SS 紅き星の暴走 涼宮ハルヒの憂鬱×とある魔術の禁書目録   作:はるかさん

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更新しました。
今回結構長くなりました!

それでは宇宙 ハルヒ戦続きです!

どうぞ!


18話 ~涼宮ハルヒの記憶~ 宇宙編

?(私がいる。忘れないで欲しい)

 

......すまん。長門よ。気が動転していたせいか、冷静でなかったようだ。

だが長門よ。仮にこの事実を全員に伝えたとしても対策がなけりゃあ意味がないんじゃあないか?

それに以前長門は俺と朝比奈さんが泊まっていた部屋を時間凍結したろ?それで対応は出来ないのか?

 

長門(それは不可能。今の私はこの星の影響を受けていてそこまでの力が発揮できない。だから私たち3人であの時間停止に割り込む。しかし直ぐには出来ない。時間が必要。あの能力に割り込むには壮大な情報量がいる)

 

朝倉(長門さんから話は聞いたわ。なんとしてでも割り込んでみせる。だからそれまでは悟られないようにお願いね)

 

喜緑(その間、私たちは一切の援護が出来ません。その時点で悟られる気もしますが......何とかして注意をこちらに向けない様、時間を稼いで下さい!)

 

......あぁ。OKさ。勿論。

さて、ハルヒよ。少し俺と付き合ってもらうぞ!

 

 

 

 

 

佐々木との激闘の末、神人を倒した俺たちの前に現れたのは、神の力を持つと称される我らが団長、涼宮ハルヒだった。

ハルヒは複数の能力を扱い、俺たちに対して攻撃を仕掛けてくる始末。しかしその一つ一つの能力の質は低い。オリジナルの能力を持つ者たちには到底敵わないレベル。

そんな中で善戦する俺たち。上条の幻想殺しも機能する。

だがしかし、ハルヒの真の能力はこんななまっちょろいものではなかった。

 

"Le temps s'arrête(ル・タン・サレット)"

 

フランス語で時間停止、という意味らしい。文字通りハルヒの真の能力は”時間を止め、その中で動くことが出来る”能力。その能力を俺たちに対して使用して来るハルヒ。

突然目の前から消え、御坂さんが飛ばしたコインが突然自由落下し、挙句の果てには後方にいた御坂さんがいきなり吹き飛ばされていた、ということが。

誰もが静止した時間から逃れることは出来ず、ハルヒの思うが儘にされていく。

様々な思考の中、俺はついにハルヒが時間を止めていることに気が付いた。だからといって何が出来るというわけでもない。なんとか出来る存在と言えばやはり情報統合思念体の3人に頼るしかない。

俺がハルヒを惹きつけ、時間停止に割り込む力を溜める。

もう他に方法は無い。なんとしてでもハルヒを止めなくちゃあならないんだ!

 

 

 

 

 

と、意気込んでみたは良いが何をする。どうする。

話し合いか?雑談か?思い出話か?

 

そんなことで上手くいけば誰も苦労はしないというやつだ。もしそうなるとしたらそれは何かのきっかけがあって、ハルヒを取り戻せそうとなった時の話だ。今やったところでこのハルヒにはそんな記憶は無いだろうし、何より何の意味もない。

長門たちは早速3人が固まり機を伺っている。つまりは俺が何らかのアクションを起こさなければ彼女たちは動けんことになる。つまり俺は何でも良いから行動を起こすべきなのだ。でなければ時間だけが過ぎていく。無意味に時間を費やしたりでもしてみろ。ハルヒが次に何をしてくるのかなんて全くわからん。

 

俺は考えた。このハルヒが興味を持っていそうなことは何か。本当にハルヒの記憶が全くないのか。そもそも本当にハルヒなのか。

いくら思考を積み重ねても結局のところ明確な答えなんてのは出てこない。そりゃそうだ。目の前のハルヒが、どんな奴なのかがわからないんだから仕方がない。

如何に数学や国語のテストが楽かってことが実感できる。答えがあるんだからな。

ならば俺が取る選択肢は一つしかない。それは話しかけること。最初は自分自身で否定したが、情報収集も行わなければ何をすればいいのかがわからん。

困惑している俺の姿は内に閉じ込め、代わりに余裕な表情を外に出しハルヒに話しかけた。

 

キョン「ハルヒよ。こんなことはもう止めにしないか?違うだろ?お前が本当に望んでいることは」

 

ハルヒ「どういう意味だ?」

 

キョン「お前が求めていたものはもっとドキドキワクワクするようなことだったはずだ。今お前がやっていることが、お前の本当に欲しかったものか?」

 

