少し短いですがどうぞ。
血が混ざって繋がってか、そういうのは仲間って言うんじゃないぜ。家族だ。
名瀬・タービン
しばらくして琴里はスクリーンに写し出された一団を指を指して士道に言った。
「それと、次はこっちね。AST。精霊専門の部隊よ」
「・・・精霊専門の部隊って──何すんの?」
士道が琴里に問うと、琴里は当然と言うように眉を上げ、言った。
「簡単よ。精霊が出現したら、その場に飛んでいって処理するの」
「処理?じゃあコイツを殺せばいいってことか」
「ええ」
こともなげに、琴里がうなずく。
言っていることは理解出来た。精霊。なるほど聞いたかぎり、確かに危険な存在だ。
士道は、彼女がオルガの言った"本当の居場所"にたどり着く邪魔になるのなら潰すかとしか、考えていなかった。
「まぁ、普通に考えれば死んでくれるのが一番でしょうね」
特に感慨もなさそうに琴里は言う。
「そうなの?」
「ええ、何もおかしいことはないでしょう。あれは怪物よ?この世界に現れるだけで空間震を起こす最凶最悪の猛毒よ?」
「そんなもんか?まぁ、いいや。で、どうすればいい?琴里。コイツを殺せばいいの?」
「・・・・・ッ!」
士道はそう言って琴里を見る。
そう言って自分を見る士道に琴里は一瞬、得体のしれない寒気を覚えた。
まるで、士道から寄せられる信頼に応えればならないと言うプレッシャー。目的の為ならば、殺すことも平気でやるような目だった。まるで悪魔との契約をすればこんな気持ちになるのだろう。
だが、琴里は自分の兄はそんな事をするような人ではないと"思ってしまった"。
琴里は内心恐怖を感じながらも、真顔を作りながら自身の兄を見て言う。
「いいえ、そんなことはしなくてもいいわ」
琴里はそう言って、士道に話を続ける。
「いい?精霊の対処方法は、大きく分けて二つあるの」
「二つ・・・・?」
士道は首を傾げて問うと、琴里は大仰にうなずき、人差し指を立てた。
「一つはASTのやり方。戦力をぶつけて精霊を殲滅する方法」
続けて中指を立てる。
「もう一つは・・・・・精霊と、対話する方法。────私たちは〈ラタトスク〉。対話によって、精霊を殺さず空間震を解決して士道をサポートするために結成された組織よ」
「・・・・・・・は?」
士道は呆然としながら琴里を見る。
その組織とは何なのかとか、なぜ琴里がそんな所に所属にしているのかとか、気になるところはたくさんあったが───とにかく気にせねばならない事を口に出す。
「なんで、その組織が俺をサポートするの?」
「ていうか、前提が逆なのよ。そもそも〈ラタトスク〉っていうのは、士道のために作られた組織だから」
「・・・はぁ?」
士道は疑問の顔を浮かべると、わからないといった声を上げる。
「俺のため?なんで?わからないんだけど?」
「ええ。────まあ、士道を精霊との交渉役に据えて、精霊問題を解決しようって組織って言った方が正しいのかもしれないけれど。どちらにせよ、士道がいなかったら始まらない組織なのよ」
「へぇ、じゃあ此処にいる人って、全部そんなことのために集められたって事?ていうか、なんで俺?」
士道が問うと、琴里はキャンディを口の中で転がしながらうなった。
「んー、まあ、士道は特別なのよ」
「ふーん」
士道は自分が特別と言われても、興味がなさそうに言う。
しかし琴里は不敵に笑うと、肩をすくめる仕草をして見せてきた。
「まあ、理由はそのうちわかるわ。いいじゃない。私たちが、全人員、全技術を以て士道の行動を後押ししてあげるって言ってるのよ?それとも───また一人で何の用意もなく精霊とASTの間に立つつもり?死ぬわよ、今度こそ」
琴里が半眼を作り、冷淡な口調で言ってくる。
士道はそれに気にしてない様子で言う。
「で?その対話って何すんの?話あえばいいの?」
話合いなどクーデリアの領分だ。
戦うことしか出来ない自分には向かない。それを知った上で士道は言う。
琴里は士道の問いに小さく笑みを浮かべた。
「それはね」
そしてあごに手を置き、
「精霊に─────恋をさせるの」
ふふんと得意げに、そう言った。
「・・・・・は?」
士道は二度目の わからない発言で眉をひそめる。
「・・・ごめん。意味が分からないんだけど?」
「だから、精霊と仲良くお話ししてイチャイチャしてデートしてメロメロにさせるの」
さも当然のごとく言う琴里に、士道はわからないという顔で琴里に言う。
「で、その"でーと"ってやつでなんで空間震が解決するの?」
琴里は指を一本あごに当てながら「んー」と考えるような仕草を見せたあと、
