艦これ! 妖提督と艦娘の日々   作:d.c.2隊長

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またまた時間が空いてしまいました……申し訳ないです。

ですが、今後しばらくこれ以上に遅くなるであろうことをご理解下さい。というのも私の仕事が配管工という仕事であり、とても執筆に時間を割けるような状況ではないからです……とか言いつつもこうして更新しているように、無い力振り絞って執筆はしているんですがね。

以上、お知らせでした。それでは、どうぞ。


雷 4ー3

 出撃した私達を出迎えたのは、大量の深海凄艦だった。進むごとに1艦隊分……6隻現れ、撃破して進めば更に1艦隊分現れ……もう24隻は撃破したと思う。燃料も弾薬も心許ないケド、そろそろ敵侵攻部隊の中核艦隊と当たるハズ……そう私が思った時、どこからか主砲から放たれたであろう弾丸が飛んできた。幸いにも弾丸は私達には当たらず近くに着水し、その衝撃による波に揺られるだけ済んだ。

 

 「くっ……どこから!?」

 

 「敵艦隊、前方に発見しました!」

 

 「翔鶴!」

 

 「了解です! 艦載機の子達、行って!」

 

 私のように波に体勢を崩すことはなく、川内さんの声に従って翔鶴さんが艦載機を飛ばす。索敵機は飛ばしていたハズなのに翔鶴さんが気付くのが遅れたのは、やっぱり疲労が溜まっているからかしら。かくいう私もかなり疲労が溜まってる……だけど敵艦隊を見て、そんなことは言ってられないことに気付いた。

 

 私達の眼前に現れたのは……赤いナニカを纏った普通の戦艦ル級、駆逐ニ級2隻、雷巡チ級、戦艦ル級……そして、黄色いナニカを纏った戦艦ル級の計6隻。赤いナニカを纏った深海凄艦はエリートシップと呼ばれ、普通の深海凄艦よりも能力が高い。黄色はフラッグシップと呼ばれ、その戦闘力はエリートシップよりも更に高い。万全の私達ならまだしも、燃料も弾薬もほとんどなく、小破や中破こそしてないケド細かい傷もあり、疲労している私達では正直厳しい。しかも相手は万全な状態みたいだし……でも、そんなことは関係ない。戦うからには勝つ。勝って、この戦いに生き残って……。

 

 「司令官の役に立って、鎮守府に帰って……司令官にキスしてもらうんだ!!」

 

 私は、そう叫んで主砲を放った。

 

 

 

 

 

 

 結果から言えば、私達は作戦を成功させました。私達が最後に戦った中核艦隊と思わしき艦隊との戦いに勝利した途端、他の深海凄艦達は逃げるように南西諸島から去っていったのだそうです。またしばらくすれば深海凄艦は再び現れるでしょうが、南西諸島海域の制海権は充分に得たと言えるでしょう。

 

 

 

 ただ、その代償として雷ちゃんが大破してしまいました。

 

 

 

 「雷ちゃん、元気出して下さい」

 

 「ほら、入渠すればすぐに治りますよ!」

 

 「……」

 

 私と青葉ちゃんが慰めてみますが、それに答えることはなく、彼女は俯いたまま微動だにしません。なぜ私と青葉ちゃんが入渠しているのかと言えば、私達は大破ではないにしろ中破してしまったからです。川内さん、金剛さん、山城ちゃんは小破で済んだので、一足早く入渠場から出ました。彼女達も雷ちゃんを慰めていましたが……結果は御覧の通り。

 

 ……こうなった理由は、私にはまだ分かりません。大破してしまったからなのか、それとも別の理由なのか……そういえば、出撃する前から雷ちゃんは様子がおかしかった。私がそのことに気付いたのは……そう、大型建造の時。何が理由なのかは分からないけれど、雷ちゃんの様子がおかしくなったのはその時から……どうしてかしら。

 

 そう言えば、大型建造はもう完了しているハズ……どんな子なのかしら。

 

 

 

 

 

 