ハルヒ「私が望む世界、それは平和と秩序を保つこと。その為に危険因子であるSOS団部室とやらを破壊すること、そしてあらゆるエナジーをこの星の活動源に使用することのみ。劣等種ごときでは理解出来まい」

 

何とも皮肉なことだろうか。SOS団部室はハルヒが率先して創り上げた団体であり、本人はSOS団メンバーが人生の中で一番良好な関係を築けたと言っても過言ではないだろう。

そんなコミュニティーを、意思がなくとも当の本人が破壊を望んでいる。これがハルヒのセリフだとしたらどえらい騒ぎになる。長門や朝比奈さん、古泉と腰を抜かすだろう。

 

ハルヒがSOS団部室は無くても良いと思ったのはそうそうない。代表例として挙げれば1年前ハルヒによる世界改変が行われた時。しかしそれは他の3人の助言もあり、大がかり的な改変には一切ならず元の世界に俺は戻ってこれた。

だが今回は違う。何故ならば今俺の目の前にいるハルヒはハルヒであってハルヒでは無いからだ。そこに本物のハルヒの意思は介在しない。もしSOS団部室が破壊され、何らかのきっかけで本物のハルヒが意識を取り戻せたとしても、その時にはもうSOS団部室はない。それだけでハルヒは世界を改変してしまうかもしれない。

つまりSOS団部室は何が何でも守らなければならない場所だ。俺個人としてもあの場所はなんだかんだ言って居心地が良い。そんな場所を破壊されてしまうなど、団員の誰が認めるもんか。

 

長門(作業を開始する。貴方はそのまま涼宮ハルヒの注意を受けていてほしい)

 

俺の脳内に聞こえてきた長門の声。どうやらついに情報統合思念体による時間停止への割り込み作業が開始されるらしい。何があってもそのことをハルヒに悟られてはいけない。だが俺1人ではそれも難しいかも知れない。しかしハルヒを焚き付けられる役目は俺以外に誰かいるだろうか。

 

答えはNOだ。

 

俺はハルヒや長門たちの様に、唐変木な力なぞ持ち合わせてはいない。だがハルヒを焚き付けることくらいは出来る。

 

キョン(あぁ。わかった。俺に任せろ。だがあまり時間は掛けてくれるなよ、長門)

 

長門(了解した)

 

テレパシーというものは実に便利なものだと実感する。俺にはそんな能力はないが、長門が回線を引いてくれている。相手に悟られずに情報交換できるんだからな。

 

ハルヒ「言いたいことはそれだけか?」

 

キョン「まだある。お前の目標は、宇宙人、未来人、異世界人、超能力者を見つけ出し遊ぶことだと言った。それは既に満たされていたんだ。わかるか?」

 

少し危険な賭けだが、俺はこのハルヒになら言っても問題ないと考えた。何故ならこいつはハルヒでもなんでもない。こいつは闇そのもの。だから俺がその気になれば”俺はジョン・スミスだ”と発言しても構わないだろう。なんせ本物のハルヒに昨日の光陽園学院の前で堂々と発言したくらいだしな。あの件は後で長門たちにハルヒの記憶から消してもらえばいい。それだけだ。

 

ハルヒ「......それを涼宮ハルヒに聞かせてやれば喜んだだろう。だが今となっては時すでに遅し。涼宮ハルヒは既に私の中で眠っている。覚醒することは二度とあるまい!」

 

キョン「てめぇ......やはり別人か!何者だ!?」

 

ハルヒ?「私の名はマイナデス。マイナスの20000体目に製造されたロットだ。だが私個人には身体という媒体が無かった。いや、無かったというよりマイナスの媒体では私の溢れる力に耐えることが出来ない。だからこの媒体を乗っ取らせてもらった。神なる身体を!」

 

キョン「くそったれ!さっさとハルヒから出やがれ!」

 

なんてこった。俺たちの目の前にいるハルヒは利用されているのではなく、ハルヒの身体にマイナデスとやらが乗り移り、好き勝手やっているということだ。しかもハルヒの媒体となると、様々な能力を容易に使えるだろう。結果マイナデスは様々な能力を使う上に時間までもを止めやがった。恐らくこれはマイナデスがハルヒの身体を乗っ取ったことで成り立った能力だろう。でなければ別に媒体は神と言われている佐々木でもよかったわけだ。だが佐々木では力が足らず、最終的には絶対神であるハルヒの身体で決定したという流れだろう。あくまで憶測でしかないが。

