デート・ア・オルフェンズ   作:鉄血

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ちょいと一気に詰める!!

いくぞ────バルバトス

三日月・オーガス


第十七話

「チッ!!」

 

「きゃあっ!」

 

もう何度目か分からない舌打ちをしながら士道は大型メイスでその衝撃波を防ぐ。

どうにか防げたものの、今の攻撃を喰らえば流石にナノラミネートアーマーといえどダメージを与える事が出来るだろう。

 

「・・・貴様、何者だ?貴様からは天使の力を感じる」

 

「べつに、十香は知らなくていいよ」

 

士道がそう言うと、 十香が眉をひそめた。

 

「十香・・・?私のことか?」

 

「あ?」

 

士道の顔をまじまじと見るようにしながらそう言ってくる。やはり、いつもの十香ではない。士道のことはおろか、自分の名前さえも覚えていない様子だ。

 

「一体何が起こってんの?これ」

 

と、士道がつぶやくと、右耳のインカムからザザッというノイズが走り、次いで琴里の声が響いてきた。

 

『士道!士道!応答しなさい!士道!一体何があったの!?』

 

どうやらもとに戻ったらしい琴里に、士道は言った。

 

「知らない。ただ、俺が一回死んで十香が真っ黒になってる。あれも霊力の逆流ってやつ?」

 

『いえ────恐らく、違うわ』

 

「じゃあ、あの十香をもとに戻せるの」

 

『それも分からないのよ。前例がないもの。でも、可能性があるとすれば、十香の意識をこっちに引き戻すしか」

 

そう言う琴里に、士道は大型メイスを構える。

 

「やることは結局同じってわけか」

 

「何をごちゃごちゃと言っている」

 

と、士道と琴里の会話を遮るように、十香が冷たい声を発してくる。

 

「────ふん、何だか知らぬが、まぁいい。屠れば済む話だ」

 

言って、十香が再び剣を振るってくる。

士道も大型メイスを振って対抗するが、その斬撃は重い。

そしてお互いにもう一度武器を打ち合うが、少しだけ士道の体勢が崩れると、そのスキを逃さず、士道目掛けて斬撃が飛んできた。

 

「チッ」

 

避けられない。そう判断した士道は左腕を盾にして致命傷を避けようとした瞬間。

 

「ああああああああああああああッ!」

 

が、その攻撃が当たる寸前、美九が大声で不可視の壁を構築した。それが斬撃を防ぎ、士道に離脱のチャンスを与える。

 

「ありがとう。ミッチー」

 

「勘違いしないでくださいよー。貴方は十香さんを助けるんでしょう。私は『好き』とか『大切』とか、『死んでも』って言葉を軽々しく使って、簡単に翻すような男が一番大っ嫌いなんですー」

 

「は・・・?」

 

「あなた、言いましたよねー?十香さんを助けるって。なら、最後まで責任を持って十香さんを助けてください。わたしを・・・失望させないでください。それを見る為にここまで来たんですから」

 

そう言う美九に士道は一度視線を美九に向けてから言った。

 

「分かってる」

 

そして十香に目を向けると、美九が士道に言った。

 

「それでー?何か策はあるんですー?」

 

「近づければなんとなる。成功するかはやらないと分からないけど」

 

「ふーん・・・そうですか」

 

美九は気のない返事をすると、その場でくるりと身体を回転させ、カッ、カッ、と地面に靴底を打ち付けた。

 

「〈破軍歌姫〉────【輪舞曲】」 

 

すると、美九を囲うように、地面から何本もの銀筒が出現し、その先端をマイクのように美九の方に向けた。

 

「防御の声を全方位から十香さんにぶつけます。彼女相手では何秒保つかわかりませんが、少しの間であれば動きを止められるはずです。その間に、その方法とやらを試してみてくださいー」

 

なんの心変わりか美九はそう言って問うてくる。

そしてそんな美九に士道は言った。

 

「わかった」

 

「では、いきますよ────」

 

美九が身を反らしながら息を大きく吸い────

 

「────────────ッ!」

 

