艦これ! 妖提督と艦娘の日々   作:d.c.2隊長

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大変長らくお待たせしました。待って下さっていた皆様、ようやく更新で御座います……どっちつかずよりも文字数少ないですがorz

今回、前話にチラッと出た最初の5人の艦娘の1人が出ます。一体何曾なんだ……それでは、どうぞ。

誤字修正、一部文章改善? しました。


木曾 7ー3

 「お前か? 俺に勝負を挑みたいって言ってたバカか」

 

 「……え?」

 

 「タイマンたぁ思い切ったな。チャレンジ精神か、それとも自意識過剰なのか……まあどっちでもいい」

 

 「いや、あの」

 

 「だが、ここで圧倒的な敗北を知っておけ。勝つことで感じることもあれば、負けることで見えてくることもある……全力でかかってこい」

 

 あ、ダメだこの人、全く話を聞いてくれない。俺は鎮守府の門の前で、目の前の艦娘に対してそんなことを思ってげんなりとしていた。

 

 最初にあった時には……まあびっくりした。何せ俺と瓜二つなのだから。次は……嬉しくなった。これほどの大物が、俺のような練度の低い艦娘と演習をやってくれるんだ、滅多にない機会をくれた提督には感謝しかない。しかし……しかし、だ。

 

 「ほら、さっさと演習する場所に行こうぜ……最初の5人の艦娘が1人、雷巡“木曾”が遊んでやるからよ」

 

 「……木曾さん」

 

 「なんだ?」

 

 

 

 「演習、明日です」

 

 

 

 「……え?」

 

 俺が榛名と演習した日、提督は俺に大物との演習が“1週間後”にあると言っていた……その日から“6日”経った今日の昼、こうして俺の相手になってくれる大物である木曾さんがやってきた訳だが……時雨が呆れ顔になり、提督が苦笑いを浮かべ、山城と文月の2人が“またやっちゃったのか”とこぼしていた意味がようやく分かった。時雨と同じ最初の5人の艦娘の1人、木曾は……。

 

 

 

 「え? やっべ、俺またやっちゃった? ……仕方ない、帰……あ、タクシー行っちゃってる。通信機……鎮守府に忘れた。財布なんて最初から持たせてもらえないし(落とすから)……ぐすっ、ていとくぅぅぅぅ」

 

 

 

 凄まじい程に、ポンコツだ。

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで、白夢大将の鎮守府所属の木曾は演習までの間、そのまま宿毛湾泊地で過ごすことになったんだが……その期間中も大層な呼ばれ方をしている艦娘とは思えないポンコツっぷりを発揮してくれた。同じ木曾である俺が恥ずかしく思うくらいに。

 

 「久しぶりだな時雨」

 

 「うん、久しぶりだね木曾。またやっちゃったんだって? 変わらないね、君は」

 

 「た、たまたまだよ。俺だって変わるさ……こうして雷巡になったことだしな」

 

 俺にはないマントにカトラスのような艤装……確かに、改にもなっていない今の俺にはないモノだ。俺と木曾……区別化する為、白夢大将のところの木曾だから白木曾とでもしようか……を見比べれば、その違いは一目瞭然だろう。ただ、先のポンコツ加減を見た後にそんなドヤ顔をされても力が抜ける。

 

 「ところで木曾。君には艤装を工廠に置いてくるように言ったハズだよね? ちゃんと案内したし」

 

 「ああ、言われたし案内もされたぜ」

 

 「なんでここにいるのかな? ここは資料室……工廠とは反対方向なんだけど。艤装も置いてないし」

 

 「いや、場所さえ分かれば鎮守府を探索した後でもいいかなって思って……」

 

 「思って?」

 

 「……迷った。工廠ってどこだっうあだだだだっ!!」

 

 「このおバカ!!」

 

