艦これ! 妖提督と艦娘の日々   作:d.c.2隊長

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お待たせしました。これにて雷編は終了となります。


雷 4ー4

 司令官と会った後、司令官と私を含めた艦娘全員は工匠に集まっていた。現在の時刻はフタニーヨンナナ……午後10時47分。集まった理由は当然、昼間に大型建造した艦娘に会う為。今、目の前では司令官が建造機よりも巨大な大型建造機の扉の前に立っている。暁姉の時も、私の時も、翔鶴さんの時も、きっと山城さんと青葉さんの時もそうしていた。建造によって生まれた艦娘に最初に出逢うのは司令官であり、艦娘が最初に出逢うのは司令官。きっとそれは、刷り込みの意味合いもあるんだと思う。提督と艦娘……そのお互いの立場を築く為に……なんて、司令官はそんなことは考えていないでしょうケド。

 

 やがて、司令官が扉に向かって両手を伸ばした。何かを迎え入れるような、抱き締めようとしているようなその姿は、今の子供の姿もあってとっても可愛い……こればっかり言ってる気がするケド……落ち着け、落ち着くのよ雷。今はとても神聖な、物凄く大事なところなの。新しい仲間が加わる大事なところなの。だから司令官を抱き締めようと今にも動き出しそうな体よ止まりなさい……っ!!

 

 そんな風に自分自身と戦っている時、ゴウン……と重い音を響かせながら建造機の扉が開いた。その中から現れたのは……私達駆逐艦と同じくらいの見た目の、クールそうな艦娘。でも、服装や艤装は駆逐艦というよりも……そう、翔鶴さんみたいな空母のように見える。その新しい仲間は司令官に一瞬懐かしそうな目を向け……次に不思議そうな顔をした。

 

 「あなたが提督?」

 

 「あーうー」

 

 「……えっと……」

 

 あ、スッゴく困った顔をしてる。でも気持ちは分かるわ……私もくっついてる時は何を言ってるのか伝わるケド、今みたいに離れてると何を言ってるのかさっぱり分からないもん。そんな状況を打破したのは、川内さんだった。

 「うん、その子が私達と……これからはあなたの提督になる。今はワケあって子供の姿をしてるケド、本来は大人の姿だから安心していいよ」

 

 「ワケとか本来はとか普通は使わないような言葉が気になるケド……分かったわ。私は航空母艦……装甲空母の“大鳳”。出迎え、ありがとうございます。提督……貴方と機動部隊に、勝利を!」

 

 という風に自己紹介をしてくれた大鳳……さんを付けるべきか呼び捨てにするべきか……うん、さんにしておきましょ。敬礼と共に喋っていた大鳳さんだけど、いつの間にかその体は、まるで吸い込まれるかのようにすっぽりと司令官の両腕に収まっていた……いきなりハグなんて……いいなぁ。

 

 さて、大鳳さんが生まれたことでこの鎮守府には2隻目の空母が来たことになる。つまり……火力重視のフルメンバーで艦隊を組む場合、私達駆逐艦が入る枠はなくなったことになる。ついさっきまでの私なら、その事実にまた暗くなっていたかもしれない。もう出撃して役に立てないって落ち込んだかもしれない。でも今は違う。確かに出撃する頻度は減るかもしれないし、戦闘で司令官の役に立てることはなくなるかもしれない。だけど、役に立つことが出来るのは、頼って貰えるのは、私が司令官の為に頑張れるのは戦闘だけじゃない。家事でも、デスクワークでも、お茶汲みやお使いだって、立派に司令官に役に立てることだから。

 

 だから私は悲観的になることもなく、大鳳さんという新しい仲間を心から祝福し、迎え入れることが出来る。生まれたことにおめでとうと言ってあげられる。こんなにも心に余裕があることが、なんだか嬉しかった。

 

 「あー、うーうー。あーうーひー。うー……うーあーうー」

 

 「翔鶴、通訳お願いシマース」

 

 「今度は、僕が自己紹介するね。僕は八意 氷狐。この鎮守府と……今日から君の提督になる、ですって」

 

