艦これ! 妖提督と艦娘の日々   作:d.c.2隊長

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最終投稿が8月30日で今が2月9日……月日だけみれば約半年ぶりの更新となります。どうしてあっちは筆が進むのにこっちは進まないのか……今まで待って下さっていた方々、申し訳ありません。

久々だと言うのに文字数が約5000程という……おかしいな、あっちがサブだったハズなのに。


長門 8ー4

 私こと榛名が目を覚ました時、最初に見たものは見知らぬ天井でした。ここは何処でしょう? とぼんやり考えたのと束の間、一気に記憶が呼び起こされました。

 

 鎮守府への深海棲艦達の襲撃、提督の身体を抱き抱えた長門さんに敗北した自分の姿……その全てを思い出した私は、状況を確認する為に身体を起こしたところで、ガチャッという音がしましと。その音源の方に視線を向けると……そこには、長門さんがいました。

 

 「起きたのか、榛名。意外と早かったじゃないか」

 

 「長門さん!! 提督は……提督は無事なんですか!? 金剛姉様は!? 皆さんは!?」

 

 「落ち着け。氷狐と時雨はまだ意識が回復していないが、他の奴らはもう目覚めている。少なくとも、私をこき使う元気はあるくらいにはな」

 

 「そう……ですか。良かったと言っていいのか悩みますけれど……」

 

 まだ提督と時雨さんの意識は戻っていないと言われて気分が沈みますが、少なくとも誰か沈んだ訳ではないようです。あの深海棲艦の大群と目の前の長門さんとの戦いを生き延びた皆さんに、榛名は驚嘆の声しか上がりません。

 

 

 

 ……あれ? なにかおかしいような……?

 

 

 

 「って、長門さんんんんっ!?」

 

 「おお、ようやく理解したか」

 

 吃驚仰天している榛名を見て長門さんがくつくつと笑いますが、そんなことを気にしている場合ではありません。目の前の長門さんは、確かに榛名達の鎮守府を破壊し、提督を連れ去った5人の最初の艦娘であることを偽っていた長門さんです。ここが何処かは分かりませんが、明らかに今こうして榛名と話していていい相手ではないハズです。

 

 艤装は……ありません。まさか素手で戦わないといけないなんて。しかもこちらは満身創痍、相手は割烹着に三角巾まで着けた完全装備。こんな絶望的な状況でどうすれば……あれ? なにかおかしいような……?

 

 「……なぜ割烹着を?」

 

 「言っただろう? 他の奴らにこき使われているとな。まさか炊事掃除洗濯書類整理、体を拭いたりお茶を用意したりまでさせられるとはな」

 

 「ではなくて! 長門さんは提督を連れ去ったんじゃ……」

 

 「ああ、私は間違いなくお前達から氷狐を奪い、鎮守府を破壊し、お前以外の者達も大破ないし中破させて鎮守府から去った」

 

 衝動的に飛び掛かろうとしましたが、痛む身体がそれを許してくれませんでした。まさか提督を連れ去っただけでなく金剛姉様達まで酷い目に合わせていたなんて……艤装があるなら、怒りで長門さんを沈められたなら、榛名は間違いなく撃っていました。沈めていました。

 

 一矢報いることすら出来ない榛名に嫌気が指します。ましてや長門さんは割烹着姿……そのふざけているかのような姿が余計に怒りを誘います。

 

 「だがまあ……見ての通り、私は失敗している。氷狐を連れ出すまでは間違いなく成功していたし、私自身成功を確信していたんだが……流石にアレは予想外だった」

 

 「アレ……?」

 

 「ああ」

 

 

 

 「社 白夢大将、夜雲 紫大将、そして山田総司令……その3人それぞれの第一艦隊が私を待ち構えていた」

 

 

 

 今思い出しても体が震える。私や時雨と同じ最初の5人の艦娘……加賀、木曾、古鷹を加えた海軍最強クラスが勢揃いしていたのだからな。名を上げた3隻だけなら、無茶をすればどうにかできる自信はあった……言いたくはないが、氷狐という人質もあったからな。

 

 しかし、18対1だ……幾ら私が時雨達相手に勝利したとは言っても、それは心理的要因と連戦による疲労が重なっていたからに過ぎない。並の戦力ならともかく、大将と総司令の艦隊は荷が重かった。

 

 結果として、私は氷狐を奪取された上で敗北した。あっという間だったよ。加賀と木曾に先制され、古鷹の作戦通りに動いたという他の艦娘に氷狐を奪われ、後は集中砲火だ……幾ら私が通常の戦艦娘を超える頑強な装甲を持っていると言っても、比類なき火力を誇ったとしても、こちらが攻撃に移れない程の連続攻撃を受けてしまっては限界が来る。実際、装甲も艤装も破壊されて倒れることになった。