 大破、した。その事実を改めて実感すると、どうしようもなく怖くなった。大破したという理由から、私は帰投してすぐに軽傷だった川内さん達に入渠させられた……だから、司令官とは会ってない。軍港にいたこと知ってるケド、会話することがなかった。顔も確認してないから……どんな表情をしていたのかは分からない。

 

 怒ってたかな。呆れられたかな。悲しんでくれたかな。それとも……。

 

 

 

 役立たずって……思われたかな。

 

 

 

 ゾクリと、悪寒が背筋を走り抜けた。もしそう思われてしまっていたら……もし口に出して言われたら……イヤだ、怖い。司令官はそんな人じゃないって分かってる。でも、それでも1度考えてしまったら……1度疑問に思ってしまったら、不安は際限なく膨らんでいく。恐怖のせいか身体まで震えてきた。

 

 だけど、それと同じくらい……司令官のことを信じられない自分も怖い。言ってしまえば、私の考えや恐怖なんてただの被害妄想でしかない。直接言われた訳でもない。ただ、そうだったら怖いな……私が勝手にそう思っているだけ。司令官のことは好きなハズなのに、好きな人のことを信じられない……恐怖、不安、自己嫌悪の三重苦が私の心を蝕む。苦しくて、辛い。沈没した時とどっちが辛いかしら。そんなことを考える程に私は参っていた。

 

 「雷ちゃん、大丈夫?」

 

 「……」

 

 ついさっき青葉さんが入渠を終えた為、今この場にいるのは私と翔鶴さんだけ。その翔鶴さんからの何度目かの問い掛けに、私は1度も答えてはいなかった。答える気に、なれなかった。

 

 その理由は……浅はかな嫉妬だった。直撃すれば致命傷になるほど装甲は薄く、脆い。重巡以上の敵艦にはダメージを与えることが難しく、主力として数えるには力不足……それが、駆逐艦である私の現実。それに対し、翔鶴さんは正規空母。戦艦程ではないにしろ駆逐艦よりは厚い装甲、多彩な艦載機による索敵、雷撃、爆撃、対空能力。即主力行きの能力よね。

 

 私よりも装甲が厚く、私よりも火力があって、私よりもずっと大人で、私よりもずっと綺麗で……私の前にいる翔鶴さんが羨ましくて、嫉妬しているんだ。

 

 「……私が駆逐艦じゃなくて……」

 

 「えっ?」

 

 「私が駆逐艦じゃなくて……川内さんみたいな軽巡だったら、青葉さんみたいな重巡だったら、金剛さんと山城さんみたいな戦艦だったら……翔鶴さんみたいな、正規空母だったら……大破なんかしなくて、もっと活躍出来たかな……もっと……もっと、もっと」

 

 

 

 

 

 

 ― もっと司令官の役に立てたかな…… ―

 

 

 

 

 

 

 やっと答えてくれた雷ちゃん。その口から出た言葉は、酷く悲しみにまみれていました。私がその言葉を聞いて感じたのは……悲しみ。大破したのは駆逐艦だから、役に立てないのは駆逐艦だから……自覚してか無自覚か、雷ちゃんはそう言っているのです。それは、駆逐艦である雷ちゃん自身を否定する言葉……思いやりがあって、提督の役に立ちたいとひたむきに頑張っている雷ちゃんだからこそ、そんな言葉を聞いて私は悲しかった。

 

 確かに、駆逐艦は装甲も薄ければ火力も高いとは言えない。だけど、夜戦なら戦艦すら落とせるポテンシャルを持っている。私達正規空母では倒すことの出来ない潜水艦だって落とせる。正規空母や戦艦だけでは潜水艦には勝てない。潜水艦に致命的なダメージを与えられるのは、駆逐艦や軽巡洋艦。私達だけで勝てるほど、私達やっている戦争は甘くない。何事にも、適材適所というものがあるのですから。

 

 「雷ちゃん。あなたが私達正規空母……いえ、駆逐艦以外の艦種を羨む気持ちは分かります」

 

 「……分かる訳」

 

 「いいえ、分かります。雷ちゃんが駆逐艦以外の艦船を羨ましく思うように、私もまた空母以外の艦船を羨ましく思いますから」

 

