「えーと・・・後は・・・あ、ジャガイモの皮を剥いてませんでした」
五河家のキッチンで真那は鍋をグツグツと煮込ませながらキッチンの戸棚を漁り始めた。
「間に合いますかね・・・」
真那はもうすぐ開かれる八舞姉妹の誕生日パーティの時間を気にしながらジャガイモを洗い始める。
と、リビングから士道が真那の元へと歩いてきた。
「あ、兄様」
「こっちの準備は終わったよ。真那の方はどう?」
「ちょっとジャガイモを切り忘れていまして。今から切り始めるところです」
「・・・・・そっか」
失敗しましたと苦笑いをする真那に士道は少し考えた後、ジャガイモを切り始めた真那に一言。
「真那」
「はい?」
唐突に名前を呼ばれて首を傾げる真那に、士道は言った。
「俺、次は何をすればいい?」
「へっ!?」
士道の言葉に素っ頓狂な声を出す真那は慌てながら士道に言う。
「兄様は休んでてくだせー!朝からずっと忙しかったのは兄様なんですから!」
八舞姉妹の誕生日パーティの準備で片腕が使えない中、一番仕事をしていたのは士道だ。だから時間が来るまで休んでいて欲しいと言う真那に士道は首を横に振る。
「平気、何か手伝うよ。真那忙しそうだし」
士道はそう言って、洗ったジャガイモを手に取る。
「このジャガイモ、切ればいい?」
「あ、はい・・・けど、兄様・・・右手・・・」
「ジャガイモくらいなら片手で出来るんじゃない?」
そう言いながら士道は左手で包丁を持ち、ジャガイモを切り始めようとするが───
ゴッ!!
「いった!?」
切り始めようとしていたジャガイモがまな板の上からポーンと飛んでいき、真那に直撃した。
「あ、飛んだ?ごめん」
謝る士道に真那は首を横に振る。
「・・・だ、大丈夫ですよ」
「そう?」
そう答える真那に、士道はもう一度ジャガイモを切ろうとするが───
ゴッ!!
「あでっ!?」
また飛んだジャガイモが真那に直撃した。
「あ、また・・・ごめん」
「い、いいえ・・・」
二回も飛んでくるとは思わなかった真那は額を擦っていると、士道は参ったなといった表情をしながら呟いた。
「やっぱり手で押さえないとダメか」
何か考える仕草をした後、士道は───
「じゃあ───足で」
「だ、大丈夫でやがりますからね!?本当に大丈夫でやがりますからね!?それと兄様!怪我しそうで私がヒヤヒヤするので足でするのは止めて下せー!?」
慌てる真那に、士道は言う。
「バルバトスなら上手く切れるんだけどな」
「ジャ、ジャガイモが潰れると思いますよ・・・」
それは確実に潰れる。というか、そんなことでバルバトスを使うのはどうなのかと思う。
若干引き気味の真那はどうしたものかと周りを見渡す。
「うーん・・・ではこっちを頼んでもいいですか?」
「これ?」
「ええ。パンにこの具材を入れてサンドウィッチにするんです」
サンドウィッチなら片腕が使えなくても切る作業を除けば出来る。その真那の意図を感じとったのかは分からないが、士道は首肯いた。
「分かった」
そしてパンに具材を挟み始める士道を見ながら真那は時計に視線を向ける。。時間は午前十一時十分。耶俱矢さんと夕弦さんが来るお昼までに間に合えばいいのですけど・・・と思いながら真那はジャガイモの皮を剥き始めるのだった。
◇◇◇◇◇
「───朝から何か我等に隠し事をしていたと思って嗅ぎつけてみれば・・・なるほどそう言う訳か」
「納得。道理で十香達が家に近づかせようとしない訳です」
バレた。
十香達の足止めはお前達の仕業か!と言わんばかりにジト目で二人は溜息をつきながら士道と真那を見る。
そんな二人に対し、士道は二人は誕生日でしょ?座ってればと言うが、逆に今の士道の料理の仕方を見て、八舞姉妹の方が危なっかしいから士道が座っていろ!と言われる始末であった。
「本当はお二人が来るまでに完成している筈だったのですが・・・」
「嘆息。今の状況を見れば分かります。今の士道は碌に料理も出来ないのですから私達に任せてください」
そう言う夕弦に士道は二人に言った。
「なら、真那の手伝いをしてくれない?俺、そっちの方は出来ないから」
「おう!なら、夕弦は士道の手伝いを引き続き頼む」
「承諾。任せてください」
「別に良いのに」
手伝おうとする夕弦に士道はそう言うと、夕弦はそんな士道にメッとするような表情をする。
「憤慨。いくら士道でも怪我をしては私達が心配です」
「我等の誕生日に士道が怪我をしては誕生パーティどころではないわ」
「そうですよー?ただでさえ、兄様は自分の身を安静にしないといけない立場なんですから」
「それ、真那もでしょ」