あくまでもハルヒの身体なんだ。意識を失っていても身体は覚えているだろう。ハルヒの能力の質を。

しかもこのマイナデスとやらはハルヒの記憶を共有している。でなければ”聞かせてやれば喜んだ”などと言えるはずがない。

さてどうする。惹きつけるも何も別人なのであればハルヒを焚き付ける能力なんてものは無意味。だが長門たちの為に時間を費やさなければならないのも事実。

手っ取り早く、ハルヒの中にいるマイナデスとやらを引き摺りだしたいのだが。

 

マイナデス「何!?こ、これは!?ぐっ!」

 

突然奴が声を上げた。何が起きたのかさっぱりだ。マイナデスが苦しんでいる。誰かが何かの攻撃をしているのか。

 

インデックス「貴女の力は魔術に似た部分がある!それなら強制詠唱(スペルインターセプト)で少しだけでも捻じ曲げることだって可能なんだよ!」

 

どうやらこの攻撃をしているのはインデックスのようだ。素人の俺にはインデックスがどんな攻撃をしているのかは全くわからない。が、目の前の事実として言えることは、マイナデスはインデックスのこの攻撃に対して苦しんでいる、ということだけだ。

 

インデックス「今だよきょん!はるひに問いかけて!もしかしたら助けられるかも!」

 

何の話なのか。突然言われても理解が追い付かない。生憎と俺の頭はそこまで宜しくは無い。頼むから俺に頼むなら俺に伝わるように言って欲しいものだ。

問いかける必要はあるみたいだが、何故問いかける必要があるのか、その辺の説明も合わせて欲しかったが、ウダウダ言ってもいられない。インデックスが言うんだ。こいつだって103000冊の魔導書とやらを記憶しているらしいから信憑性が高い。

 

キョン「ハルヒ!聞こえるか!?俺だ!」

 

 

 

...

......

.........

 

~ハルヒの深層意識~

 

ハルヒ「なんなのよアンタたち!?あたしとみくるちゃんを取っ捕まえて......ただじゃおかないわよ!」

 

光陽園学院でキョンたちと会ったあたしは、みくるちゃんと共にいきなり喜緑さんに捕まってしまった。行きついた場所は北高の校庭。どうやって一瞬でここまで来たのかということよりも、いきなりの出来事にストレスが溜まり苛立っていた所為でそんなことは聞きもしなかった。

 

喜緑「静かにしててもらおう」

 

ハルヒ「うっ......」

 

急に眩暈がし始め意識が遠のいていく。何が起きたのか。具合が悪くなったのか。身体は至って丈夫な方。こんな眩暈の様な症状は今までかつて起きたことがない。何か変な出来事に巻き込まれている気がする。

もはや身体の五感すら感じることが出来ない。動かすことすら。

 

 

 

ここはどこ。真っ暗な空間。室内なのか室外なのか。よくわからない。

だけどうっすらぼんやりと見えるものもある。それは眼鏡を掛け、泣いてる1人の女の子。

目を擦って視界を回復させたいけど身体が動かない。誰だかわからない。

だけどじっと凝視し続けた結果、次第にその女の子の顔が見え始めてくる。紫色の髪の毛、北高の制服、華奢な身体。

 

間違いない。あれは有希。

 

なんで泣いているのかはわからない。声を掛けようにも声が出ない。身体も動かせない。

有希が泣くなんて間違いなく異常事態。あたしの知ってる有希はクールで無表情で無口なキャラ。そんな有希が泣くはずがない。

そしてもう1人。泣いている有希の隣に棒立ちしてる人影が。あたしは見て驚愕した。そこで棒立ちしているのも有希。それはあたしが良く知ってる有希だった。だけどこっちの有希は泣いてはいない。眼鏡も掛けていない。ただ泣いている有希を見つめている。だけどその有希の表情は明らかに悲しんでる。

あたしだけではなく、有希にも何かがあった。そう感じてしまう。

まさか記憶を失った?そう感じとってしまうのに理由なんてない。そう感じ取れてしまうんだから仕方がない。あたしの第六感がそう告げてる。これまでの経験上で最早確信と言える。あたしが直感で感じ取ったものはほぼその通りの結果になるから。

このことをなんとかしてキョンに伝えたい。けどその方法が無い。今のあたしは手足すら動かせない。

 

あたしは強く願った。

 

 

 

お願いキョン。あんたと話をさせて、と......。

 

 

 

気が付いたらあたしは北高の校庭で横になっていた。だけど雰囲気がおかしい。周りが灰色一色の北高。ここは前に来たことがある。だけど鮮明に思い出すことが出来ない。

試しに手を動かしてみる。動く。ここでは身体が動かせる。足も動かせる。

そして辺りを見渡すと、あたしの視界の斜め下に何かが入り込んで来た。その方向に視線を向ける。

 