耳の奥に響くような高音の声を、自分の周囲に立った天使の銀筒目がけて発する。

〈破軍歌姫〉の銀筒は美九の声を幾重にも反響させ、目に見えない拘束が十香を縛りつける。

 

「む────なんだ、これは」

 

十香が不快そうに顔を歪め、拘束を剥がそうと腕に力を入れる。

苦しそうに美九は声を上擦らせるが、士道はそのまま十香に向けて疾走した。

美九がどんな思いでこの場所にきたのか、自分を手伝ってくれるのかは知らない。だが、美九のその覚悟を慮るのであれば、一秒でも早く十香のもとに到達しなければならない。

 

「ふん・・・・」

 

近づいてくる士道に気づいたのだろう。十香が片足でガッと床を蹴る。床材が砕け、散弾のように士道を襲うが、その程度ではバルバトスのナノラミネートアーマー突破出来ずに、装甲に傷をつけるだけで終わった。

と。十香が、ち、と苛立たしげに舌打ちを零した。

 

「────鬱陶しいぞ」

 

言って大きく息を吸い、身体を軽く前傾させ、音の拘束を引きちぎるように両腕を開いていく。

 

「────────!?」

 

美九の声が段々と掠れていき────そして。

 

「────────」

 

不意に、声が、出なくなってしまったのだ。

 

「────、────」

 

なんで、と呟こうとするも、それすら声にならない。ただ、喉ならヒュウヒュウと息が漏れるのみだった。

 

「ふん、小賢しい真似を」

 

十香が鼻を鳴らし、〈暴虐公〉を振り上げる。

 

「チッ!!」

 

士道がバルバトスのテイルブレードを射出し、十香へと向かわせるが、十香はそれを腕でなぎ払い吹き飛ばす。

そして────

 

「私の身を縛ろうとは。身の程を知れ」

 

言って────十香は、剣を振り下ろした。

その場でへたれ込む美九に目掛けて。

あれを避けるような力も残っていない。きっと一瞬あとには、美九は〈暴虐公〉の斬撃に沈むだろう。

あの天使の一撃に、美九の霊装が耐えきれるとも思えない。

しかしそれは、仕方のないことだ。

美九には、最初から歌しかなかった。他に、何も持っていなかった。だから、歌を、声を、音を失った彼女には、何の価値もない。

『歌』がなければ、もう誰も美九を愛してはくれない。『声』がなければ、もう誰も守ってくれない。『音』がなければ、もう誰も信じてはくれない。

そんなのはもうずっと前からわかりきっていることだ。

美九は士道をバルバトスの後ろ姿を見る。

三日月・オーガス。五年前始めてあった時、彼は自分の名をそう言った。

あの時、公園のベンチにいた自分に渡してくれたサンドイッチが美味しかったのを覚えている。

あの時はまだ歌が上手くなかったのに、疲れるまでずっと私の歌を聞いてくれたのを覚えている。

そして────最後に彼と会った時。

 

『結構上手いじゃん。また、聞かせてもらっていい?』

 

────白状すれば。

一度でいいから、もう一度私の本当の歌を彼に聞いて貰いたかった。

人間に、失望しきってしまった美九だからこそ。

最後の糸に縋る思いで、彼にもう一度だけ自分という存在を認めて貰いたかった────

でも、もう何もかも過ぎてしまった事だ。美九はふっと目を伏せて、その斬撃を受けようとした時────。

 

美九の前でバルバトスが〈鏖殺公〉を手に、美九の身体を引き裂こうとしていた斬撃をその剣で葬り去る。

そして士道は顔を上げ────

 

 

 

 

「いくぞ────バルバトス」

 

その言葉に答えるようにバルバトスもまた、そのツインアイを輝かせた。




よしのん『そーいやー気になったんだけどさー』

作者「どしたん?」

よしのん『士道君はどうして美九ちゃんや、琴里ちゃんの小さい頃のこと忘れちゃってるのさ?』

作者「まあ、一言で言えば・・・」

四糸乃「・・・言えば?」

作者「ほぼ、バルバトスとハシュマルのせい。間接的も含めるならファントムさんも同罪」

バルバトス「!?」
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