「うぐっ・・・ソレを言われると何も言い返せねーです」
真那が放った言葉のボールを全力で打ち返され、苦い顔をする真那は、細かく切ったジャガイモを鍋の中に入れて煮込み始めた。
「これでよしっと・・・あとこれは煮込むだけで出来上がりです。サンドウィッチは・・・こんなに作ったんですか!?」
驚いた様子の真那に士道は言う。
「具材挟むだけだったし、簡単だから。それに耶俱矢と夕弦もある程度手伝ってくれたから」
「では、後はスープが出来たら完成ですね。サンドウィッチは・・・十香さんがどれだけ食べるか・・・」
「提案。なら、多めに作りましょう。残った分は皆さんに分配すればロスもありません」
「逆に十香なら全部食べきりそうだけど」
耶俱矢は十香なら食べきると言うと、三人もその光景が目に浮かんだ。
グツグツと煮込まれる鍋を四人で見ながら時間を過ごしていると、ふと真那が呟く。
「こうして四人で料理をしながら時間を過ごしていると、なんだか楽しいです」
「首肯。皆さんと距離が縮まったようで嬉しく思えます」
「分かる。こんなに料理が楽しく思えるのは初めて」
「俺は良くわかんないけど、なんだか温かい気がする」
「兄様がそう言うなら、そういうことですよ」
真那達はホッコリした気分になりながら鍋を見ていると、グツグツと湯気と熱が多くなった鍋を見て真那が呟く。
「あ、ちょっと火が強いですかね?」
「火を弱めればいい?」
そう言って、士道がその場から動いて火を弱めようとした時だった。
「・・・・・あ」
士道の左手がコンロ前の棚に置いてあった瓶に軽く当たり、その揺れで瓶ごと中身が鍋の中に入ってしまった。
「え?何が落ちた?」
「なんか、スープに落ちた」
真っ赤になるスープを見て、真那はすぐに慌てた様子でオタマを取り出す。
「は、早く取り除かねーと!?」
急いでスープに入った瓶を取り除くが、瓶の中身は既にすっからかんである。
「な、なんの瓶でしたっけ・・・?」
ラベルの貼られていない瓶に真那は顔を引き攣らせながらも、耶俱矢は落ち着いてはいないがすぐに真那に言った。
「だ、大丈夫な筈!食べられないものが入った訳じゃないし!なんとか味をごまか・・・整えれば・・・!」
完成が心配ではあるが、食えないこともないであろう。
結局は完成を待つだけである。
◇◇◇◇◇
「これを・・・食べていいのか?」
「随分真っ赤だけど、野菜スープか何かかしら?」
「うん」
十香と琴里が皿に盛られた真っ赤になった野菜スープに士道は何ごともなかったように頷く。
後ろでは夕弦を除いて二人が冷や汗をかいていた。
「だが、何故私達なのだ?」
「いや、その・・・・・装飾一番頑張ってたのお二人なのでお疲れ様〜と思って・・・」
「へぇ、気が利いているじゃない。なら、遠慮なく」
「うむ!」
二人はスープを口にする。
「どう?」
士道のその言葉に琴里は言った。
「普通に美味しいわよ?」
「ほ、ほんと!?」
琴里の反応に耶俱矢が聞き返すと、十香も頷いた。
「うむ!とても美味しいぞ!」
「変な味しない?」
「え?しないけど・・・」
「身体が変になったりも、無い?」
「?いや、そういったこともないが・・・」
「よかったぁ〜」
二人の反応を見て、耶俱矢は安堵する。
「じゃあ、四糸乃達にあげても大丈夫だね」
「懐疑。どうでしょう?刺激が強すぎるかもしれません」
「一応、常備薬用意して置きます?」
そんな会話をする四人に琴里の目が鋭くなっていく。
「・・・ねえ、私達に何を食べさせたのかしら?」
「では、皆さんを呼んで来ますので準備をお願いします」
「うん。分かった」
夕弦はそう言って玄関の方へと走っていこうとしたその時───その夕弦の肩を琴里が笑顔で掴む。夕弦が振り返るが琴里のその目は笑っていなかった。
「ねえ?私達に何を食べさせたのかしら?」
「教えてもらうぞ!シドー!!」
どうやらパーティまではもう少し時間がかかりそうである。
作者「はい!飴終わり!真那ちゃん!早く三日月から手を離してね!!」
真那「嫌でやがりますよ!!作者さんが離せばいいじゃねーですか!!」
作者「文句言わないでよ!本編進まねえから!!」
真那「進まなくていいです!このままずっと兄様と一緒が良いです!」
三日月「・・・・・」
狂三「ブラコン拗ねらせてますわよ・・・」
真那「ここで作者さんをピー(放送禁止用語)すれば兄様とずっと一緒に・・・!」
戦車「ヤバい!!このままだと真那が作者をガチでやりかねんぞ!?」
狂三「止めますわよ!!」
三日月「・・・・・」←メッチャ不機嫌そうな顔