 照れたように笑った白木曾にアイアンクローをする時雨……おお、メキメキ言ってる。駆逐艦である時雨のどこにそんな力があるんだろうか。足が少しずつ浮き上がって……あ、脱力した。とまあこんな感じで迷子というポンコツを晒した白木曾……鎮守府の門の前で醜態を晒してから、ほんの30分程経ってからのことだった。

 

 

 

 更に昼飯の時の出来事だ。昼食は俺と白木曾、時雨、榛名の4人で先に食べることになった。料理自体は前もって川内が作ってくれているので、温めるだけで食べられるんだが……。

 

 「そっちの木曾は座っててね。絶対に動かないで」

 

 「おいおい、俺だって手伝」

 

 「う ご く な」

 

 「ハイ」

 

 昔に何かやらかしたんだろう、時雨が殺気を込めた目で白木曾を睨み付けて動きを封じる……時雨も白木曾が来てから少しずつ壊れてきてるなぁ……。で、平和に昼食は始まる。今回はカレーだ……提督も川内も雷も料理が美味いから食べ過ぎちまうんだよなぁ。子供にも優しい甘辛寄りの中辛な辛さが俺には丁度いい塩梅だ。

 

 「あつっ!? きゃらいっ!?」

 

 ガンッ! とテーブルに頭をぶつける俺。猫舌で子供舌とか考慮してる訳ねぇだろうが……暁も似たようなことになってたが、あいつですら涙目になりながらプルプル震えて我慢するのに白木曾ときたら……時雨は我関せずだし、榛名は……あ、牛乳持っていってる。榛名は優しいな。

 

 

 

 更には夕方、風呂に入る時のことだ。白木曾がこの鎮守府に来たのは当然ながら初めてであり、風呂場の場所を知らない。それにコイツ1人で入れても大丈夫なのかという不安も大いにある。その為、俺と時雨、山城と文月が一緒に入ることになったんだが……。

 

 「ん~? ん~……んぎゅっ!?」

 

 「お前は服もマトモに脱げんのか!!」

 

 マントを取り、上の服を脱ごうとした白木曾だが……同じ木曾なのにこいつの方が胸大きいんだな……頭に引っかかったのか脱ぎ方が悪かったのか服の裾をもったまま万歳したような体制で四苦八苦し、そのまま後ろに倒れて後頭部を強打。今は痛みからかゴロゴロと床を転がっている。

 

 更にスカートを脱ぐ為に足を上げた瞬間に横に倒れ、引き戸になっている風呂に続く戸を開ければ次の瞬間には引き戸の下部分にある出っ張りにつま先をぶつけて悶絶。ようやく風呂に入ると思いきや湯が熱かったらしくつま先を入れた瞬間に飛び跳ね、足を滑らせてまた転けて悶絶……。

 

 「うごぉぉぉぉ……」

 

 「なぁ時雨……あいつ本当にあんたと同じ」

 

 「言わないで、本っ当に言わないで。戦闘は大丈夫……戦闘は大丈夫なんだ」

 

 「向こうの鎮守府を思い出すわね……」

 

 「ああっ、山城さんが昔みたいな目をしてる!」

 

 

 

 極めつけは夜の就寝前。

 

 「なんで俺が……」

 

 「だってお前以外起きてないんだもん」

 

 俺と同じ顔で“もん”とか言うなとその頭をひっぱたきたい気持ちになりながらも、俺は白木曾の手を繋ながら廊下を歩く。早い話、夜のトイレに1人で行くのは怖いから着いてきてほしいということだった。偶然にも起きていたのが俺だけだった為、こうして手を引いている訳だ。

 

 「夜戦とか夜の哨戒任務とかどうするんだお前」

 

 「いや、それが……俺が出るとまず夜戦になる前に終わるし、単独で遠征も哨戒も遠出もさせてくれないし、遠出したとしても迷わず辿り着けるようにタクシーだし、他の艦娘もいるし……」

 

 もうやだこのポンコツ。地味に戦果自慢されてるし……というか白夢大将は過保護か。いや、そうでもしないと2度と帰ってこなさそう(迷子で)だけど……これで5人の最初の艦娘だなんて誰が信じるんだ……疲れたように(実際疲れた)溜め息を1つ吐き、俺は白木曾のトイレに付き合った。