 

 そして拘束されて大本営に連れていかれ、白夢大将と紫大将もいる総司令室に連れてこられ、山田総司令達の前に跪かされた。正直、加賀達を相手取るよりもこの3人を目にした時の方が生きた心地がしなかったな……というか、加賀達が私を沈めなかったのは彼女達に引導を渡させる為かと思ったほどだよ。

 

 『……なぜ、私を待ち構えることができた?』

 

 『貴女のことは八意提督から聞いていました。戦艦長門を保護したから自分の鎮守府に所属させても構わないか、と。それだけなら疑問にも思わなかったでしょうが……見つかったのが鎮守府の近くというのがどうにも引っ掛かりました』

 

 『なに……?』

 

 『深海棲艦がいる鎮守府近海ならまだしも、鎮守府の近くに突然艦娘が現れる? ドロップ艦でもないのに? 更には記憶喪失だと言うではないですか……怪しくないハズがない。そんな艦娘が、射撃場の戦艦娘の砲撃に耐える壁をあっさり壊す? 普通は有り得ません。ですが、有り得る可能性が1つだけあるじゃないですか……行方不明かつ海軍最強の攻撃力を持つ戦艦娘が、ね』

 

 『……』

 

 『まああくまでも可能性の域を出ませんでしたが……念のために加賀に艦載機を使って鎮守府の監視をさせていると、今回の鎮守府襲撃を仕掛けた深海棲艦軍……無関係とは思えません』

 

 『だが、それならお前達の艦隊を用意する時間などなかったハズだ。例え用意出来たとしても、近海まで来れる訳が……』

 

 『そこはちょっとした裏技です……教えることはしませんが、ね』

 

 ちっ、と内心で舌を打つ。見た目は子供の癖になかなかどうして……総司令の肩書きは伊達ではなかったらしい。つまりは作戦を看破されていた訳ではなくとも疑わしくは思われていたということだ。

 

 しかし、このまま諦めることは出来ない。私が氷狐との再会を何年夢想して待ったと思っている。ここで諦めて氷狐と会えなくなるくらいならば、あらゆる手段を使ってでも私は抗い、彼の手の中で死ぬ。そういう覚悟でいたんだが……。

 

 『さて、信賞必罰……罪ある者には裁きを。貴女には此度の罰として……』

 

 『……』

 

 

 

 『艦娘として生きること、海に出ることを禁じ、その生涯を八意提督とその部下達の侍女として生きなさい』

 

 

 

 正直、言っている意味を理解出来なかった。

 

 『……あー……すまない、よく聞こえなかった。もう一度言ってくれ』

 

 『八意提督達のメイドとして生きなさい』

 

 『端折った上に分かりやすくしたな? いや、それはいい……それが私への罰だと?』

 

 『はい』

 

 意味が分からない……そう思った私を誰が責められるだろうか。いや、罰自体は願ってもないものだ。私は艦娘としての存在意義を失うが、氷狐と共に生を謳歌出来るならば喜んで棄ててやる。

 

 しかし、だ。目の前の存在は海軍のトップスリー……敵に容赦などしないこの3人が出した結論としては軽いと言っていいだろう。何か裏がある……そう考えるのが妥当だろう。だが、結局は裏などなかったが。

 

 

 

 「それから私は艦娘としての力を振るわない誓いとして自分の手で艤装を破壊させられ、割烹着の着用を義務付けられ、妖精達の改装を受けて深海棲艦に変わる術を失ったという訳だ。完全に無害とは言えないが、またあの艦隊とやりあうのもごめん被る……誓いは破らん」

 

 「……そう、ですか」

 

 榛名はその言葉を絞り出すのがやっとでした。話を聞いても……やはり、すぐに受け入れることは出来ません。長門さんがやったことは、そんな軽いコトではないんですから。例え大将達と総司令が罰を下したとしても……私達が納得出来るハズなんてないんですから。

 

 そう、納得なんて出来ません。私達はみんな、提督のことをお慕いしています。その大切な人が傷つけられた……どうして納得することが出来るでしょうか。

 

 そんなことを考えていると、不意に榛名の後ろの壁の向こうからドタバタと騒がしい音がしてきました。かと思えば、いきなり壁が壊れて瓦礫と土埃と一緒に病人服に包まれた時雨さんが出てきました……もう少し左だったら、榛名は巻き込まれてましたね。

 

 「ではなくて! 時雨さん!?」

 

 「やれやれ……この壁、私が直すんじゃないだろうな」

 

 「貴女は……何をやってるんですかぁっ!!」

 