そこにあったのは手。さっきの願いが叶ったのか。あたしの隣でキョンが寝そべっていた。

あたしには猶予がない。隣にいるキョンを何としてでも起こそうと身体を揺すろうとするが、何故かすり抜けてしまいキョンの身体に触れることが出来ない。

ついこの前までは肩を叩いたり、授業中にシャーペンで背中を突いたりしてたのに、それが出来ない。

でもあたしに悲しんでる余裕もない中、必死に声を掛けた。

 

ハルヒ「キョン、キョン」

 

普通の声量で声を掛けても微動だにしない。その後、キョンに問いかけるも少し眉間にしわが寄るだけで起きようともしない。いい加減イライラしてきたあたしが大声でキョンに問いかける。

 

ハルヒ「起きろってんでしょーが!!!」

 

あまりに声が大きかったのか、キョンはビクっとなって起き上がる。

ようやく起き、キョンはすぐにあたしの存在に気が付く。そしてキョンがあたしの肩に触れようとするも、あたしと同じくしてすり抜けてしまう。

そっか。あたしはもうそういう存在になりかけているんだ。所謂幽霊ってやつ?こういう場合、どういう表現が適切なのかは知らないけど。根拠なんてない。そうわかってしまう。誰かがあたしを亡き者にしようとしていることが直感で。

それも含めてキョンに伝えたいことがたくさんある。

 

ハルヒ「キョン......あたしはもうそっちに帰れないかも知れない......意識が徐々に遠退いていくの......」

 

伝えなきゃいけないことはそれじゃない。

 

ハルヒ「有希のこと......」

 

あたしはキョンに有希に関してあたしが感じていることを伝えた。

有希の記憶が焼失していること。そしてそれを治すための手掛かりとしてはキョン自身の決意やその他諸々のアイテムが必要になること。

ここまでは今現状での打開策として必要な助言。

そしてもう一つ。

最期に一番言いたかったことをあんたに言わせてほしい。誰でもない、あたしの口から。

不思議なことに恥ずかしさなんてものはこみ上げてはこない。今までなら絶対に恥ずかしくて言えなかった。それを今なら言える。あんたに。

けど時間ももうない。身体が徐々に消えていくのを実感する。

 

ハルヒ「......キョン......もう時間がないみたい............最期に......言いたいことが......」

 

キョン「ハルヒ!!」

 

ありったけの思いを込めて、感謝をこめて、あんたに伝えたい。

あたしの......素直な......気持ち......を......。

 

ハルヒ「あんたに......出会えて......よか......」

 

最後まで伝えられたのかどうかもわからない。もし伝えられていないなら、誰でも良い。この後のキョンの力になってほしい。気持ちはあたし本人が伝えたい。それにはキョンが無事でいる必要がある。その為にキョンを助けてあげられる誰かがいれば......。

 

?「それならあたしに任せて下さい」

 

いきなり聞こえてきた誰かの声。わからない。記憶が曖昧になってくる。

でも我儘は言ってられない。この子に託すしかない。キョンやあたし、SOS団の未来を。

 

ハルヒ「誰だか......わからない......けどお願い......キョンの力になってあげて......あたしも少し休ん......だらSOS団部室に行くから......」

 

?「......わかりました。意識空間にあるSOS団部室に向かい、キョン先輩と涼宮先輩をお待ちしてます」

 

無言のままその子の発言に耳を傾けてはいたが、女の子の声が全く聞こえない。つまりこの場から消えてSOS団部室へ向かったってこと。

先輩って言ってたけど、つまりは北高の後輩ってことかな。あたしたちに後輩なんていないはず。なのにいた様な気もするこの感覚は一体。

 

これからキョンは有希の記憶を取り戻す行動をすることになる。みんなと協力しながら。

だけど、キョンは本心からあたしのことを助け出したいのかはそれはキョン自身しか知らないこと。人間はエスパーではないから心の中のことなんて読めないし。

この事件はただ事じゃない。もっと大きな戦争の様な気がする。だとしたら命を落としかねないのかも知れない。

あたしは死んでも良い。だけどキョンには助かって欲しい。もしキョンの中で”あたしを何が何でも助け出す、それ以外の選択肢はない”という気持ちでないのであればあたしのことは気にしなくて良い。キョンが傷つく姿なんて見たくない。

だけどもし、心の底からあたしのことを助けだしたい、と思っているなら......助けて欲しい......。素直じゃないのはあたし自身が一番よく知ってる。

ほんとは助けて欲しい。死にたくないとかそんなつまらない理由じゃない。まだやることがたくさんある。やりたいことがたくさんある。まだあんたと話したいことがたくさんあるのよ。

