艦これ! 妖提督と艦娘の日々   作:d.c.2隊長

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大変長らくお待たせしました。申し訳ありません。ようやく書き上がりました。

今回から番外編が4つほど続く……かも←

話の展開上、普段以上に空白が多くなっておりますのでご注意をば。


EX 妖提督

 「司令官さんは、司令官さんになる前は何をしていたんですか?」

 

 それは、とある日の夕食時に何気なく聞いた電のこんな言葉がきっかけだった。

 

 「僕が提督になる前?」

 

 「はいなのです。時雨さん達に先生をしてもらっていた時ではなく、その前の司令官さんのことが知りたいのです」

 

 「そういえば、私達も知らないね。氷狐って私達が教える前は何してたの?」

 

 電の問い掛けと先生役であった川内も知らない過去という謎に、氷狐以外の全員が興味深そうに彼を見る。好きな人のことを知りたい……そんな純粋な思いを感じたのか、氷狐は食事をする手を止めて腕を組み、過去を思い返す。そうしてしばらく考えた末に彼の口から出た言葉は、彼女達を驚愕させた。

 

 

 

 

 

 

 「……うーん……父親……かなぁ」

 

 【……は!?】

 

 それは、彼が歩んだ過去のほんの一部のお話。

 

 

 

 

 

 

 彼、八意 氷狐は人間ではなく狐の妖怪である。そんな人ならざるモノである彼が、どのように日々を生きてきたのだろうか。彼は、時に狐の姿で、時に人の姿で、この世を渡り歩いてきた。いつ生まれ、幾年の生を歩んできたのかは、最早彼にすら分からない。ただ、縄文土器を直に見たような気がする……というのは本人の談である。

 

 妖(あやかし)や神といった人ならざるモノが普通に存在したのも、今は遥か昔の話。時間が経つ毎に人は人ならざるモノを否定し、現在では彼自身、自分以外の妖怪等見た記憶がない。そうなってしまった頃から、彼は妖怪として暮らせなくなってしまった。なにせ人間の中では妖怪は空想の産物になってしまっているのだ、そんな御時世に彼が妖怪として姿を表せば、如何なる方法かは知れないが淘汰されてしまうだろう。故に彼は、時に獣として生き、時に人として生きることで、今の今まで生きてきたのだ。

 

 そんな彼が、なぜ“父親”という言葉を使ったのか。それはとある日、狐として行動していた時に偶然立ち寄った神社……その付近の地蔵の前で、1人の捨て子を見つけ、育てることにしたが故である。拾った子は異人だったのか、緑色の髪をしていた。捨てられた理由も髪色のせいかもしれない。そんな捨て子を人の姿で抱きかかえて住処へと連れ帰ったのが、彼の言う“父親”の始まりであろう。

 

 子育ての経験のない氷狐が拾った赤子を育てることなど不可能に近い。が、彼が人として行動していた事実がそれを可能にした。人として行動していた時に出来た知人友人、あるいはそれらの子や孫、更にはそれらの知人友人に知恵を借り、物を借り、どうにかこうにか子育てをすることが出来ていた。赤子は時間が経つ毎に言葉を発するようになり、歩けるようになり、少しずつ大きくなっていった。そんな赤子の成長を見守りながらの生活は、とても幸せなものであった。

 

 そんな幸せが崩れたのは、第二次世界大戦が始まってしまった頃。男性で成人したかしていないかという見た目の氷狐は徴兵の対象となり、赤子……娘と離れ離れになる可能性が出てきてしまった。そんな彼が取った行動は、町から離れた人の手が入っていない山へと移り住むことだった。幸いにも友人知人が協力してくれた為、移り住むことも今後の生活もどうにかなった。問題点は、たまに町へと必要な物を買いに行く際、娘が山奥で一人ぼっちとなってしまうことだったが……これも、道中で出会った金髪の異人の女性と同居することで解決した。

 

 

 

 

 

 

 「緑色の髪の赤ちゃんに……」

 

 「金髪の女性……」

 

 「う? どうかした? 時雨、川内」

 

 「「何でもない。続けて続けて」」

 

 

 

 

 

 

