか分かるの!? なんだろう、この敗北感……。それはともかく、私達は資材の入った大型艦建造機を見上げる。私が生まれた建造機よりも遥かに大きな建造機。司令官が見た艦娘の姿は、恐らくは駆逐艦だと言う。もし、その子が駆逐艦だとしたら……どんな子だろう。大型建造機から生まれるくらいだし、私達とはスペックが違うんだろうなあ。
チラリと、建造機に刻まれている時間を確認してみる。必要な時間は……6時間38分。生まれる為に必要な時間からして圧倒的な差があった。その差が少し、悔しい。私を含めた姉妹は、全員能力の限界に達している。これ以上強くなることは、スペック上出来ない。敵は際限なく強くなっていってるのに、私達には限界値が存在する。いずれは私達駆逐艦が必要なくなる海域が出てくるかもしれない。そうなれば……その先を考えるのが、怖い。
司令官の為に……私のただ1つの誓い。どんな遠い遠征にだって行く。危ない囮だってやる。司令官の為なら、頼ってくれるなら、私はなんだって出来るんだから。だけどもし……出撃することがなくなったら、遠征に行く必要がなくなったら、司令官に“雷にやってもらうことはない”なんて言われたとしたら……。
ゾクリと、背筋に怖気が走った。
まるで、かつて沈没した時のような……全身が暗くて冷たい海に沈んだ時のような……或いはそれ以上の恐怖。考えただけで、想像しただけでこうなら、現実になったらどれほどの……いえ、やめましょ。突拍子もないし、司令官がそんなことを言うなんて有り得ないもん。それに、新しい艦が駆逐艦だったとしても……私達はそれを温かく迎え入れるだけ。司令官がそうしてくれたように、手を伸ばしてあげるだけ。
そう思って手を伸ばそうとした時だった……本部から通信が入り、私達に沖ノ島海域に出撃するように指令があったのは。
「……」
軍港から出て少しした今、私こと翔鶴は考える。今回の出撃の行く先は沖ノ島海域。目的はその海域に襲来した敵機動部隊を迎撃、撃滅すること。艦隊は雷ちゃんを旗艦に私、金剛さん、青葉ちゃん、川内さん、山城ちゃん。現状で最も火力が出る編成。私達の練度なら、まず問題なく襲来してきた深海凄艦も撃滅出来る。問題があるとすれば……今回は提督の意識体のサポートがないということと、雷ちゃんがどこか不安定だということ。
今の提督は妖力が極端になくなっている為、意識体に回せる妖力がない。雷ちゃんが不安定なのは……きっと、いずれ自分は要らなくなるのではないかという不安があるのでしょう。そんなことはないと言えればいいのだけど、正規空母の私が言っても心には響かないかもしれない。
「……はぁ」
空を見上げながら溜め息を1つ。上も下も広がる青……だけど私の心は不安で暗い。何も出来ず、何も言えず、ただただ時間だけが過ぎていき、少しずつ目的地に近付いていく。
「何も……起きなければいいのだけど」
いつもの元気が見えない雷ちゃんの背中を見ながら、私はそんなことを呟いた。
(司令官とキス出来なかった……やっぱりコレって……あ、でも帰ってきたらしてくれるって言ってたし……よーし、いっきますよー!)
(あら? 急に元気に……気のせいだったのかしら?)
「雷ストップ! スピーディー過ぎて青葉と翔鶴が遅れてマース!」
「雷ー! 待ちなさーい!」
「翔鶴さん、止まってないで動いて下さい!」
3ー4を二回の出撃でクリアし、更に初風? もドロップしましたが、とうとうバケツが……orz 伊号潜水艦も8ちゃんと168以外来てくれませんし、遠征も任務も進まない……。
あ、ようやく仕事が見つかりました。週六日の朝から夕方までだそうで、更新速度が更に遅くなるかもしれませんことをお詫び申し上げます。
そういえば本作にて“流石に人類の90%が滅んでいたら文明崩壊、バッドエンド確定を読む気にはならない”との一言を頂きました。こう言った批評は大歓迎です。これに関しては単純に私の設定の甘さが悪いですね。後の祭りですし、このまま突き進みますが。
あえて言わせてもらうならば、本作はあくまでも鎮守府の日常やほのぼの、たまにシリアスを書いていくものであり、人類VS深海凄艦の戦いを描くものではありません。プロローグやあらすじにも書いてありますし。
お名前は出しませんが、貴重なご意見ありがとうございました! もしかしたらもう読んでくれてはいないかも知れませんが、暇つぶしにまだ設定が甘いと笑っていただけたりすれば幸いです。
それでは、皆様からの感想、評価、批評、ptをお待ちしております(*゜∇゜)ノ