お願いだから......。

 

 

 

たす......けて

 

 

 

助けてよ......。

 

 

 

?「そうかい助けてほしいか。それならば俺があいつの本心を確かめてきてやろう。このもう一人の俺が」

 

これは間違いなくキョンの声。わかる。あたしにはわかる。

俯いていたあたしの後ろからの声。振り返るとそこには姿が見えるキョンの姿が。あたしは必死に立ち上がろうとしたけど身体が動かない。喋ろうとしたけど口も動かない。

ついに末期的な症状が押し寄せて来ているのかも知れない。

キョンは言った。もう一人の俺、と。このキョンはさっきまで話していたキョンではないってことなのかも知れない。

 

キョン?「あいつが本当にお前を心の底から助け出したいと思っているかどうかをな。まぁ思ってもいないだろうよ。なんせ俺はお前がたった今生み出した1年前のもう一人の俺だからな。つまりは俺の本心はあいつの本心なわけだ。1年経とうが何年経とうが人の気持ちなんてものは早々変わりはしない。だから期待はするな。いや、助けたいと思っている可能性なんてない。諦めるんだな......」

 

さっきの女の子に続いて、今いたキョンもいつの間にか消えてしまった。身体がスーっとではなく、いきなり目の前から消えた。

最近はあたしに声を掛けるだけ掛けたらみんなどこかへ消えてしまう。最早そういう行動が流行しているのかとも思えてしまう。

でも確かにキョンの本心は聞きたい、確認したい。けれども今言ってた1年前の本心。それがもし本当なのであればあたしは邪魔者だったってこと。さみしいとか悲しいとかの感情も溢れ出ると同時に、突如頭痛に襲われる。

そしてついにあたしは意識を失い、深い眠りに誘われていく。

気持ちが良いとか悪いとかそう言った感覚もない。ただただ意識が遠のいていった。

 

 

 

ハルヒ(ここは......あたしは一体……)

 

気が付けばあたしは見知らぬ空間にいた。周りを見ても真っ暗。自分の掌でさえ見ることが出来ない。

まずはこれまでのことを思い出そうとする。

認知症にでもかかったのか、それとも老化したのか。何も思い出すことが出来ない。これまであたしが行ってきたこと、友達の名前や顔、それすら思い出すことが出来ない。

 

マイナデス(涼宮ハルヒ。あれが見えるか?)

 

突如聞こえてくる声。

目の前にスーっと姿を現した1人女の子。この子のことは見える。どこかで見たことがある。

白系のワンピースを着ていて、髪の毛の色は緑色。身長はあたしと同じくらいで、見た目は高校生くらい。目の色が朱色で、身体は透明と言うか透けている変な子。まるで身体が無くイメージだけで創り上げられてるみたい。

この子が言う”あれ”というのは、10人くらいの人たち。さっきまでは見えなかったのに今は見えている。だけど全身がボヤけていて顔が真っ黒で誰が誰なのかわからない。

一体あの人たちは誰なのか。わからない。

変な機械兵器と高速道路で戦ってる光景。これは今現在の光景みたい。

 

マイナデス(あれはお前という存在を否定する者たちだ)

 

......あたしを否定?あたしの生き方や考え方を?

 

マイナデス(そうだ。お前は自分の理想とする世界を創り上げなければならない。だが奴らはお前がやろうとしていることを阻止する邪魔な連中だ。成功させるためには目の前にいる否定する者たちを排除しなければならない)

 

何を言ってるのか。あたしの理想とする世界?この子が言うことの真意はよくわからない。

つまり目の前にいる集団はあたしという存在を否定する人たちであり、あたしの生きがいや、考え方、存在そのものを消し去ろうと目論んでいる。

 

ハルヒ(あたしを否定......そうね。そんな奴らは消さないとね......)

 

マイナデス(そうだ。その気持ちがあれは十分だ。あとは私に任せておけ)

 

その瞬間、マイナデスがあたしの心の核となる部分に触れ始める。そしてそこから膨大なエネルギーの様なものがあたしの中に入り込んでくるのが感じられる。

重く、冷たく、深く、暗い。そんな何かが。

まるで変な意思があたしに憑りつこうとしている様な気がする。

 

ハルヒ(何......こ......れ......頭が......)