 普段は娘と女性と3人で山奥で過ごし、たまに娘を女性に任せて町へ買い物に生き、港に見える軍艦に込められた愛情の美しさに心惹かれながらその姿を近くで見て、たまに狐の姿で忍び込んで、家に帰る。そんなサイクルで生活している時、再びそれは壊れた。

 

 とある日、彼は1隻の戦艦に忍び込み、見つからないように隠れながら、ついウトウトとして眠ってしまった。そして目を覚ませば……全く知らない場所にいたのだ。とは言うものの、別に違う大陸にいたワケではない。港にあったハズの戦艦が、いつの間にか周囲一面海の海上にいたというだけである。そこで彼はふと気づく……戦艦の中に人の気配が全くしないことに。戦艦内を走り回ってみたが、やはり人っ子1人存在しない。いよいよもっておかしいと思い始めた頃に、彼の頭に今まで生きてきた中で最大級の生存本能から来る警報が鳴り響いた。

 

 そう言えば、寝ている時に戦艦をどうこうすると聞いたような……と一瞬思い返すが、脳内の警報に従って妖力を出し惜しみせず、戦艦ごと半円球のドーム状に包む。なぜその形にしたのかは分からないが、結果的にそれは正解だった。

 

 次の瞬間には、氷狐は戦艦の中で倒れ付していた。何が起きたのか、中にいた彼に知る術はない。だが、とんでもない衝撃がドーム状に張った妖力の壁を破壊し、衝撃を殺しきれずに揺れた戦艦の中で頭を強く打ち付け、正確な時間は分からないが気絶していたということくらい。全力で張った妖力の壁は既にない。数えるのも億劫な永い時の中で増え続けた妖力……その総量の半分以上を使ったにもかかわらず砕けた事実を悲しむべきか、それほどの衝撃から戦艦を守れたことを喜ぶべきか。そんな風に苦笑している彼の脳内に、再び警報が鳴り響く。つまり、先ほどの衝撃がもう一度来るということ。

 

 『そんな……っ!?』

 

 驚愕。先ほどの衝撃は、何度でも来るものなのか。一撃で妖力の半分以上を用いた壁を破壊した凶悪な破壊力を持つ衝撃が、何度も。そのことに恐怖を覚えながらも、氷狐は再び壁を作り出す。それは先のよりも薄く、脆い。防ぎきることが出来ないのは、彼自身がよく分かっている。それでも、守ってみせる。戦艦に込められた想いと、それを宿した戦艦を愛しく想うが故に。そして……衝撃が再び、彼と戦艦を襲った。

 

 

 

 

 

 

 「それで、その戦艦はどうなったんだい?」

 

 「わかんない。衝撃が来た後、僕はまた気を失っちゃってね……気が付いたら、外にいたからさ」

 

 「「……」」

 

 氷狐の言葉に、時雨と青葉の表情が僅かに暗くなる。多少の真実に多少の嘘を交えていることを知っているからだ。以前彼が言った通りなら、彼はその戦艦が沈む瞬間まで中にいて、艦娘のような存在となった戦艦の意志のようなモノによって助け出されているのだから。そして、その時の経験によって彼は、今度は自分達を守ろうとしてくれている。そのことは素直に嬉しく思う。だが、守られてばかりではいられない。時雨と青葉は、今一度、自分達が氷狐を守るのだと強く心に誓うのだった。

 

 

 

 

 

 

 いつの間にか外にいた氷狐は、無力感に苛まされながらも自分の住んでいた場所へと帰ろうとした。だが、そこで1つ問題が発生する……と言っても、ただ単に帰り道が分からなかっただけなのだが、それが致命的である。何せ、日本かどうかすら分からないのだから。かと言って帰らないという選択肢もない。家にはまだ幼い娘と、娘を任せっきりの女性がいるのだから。

 

 そう思いながら自宅を目指して何千里。幸いにも彼がいた場所は日本だった……が、正確な場所を知る術はなく、自らの帰巣本能的な何かを頼りに帰るしかなかった。途中で黒髪の孤児らしき女の子も拾い、その子も連れていくことにした。

 

 

 

 

 

 

 「ちょっと待って」

 

 「う? どうしたの? 時雨」

 

 「黒髪の女の子を拾ったの……?」

 

