艦これ! 妖提督と艦娘の日々   作:d.c.2隊長

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前回よりも僅かに早めの投稿です。

感想が少なくなっていることで少しモチベーションが下がり気味ですが、投稿したその日に感想があると上がるのでプラマイゼロと言ったところですね。

今回は少々文字数多め。それでは、どうぞ。


時雨 5ー3

 『よし、みんな特に損傷はないみたいだね。進撃しよっか』

 

 【了解!】

 

 意識体となっている氷狐が僕達の姿を確認し、そう命令を下す。たった今一戦を終えた僕達に、目立った損傷はない。相手は重巡以下の戦力しかなかったから金剛と山城、翔鶴が開幕爆撃と長距離砲撃で殆ど沈めたし。僕の出番は殆どなかったな……いいことだけど。

 

 さて、僕達の今回の出撃の目的は哨戒。この手の出撃は、それ程踏み込まなくても敵と遭遇することが多い。それは今の僕達にも当てはまるようで、翔鶴がまだ僕達が視認できないほどの離れた場所、遥か前方に敵北方進行艦隊を偵察機が捉えたと言ってきた。敵戦力は、フラグシップの空母ヲ級、戦艦ル級、駆逐ハ級、エリートの戦艦ル級、駆逐ニ級、輸送ワ級だと言う。幸いにも相手はまだこちらに気付いた様子はないみたい。あっさり終わったとは言っても多少の疲労はあるから、弾薬を除いて万全の状態まで回復するのに時間はそう掛からない。微速で進みつつ、敵に発見されるか有効射程距離に入り次第、砲雷撃戦を始める手筈となった。

 

 相手には輸送艦という攻撃手段を持たない艦がいる為、戦力という意味ではこちらが上。でも、フラグシップにエリートの戦艦や空母の力は強大……決して楽観視は出来ない。とは言っても、負けるという心配は一切していない。先の一戦でみんなの能力をある程度知ったということもあるケド……僕個人が、敵に負ける姿を思い浮かべることが出来なかった。それは今日この日までに培ってきた経験からの自信。鬼や姫でも来ない限り、僕は自分が深海凄艦に負けるとは思っていない……僕だけじゃダメなんだけどね。

 

 そんなことを考えている内にどうやら敵艦隊に補足されてしまったようで、敵空母からいくつか艦載機が飛んできた。それに伴い、翔鶴も開幕爆撃の為に艦載機を飛ばし、僕達は僕達で敵艦載機を迎撃する為に副砲で対空弾幕を張る。そうした空に上がる弾幕の花火を開戦の狼煙とし、僕達は目に見える距離となった敵艦隊との砲雷撃戦を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 空戦はこちらが有利、お互いに開幕爆撃による被害はなし。そんなスタートから始まった砲雷撃は、現在青葉達が有利です。既に敵艦隊は3隻沈み、残るは空母ヲ級に戦艦ル級、駆逐ハ級を残すのみ。フラグシップばかり残ってしまいた……やはり、大幅に強化されているフラグシップは侮れませんね。とは言っても既に数はこちらが上、しかも目立った損傷もありません。燃料と弾薬の消費量も許容範囲内。そして……。

 

 「やあっ!」

 

 可愛らしい気合いの入った声と共に、時雨さんが手にした主砲の12.7cm連装砲を放ち、敵戦艦の砲台を的確に撃ち抜いてその攻撃力を奪います。先の3隻の内2隻を沈めたのは時雨さんであり、このように的確な砲撃で時雨さんが無双していらっしゃいます。駆逐艦の速度を生かして動き回る時雨さんに敵艦の攻撃は何1つ当たらず、大火力こそないものの1発も外さずに致命傷に近いダメージを与えていく……やがてその内の1つが、再び敵戦艦の砲台を撃ち抜いて破壊しました。

 

 「まだまだ……行くよ」

 

 その一言と共に、時雨さんが敵戦艦へと向かいます。勿論敵艦も反撃してきますが、空母が出す艦載機は翔鶴さんと青葉で抑えていますし、空母本体には金剛さんが対応。駆逐艦は雷ちゃんが抑えています。そして山城さんは、戦艦に対して威嚇射撃程度に主砲を撃ち込み、行動を阻害しています。

 

 艦載機をあらかた落としたので時雨さんに視線を動かすと……どうやって避けたんだとツッコミたくなるような超至近距離で敵戦艦から放たれた砲撃を紙一重で回避し、キラキラ光る水飛沫でその身を濡らしながら敵戦艦の腹、胸、顔に砲撃するという行動をとっていました。幾ら私達や深海凄艦の体の頑丈さが艦船の種類や装甲に依存するとは言え、あれほどの至近距離では耐えられるものではないでしょう。現に敵戦艦はダメージの許容量を超えたようで、砲撃によって吹き飛ばされた体を起こすことなく、暗い海の底へと沈んでいきました。