 それは、初めて会う艦娘に司令官が必ず行う自己紹介。やっぱり自己紹介は大事よね。当然、司令官の後は私達も自己紹介したわ。

 

 こうして、私達の鎮守府に新しい仲間が加わった。

 

 

 

 

 

 

 あの後、普段の晩御飯の時間はとっくに過ぎていたけれど、私達は新しい仲間が出来るからという理由で食べていなかった為、大鳳さんの歓迎会も兼ねた遅い夕食を食べていた。ただ、歓迎会を兼ねたといっても時間はあんまりなかったので、私と司令官と川内さんでおにぎりやサンドイッチみたいな簡単なものを作った。おにぎりの中身はフレーク状のシャケの切り身、昆布、おかか、梅干し、変わり種に玉子焼きと切ったソーセージを入れてある。サンドイッチはハムレタスにタマゴサンド、トマトベーコン。飲み物は電が淹れた緑茶か山城さんが作ってくれたリンゴジュース、もしくは水。今のところ、おにぎり派が緑茶でサンドイッチ派がリンゴジュースね。因みに、司令官はリンゴジュース……電がちょっと落ち込んでいて、山城さんがかなり嬉しそう……大鳳さんはおにぎり派みたいで緑茶を飲んでる。

 

 大鳳さんが入る部屋は、翔鶴さんと金剛さんとの相部屋に決まった。同じ空母である翔鶴さんもいるし。今も大鳳さんは翔鶴さんと一緒に何か話しをしながら食べてるし。

 

 「提督の作ったおにぎりを食べるのは、私デース!」

 

 「甘いよ金剛さん。例え高速戦艦と言えども、駆逐艦に速度で勝つことは出来ない……もらった!」

 

 「シット! 提督が作った、美味しいおにぎりが!」

 

 「あむ……これが勝利の味か……嫌いじゃない」

 

 「響姉も金剛さんも仲良く食べなさい。たくさんあるんだから」

 

 どうしてこの2人は……まあ理由は分からないでもないケド。

 

 溜め息を1つ吐き、右を見てみる。司令官と山城さんと川内さんが一緒に食べていて、その近くでまだ落ち込んでる電を暁姉が慰めてる。左を見る。翔鶴さんと大鳳さんが何やら話しながら食べていて、いつの間にか青葉さんも加わっていた。

 

 楽しくないワケじゃないケド、貧乏くじを引いたような気がする。もうこの2人は放っておいて、司令官達のところに行こうかしら……私はもう一度溜め息を吐き、未だに言い争う2人を冷めた目で見ていた。

 

 

 

 

 

 

 新しく仲間になった大鳳ちゃん。この子は、私にとっては瑞鶴と同じ妹と言って差し支えない。というのも、彼女という艦は私という艦の設計をベースにされているから。だからでしょうか、大鳳ちゃんは私に懐いてくれているように感じます。時折視線が私の胸に行ったり、なんで同じ空母なのにこうも差が……という呟きが聞こえてしまうのは、思わず苦笑いしてしまいます。

 

 そのことを除けば、至って楽しく談笑出来ていると思いますね。この鎮守府はどういう所なのか、提督はどういう人なのか、艦隊は、秘書艦は……止まらない質問から感じられる好奇心は、そのクールな雰囲気とのギャップから非常に可愛らしく感じます。途中から青葉ちゃんも参加し、私でも知らないような鎮守府や提督、他の艦娘の話をしてくれました。ただ、提督と川内さんと山城ちゃんのアノ話の下りに入った瞬間思わず近くにあったおにぎりで口を塞いじゃいましたが。青葉ちゃん、冗談でも言って良いことと言うべきではないことがあるんですよ? そういう意味を込めて笑ってみせると、怯えたように頷いた青葉ちゃん……そんなに怖かったかしら。

 

 「大鳳ちゃん。話を聞いてどうでしたか?」

 

 「そうですね……配属されたばかりですが、良いところだと思います。提督と艦娘との間にもしっかりとした繋がりもあるみたいですし……提督の人柄も概ね私の想像通りみたいですしね」

 

 「想像通り、ですか」

 