 

 

 

 

 

 

 そんな1日が過ぎ、翌日の白木曾との演習の日。俺は開幕から12秒という早さで大破判定を受けた。

 

 「よっわいなぁお前……」

 

 がっかりしたような、見下しているような、道端の石ころを眺めるかのような目で俺を見ながら言い捨てる白木曾……いや、事実がっかりしているんだろう。見下しているんだろう。道端の石ころを眺めているような気分なんだろう。それ程までに、俺と白木曾……世に出てきたばかりと言っても過言ではない“木曾”と、長年の戦いの日々を生き抜いた英雄、生きる伝説の5人の最初の艦娘の“木曾”には、どう足掻いても埋めることが叶わない力の差が、経験が、覚悟が、その他あらゆるモノが違いすぎるという絶対的な超えられない壁が存在していた。

 

 「ぐっ……」

 

 「弱い」

 

 もう一度、演習をしてもらう。この時点で……いや、演習場に入って戦闘体制に入った白木曾を見た瞬間から、あの間の抜けたポンコツだとは思えなくなっていた。だから全力でやった……だが、また10秒足らずで撃沈判定を受ける。

 

 「ぶっ……!」

 

 「甘い」

 

 再度挑戦しても、やはり結果は変わらない。まるで未来予測をしているかのように俺の砲撃は避けられ、向こうの攻撃は当たる。しかも的確に撃沈判定が出る場所へと。

 

 「のぶっ!?」

 

 「本当に……弱すぎる」

 

 再度挑戦。だが今度は攻撃体制に入る前に撃たれ、一撃で撃沈判定が出る。5秒も掛かっていない最短の敗北……初期位置に移動する時間の方が長いくらいだ。演習を重ねるごとに白木曾の声から感情が抜けていくことに焦燥感を感じながらも、 俺は再び挑戦する。

 

 「くっ……ごばっ!」

 

 「どうしようもなく……甘過ぎる」

 

 撃沈判定。1発でも避けることが出来た分、僅かにでも成長出来ているだろうか? だが、白木曾はそうは思っていないようで相変わらず声に感情がない。昨日のポンコツっぷりが嘘みたいだ。だが、それもこれも俺があまりに不甲斐ないから。何とか、一矢報いたいところだが……それも限り無く低い確率だ。0に等しい。余程の奇跡が起きない限り俺の攻撃は当たらないだろう。あいつの言うとおり、俺は弱すぎるから。こんな考えをしている時点で甘過ぎるから。

 

 なら……今この演習だけは、当てることを止めて回避に専念する。避けながら当てる、なんて真似は今の俺には練度と相手から考えて出来るハズがないからだ。

 

 「っ……ちぃっ、ぐっ!」

 

 「!? へぇ……」

 

 1発目、回避。2発目、掠ったが直撃じゃない……と少し安心したところで被弾。だが大破判定は出てない……まだだ、まだやれる! 判断力が甘い反応が遅い速度が足りない経験も足りない何もかもが足りない!!

 

 4発目、回避! そうだ、ここは戦場だ。演習だから沈まないなんて甘い考えは許されない。次があるなんて弱い意志は必要ない。生きるか死ぬかの戦場では生き残った者が正義だ。死ねばそれで終わり……ようやっと出逢えた“青”とまた別れるなんざ俺は嫌だ。だから……俺は生き残る。

 

 「まだだ……まだ、まだ!」

 

 「こいつ……!?」

 

 5発目……掠った。だが当たりじゃない……まだまだ動ける。6発目……右手に被弾。実際ならもげているかもしれない……いや、もげたんだ。これは実戦だと思い込め……俺の右手は被弾してもげた、もう右手は使えない。だが左手が残ってる。両足が残ってる。まだ、俺は生きている!