 

 これが、最初の5人の艦娘の力。艦種や火力、装甲差をものともせず、敵には触れることすら許さない圧倒的な戦闘力……鎮守府で提督や金剛さん達とじゃれる姿を見ている青葉としましては、情報を持っていても尚信じられません……百聞は一見に如かず、事実は小説よりも奇なり……と言ったところですか。

 

 「きゃあっ!!」

 

 「っ!? 雷ちゃん!」

 

 雷ちゃんの悲鳴が聞こえたのは、そんなことを考えていた時でした。確か、雷ちゃんは駆逐ハ級と戦っていたハズ……前回の大破した雷ちゃんの姿が脳裏に浮かびつつ、声のした方を見れば……右腕部分の服こそ吹き飛んでいるものの、しっかりと自らの足で海上に立つ雷ちゃんの姿。ダメージは小破といったところでしょうか……無傷ではないですが、健在である事実に安堵の息を吐きます。悲鳴を聞いた時はヒヤッとしましたよ。

 

 しかし、健在なのは相手も同じ。青葉はすぐに駆逐ハ級へと照準を合わせ、主砲を放ちます。流石に距離がある為、ハ級には避けられましたが……その間に雷ちゃんは体制を整えた様子。本音を言えば沈ませたかったところですが、雷ちゃんから引き離せたので良しとしましょうか。

 

 『雷、大丈夫?』

 

 「司令官……うん。雷は、大丈夫なんだから!」

 

 『みたいだね。なら、行くよ雷! 目標、駆逐ハ級。主砲照準合わせ……』

 

 『「てぇっ!!」』

 

 触れられるのかは謎ですが、提督が雷ちゃんの頭を左手で優しく撫でます。その後、珍しくキリッと目を鋭くして敵艦を睨み付け、雷ちゃんに指示を出す提督……青葉は初めて、提督が狐の妖怪であると実感しました。縦一線に開かれた瞳孔に、はっきりと感じる怒気……提督を怒らせるのは止めておきます。睨まれたハ級なんか動き止まってますし。

 

 そして2人の気合いの入った声と共に放たれた砲撃は見事にハ級に直撃し、撃沈させました。これで残るは空母ヲ級のみ……と視線を動かせば、なぜかヲ級は信じられないものを見たかのような目で雷ちゃんを見て……いえ、あれは……提督を見ている? そう思った時、ヲ級はいきなり反転し、そのまま走り去って……え?

 

 「逃げた!?」

 

 「追撃を……」

 

 『ストップだよ、雷、山城。無理に追う必要はないし、この周辺は制圧出来たと思う。みんなも大なり小なりダメージは受けているし、無理は禁物だよ。任務は成功と判断するから、第一艦隊は帰投せよ! ……なんてね』

 

 【了解!】

 

 少し茶目っ気を出した提督にクスッと小さな笑いをこぼしつつ青葉達はそう答え、帰投し始めます。戦果は上々ですし、燃料弾薬の消費も思ったより少ない。雷ちゃん以外は本当にすぐに直りそうな傷しかないですし、時雨さんに至っては無傷です。実力の差は大きいですねぇ。

 

 「雷ちゃん、右腕は大丈夫? 服吹き飛んでるケド」

 

 「大丈夫! 全然痛くないし」

 

 時雨さんの言葉に対して雷ちゃんは笑顔でそう言い、その言葉を実証するように右腕をぐるぐると回し始めます。我慢しているようには見えませんし、本当に痛くはないんでしょう……が、正直信じられません。

 

 青葉達が最初から着用している服、青葉達自身の体の強度は艦船時代の装甲に依存していて、服が破れるということは装甲が破損したということと同じことです。5感も痛覚もある艦娘なら、破損すれば当然痛みを感じるのです。何せ、体の一部ですから。ましてや雷ちゃんはその装甲が吹き飛んでおり、その細腕からも僅かに血が滲んでいます。小破にすら満たないほど傷が小さい青葉でさえズキズキと鈍い痛みがあるのに、雷ちゃんは全く痛くないというのは……ちょっと不自然ですね。他の皆さんはあまり気にしていないみたいですが……いえ、時雨さんが何やら考え込んでいますね。何を考えているのか知りませんが。

 

 そんなこんなでもうすぐ鎮守府に着きます。帰ったらまずは……入渠という名のお風呂ですね。

 

 

 

 