 「落ち着いて青葉!」

 

 「青葉止めて!」

 

 壊れた壁の穴から出てきて床に倒れ込む時雨さんに跨がり、右腕を振り上げる青葉さん。そして、同じように出てきて青葉さんの腕を掴み、振るうことを阻止したのは川内さんと山城さんでした。

 

 青葉さんと言えば、普段からにこにことしていて、でも良く皆さんに弄られたりしていて愉快な人というイメージなんですが……目の前の青葉さんは、榛名が見たことがないような怒りの形相です。正直に言えば……榛名は今、青葉さんが怖くて仕方ないです。ですが、その恐怖心も青葉さんの言葉を聞くまででした。

 

 「貴女が言ったんでしょう! 自分なら当たらないからって! 自分なら大丈夫だからって! なのに……なのにぃっ!!」

 

 「だから落ち着いて青葉! 攻撃を受けたのは時雨だけじゃ」

 

 

 

 「貴女が……貴女が攻撃を受けたから! 司令官は今も目を覚まさないんですよ!!」

 

 

 

 「……提督が?」

 

 「時雨が私の攻撃を受けたから? 待て、それと氷狐が目を覚まさないことに何の関係が……」

 

 「……氷狐が僕に意識体として憑いていたことが問題なんだ」

 

 私と長門さんの疑問に答えたのは、今も青葉さんに馬乗りされたままの時雨さんでした。彼女は壁を壊しながら出てきた際に青葉さんに殴られたのでしょう、左頬を赤く腫らして、鼻血も少し出ていました。そんな彼女の口から話されたのは、時雨さんと青葉さんだけが知っているという提督の意識体の秘密。

 

 そもそも提督の意識体とは、口付けという形で私達の体に提督が持つ妖力を流し込み、その妖力を媒介として提督の意識を形作ることで出来る背後霊のようなものだそうです。意識体を作っている間は肉体は眠っていて、全くの無防備になるという……ここまでは榛名達も聞かされていますし、長門さんもその無防備な肉体を狙ったのでしょう。問題は、その意識体が持つデメリット。

 

 意識体を作っている間に憑いている存在が受けたダメージは、提督も受けてしまう。そのダメージの度合いが大きければ大きいほど、提督の肉体にもフィードバックされる。そんなデメリットがある中で、今回時雨さんはダメージを受けた……それも最初の5人の艦娘の中でも最大の攻撃力を誇る長門さんの一撃を、駆逐艦である時雨さんが。そして、そのダメージは全て、提督にフィードバックされる……。

 

 「怨むべきは長門さんでしょう。ええ、ええ、分かってます理解してますその通りです。でも時雨さんを恨まずには要られないんですよ! 自分がどれだけ理不尽なことを言っているのか理解してます! 私自身が何も出来なかったのも理解してます! それでも……私は、時雨さんも恨まずにはいられない!!」

 

 怨み言を言い続ける青葉さんと、何も言い返さない時雨さん……彼女はいったい、その虚ろな瞳の奥に何を考えているのでしょうか。私には、その考えを知ることなんて出来ません。わかるのは、時雨さんがどうしようもなく落ち込んでいて……まるで死人のように生気を感じさせないこと。

 

 長門さんを止められなかった私でさえ、こんなにも落ち込んでいるんです。自身の被弾のせいで提督が目覚めないと言われた時雨さんは、どれ程心に傷を負ったことでしょう……いえ、私達の中で悲しんでいない人なんていないでしょう。私を含め、皆提督が大好きですから。その大好きな人が目覚めない……こんなに、身を引き裂かれるように心に痛みを感じるのは当然のことなのでしょう。

 

 いつしか青葉さんが声を出さなくなり、声を殺して涙を流していました。青葉さんだけでなく、川内さんも山城さんも時雨さんも……私も。長門さんは涙こそ流してはいませんが、なんとも言えない表情て俯いています。だからでしょうか……私は、今まで以上にハッキリと認識したんです。提督は目覚めない……その事実と、提督がどれ程私達の中で大きな存在なのかを。

 

 それでも、心のどこかで思っていました。きっと近い内に提督は起きてくれる。暗い表情の私達を見て、苦笑いした後に笑って“おはよう”なんて普通に挨拶してくれて……また、以前のように楽しくて、輝いている日常が帰ってくるのだと。

 

 

 

 

 

 

 ですが……1日が経ち、1週間が経ち、1ヶ月が経って、1年が経っても……提督は目覚めてくれませんでした。




前回の後書きで残り5話ほどだと言ったな。あれは変更だ。エタる寸前まで行ったため、次回最終回です。エタるよりは多少無茶してでも完結させて終わらせる方が断然いいですしね。

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