 

 「あ……あ、あっ、ああああ!!」

 

 強くなる。俺はその為だけに演習を重ね続けている。この鎮守府にいる艦娘は皆が皆俺よりも遥かに強い。駆逐艦達ですら、俺はタイマンでも一方的に負ける。響と文月に至っては軽くあしらわれる程。そこまで力の差があるのは経験の差が原因だと思い、ひたすら演習をしていたんだ。

 

 だが……俺は心のどこかで思っていたんだろう。これは演習だから負けても次がある。次頑張ればいいんだと……それではいけないと、俺は気付いた。生死をかけた戦いの中にこそ、俺が艦娘として強くなれる道があったんだ。今を生き残れなければ未来(すべて)を失う……それが嫌だから、艦娘(おれたち)は提督の為に全力で……全身全霊で戦うんだ。

 

 「俺は……俺は! 今っ!! ここに生きている!!」

 

 「はっ! ようやく全力か……今のお前、有りだな。生き生きしてるよ!! だけど……」

 

 避けた、掠った、被弾……大破判定は出ない。また避ける、避ける、避けた……だが、そこで俺の動きが止まる。なぜなら……いつの間にか近付き過ぎていたのか、白木曾が俺の目の前にいて、抜いたカトラスの刃を俺の首筋にピタッと付けていたからだ。

 

 「俺が手加減して手加減して手加減して……うんと手加減しても、お前は俺には届かない」

 

 

 

 

 

 

 「まあ、順当だよね」

 

 「そうだね。むしろ、今の木曾があれだけ避けられたことに驚きかな」

 

 「「木曾さんすっごーい!!」」

 

 「どっちの木曾?」

 

 「どちらの木曾さんもスゴいのです!」

 

 宿毛湾泊地木曾vs5人の最初の艦娘の木曾の演習……その観客として見ていたのは私ことイムヤと時雨、雷、文月、響、電。時雨と同じ5人の最初の艦娘の木曾の強さを、私と時雨は良く知っている。時雨は同期で、私は何度か艦隊戦の演習で手合わせしているから。普段はそれはもう目を覆いたくなるほどのポンコツっぷりを発揮するケド、戦闘になれば一転して冷静に戦況を見極めながら獰猛に貪欲に敵を狙い撃つ、5人の中でも最高の命中率を誇る。因みに時雨は最高の回避率を誇っていて、中破大破はおろか掠りさえ殆どしたことがない。

 

 今回、木曾……分かりづらいし、白夢大将のところから来たんだし夢木曾とでもしようかしら……はかなり手加減して攻撃してた。それを踏まえた上で見ても、木曾があれほど避けられた事実は正直信じがたいことでもある。というよりも……木曾の動きが途中から格段に良くなった。何かを掴んだのか、元々持っていたポテンシャルを発揮したのか……成長速度が尋常じゃない。

 

 「あっちの木曾が鈍った……なんてことはないわよね」

 

 「ないね。この演習が始まる前に射撃場で軽く撃たせたケド、10回やらせてパーフェクト……腕は落ちてなかった」

 

 「つまり……」

 

 「うん……こっちの木曾の成長速度が凄まじいんだ。今は回避しか出来ていなかったケド、少し時間をかければあの動きをしながら攻撃を当てられるようになるかもしれない」

 

 おお、高評価。まあ今の演習を見た限りじゃそうなるわよね。慢心してる様子もないし、木曾という艦娘は妥協をしないストイックな艦娘でもあるから、こっちの木曾も研磨を続けるハズ。出撃も近い内にあるかもしれない。後は実戦で培っていくしかないし……魚雷の当て方使い方は私が教えてあげれば、いつか夢木曾みたいに重雷装巡洋艦になっても安心よね。

 

 この宿毛湾泊地鎮守府に在籍する艦娘の誰よりも高い潜在能力を持っている木曾……今はまだ誰よりも弱い。それは仕方ないし、変えようのない事実……でも、この演習を切欠にどんどん強くなっていくハズ。それはつまり、司令官を……氷狐を、“青”を守る盾と“青”の敵を凪ぎ払う矛が増えるということ。それは本当に喜ばしいことよね。