 「いったぁーい!!」

 

 鎮守府に帰る途中で意識体の氷狐がいきなり消えた。それと同時に、雷ちゃんが右腕を抑えて痛みを訴え始めた。ただ、それもすぐに我慢できる程度には引いたようで、雷ちゃんは心配そうに見ていた僕達に大丈夫だと左手を振った。やせ我慢をしているのは目尻の涙でわかったケド、ここは苦笑しながらも見ないフリをしておくのが大人の判断だよね。それに、右腕の傷もほとんど消えているし、痛みもすぐに引くだろう。

 

 氷狐がいきなり消えたのは何かあったのかと取り乱してしまったケド、どうやら意識体として存在している時、元の体は眠っているような状態らしい。それは分かったケド、なんでいきなり消えたのかは誰も教えてくれなかった。その理由はすぐにわかったんだけどね。

 

 「司令官! 艦隊が帰投したわ!」

 

 「うん、みんなお帰り。お疲れ様」

 

 目の前には、笑顔で僕達を出迎えてくれた氷狐の姿。途中で意識体が消えたのは、元の体で僕達をこうして出迎える為だったんだ。うん、これは嬉しいね。大好きな人に出迎えてもらえて、労ってもらえる。それだけで疲れなんて吹き飛んじゃうよ。因みに、僕がこの意識体のことを知っていて、元の体のことを知らなかったのは……先生役をやってたときはいつも体は山田総司令が預かっていたから。なんで気づかなかったんだ僕。そして預かっていた山田総司令はその体をどうしていたんだろう。

 

 そんなことを考えていた後、僕以外のみんなは入渠ドックへと向かい、僕は雷ちゃんの代わりに報告書を書いて氷狐のいる執務室へと向かうことになった。僕は入渠する必要がなかったし、雷ちゃんは少し長めに入渠する必要があったからね。雷ちゃんは遠慮してたケド、僕が強行した。その理由は……氷狐に聞きたいことがあったから。

 

 「氷狐。報告書を持ってきたよ」

 

 「あれ? 旗艦は雷だから……」

 

 「雷ちゃんは入渠中だから、僕が代わりにね」

 

 「そっか。ありがとう、時雨」

 

 僕の言ったことに納得したのか、氷狐は僕の差し出した報告書に左手を伸ばす……その姿を見て、僕は自分の“とある考え”が正しいかもしれないと判断し、報告書を投げ捨てて僕と氷狐の間にある机に身を乗りだし、氷狐の右腕を軽く握った。

 

 「いっ!?」

 

 「……やっぱり」

 

 握った手を引いて提督服の袖を捲くると、その腕には包帯が巻かれていて、軽く血が滲んでいた。その部分は、雷ちゃんが被弾した場所と一致する。その事実と、戦闘中、帰投中に雷ちゃんが小破の傷を痛くないといったり、氷狐の意識体が消えた瞬間に痛みを訴えたり。出迎えてくれた氷狐が1度も僕達の前に右腕を見せないようにしていたり、さっきも右利きなのに左手で報告書を受け取ろうとしたり。

 

 ここまで見たことを考えれば、その答えに辿り着くのは容易いことだと思う。そして、本来なら必要ないその場での指揮をするためにわざわざ意識体となってまで艦隊についていく理由。それはきっと……僕達を守るため。

 

 「氷狐……君は」

 

 「……ばれちゃった」

 

 いたずらが見つかった子供のよう……と言うんだろうね、この場合の氷狐の表情は。そして、その表情と言葉は……僕の予想が当たっていることを意味した。

 

 

 

 氷狐は意識体となることで、取り憑いた艦娘が受けたダメージを代替わり出来る。そして、そのダメージは氷狐の元の体に反映される。

 

 

 

 つまり、雷ちゃんが受けたダメージはあの時、全て氷狐が受け持っていた。そして意識体が消えたことでダメージは再び雷ちゃんの体に戻ったということ。でも、腕の傷はほとんど消えていたから……多分、氷狐は傷そのものも請け負うことができるんだろう。ダメージだけなら、氷狐の体に傷があるのはおかしいんだから。

 

 「なんで、こんなことを」

 

 「……内緒」

 

 「……もしも雷ちゃんが小破じゃなくて、大破だったら……撃沈させられたら、氷狐はどうなってたの……?」

 

 「うー、どうなるんだろうね?」

 

 曖昧に、軽い感じでそう言って笑う氷狐が、無性に腹立たしかった。僕はその先を想像するだけで、こんなにも苦しくて、泣き叫んでしまいそうなのに。どうして君はそんな風に笑えるのさ。もしも僕の想像通りになってしまったら、僕は……僕達は、どうしたらいいのさ。

