設定とかはその場の思い付きです。
楽しんで頂ければ幸いです。
「なんやてえええええええええ!?」
【ロキ・ファミリア】の本拠である黄昏の館に、その主神の絶叫が響いた。
雲が一つも無く、月明かりだけが大地を照らす時間帯。
ぐっすりと安眠していた団員たちが、我等が主神の声に目を覚ます。
けれどロキがうるさいのはいつもの事なので、すぐさま夢の中に飛び去って行った。
「自分もう一度言うてみぃっ!」
「ああ、何度でも言ってやる。明日からの遠征が終わったら、オレをコンバージョンしてくれ」
「なんやてえええええええええ!?」
「よっ、リアクション芸人」
「やかましいわっ!」
大量の酒瓶が転がっている部屋の中で、一柱の神と一人の人間が向かい合っていた。
普段は開いているのか分からない糸目を限界まで見開き、自分の眷属に向かって唾を飛ばす。
「……理由はなんやねん?」
「それは内緒だ」
「なんでやねんっ!」
ツッコミと共に相手の分厚い胸板にチョップをかますが、手に痛みが走るだけ。
大岩を叩いたような感触に、目の前にいる自慢の眷属が第一級冒険者だった事を思い出す。
【ロキ・ファミリア】所属のLv5。
驚異的な耐久力を誇り、どんなモンスターであろうと自慢の大盾で仲間を守り通す。
付いた二つ名は守護者。
ガレスと供に【ロキ・ファミリア】の双璧とも称えられている。
「じゃ、そういうことで……」
「まちぃミキヒコ!話はまだ終わってへんで!」
静止の声をガン無視し、ミキヒコと呼ばれた大男はそのまま退出する。
残された主神は閉ざされた扉に苛立ちを込めて酒瓶を投げつけた。
「……そういやコンバート先を聞いとらんかったな」
主神の部屋を出たミキヒコは自室に戻ろうとしたところに、中庭で素振りをしている馬鹿者を見付けた。
明日から大規模の遠征を控えているにもかかわらず、身体を休める事を怠るのは愚かな行為。
声をかけようかと思ったが、相手が誰か分かってやめる。
止めようとしても素直に従うような人間ではないからだ。
アイズ・ヴァレンシュタイン。
オラリオでその名を知らない者はいない。
その強さと美しさから付けられた二つ名は剣姫。
彼女に憧れる者は多いが、彼女のようになれる者は皆無。
強さへの渇望と沸き立つ憎悪。
この二つを備える事が最低条件で、それをクリアしたとしても生き残ることはできない。
幾度も命を危険に晒す事になるからだ。
それ故にミキヒコがアイズに抱く感情は哀れみだけ。
だからこそ強く想う。
必ず護ると。
ウオオオオォォォォオオオ!!
腹の底に不快に響く怪物の咆哮。
初めて遠征に参加する冒険者は、恐怖心を隠す事ができなかった。
第二級冒険者以上で組まれた遠征部隊。
当然彼等もLv3以上。
何度もダンジョンに潜り、危機的状況を乗り越えてきた。
しかし、築き上げてきたその自信を粉砕するのが深層という魑魅魍魎の領域。
心の準備をする時間があるはずもなく、空気を読まないモンスターたちによって開戦した。
物語に出てくるような黒山羊の風貌をした怪物が、ねじ曲がった一対の角を敵に突き付け、駆け出した。
雄たけびを上げながら、道化師のエンブレムを掲げた旗に突撃してくる漆黒の大軍を迎え撃つのは、オラリオ随一の防御力を誇る第一級冒険者。
前衛のさらに前、一人だけ孤立するように立ちはだかるのは2
光沢のある深緑の大楯を地面に突き立て叫ぶ。
「オレを、見ろおおおッ!!」
モンスターの叫びを掻き消す咆哮。
ミキヒコが持つスキルの一つ、
これで戦況が変わった。
怯えていた冒険者は瞳に強い光を灯し、震える身体は自然と治まった。
自分たちの前には鉄壁の盾がある。
恐怖を感じていた心から温かいものが全身を駆け巡る。
だが、スキルの効果を受けるのは味方だけではない。
無秩序に突っ込んでいた漆黒の軍隊は、示し合わせたようにミキヒコを目指して走っていた。
真上から観ると、まるで三角形の尖った部分が、小さな点を押し潰そうとしているようだ。
ミキヒコは【ヘファイトス・ファミリア】の
大楯に巨躯を隠すように丸め、体中に力を入れる。
丸太のように太い手足は血管が浮かび、限界まで力を振り絞っているのが分かる。
そして、その鋼鉄と化した冒険者にモンスターが衝突した。
耳をつんざくような轟音と、大気が揺れる衝撃が、後衛に陣取る魔導士たちにまで届いた。
エルフの魔導士であるレフィーヤは、不安げに横にいるハイエルフを見上げる。
「安心しろレフィーヤ。オラリオ最硬の盾が私たちを守ってくれる」
「はいっ!」
その時、ガレス率いる前衛は信じられないものを目撃していた。
数百はくだらない軍勢と、たった一人の男の力が拮抗している光景。