「武力以外で空間震を解決しようとしたら、要は精霊を説得しなきゃならないわけでしょ?」
「うん」
「そのためにはまず、精霊に世界を好きになってもらうのが手っ取り早いじゃない。世界がこんなに素晴らしいモノなんだー、ってわかれば、精霊だってむやみやたらに暴れたりしないでしょうし」
「そう言うことか」
「で、ほら、よく言うじゃない。恋をすると世界が美しく見えるって。───というわけでデートして、精霊をデレさせなさい!」
「分かった」
琴里の言った事に士道は即答した。
「はやっ!?」
琴里は士道の即答に驚くが、士道は気にしてないように言う。
「殺さなくていいんだったら、それでいいでしょ。俺は俺の邪魔をするやつは潰すだけだ。だったら手段なんて選んでられないでしょ」
士道はそう言って腕を伸ばす。
それにと士道は言う。
「琴里達が決めたんでしょ?だったら俺は俺にできる事をやるだけだ」
士道はそう言って琴里を見ると、琴里は満面の笑みを作った。
「────よろしい。今までのデータから見て、精霊が現界するのは最短でも一週間後。早速明日から訓練よ」
「・・・・?訓練・・・?」
士道はそう言って琴里を見たが、その顔は不敵な笑みを浮かべたままだった。
◇◇◇◇◇
そして、次の日。
「来て」
「ん?」
突然。
士道は折紙に手を掴まれ、不思議な声を発した。
「ねぇ、ちょっと何?」
ガタンと椅子を倒され、折紙に引っ張られて教室を出ていく。
後方では殿町がポカンと口を開け、女子の集団が何やらキャーキャーと騒いでいた。
士道は何だろうかと思いながらも、折紙についていく。
まあ、少なくとも自分は何も彼女にしていない。
四月十一日、火曜日。
士道があの不思議な体験をした次の日である。
結局あのあと士道は別室に移され、知らないやつに詳細な説明を深夜まで延々聞かされたあと、何かわからない紙に名前を書かされてからようやく家に帰された。
風呂も入らずにベッドに入り、気づけば朝である。
気だるい身体を動かしながら登校し、眠い眼を擦りながらなんとか授業に耐え、帰りのホームルームが終わった───と思った瞬間の出来事だった。
折紙は無言のまま階段を上り、しっかりと施錠された屋上への扉の前までやってきて、ようやくその手を離した。
下校する生徒たちの騒ぎが遠く聞こえる。
「で、何?」
彼女が何をするのか分からないが、士道は折紙を見て言う。
「昨日、なぜあんな所にいたの?」
士道の目をじっと見つめながら言った。
「・・・何の事?」
「───昨日、空間震の真ん中であなたを見た」
「ああ、あれか。でもなんでアンタがそんな事知ってんの?」
「言えない」
「あっそ」
彼女がそう言うと、士道は興味を無くしながら適当に答える。
「・・・で、結局何のようで此処に連れてきたの?野菜の世話しなきゃいけないから俺、帰るよ?」
士道はそう言って、彼女に背を向ける。
背を向けた士道に彼女は言う。
「昨日の事、忘れた方がいい」
それはきっと、あの精霊とか言う奴の事を言っているのだろう。
「・・・昨日の事?」
士道はそう言って折紙を見る。だが、折紙は無言で士道を見つめてくるだけだった。
「何で忘れた方がいいのか知らないけど、アンタには関係ないでしょ」
士道は短く答えて、階段を下りる。
すると後ろから彼女が言う。
「あれは、精霊」
折紙は短く答えた。
「私が倒さなければならないもの」
「あっそ」
士道はこれ以上聞く気はないのか、階段を下りていく。
すると微かに、折紙が唇を噛み締めた音がした。
「───私の両親は、五年前、精霊のせいで死んだ」
士道はその言葉に首だけを向け、折紙を見る。
「私のような人間は、もう増やしたくない」
折紙の言葉に士道は・・・
「アンタ・・・俺に何が言いたいの?死んだアンタの両親に失礼だよ」
士道はそう言って、階段を下りていった。
士道にとって自分のせいで他人を死なせてしまったというのは嫌いだった。
ソイツらには自分の考えがあってそうしたんだろう。
だったらいつまでもそうやって引っ張っていくのは死んだ奴等に失礼だ。
俺だって鉄華団の団員を全員守れたわけではない。
でも、アイツらはアイツらなりに生きたのだ。
だからそんな風に後悔なんてしてられない。それに死んだ奴には死んだ後でいつまでも会えるのだ。
悲しんでなんかいられない。
士道はイラつきながらも、帰宅する為に教室に戻っていった。
感想誤字報告おねがいします。
皆さんは他のオルフェンズキャラを出してほしいですか?それとも、三日月だけでいいですか?
良ければ書いてみて下さい。