 

 また昔みたいに置いていかれるのはイヤなんだ。僕だけが覚えているのも、イヤなんだ。西村艦隊の時みたいに遺されるのは……もう。そう思ったら、僕は机の上に身を乗り出した体制のまま、氷狐に抱きついていた。ぎゅっと強く、絶対離れないという意思をもって。

 

 「時雨?」

 

 「絶対に、意識体になんてさせない……そう言っても意味はないだろうけどね。僕だけが旗艦になる……そんなことをしても、いずれは限界がくるから、それも言わない。でも、僕は氷狐に置いていかれたくないから」

 

 「しぐんっ!?」

 

 氷狐が何か喋る前に口で口を塞ぐ。これが僕のファーストキスというのは少しシチュエーションが残念だけど、念願が叶ったのでよしとしよう。氷狐も嫌がる様子も振りほどく素振りも見せないから、一応は受け入れてくれてるんだと思う。呼吸をするために1度顔を離し、もう1度口付ける。それを何度も繰り返す。何度も、何度も。

 

 妖怪だとか、在り方だとか、艦船時代に会っていたとか、そんなことはどうだっていい。僕は氷狐が好き。氷狐という存在の全てが愛おしい。そんな彼の心に、ずっと僕が居ますように。いつも、いつでも、僕のことを想ってくれますように。独り占めしたいけど、それはきっと叶わないから……だからせめて、僕のことを最初に思い浮かべてくれるように。そう思いながら何度もキスして……離れる。少し赤くなった彼の顔は、とても可愛らしくて……僕はもっと、君を好きになった。

 

 「しぐれ……」

 

 「僕は、氷狐のことが好きだよ。ずっとそばにいて欲しい。もう、遺されるのはイヤだ。だから……君を僕に夢中にさせるよ。僕に興味を持って。僕だけを見て。お願いだから……」

 

 

 

 ― 僕を独りにしないで ―

 

 

 

 そう口にする前に、僕は氷狐に口づけられた。僕は何も言わずにそれを受け入れて……僕達は、しばらくの間キスを繰り返した。

 

 

 

 

 

 

 「青葉、見ちゃいました聞いちゃいました」

 

 鍵穴の向こうに見える光景……と言っても青葉には時雨さんの後ろ姿と、机の上に身を乗り出している故に見えてしまっている下着しか見えませんが……意外と大人な下着ですね……に顔を赤くしていることを自覚しつつ、聞こえてしまったことを考えます。まさか、提督の意識体にそのような効果があったなんて。青葉達が命懸けで海に出るように、提督もまた命懸けだったということですね……しかも、提督はその事実を今まで隠してきた。もしこのことを他の艦娘が知れば、意識体として提督が艦隊に同行することを許さないでしょう。それが分かっているからこそ、提督は教えなかったんでしょうね。

 

 提督が意識体として取り憑いていた時、雷ちゃんのように小破したり、中破したことは少なからずありました。その時も今回のように痛みがなく、時間が経てば傷が消えているということもあったワケなんですが……なんで今まで気付かなかったんでしょうか。いえ、提督が気付かせないようにしていたんでしょう。独りで痛みに耐えて、青葉達には笑顔と労いで出迎えてくれていた……それが嬉しくないハズがないじゃないですか。今聞いた事実を皆さんに伝えることは、流石の青葉にも出来ません。青葉が出来るのは、旗艦の艦娘がなるべくダメージを負わないようにすることくらい。

 

 「でもまあ……見たことは別なワケでして♪」

 

 手元には青葉作、無音無発光小型カメラ。その中には、今見た光景……時雨さんのサービスシーンや他の皆さんに見せれば面白くなりそうなデータが入っています。サービスシーンは流石に自重しますが……キスシーンは鎮守府の胃袋を握る川内さんと雷ちゃん辺りに見せましょう。今日の晩御飯が楽しみですねぇ。そんなことを考え、提督と時雨さんのキスシーンを思い浮かべた青葉は胸の辺りに感じるチクチクとした痛みに気付かないフリをして、執務室の前から移動するのでした。

 




つまり、妖提督は応急修理要員だったのさ!

相も変わらず5ー3の最後のゲージが削れない作者です。本当にクリア出来ないorz ゲージを削るのと雷のレベルが99になるの、どっちが早いですかね。

時雨フルスロットルで青葉がちょっと頑張る回でした。また青葉をよろしくね!

それでは、あなたからの感想、評価、批評、ptをお待ちしておりますv(*^^*)

あ、時雨編終了後に書く予定の番外編の案も募集中です(*゜∇゜)ノ
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