 「えっ?」

 

 私の言葉を聞いて、ようやく雷ちゃんは顔を上げてくれた。その目は少し潤んでいて、涙が今にも零れそうなほど。それ程、今の雷ちゃんは精神的に追い詰められていたんでしょう。山城ちゃんと同じように……だけど、2人には違いがある。山城ちゃんが精神的に追い詰められられた原因は周りにあった。でも雷ちゃんの場合は……自分で自分を追い詰めている。

 

 このままでは抜け出せなくなる……私では抜け出させることは出来ないでしょうけど……引き止めるくらいは、出来ます。

 

 「私は雷ちゃんが羨ましい。私には出せない速度、夜戦での爆発力、遠征での駆逐艦の重要性……家事も出来て、こんなに可愛くて、いつも提督の役に立ちたいって宣言してて、真っ直ぐで……スゴく、スゴく羨ましい」

 

 「翔……鶴さん?」

 

 空母は遅い。故に進撃の時には私の速度に合わせないといけない為、艦隊全体の速度が落ちる。更に、空母は夜戦を行えない。一度夜戦になってしまったら、みんなの壁となるくらいしかない。遠征も、空母よりも駆逐艦の方が重要視される。

 

 そして……私達空母は、中破以上の損傷で艦載機を飛ばすことが出来なくなる。つまり、一切の攻撃能力を失ってしまう。でも、他の艦船は戦える。大破しても、弾薬が尽きても、沈むその瞬間まで抗える。私はそれが羨ましい。空母とて艦載機が飛ばせなくなっても殴る蹴るくらいは出来ますが、近付く前に体を穿たれるのが関の山ですしね。

 

 「雷ちゃん」

 

 「はい……?」

 

 「あなたは、自分が役立たずだと思いますか?」

 

 「……」

 

 再び俯く雷ちゃんは、肯定も否定もしない……ですが、否定しないのは肯定しているのも同じこと。そんな雷ちゃんを……私は抱き締めた。提督がそうするように……いいえ、提督ならそうするから。ありったけの愛情で包んでくれる提督だから、私と雷ちゃんは……彼が大好きだから。

 

 「あ……」

 

 「雷ちゃんは沢山頑張りました。弾薬も燃料も尽きそうだった時、あなたは率先して囮になってくれました。弾薬が尽きても、体当たりや水しぶきを上げて敵艦の妨害をしてくれました。大破したのは運が悪かったですが、そうなっても雷ちゃんは戦意だけは失わなかった」

 

 戦闘が始まった瞬間、雷ちゃんはそのスピードを生かしながら主砲と魚雷を撃って牽制し、囮になってくれた。それらが尽きても、海面を蹴り上げて敵艦に水を掛けたり、体当たりして敵艦の行動を妨害し、私達に有利になるようにしてくれた。運悪く敵駆逐艦の攻撃が直撃して大破しても、その目に宿った戦意……意志だけは失わなかった。

 

 “司令官のところに……帰るんだ……っ!!”

 

 今にも沈んでしまいそうなボロボロの姿で、無意識に呟いたであろう言葉。それ故に、込められた想いは大きい。そんな姿を見て、言葉を聞いて私達は奮起してギリギリ敵艦との戦闘で勝利を収めることが出来た。

 

 「最後の戦闘……MVPは間違いなく雷ちゃんです」

 

 「でも私、1隻も……」

 

 「最も戦闘に貢献した艦に与えられるのがMVPです。確かに沈めた数で言うなら、金剛さんですが……それもまた、雷ちゃんが囮をしてくれたからだと金剛さんも言ってました。それに……」

 

 

 

 

 

 

 ― 強いだけでは、ダメなんでしょう? ―

 

 

 

 

 

 

 「あ……」

 

 “強いだけじゃダメ”……それは、私が言った言葉。史実において、私という艦は沈んだ敵艦の乗組員を救助したことがある。例え敵であっても、助けられる命なら助ける。強いことは良いことだけど、強いだけじゃ……誰かに優しく出来なければ本当に強いとは言えないと、私は思うんだ。