 

マイナデス(安心しろ。貴様の肉体は私が責任をもって使わせてもらう。今は寝ていろ)

 

 

 

どのくらいの時間が経過したんだろう。今は身体も動かせない、回りも見えない。口を動かしてみたけど動かない。喋ることすら出来ない。

今いるところはとても静かな場所。目が見えないから真っ暗な空間だけど。

何も感じない。気温や湿気、空気も感じることが出来ない。一体ここはどこなんだろう。

まぁもうどうでも良い。あたし自身、どこで生まれて何をしてきたのかわからないくらいなんだからこの空間に対して嫌だとか寂しいなんて感情は一切ない。だから何でもいい。

 

......貴女の力は魔術に似た部分がある!それなら強制詠唱で少しだけでも捻じ曲げることだって可能なんだよ!......

 

誰の声?女の子?

聞こえてくるのはこの空間からじゃない。もっと違うどこかの場所から聞こえてくる。

誰かと会話してるようだけど。

 

......ハルヒ!聞こえるか!?俺だ!......

 

今度は男の声。どこかで聞いたことのあるような声が、この真っ暗闇の空間に響き渡る。とっても暖かい声。辺りを見渡しても誰もいない。いや真っ暗で何も見えない。

しかし次第にこの空間一帯が徐々に明るくなっていく。目も開ける。身体も少し動く。少し喋ることも出来る。

辺りを見回しても明るくなったというだけで特別何か物が置いてあったりするわけでもない。

唯一ヒントになりそうなのは聞こえてきた声だけ。最初は女の子の声。その子の声は聞いたことがない。だけどその次の男の声。その声はどこかで聞いたことがある。あたしは言い切れる。記憶なんてない。だけど耳が覚えてる。この声は絶対に聞いたことがある。

誰だか知りたい。この声の主の顔が見たい。知ってるかもしれない。

そんな浅はかな願いが叶ったのか、突然目の前に10人くらいの人たちが現れた。細かく言うと現れたのではなく、あたしがそう見えるようになっただけ。まるでモザイクが掛かったかのようにぼやけてはっきりと視ることは出来ないけど。

中には何人か見たことある人がいる。

 

心の中で誰かが叫んでる。

思い出せ、思い出せ、と。

 

「なぁ、しょっぱなの自己紹介のあれってどのあたりまで本気だったんだ?」

 

「曜日で髪型変えるのは宇宙人対策か?」

 

「俺はなんだかんだ言ってあいつらのことが好きなんだ。だから俺は連中ともう一度会いたい、まだ話すことがたくさんある気がするんだ」

 

「ハルヒ、似合ってるぞ」

 

「朝比奈さんはお前の玩具じゃない!!!」

 

聞こえてくる、思い出してくる。この人の声。話していた内容や出来事までも。

プールに行ったり、夏祭りや昆虫採集、無人島旅行、ゲーム対戦、町内散策、灰色の世界と、どんどん光景が思い出されていく。しかし肝心なあの男の名前が思い出せない。それさえ思い出せれば全てを思い出せれる様な気がするのに。

 

お願いあたし。思い出して。

 

......ハルヒ!俺だ!キョンだ!......

 

ハルヒ「キョ......ン......?」

 

再び聞こえてきた声。これはあたしが思い出そうとしている心の中で発している声じゃない。さっきと同じようにどこからか聞こえてくる声。

そしてその名前なのかあだ名なのかは知らないけど、それを聞いた瞬間、目の前にいる10人くらいの中の何人かの人たちの光景が徐々にはっきりと鮮明になってくる。

1人は爽やかな顔立ちの良い男子、1人はとても華奢な身体で紫色の髪色をした女の子、そしてもう1人は......見た目はお世辞でもイケメンとは言えず、ただダルそうな顔をしている。だけどそいつからは暖かい何かを感じる。

 

もう少し......もう少しで思い出せる。

このモヤモヤ感から抜け出せる。思い出して。

あんたは......いえ、貴方は......誰なの?

 

......頼む!意識を取り戻してくれ......俺は......ジョン・スミスだ!!!......

 

ジョン......スミ......ス......。

 

ハルヒ「......!!!」

 

.........

......

...

 

 

 

キョン「ハルヒ!俺だ!キョンだ!」

 

インデックスの言う通り問いかけても一切の返答がない。もしハルヒが意識を少しでも取り戻してくれたらことは今よりかは簡単に進むだろう。しかしそんな様子は一切伺えない。

今の目の前の光景。それはマイナデスががインデックスの強制詠唱によって苦しむ姿だけだ。

 

キョン「頼む!意識を取り戻してくれ......俺は......ジョン・スミスだ!!!」

 

ついに伝家の宝刀の鞘を抜いた。実は本日2回目なのだが。

俺にとってはハルヒを焚き付ける最大の武器は俺がジョン・スミスであるとハルヒに認識させることだ。俺はそれがしたくてジョン・スミスだと告げた。これで変化が無ければ俺にはこれ以上何を伝えればいいのかわからん。