 「緑髪のベビーに金髪のレディーときて、次は黒髪……」

 

 「まさか……ねぇ?」

 

 「金剛さんも川内さんも時雨さんもどうしたんですか?」

 

 「何か話におかしいところでもあったの?」

 

 「ノープロブレムデース」

 

 「「気にしないで」」

 

 【……?】

 

 

 

 

 

 

 氷狐と女の子がようやく家に辿り着いた時、女の子は既に女性となっており、世界には深海凄艦と呼ばれる人ならざるモノが現れていた。ようやく帰ってこれた家はボロボロで埃まみれ……などということはなく、古くなってはいたが充分住める状態だった。時間の流れ故か娘も女性もいなかったことを寂しく思ったが、新しく出来た家族と共に新しい生活を始める氷狐。そんな生活をしていた時に、ふと転機が訪れる。

 

 娘と女性が帰ってきたのだ。ようやく会えた家族。お互いに涙を流し、熱い抱擁を交わし、今までの彼の旅路を話した。娘と女性からは今の世界の情勢を教えてもらい、今までの分だと目一杯甘えられた。その時に、彼女達からいなくなった氷狐を探す為に海軍に所属したのだと話された。

 

 

 

 

 

 

 (((あ、これ確定じゃないかな?)))

 

 「3人ともどうかした?」

 

 「あーその……氷狐」

 

 「その3人の名前って……」

 

 「まさか……」

 

 「ああ、名前? 彼女達の名前は……うん、後にしよっか」

 

 【(すっごい気になる……)】

 

 

 

 

 

 

 氷狐が聞いた話の中には、深海凄艦と艦娘の単語も存在した。その在り方、九十九神のような存在……自分と同じような存在だと聞いて、彼が興味を引かないハズがない。そこで氷狐は、深海凄艦と艦娘に会うことは出来ないかと2人に問い掛ける。ようやく会えた家族、その願いを叶えたいとは思うが、そう簡単にいくものでもない。ましてや平和な時ならいざ知らず、今は戦争中と殆ど変わらない。一般人の見学に割く時間すら惜しい。大丈夫、狐になって忍び込むから。何を軍関係者の目の前で堂々と侵入しますと言っているんだ。というかそういう問題じゃない。等と娘と会話する最中、金髪の女性が妙案を思い付く。

 

 

 

 ― そうだ、理由をでっち上げて氷狐を軍に引き込もう ―

 

 

 

 こうして、妖提督の卵は生まれた。

 

 

 

 

 

 

 「え!? そんな理由だったの!?」

 

 「妖怪だとか、何らかのアクションを期待するとか、そういうのは一切なし!?」

 

 「うん。本当は僕のわがままなんだ。どうしても艦娘に……君達に会いたかったからね」

 

 【(その言い方は卑怯……)】

 

 

 

 

 

 

 こうして氷狐は娘と女性というコネを利用し、しばらくの時間……1年の時間を置いた後に提督となる為の研修学校に入り、少しの間人間と同じ場所で学ぶことになった。なぜ1年の時間を置いたのかと言えば、氷狐が人間と同じ学校に入っても問題ないように手回しをする為である。公私混同、職権乱用のオンパレードだった。因みに、黒髪の女性は時間を置かず、2人と出会った翌日に研修学校に入った。そんな彼女はあっと言う間に、特例として半年で卒業し、卒業後も瞬く間に活躍して名を挙げ、今では大将の位を得ているのだから、人間何が起きるのか分からないものである。

 

 だが、氷狐が研修学校に入るまさにその瞬間にちょっとした不運が訪れる。偶然研修学校にOBとして生徒達に提督業務の説明を実体験を交えて話すことになっていた霧雨真理……当時中佐に妖怪だとバレてしまったのだ。その理由が、遅刻しそうだと勘違いした霧雨中佐が氷狐とぶつかり、その衝撃で隠していた狐耳と尻尾が出てしまったからだ。そのせいで……というのは酷だが、そういったハプニングの可能性も視野に入れ、複数の講師による教育をすることに決まったのだという。

 