 「ええ。最初に提督を見た時、なぜだかスゴく懐かしく感じて……この人はちゃんと私のことを愛してくれると直感しました」

 

 嬉しそうな、それでいて恥ずかしそうな大鳳ちゃん。やはり艦娘ならば、提督を見れば懐かしく感じ、愛してくれることを直感で感じられるのでしょう。遥か昔……少なくとも、私達が艦船として存在した時代から生きてきた妖怪である提督。妖怪という存在である故に、彼は愛国心といった強い意志に包まれた私達を美しいと感じ、ほぼ全ての艦船の傍らにいた。時には出撃の際にこっそり乗船していたこともあるとか……沈没に巻き込まれかけたことはないらしいですが。

 

 だからでしょう。私達艦娘は、その殆どが提督に対して懐かしさを覚える。造られた時、出撃する時、出撃から帰ってきた時……いつの間にか側にいて、いつの間にかいなかった“青”……もう会えないと思っていた存在が、今ではあんなにも近くにいる……考えてみれば不思議なことです。

 

 ふと大鳳ちゃんに視線を移せば、彼女は提督達を見ていました。生まれたばかりの大鳳ちゃんは、当然ながら私達との繋がりはまだまだ薄い。ならば、このままここで私や青葉ちゃんと話しているよりも、他の皆さんとも話した方が繋がりもより強固になるというもの。

 

 「提督達のところに行きましょう。大鳳ちゃんのこと、私達のこと……たくさん話しましょうね」

 

 「はい!」

 

 大鳳ちゃんと手を繋ぎ、提督達のいる場所に移動する。

 

 今の時刻は、フタサンサンニー……午後11時32分。歓迎会はまだ、終わりを迎えそうにはない。

 

 

 

 

 

 

 翌日、私は姉妹4人に青葉さんを加えた5隻で遠征に出ていた。理由は当然、大型建造に使った分の資材を集める為。因みに川内さん、金剛さん、翔鶴さんは大鳳さんを艦隊に加え、大鳳さんに経験を積ませる為に出撃している。生まれたばかりだから経験なんて全くないしね。山城さんはいざという時の為のお留守番。

 

 本当なら秘書艦の私が出撃組に入るんだけど……前回の出撃で大破した時に姉妹達にもたくさん心配かけた上に私だけが出撃したから、昨日はあまり姉妹で一緒に居られなかった。なので今回は第1艦隊から一時的に外れ、姉妹と青葉さんで一緒に遠征に行っておいで……というのが翔鶴さんに訳してもらった司令官の言葉。

 

 「~♪」

 

 「雷お姉ちゃん、ご機嫌なのです」

 

 「ホントにね。まあ理由は分かるケド……いいなぁ、司令官と一緒に寝られて」

 

 「姉さんも何度かしてるだろう?」

 

 「そう言う響ちゃんもですね。というか、青葉以外はみんなしてるんじゃ?」

 

 後ろから電達の話し声が聞こえる。その話し声から分かるように、今の私はとても気分がいい。あの歓迎会の後、大破した恐怖から司令官に一緒に寝てもらうように頼んだら即座にOKしてくれた。ちっちゃくなった司令官にはいつもの布団は大きく、私が隣に入り込んでも余裕があった。かと言って端に寝る訳でもなく、布団の真ん中で私達は眠った。その時、手くらいは……なんて思っていたら、なんと司令官の方から私を抱き締めてくれた。寝ぼけているのかと思ったケド、頭を撫でてくれたし、目もあった。その撫でる手から伝わる“大丈夫”という私を安心させる想い……もう大破した恐怖も、役に立てないかもしれない恐怖も、私の中にはなかった。

 

 それだけでも充分に私が気分がいい理由になるケド……それだきじゃないのよね。朝起きたら目の前にあどけない寝顔の司令官。1日の始まり方がもう最高だった。しかも起きる司令官が最初に視界に入れるのは私。おはようの挨拶をするのも私が最初。寝起きで目を擦る司令官の姿をバッチリ記憶し、司令官の頭がすっきりしない内に私が着替えさせ、顔を洗ってあげたりして、布団もちゃんと畳んであげたり……妻というか母親というか、そういうことが出来た私は大満足だった。故に、今日の私は凄く気分がいい。今の私なら遠征大成功も可能よ!