 

 「……話は変わるんだけど」

 

 「ん?」

 

 「イムヤは、氷狐とどこで会ったんだい?」

 

 「司令官がまだ士官学校にいた時だけど?」

 

 「……でも、その時は氷狐は僕達3人以外だと山田総司令に白夢大将、紫大将くらいしか会わなかったハズなんだ。妖怪だということが周囲に発覚しないように注意を払っていたからね」

 

 心なしか、時雨の目に敵意や疑惑が宿っている気がする。時雨は鎮守府の中でも最たると言っても過言じゃない程に司令官好き、私が実は何かしらの思惑があって司令官に近付いたんじゃないか、嘘を付いているんじゃないかと疑っているということ。疑わしきは……ってね。

 

 「……司令官は狐の妖怪よ」

 

 「そうだね、それが?」

 

 「念の為言っておくけれど、私が人の姿の司令官に会ったのはここに配属された時が初めてよ」

 

 「へぇ、だったら氷狐と会っていたって言うのは……」

 

 

 

 「狐の姿の司令官に会っていたに決まっているでしょうが」

 

 

 

 「……えっ?」

 

 「もふもふして可愛かったなぁ……」

 

 ピシッと固まった時雨と何やら私に視線を向けている電達をよそに、私はうっとりとしながら当時のことを振り返る。

 

 当時の私は、今の山田総司令第一艦隊所属なんて肩書きが信じられない程に落ちこぼれの艦娘だった。海に出れば自分の意志ではなく勝手に体が沈み、浮き上がれない。魚雷を撃てば狙い通りにいったことなどなく、誤射をするかそもそも持ち込むことを忘れるか。負けん気だけは人一倍だったケド、その意志に結果がついてこなかった……幸い、艦娘は仲間意識が強いから慰められることはあっても貶されることはなかった……口が悪い子もいたケド、遠回しの激励だったから良し……でも、人間は別。私のことを落ちこぼれのダメ艦娘だの浮いてこなければいいだの解体すればいいだの影から好き勝手言われて……それを聞いてしまって、その場から逃げ出して……気がついたら、本部の塀の外にあるベンチに座っていた(勿論水着じゃなくて人間と同じような普段着だったわよ?)。

 

 そうして落ち込んで、今にも泣きそうな時に現れたのが……青い毛並みをした狐。

 

 『……キツネ……?』

 

 『クゥ?』

 

 その狐は私の隣に飛び乗ると、ジィッとこっちを見てきた。何となく私も見返して、しばらく艦娘と狐が見つめ合うとかいう珍しい構図になっていたわけだけど……なぜかこの時、私は狐に対して懐かしいと感じていた。今思えば、司令官だったからなんだけど。

 

 『クゥ!』

 

 『わわっ』

 

 不意に、その狐は私の膝の上に乗っかってきた。更にその前足でぽふぽふと私の膝を叩いてきた。何がしたいのかまるで分からない私は、ただキョトンとするしかない。その内膝がくすぐったくなって、やめてよーと言っても止めてくれない狐がなんだか可笑しくて……気がつけば私は笑っていた。涙が出るくらい、笑っていた。

 

 その日から、私は悲しくなった時や辛い時にはあのベンチに座るようになった。私が座ると、少ししたら狐がやってきて私の膝の上に乗るようになった。更に……不思議なことに、私の成績も上がっていったんだよね。浮き沈みは自由自在に出来るようになり、魚雷の命中率も跳ね上がり、演習でもMVPを取ることが増えた……でも、それを私自身の努力が実ったなんて思えなかった。だって、狐に会った日から急に成績が上がるなんて出来過ぎているもん……だから私は、この狐が私に何かしたんだと思っていた。私に力をくれたんだって、勝手にそう思っていたんだ。

 