だがそんな迷いは必要なかった。聞こえてきたからだ。俺たちSOS団員がよく聞きなれた声が。

 

ハルヒ「キョ......ン......キョン!!!」

 

キョン「ハルヒ!!」

 

マイナデス「バ、バカな!意識を取り戻し再び覚醒したというのか!?」

 

ハルヒがマイナデスの身体を少しだけ取り返している。その部分は顔。

僅かだがハルヒの顔の左側、目から頬までの一部分でしかないが、目つきや目の色、雰囲気がそこだけ違う。今ハルヒの身体には2つの意識が存在している。

ハルヒとマイナデス。まだ身体の8割以上はマイナデスが支配しているが、ここからハルヒがどれだけ取り返されるか。俺がハルヒのどう力になるか。それがカギだ。

 

ハルヒ「......キョン!あたしに構わずこいつをぶちのめすのよ!あたしがこうして少しでも表に出れているうちはこいつだって存分に力を発揮出来ない!あたしがさせない!!!」

 

無茶言うな。仮にお前がそれでよくても俺たちは良くない。その身体の持ち主は元々お前の身体なんだぞ。ぶちのめしたりでもしたらハルヒの身体がボロボロになっちまう。

 

マイナデス「だ、黙れ!貴様なんぞに何が出来る!?」

 

ハルヒ「あたしはあんたを止める!そしてあたしはあたしの身体を返してもらう!だから......出ていきなさい!!!」

 

マイナデス「なっ!?」

 

凄い光景だ。左目は右の方向を見て、右目は左の方向を見ている。つまりハルヒとマイナデスが見えている光景が左右で違うということだ。

そしてハルヒの決意のもと、顔の左側が光り始めた。あれはハルヒの力だろう。取り戻そうとしている。

ハルヒの意思がマイナデスに喰われていた他の身体の部分を取り戻していく。右足、左肩、右手と部分部分だがその箇所が顔と同じく光を発している。

もう少しだ。もう少しでハルヒが自分自身を取り戻せる。

 

マイナデス「まだこんな力があったとは......だがこのマイナデスの力、見くびってもらっては困る!!!」

 

今度はマイナデスが支配している身体の部位が暗い光に覆われていく。

足元からもその光が湧き出てくる。まるで黒い風の様に。

マイナデスはハルヒの意識を内に閉じ込めようとしているのだろう。だが俺たちからすればそれは困る。ハルヒが表に出てきたんだ。それを再び封じ込められでもしてみろ。そんなことになったら俺は絶対にマイナデスを許さん。

 

ハルヒ「ぐっ......ぐうぅぅぅ!!!」

 

マイナデス「があぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

2つの光が身体を支配しようと戦っている。勝負は五分五分に見える。しかしそれはあくまで俺が思う不確かなことでしかなかった。

インデックスの力、そしてハルヒの力によって苦しんでいたマイナデスがそれを嫌い、能力なのか気合いなのか、その呪縛を消し去る。しかも衝撃波込みで。その衝撃波によって俺は長門たちのすぐそばにまで吹き飛ばされてしまう。

 

インデックス「うそ......強制詠唱を弾き飛ばすなんて!」

 

ハルヒ「そ......そんな......キョン......助けて......たす......け......」

 

再びマイナデスがハルヒの身体を支配していく。一瞬のうちにハルヒの身体からハルヒ自身が発していた光は消え、マイナデスが発していた光に包まれていく。

なんてことだ。またハルヒが封印されちまった。

ハルヒの輝きはない。見当たらない。これでは振出どころか変に火に油を注いだ結果となってしまったのではないだろうか。

恐らくもうマイナデスは手加減してこないだろう。下手をしたらこの星ごと消滅させかねない。

 

マイナデス「はぁ......はぁ......。お、おのれ劣等種共が!干渉したその無礼、死を持って償ってもらおう!!!」

 

まずい。このままでは全員がやられてしまう。

折角ハルヒの意識を取り戻せたんだ。ここまで来て”はいそーですか”で死ねるか大馬鹿野郎。

 

マイナデス「この末路の自分たちを呪うが良い!!これが最期の時間停止だ!死ね!Le temps s'arrête(ル・タン・サレット)!!!」

 

再び時間停止の呪文とともにマイナデスが輝く。時間が止まる。殺される。

俺が思っていた結果とは違う内容になってしまった。つまりは失敗したことになる。長門たちは間に合わなかった。何故ならハルヒが呪文を唱えた瞬間に俺は後方に振り返り長門たちが作業を終えたかどうか目視した。しかし結果は3人とも目を瞑って早口言葉を喋っていた。つまりはまだその作業が終わっていなかった、ということだ。

俺たちの命運は尽きた。インデックスや佐々木を救い出したのに、ハルヒを救うことは出来なかった。いや地球さえも。しかも俺たちはそのハルヒに殺されようとしている。なんたる無念。神は本当に消滅してしまったのか。

 

ズドン!!!