 そしてその場所は、日本海軍総司令部……ある意味で最も安全かつ極秘の場所で氷狐の提督になる為の教育が始まったのである。つまりは、先生役である金剛、川内、時雨との初顔合わせの瞬間だった。

 

 

 彼が最初に出会った艦娘……それは、この3隻なのだ。当時の彼の3隻に対する印象は“見覚えのある美しい在り方をしている”というもの。人々の思いが詰まった艦船が、更なる思いを得て形作られた人と変わらない姿。そんな彼の、彼女達に対する最初の一言が……。

 

 

 

 ― 凄く……凄く、綺麗だ…… ―

 

 

 

 当然、いきなりそんなことを言われた3隻は困惑し、何を言われたか理解して羞恥で顔を赤く染め上げ、氷狐に感じる懐かしさで首を傾げる。そんな出会いだった。

 

 ここまで来れば、後は今まで知り得たことをなぞるだけだ。戦闘時に必要な軍知識や指揮は金剛から、生きていく上で必要な家事全般を川内から、提督の基本業務の書類仕事を時雨から半年間、みっちりと教育を受けた。いずれ自分が持つことになる鎮守府の主な構造を2人の大将の鎮守府に見学に行くことで知り、それぞれの鎮守府で建造体験をして山城、青葉と出会った。因みにこの時、氷狐は白夢大将の元に偶然演習の打ち合わせに来ていた霧雨……当時大佐にお持て成しと称して出された甘味の数々を奪われている。故に、彼からの霧雨大佐の扱いは非常に雑で不機嫌なものとなっている。

 

 そして半年の教育期間を終え、自分の鎮守府となる宿毛湾泊地に赴き、初めての部下となる艦娘……電と出会い、紆余曲折を経て現在に至る。

 

 

 

 

 

 

 「とまぁこんな感じかな?」

 

 「はわ~……波乱万丈なのです」

 

 「私達の下りが丸々端折られてるね」

 

 「まぁ僕達の部分は基本的に勉強してるか僕達3人が(醜いと言えなくもない)争いをしてるかだしね」

 

 「そうデスネ。誰が提督の隣のルームになるかとか、誰がティータイムの時に提督の隣に座るかとかしましたネ」

 

 【(何してるんだこの人達……)】

 

 因みに、この争いの殆どに山田総司令が乱入し、乱入した争いの全てにおいて勝利を収めている。乱入しない争いの勝者はまちまちだった。ただ、長年の経験の賜物なのか時雨の勝率が最も高かった。

 

 「ところで司令官さん。その3人の女の人のお名前は……?」

 

 「うー? そう言えば後回しにしてたね」

 

 電に聞かれ、ようやく3人の紹介を後回しにしていたことを思い出す氷狐。そしてついに、3人のフルネームが明かされる!

 

 

 

 ― 娘の名を、八意 静姫(やごころ しずき) ―

 

 ― 女性の名を、夜雲 紫(よぐも むらさき) ―

 

 ― 孤児の名を、社 白夢(やしろ しらゆめ) ―

 

 

 

 「静姫は何でか知らないケド、今は山田と名乗ってるけどね」

 

 「え? それってつまり……」

 

 「まさか……」

 

 「うん」

 

 

 

 ― 山田総司令は僕の娘で、紫大将は話に出た金髪の女性で、白夢大将は僕が拾った孤児だよ ―

 

 

 

 これは、妖提督のちょっとした過去のお話。その日、違う場所にいるとある3人の女性が同時にくしゃみをしたそうな。

 

 

 

 

 

 

 「あれ?」

 

 「どうしたのです? 暁お姉ちゃん」

 

 「さっきの話、私達が艦船の時代よりも前の話もあったわよね」

 

 「そうだね。それがどうかしたのかい?」

 

 「……総司令達って……何歳?」

 

 【……あっ】




山田総司令に紫大将、白夢大将のフルネームと氷狐との関係をダイジェスト感覚でお送りしました。如何でしたか?

アンケートでは氷狐の過去話とのことでしたが、満足していただけたでしょうか?

尚、アンケートはまだまだ募集しております。メッセージ限定では難ですので、感想でも採用します。是非とも番外編の希望を。

それでは、あなたからの感想、評価、批評、ptをお待ちしております(*゜∇゜)ノ
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