 

 「雷、本当に機嫌良さそうだね。そんなに司令官と眠るのが良かった? いや、良かったに決まってるケドね」

 

 「そりゃあもうね! 暖かいし、サイズもちょうど良かったから抱きつきやすかったし」

 

 「あ、暖かい? ちょうどいいサイズ!? い、妹に先を越された……?」

 

 私の言葉を聞いた響姉が何やらぶつぶつと呟きだした……全部聞こえてるケド。電も顔を赤くして私を見てるし、青葉さんは何か聞きたそうな顔してるし……暁姉だけは響姉が何を言ってるのか分からないみたいね。キョトンとして首傾げてるし。

 

 因みに、響姉達が想像しているようなことは残念だけどない。ちっちゃい司令官の子供特有の高めの体温は暖かいし、身長や体格が私とちょうど良くて抱き締めやすいのだ。そういう意味で言ったんだけど、暁姉以外は“そういう意味”で取っちゃったみたいね……面白いからそのままにしておきましょ。

 

 「さぁ、遠征を続けるわよ!」

 

 「待て雷! 詳しい話をしてもらうよ!」

 

 「青葉にもお願いします!」

 

 「は……はわわわ……」

 

 「雷はただ司令官と一緒に寝ただけなのに、響達はどうしたの……?」

 

 後ろが騒がしいケド、構わずに私は海の上を走る。早く終わらせて、鎮守府に帰ろう。そこには、私の大好きな司令官がいる……お帰りと言ってくれて、頭を撫でてくれて、頑張ったねって抱き締めてくれる司令官がいる。早く会いたいな。だけど、まずは遠征を大成功させないとね!

 

 

 

 「司令官の役に立つ為に! いっきますよー!!」

 

 

 

 大好きなあなたの役に立つ。それが、私の想いだから。

 

 

 

 

 

 

 宿毛湾泊地から離れた場所にある海軍総本部……その総司令室に、2人分の人影があった。一目で高級品と分かる巨大なデスクを間に挟み、人影は互いを見合う。デスクのイスに腰掛けるのは、部屋の主である山田総司令。その視線の先にいるのは……1隻の艦娘だった。

 

 「話は分かっていると思いますが、あなたには宿毛湾泊地に異動してもらいます。既に彼の3人の先生役の内2人は向こうですし、あなたの要望もあります……ここも一段落しましたし、そろそろ行ってもいい頃だと判断しました」

 

 山田総司令の言葉に、艦娘は嬉しそうに笑った。同じ先生役の金剛と川内は先に異動してしまった……そのことを聞いた時は、ズルいと思ってしまった。無論仕方ないことだとは理解しているが、それでもやはり思ってしまうものだ。だがいつか自分も……そう思いながら過ごしてきた日々が、ようやく報われる。

 

 「八意提督を頼みましたよ……“5隻の最初の艦娘”の1人……」

 

 名を呼ばれた艦娘は鈴が鳴るような声と共に、肩に掛かる黒髪のおさげを揺らした。

 

 

 

 

 

 

 「今日はこれくらいで引き上げようか」

 

 「そうですね。大鳳ちゃんも小破しちゃいましたし……」

 

 「ごめんなさい……でも、まだやれます! だって私、中破しても艦載機飛ばせますし!」

 

 「……え?」

 

 (オー、翔鶴がショックを受けてるみたいデース……後で提督に慰めてもらうように言っておきマショウ)




今回最後に出た“5隻の最初の艦娘”はオリジナル設定です……が、前面に出すようなことはあんまりないと思います。

山田総司令の出番は意外と多いと自分で思います。他2人は名前だけなのに……w

艦これは、ようやく潜水艦が4隻集まったのでZ1までもうすぐですね。相変わらず5ー3で詰まってますが……ボスまで辿り着けないw

それでは、あなたからの感想、評価、批評、ptをお待ちしておりますv(*^^*)/
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