 

大きい物音が空間に響き渡る。恐らく誰かが完全にやられてしまったのだろう。

情報統合思念体か、佐々木か、古泉か、上条や御坂さんか。標的なんていくらでもいる。マイナデス以外は皆仲間だから。逆に言えばマイナデスは自分以外は全員敵。狙いは誰でも良い。この場にいる全員だって。

 

マイナデス「なに!?」

 

気が付けば情報統合思念体の姿が無い。さっきまで俺の後ろで作業をしていたはずなのに。いつの間にか3人の姿がない。

そして聞こえてきたマイナデスの言葉。それは明らかに奴にとって予想外の出来事が起きた内容の時にしか聞けないセリフだった。

 

長門「無駄。私たち3人で時間停止に割り込みを掛けた。私たちの前ではその能力は無力」

 

朝倉「残念だったわね。その能力はもう私たちには効かないわ」

 

喜緑「貴女が時間停止をしたとしても私たちはその時間の中を共有できます。貴女の様に!」

 

マイナデス「くっ!ネズミ共が!!!」

 

振り返ると3人がマイナデスを地べたで押さえつけているではないか。つまりこれは長門たちによる作業が間に合ったということだ。

それはいい。だがハルヒの意思は再び閉じ込められてしまった。身体を傷付けるわけにもいかない。だがマイナデスに抵抗しないわけにもいかない。長門たちもそれはわかっているみたいだ。

押さえつけただけで外傷はない。

しかしこんな戦いを続けていては俺たちが持たない。

ならばどうするか。

答えは簡単だ。再びハルヒの意思を覚醒させる。それだけだ。

だが難しいのはその手法だ。その答えが見つからない。

長門たちでどうにか出来れば一番手っ取り早いんだが。

 

マイナデス「だがお前たちが時間停止の中に入り込めたとしても涼宮ハルヒの身体を傷付けるわけにもいくまい。情報操作で治せると言うのならこの身体に攻撃して治してみるんだな。この闇に染まった身体を!」

 

長門「......やはり情報結合では治せない可能性が高い」

 

朝倉「マイナデスが支配している以上、生半可な能力は一切受け付けない」

 

喜緑「付け加えて涼宮さんの身体からマイナデスを取り除かない限り、涼宮さんの身体にダメージを与えてもマイナデスには効果がない」

 

なんてことだ。自己防衛の攻撃すら意味のない行動になってしまうと言うことだ。

だとすればやはりハルヒを再覚醒させる以外の方法がない。

 

マイナデス「私は負けぬ!この身体と言う人質がある限りはなぁ!」

 

そう。まさにその通りだ。人質を取られナイフを突きつけられているのと同じだ。いざとなればこいつはハルヒの身体を傷付けるとか言って俺たちに動くことすら許さないだろう。

その場合、こいつの媒体が無くなるからマイナデスは能力を使える器が無くなってしまうんだろうが。だが俺たちからしてみればそんなことはどうでもいい。

肝心なのはハルヒの身体が人質に取られているということだ。

ハルヒ自身になんとかしてもらうしか方法がない。

 

マイナデス「お前たちもこれで終わりだ。涼宮ハルヒが再覚醒することはあり得ぬ!」

 

?「それはどうかしらぁ?私の能力を......持ってすれば......容易いのよねぇ......」

 

どこぞから聞こえて来た声。場所は奥の扉からだ。

そこには負傷し肩からは血を流していた1人の女子の姿があった。

 

マイナデス「貴様......!」

 

美琴「食蜂......食蜂操祈(しょくほうみさき)!!なんであんたがここに!?」

 

食蜂操祈「御坂さんたちのお仲間に助けてもらったんだゾ......うっ!」

 

まだ捕らわれていた女の子がいたのか。見た目はかなりのお嬢様っぽい子。

御坂さんと知り合いらしい。

それよりも気がかりなのが、仲間に助けてもらったということ。白井さんも同じ様なことを言っていた。付け加えて長門に”マイナスはどこに行ったんだ?”とさっき俺が聞いたら長門は”別の者と戦っている”と言った。まさか全て同じ人物なのか。

一体......誰なんだ。

 

to be continued......

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