 でも……出会った日から2週間ほど経った日から、狐が姿を現すことはなくなった。嗚呼、これで私の成績も元に戻っちゃうのか……そう思っていたんだけど、意外なことに成績は落ちこぼれと言われた時に戻るどころかぐんぐんと上がっていった。この事実を1番信じられなかったのは、他ならぬ私だ。今まで誰よりも自分を信じられなかったのだから、それも仕方ないと思う。

 

 相手の攻撃の軌道がよく見える。魚雷が思った通りの軌道を描いて命中する。遂には山田総司令から自分の艦隊に加わってくれないかと直接言われる始末……言い方は悪いケド、この時の私はまるで自分でない誰かの成績を褒められているような気分でいた。だから私は総司令の艦隊に加わる話を一旦保留してもらい、あのベンチに向かった。あの青い狐に会って、落ちこぼれだった私に戻してもらう為に。誰かの手で強くなった私じゃなく、私自身の力で強くなった私を評価してもらう為に……今思えば、馬鹿馬鹿しい話だと思うわ。せっかく強くなったのにそれを誰かのせいにして、落ちこぼれに戻りたいだなんて……ね。誰かのせいで強くなった、なーんて言うのもとんだ勘違いだったし。しかも狐が現れた瞬間に抱きかかえて“私を元に戻して!”とか言っちゃうし……顔から火が吹き出て爆発するかと思ったわ。

 

 「……なにをニヤニヤしてるんだい?」

 

 「ちょっと思い出し笑いをね」

 

 頭の中で慌てている昔の私を見ながら、まだ演習を続けている2人の木曾に視線を向ける。熟練した力を見せ付ける夢木曾、何かを切欠に爆発的な成長速度を見せ付ける木曾……木曾は私と良く似ている。性格とかじゃなくて、その成長速度が。つまり、過去の私が急激に強くなったのも、その爆発的な成長速度が原因だったということ。要領がいいとか、覚えがいいとかじゃない。本当に急激に、まるで別人のように強くなる超早熟の存在。私にとっての切欠は恐らく、狐の司令官と出会って笑ったこと。そのことを切欠に爆発的な私の成長はまだまだ続いている。だって私は、生まれてまだ3年にも満たないんだから。

 

 

 

 私は生まれて半年も経たない内に、総司令直属の第一艦隊に誘われたのだから。

 

 

 

 「ところでイムヤ。君が氷狐と出会っていたのはわかったケド、それは狐の姿でだろう? どうして人の姿の氷狐と狐の氷狐が同じだと分かったんだい?」

 

 「今の話を山田総司令にしたら教えてくれたわ」

 

 「なるほど……」

 

 そこで話が終わり、演習に意識を向ける。私は、まだまだ強くなっている。最初に比べれば緩やかになっているけれど、着実に。だったら、今まさに成長中の木曾は……この演習でどれだけ早い速度で強くなれるかしら?

 

 「……上出来♪」

 

 演習の結果を見て、私は満足感を感じながらそう呟く。この結果は今回限りだったけれど、大戦果と言っても良い。まず間違いなく、木曾と同期の艦娘では成し得ない結果なのだから。

 

 

 

 47戦0勝47敗。その内1戦だけ……戦果の部分に“敵艦中破”と誇らしげに書かれていた。




 ~その頃の出撃組~

金剛「~♪」

川内「上機嫌ねぇ……まあ仕方ないケド」

山城「今回の旗艦だしね。私も氷狐君と……」

翔鶴「私も提督としたいです……なかなか旗艦には選ばれませんけれど」

榛名「もシたいです! 提督は優しいですから、きっと天にも昇るような……」

大鳳(心なしか、榛名さんだけ微妙に意味が違うような……?)



色々迷走していましたが、ようやく書き上がりました。どっちつかずが私の作品でトップのお気に入り数で嬉しい限りです。幻想記ェ……。

それでは、あなたからの感想、評価、批評、pt、質問等をお待ちしておりますv(*^^*)
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