サブタイトルで嫌な予感をしたそこの貴方。正解です
絶対・・・帰ってきてね
アトラ・ミクスタ
九月二十五日、月曜日。天央祭開催三日目にして────DEMインダストリー日本支社での攻防戦から一日が経った日である。
〈フラクシナス〉で丸一日かけて入念な検査を受けた士道は、天央祭会場である天宮スクエアにやってきた。
一日目に比べて、人は格段に少ない。それもそのはず、もとより天央祭三日目は、参加校十校の生徒だけが文化祭を楽しむ、いわば後夜祭的な位置づけだ。
─────結局、天宮市で巻き起こった謎の大暴動は、特殊な幻覚剤が散布されたテロとして決着が着けられた。
さすがに無理があると思った士道だったが、昨日の朝方急に我に返った美九の信者たちが、操られていたときのことをまったく覚えていなかったのだから真相など追いようがない。
まあ、やたらと派手に大暴れして死者がいなかったのが不幸中の幸いである。
DEMインダストリーの惨状も、特殊な空間震の被害ということで始末がついたらしい。
マクギリスも、後に家に訪問すると伝言を残していった。
会場を見回しながら、ゆっくりと足を進めていく。
あんな騒動があったということで、さすがに二日目の天央祭は急遽中止となり、三日目の開催も危ぶまれていたが、生徒たちの熱意と〈ラタトスク〉の暗躍とによって、無事開催出来たのだった。
「くく・・・士道。もう傷はよいのか?」
「質問。十香さんはまだ来られませんか?」
と、メイドカフェの前を通ったところで、メイド姿の耶俱矢と夕弦が声をかけてくる。
「十香はまだ検査が終わらないって言ってた。俺は、別にそこまで。こっちの目が見えなくなったのと、こっちの手がうまく動かないだけ」
右眼と右腕を耶俱矢達に見せながら軽く返す。
「だけって!?重傷じゃん!?」
「同調。それはそこまでとはいいません」
少し怒った表情をする耶俱矢と夕弦に、士道は適当に返事をしながら口を開く。
「阿頼耶識でバルバトスにつながってるときは動くんだ。だから、まだやれる」
「それでも無茶は出来ないでしょーが!!」
ガーッ!!と感情を露わにする二人に士道は言った。
「でもこっちはこれが守ってくれた」
そう言って、大量のミサンガがついた左腕を軽く上げると、二人はキョトンとした顔を作る。
そして苦笑の顔を浮かべて言った。
「溜息。しょうがありません。今度は皆でもっと丈夫な物を作りましょう」
「そうね。ロープで作る?」
「同意。それは良い案です」
「さすがにそれは邪魔」
そう言う士道に二人はカラカラと笑って、唇を開く。
「ま、なんかあったら頼りなさいよ!」
「首肯。今、一番大変なのは士道ですから」
そう言って二人はその場を後にする。
と、士道は耶俱矢達を見て思い出した。
「そう言えば、ユージンは?」
「返答。ユージンなら今、厨房にいるかと」
「そっか。ありがとね」
士道はそう言って、メイドカフェをあとにした。
ブースを抜けて、セントラルステージへ。扉を開けると、賑やかな曲調と、空気を揺るがす大歓声が響き渡った。
ステージに立っているのは美玖九だった。
霊装に身を包み、人々を魅力する声を響かせてくる。
演奏が終わり、美九が微かに肩を上下させながら礼をする。すると会場が割れんばかりの拍手に包まれた。
『ありがとうございます、皆さん!本当に────』
そう言ってから、美九がステージを去っていく。観客たちの中から再び拍手と、美九の名を呼ぶ声が響いた。
士道はステージを出ると、裏手に回って関係者用入口から建物の中に入っていった。
そして控え室の前に立つと、ドアノブを握って口を開く。
「入るよ」
『はい、どうぞー』
明らかに今までとは違う声音に、違和感を覚えながら士道は扉を開ける。
控え室の中には、美九が一人、椅子に座っているだけだった。
一体どんな心境の変化があったのだろうか。まるで憑き物が落ちたかのような変貌ぶりだ。
実際─────
「!来てくれたんですね、“だーりん“!!」
「マジやめて。そう言うの」
士道は即答する。一瞬だが美九がそう言った瞬間、寒気が士道の全身を襲った。
「えー?じゃあ・・・三日月さんでどうです?」
「それでいいけど、アンタ、急にどうしたの。なんかだいぶ変わってるけど」
「うふふ、三日月さんは特別ですぅ。“昔の時“もそうだったじゃないですかー」
「昔?」
士道は美九の言葉に首を傾げるが、過去に“美九と会ったこと“があっただろうか?
まあ、思い出せないのであれば仕方ない。
士道はベタベタとくっつく美九に口を開く。
「で?・・・アンタが俺に話したいことってなに?」
「ああ、そうでしたー」
すると美九は思い出したように小さくうなずいた。
そして何でもない動作でふっと士道に目を向け────
そのままつま先立ちをし、士道にちゅっと口づけをする。
「─────」
突然のことに、思わず目を白黒させてしまうが、美九はがっしりと士道の身体を抱いたまま、唇を離そうとしなかった。
「・・・んっ」
同時に、美九が纏っていた霊装が、光の粒子となって空気に溶け消えた。
「わ・・・きゃっ!」
それに気づいたのだろう。美九がようやく士道から唇を離す。
「なんて早技・・・」
「俺のせい?」
「うふふ、冗談ですよぉ。───四糸乃ちゃんたちに聞いて、全部、知ってましたからー」
「あっそ」
前にも“同じことがあったような”やり取りをしながら士道はそう呟く。
「もうそろそろ行くね。俺もまだ全部の検査終わってないし」
「あはは、じゃあ、わたしも行かないと。衣装は・・・そうですね、メイドカフェさんにでも頼み込んで貸してもらいます。────私の歌、聞いてくれますか?三日月さん」
美九が言ってくる。その目には、途方もない不安と───それを超えるくらいに、強い意思の光が宿っていた。
「ちょっとくらい遅れてもいいって言ってたから、聞いてく」
「・・・!精一杯歌いますね!」
士道はそう言って、控え室の扉を開けて、部屋から出ていった。
◇◇◇◇◇
カツカツと士道は一人、廊下を歩く。
そして、ここには居ないバルバトスへと向けて、士道は独り言のように呟いた。
「ありがとな、バルバトス。俺はアイツに何も出来ないからお前に押しつけてばっかだけど、俺の代わりに皆を守ってくれて」
誰もいない廊下で、士道は歩みを止めて目を窓の外へと向ける。
耶俱矢達と合流したのだろう。十香が笑顔で出店を見回っているのを見て、三日月は笑みを浮かべる。
そして─────
「全部終わったら、前と同じように俺の全部をお前にやるからそれまでよろしくな。バルバトス」
士道はそう言って、美九がいる会場へと足を進めていった。
因みにバルバトスが三日月と契約した内容は三日月の魂だけ。
なのでもし、十香達が上手く三日月を呼び戻さないと、死か原作の主人公が出てくるオチになる
なお、バルバトスの役割
三日月に力を貸すよ!!契約代金はもらうけど
あと、ハシュマルいるから全部終わってハシュマル殺すまでは抑えてるね!!
↑
これの代金のせいで三日月が死ぬたびに士道としての三日月の記憶を持ってかれてる。
作者「鬼!悪魔!!」
バルバトス「悪魔ですけど」
なお、三日月も同意の上でやってます