 

 だって、誰かに優しく出来るのは……心が強い人だけだから。

 

 「……私、全然敵艦を倒せなくて」

 

 「はい」

 

 「……全然、役にたってないと思ってた」

 

 「……はい」

 

 ぎゅっと、強く抱き締められた。大人で、私よりも全然大きな胸の感触は少し妬ましかったケド……今はすごく安心した。

 

 「……私、役に立てたかなぁ?」

 

 「はい」

 

 「……司令官にいらないって、言われないかなぁ?」

 

 「……はい。そんなこと、提督が言うハズないじゃないですか」

 

 

 

 「……司令官、誉めてくれるかなぁ……!?」

 

 「……勿論です」

 

 

 

 不安だった。怖かった。逃げ出したかった。司令官に会うのも、司令官に見られるのも、司令官に話しかけられるのも、話しかけるのも……全部、全部怖かった。でも、翔鶴さんが言うなら……ううん、今なら司令官が誉めてくれるって信じられる。だって……翔鶴さんは信じてるのに私が信じないなんて……悔しいじゃない。

 

 「……司令官に会ってみる」

 

 「行ってらっしゃい」

 

 駆逐艦の私は、大破しても完全回復するまでの入渠時間は短い。実は、青葉さんが出る前から治ってはいたんだけど……先の理由から出るに出られなかった。

 

 でも、今は違う。司令官に会う。会って、誉めてもらって、頭を撫でてもらって……キスしてもらうんだ。私はそう意志を持ち、入渠場から出て行くのだった……浴場(?)から上がる時に見えた自分の身体と翔鶴さんの身体を見比べて悲しくなったのはナイショ。

 

 

 

 

 

 

 「いかずち!」

 

 司令官はどこかしらと鎮守府内をうろうろしていると、工匠の近くで司令官が私の名前を呼んで走り寄ってきてくれた。見た目が見た目なのでスゴく可愛い。尻尾もスゴい振ってるから余計可愛い。

 

 落ち着け、落ち着くのよ雷。私は司令官に誉められると信じて入渠場から出たの。ここは司令官の姿を見た私がどうして司令官を信じられなかったのかと再び自己嫌悪に陥る場面なのよ。だから撫でようとしてる私の右手よ鎮まりなさい……っ!

 

 「いかずち、あーうー、うーうー」

 

 「あ……」

 

 などと私が自分自身と戦っていると、司令官が背伸びをしながら頭を撫でてくれた。相変わらず何を言っているのかは分からないケド……じんわりと暖かいモノが私の心に入り込んできた。

 

 ― お疲れ様。頑張ったね ―

 

 不思議と、そう言われていると理解した。嬉しくなって、自然と笑みを浮かべる……事はなく、なぜか私は涙を流してしまっていた。どうして? と疑問に思う。嬉しいなら笑顔になるハズなのに、どうして私は泣いているの?

 

 ……ああ、そうか。私は嬉しいと感じるよりも安心してしまっていたんだ。どれだけ信じたとしても、根底の恐怖は消えない。その恐怖が本当の意味で消え去ったことに、安堵したんだ。この涙は嬉し涙なんかじゃなくて、恐怖から開放されたことに対する安心の涙なんだ。

 

 「……ねぇ司令官。私、役に立てたよね?」

 

 安心したら、次は司令官の口から聞きたくなった。大好きな司令官の口から、司令官の役に立つことが幸せの私に、一言だけ。

 

 

 

 「あーうー♪うーあーうー?」

 

 ― もちろん♪これからも頼りにしてるよ? ―

 

 

 

 「……うん! もーっと私に頼っていいのよ!」

 

 今度こそ、私は笑った。




だいぶ前になりますが、地獄といわれた3ー4を二回の進軍であっさりクリア出来てしまいました……しかも初風も出るという。まあ今は5ー3で詰んでる上に仕事の過酷さ故に艦これやる時間もないんですが……ああ、雷に癒されたい。

それでは、あなたからの感想、評価、批評、ptをお待ちしておりますv(*^^*)/
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