緑の大岩にぶつかった漆黒の軍隊は、そこから前に進めなかった。
先頭にいた怪物は、後ろから次々と来る同種と大盾の間に挟まれて圧死し、魔石が踏み砕かれて灰となり消えていく。
「すげぇ……」
誰かが呟いた。
まるで英雄だと。
物語に出てくる1ページが眼前に広がっている。
「バカタレェ!敵が来るぞ、気を引き締めろっ!」
戦いの観戦者を無理矢理当事者に引き戻す。
ガレスはしゃがれた声を張り上げながら、大盾の脇から現れた黒山羊を戦大斧で両断する。
如何に守護者でも守れる範囲は限られている。
正面は防げても横から抜かれてしまう。
ガレスの激励で我に返った前衛陣は、二つに割れ勢いを失ったモンスターに盾を振りかざした。
現在【ロキ・ファミリア】は50階層に滞在している。
ダンジョンの中でも数少ない安全階層にテントを張り、先の戦いで疲れた身体を休めていた。
黒山羊のようなモンスター、フォモールの大群との戦いは完勝で終わった。
ミキヒコの大盾で敵の勢いを殺し、ガレス率いる前衛が壁となって塞き止める。
そして後衛にいる弓使いや魔導士が矢と魔法を打ち込む。
単純だが、それ故に穴がない陣形。
それを中央から眺めているフィンが、温存している第一級冒険者のアイズ、ベート、ティオナ、ティオネを劣勢になった戦場に投入する。
【ロキファミリア】の必勝の形だった。
「あたしも暴れたかった~」
出番の無かったティオナがぶうたれる。
「口を動かす前に手を動かしなさい」
双子の姉であるティオネが妹を窘める。
彼女自身、欲求不満なのだ。
テントを組み立てる作業も、どことなく荒々しい。
「今頃アイズも怒られてんのかな」
「そりゃあ、待機命令無視して敵陣に突っ込んだら。……私も団長にお仕置きされたいわね」
「ひくわー」
愛しの人がいるであろうテントに熱い視線を送る姉を、冷めた目で見つつペグを打ち込むティオナであった。
「どうして呼ばれたのか分かってるかい?」
「…………ごめんなさい」
フィンが笑顔で怒っている相手は、華奢な肩をしょんぼりと落とす。
「まあまあ、そんなに責めることないだろフィンさん。アイズのおかげで被害も少なかったんだし」
「今回の戦いは楽に勝てる相手だった。こんなチャンス、深層においては中々ないよ」
「下の連中を鍛えたいのは分かってるけど、怪我したら元も子もないでしょ」
「だけど、その経験が己を生かす事になるのも分かってるよね?」
剣姫の横で必死にフォローするミキヒコは、劣勢になってくるのを感じ取り、団長の両サイドにいる最高幹部にアイコンタクトで助けを求める。
「……確かに得られる経験値は惜しいが、今回我々が目指すのは未到達階層の到達だ。無駄な被害は避けるべきだと思うぞ」
「がははっ、アイズも反省しとる。説教はその辺にしておけい」
「やれやれ、みんなアイズに甘いんだから」
フィンは苦笑しながら背もたれに体重をかける。
「もう行っていいよ。設営の準備を手伝っておいで」
「…………うん」
長い付き合いの者でしか分からないほど小さな変化だが、説教時より遙かに明るくなった表情でアイズはテントから出て行った。
ミキヒコはロキの趣味が全開の、乙女の肌が丸見えになった背中を追おうとしたら、後ろからの殺気に足がその場に釘付けとなった。
「何してるのかな。君との話し合いはこれからだよ?」
「……お手柔らかにお願いします」
しかし、この三人が自分に遠慮などしない事を、聡明なミキヒコは分かっていた。
STATUS
ミキヒコ。
ロキ・ファミリア所属。
種族・ヒューマン。
職業・冒険者。
到達階層・58階層。
武器・大盾、ナイフ。
所持金・55500000ヴァリス。
レベル5。
力 S980
耐久 SS1028
器用 E422
敏捷 D508
魔力 F389
拳打 D
魔防 F
耐異常H
堅守 C
魔法
・オートヒール
魔力が尽きるまで傷を自動で癒す。
スキル
・呪印守護者《カースドガーディアン》
守護対象がいるとき耐久高域強化。
守護対象がいないとき全能力大幅下降。
・大喝鼓舞《ハウルライブリー》
仲間の士気上昇。
敵の注目を集める。
・孤軍不闘《ロンリー・ロンリー》
仲間がいないとき全能力大幅下降。
・自壊人形《オブリビオンボディ》
永久的に痛覚を遮断。
睡眠に対する高耐性。
不眠時間の継続力強化。
装備
・シールド・ローラン
不懐属性。
椿が作成した連作の一つ。
形状は大盾。
魔力を弾く性質を持つ。
160000000ヴァリス。
・その辺で拾ったナイフ
ダンジョンで拾ったナイフ。
剥ぎ取り用で攻撃には使用しない。
12000ヴァリス。(ヴェルフ作)
これを考えるのに二時間かかりました。
ネーミングセンスを俺にくれ!