俺は俺の出来ることをやるだけだ
三日月・オーガス
十月十五日、日曜日。街の装飾がハロウィンムードに染まりきった頃。士道と十香と四糸乃は夕食の買い物をしに商店街へ足を運んでいた。
「おお・・・シドー、あれはなんだ?」
言いながら、十香は雑貨屋の軒先に飾ってある巨大なカボチャのお化けを指差す。
「・・・カボチャ?」
『んー、でも、顔がついていてなんか不気味だよねー』
「ああ、アレ?確かハロウィンって言うイベントで飾るカボチャだったはずだけど」
「ハロウィン・・・ですか?」
四糸乃は首を傾げながら士道の顔を見る。
「なんか、海外の祭りって感じ」
『へぇー!なんか楽しそうじゃーなーい?』
よしのんの言葉に、十香も頷く。
「うむ!楽しそうだな!」
そう頷く十香に、士道は口を開いた。
「んじゃ、今日の晩メシはカボチャにしようか。作るの夕弦達だけど」
「・・・うむ、そうと決まれば行くぞ!シドー!」
言って、十香が八百屋の方を指差し、歩幅を大きくして歩いていく。
「あ、十香さん・・・待ってください・・・!」
と、四糸乃が言ったところで、十香は道の脇から出てきた人影にぶつかって、その場に尻餅を突いてしまった。
「うぬっ!」
「おっと・・・」
『もー、十香ちゃんたら、言わんこっちゃないよー。大丈夫?』
「む・・・うむ」
よしのんはそう言いつつ、十香に手を伸ばす。
士道は、今し方十香がぶつかってしまった人影のほうへと視線を向けた。
そこにいたのは、車椅子に座った五十代の外国人男性と、それを押す二十代半ばくらいの眼鏡をかけた女性だった。
「大丈夫?アンタ。怪我はない?」
そう言う士道に、男性は柔和そうな微笑を浮かべて首を振り、顔に似合わぬ流暢な日本語を発してきた。
「いや、こちらこそすまなかったね。大丈夫かい、お嬢さん」
「うむ、大事ないぞ」
「それは何より」
おどけるような調子で男性が言う。
と、男性はそんな士道達に口を開く。
「そういえば、一つ聞きたいことがあるんだ。君たち、市民病院の場所を知らないかい?」
「病院?道案内いる?」
別にそこまで遠い訳でもないし、ぶつかった謝罪も含めて道案内くらいしても構わないだろう。
「すまないね。では、お願いしようかな」
「いいよ、これくらい。で、アンタはなんて言えばいいの」
「ああ、ボールドウィンとでも呼んでくれ。こちらはカレン」
言いながら、男性────ボールドウィンが、車椅子を押して歩く女性を親指で示す。するとカレンと呼ばれた女性は「どうも」とだけ言って再び無言に戻った。
淡いノルディックブロンドに、碧眼。間違いなく初対面であるはずなのに、士道は何処かで見たことがある。
「・・・・・」
DEMにいたエレン・メイザースとよく似ているが、髪の長さや性格、そして匂いが違ったので、士道は違うと判断した。
「どうかしたかね?」
「別に。なんでもないよ。“ボードウィン“の人」
「ボードウィン?」
ボールドウィンは目を丸くしながらそう言うが、士道は気にせずに歩き始める。
「そう言えば、君たちの名はなんて言うんだい?」
士道はボールドウィンの言葉に、足を止めて言った。
「五河士道」
「私は夜刀神十香だ」
「・・・四糸乃・・・です」
『よしのんだよー。よろしくねー』
士道達がそう言うと、ボールドウィンは機嫌良さそうにうなずいた。
「うむ。異国の地で君たちに出会えたことを神に感謝せねばならないな」
そう言うボールドウィンに、士道は気にすることはなく、足を進め始めた。
と、そんな士道の後ろで、ボールドウィンは十香達に視線を向けた。
「君たちは、士道くんと出会ってからどれくらいになるんだい?」
「む?そうだな・・・大体半年くらいだ」
「わたしも・・・それくらい、です」
「私とシドーは空間震のときに────」
そう言いかける十香に、士道は言った。
「十香と四糸乃とは、シェルターで会っただけだよ」
「そうか。それは運命的だ」
ボールドウィンがゆっくりと、何か感慨深そうに息を吐いてから、言葉を続ける。
「十香さん。四糸乃ちゃん。今、君達は幸せかい?」
「ぬ?」
「・・・えっ?」
急な質問に、二人は目を丸くする。しかし十香と四糸乃は怪訝そうな顔もせず、大きく首を前に倒した。
「うむ、とても幸せだぞ!」
「はい、とても幸せです」
「そうかい」
ボールドウィンはそう言って、優しげに微笑んだ。
そして、前を歩く士道に言った。
「君も、彼女達を“幸せにしてあげなさい”」
ボールドウィンのその言葉に、士道は当たり前だと言わんばかりに口を開いた。
「“そんなの分かってるよ“」
折紙「・・・・・」
作者「あのー・・・なんでリコリス使っているんです?折紙さん?」
折紙「私の出番がない事に貴方に怒りを感じている」
作者「いや、三日月と敵対行動しちゃった貴女の責に──」
此処から先は焼け焦げて読めない