デート・ア・オルフェンズ   作:鉄血

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久しぶりの投稿です。
三日月っぽくなかったらすみません

今まで誰が敵とか味方とか、
あんま、考えたことなかった。
目の前に立ち塞がるやつらを
オルガの命令で倒してただけだから。
でも、ここから先は違う。
鉄華団を、邪魔するやつはみんな俺の敵だ。

三日月・オーガス


第七話

結果だけ言おう。

士道の鈍感と言うか、天然を矯正するのは失敗に終わった。

士道は琴里に言われた事を坦々とこなしていったが、全くもって効果がなかった。

三日月としての頃から女性の扱いに対して周りから言われた事をそのまま実行する事が多かった士道に、琴里の面白半分、冗談で言われたこともやろうとしていた為にこの一週間はほぼ無駄に終わった。

そんな事があり、琴里は士道に対して頭を抱えることとなっている。

ホームルームが終わり、士道は学校の畑で水をやっていると、

 

ウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ──────

 

「っ!!」

 

何の前触れもなく、あたりに警報が響き渡る。

その警報とほぼ同時に士道は走りだした。

そしてすぐに、前に渡されたのでインカムという物から声が聞こえてくる。

 

『士道、空間震よ。一旦〈フラクシナス〉に移動するわ。戻りなさい』

 

「了解。で、場所は?」

 

士道が言うと、琴里は一拍置いてから続けてきた。

 

『出現予測地点は────"ここよ"』

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

時刻は、十七時二十分。

避難を始める生徒の目を避けながら、街の上空に浮遊している〈フラクシナス〉に移動した三人は、艦橋スクリーンに表示された様々な情報に視線を送っていた。

軍服に着替えた琴里と令音は、時折言葉を交わしながら意味ありげにうなずいていたが、士道にはさっぱりわからない。

唯一何とか理解できるのは───画面右側にあった自分の通っている高校を中心にした街の地図くらいである。

 

「なるほど、ね」

 

艦長席に座りチュッパチャプスを舐めながら、クルーと言葉を交わしていた琴里は、士道に言った。

 

「───士道」

 

「何?」

 

「心配だけど、早速働いてもらうわ。準備なさい」

 

「分かった」

 

琴里の言葉に簡潔に士道は言う。

 

「───もう彼を実戦登用するのですか、司令」

 

と、艦長席の隣に立っていた神無月が、スクリーンに目をやりながら不意に声を発した。

 

「相手は精霊。失敗はすなわち死を意味します。訓練は十分なのでしょげふっ」

 

言葉の途中で、神無月の鳩尾に琴里の拳がめり込む。

 

「そんなの分かってるわよ。でも、もうやるしかないじゃない。時間もないんだし」

 

琴里はなげやりに言いながらスクリーンを見る。

そして、キャンディの棒をピンと上向きにして言った。

 

「でも士道、あなたかなりラッキーよ」

 

「ん・・・・?」

 

琴里の視線を追うように、スクリーンに目を向ける。

やはり意味が分からない数字が躍っていたが───右側の地図に、先程と変わったところがあった。

士道の高校に赤いアイコンが一つ、そしてその周囲に、小さな黄色いアイコンがいくつも表示されていた。

 

「これは?」

 

「赤いのが精霊、黄色いのがASTよ」

 

「ふーん・・・・で、何がラッキーなの?」

 

「ASTを見て。さっきから動いてないでしょう?」

 

黄色いアイコンに視線を向けると、赤いアイコンを取り囲むように静止しているのが分かる。

 

「もしかして、建物の中にいるから外に出るのを待ってる?」

 

士道は状況をすぐさま判断して呟く。

琴里は士道のその判断に驚く。

 

「正解よ。そもそもCR-ユニットは、狭い屋内での戦闘を目的として作られたものじゃないのよ。いくら随意領域があるとはいっても、遮蔽物が多く、通路も狭い建造物の中では確実に機動力が落ちるし、視界も遮られてしまうわ」

 

言いながら、琴里がパチンと指を鳴らす。

それに応じるように、スクリーンに表示されていた画像が、実際の高校の映像に変わる。

校庭に浅いすり鉢状のくぼみが出来ており、その周りの道路や校舎の一部も綺麗に削り取られていた。

まさに先日の士道が見たのと同じ光景だった。

 

「校庭に出現後、半壊した校舎に入り込んだみたいね。こんなラッキー滅多にないわよ。ASTのちょっかいなしで精霊とコンタクトが取れるんだから」

 

「・・・ふーん」

 

理屈は分かった。

なら後はどうするか決まってる。

 

「なら、早く行こう。アイツらが動く前に」

 

「よろしい。カメラも一緒に送るから、困ったときはサインとして、インカムを二回小突いてちょうだい」

 

「分かった」

 

士道はそう言って艦橋のドアに足を向けた。

 

「士道」

 

すると後ろから琴里に声をかけられる。

 

「何?」

 

「グッドラック」

 

「うん」

 

ビッと親指を立てている琴里に士道は軽く頷いて、ドアの先へ向かう。

そして士道のその目にはただ強い意志があった。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

〈フラクシナス〉下部に設えられている顕現装置を用いた転送機というものは、直線上に障害物さえなければ、一瞬で物質を転送、回収できるのはという代物らしい。

士道の視界が〈フラクシナス〉から、薄暗い高校の裏手に変わったのを確認してから、首を軽く回す。

 

「さてと、まずは校舎内に向かわないと・・・」

 

言って士道が振り返ると目の前にはある校舎の壁が、冗談のようにごっそりと削り取られており、内部を覗かせていた。

 

「じゃあ、探すか」

 

士道はそう言って校舎の中に入っていった。

あまりのんびりしていると精霊が外に出てしまうかもしれないし、それ以前に、士道がASTに見つかって『保護』 されてしまう可能性もある。

『さ、急ぎましょ。ナビするわ。精霊の反応はそこから階段を上がって三階、手前から四番目の教室よ』

 

「分かった」

 

士道はそう言って、近くの階段を駆け上がる。

そして一分もかからず、指定された教室の前まで辿り着く。

扉は開いておらず、中の様子は窺えなかったが、この中に精霊がいると確信できる。

教室のクラスを見ると────

 

「あれ?ここ、俺の教室じゃん」

 

『あら、そうなの。好都合じゃない。地の利とまでは言わないけど、まったく知らない場所よりよかったでしょ』

 

琴里はそう言うが実際、まだ進級してそう日が経っていないので、そこまで知っている訳でもない。

士道は普段入るような様子で扉を開けた。

夕日で赤く染められた教室の様子が、網膜に映り込んでくる。

 

「─────ッ」

 

士道は目を細めると、教室の中の様子が写しだされる。

前から四番目、窓側から二列目───ちょうど士道の机の上に、不思議なドレスのような服を身に纏った黒髪の少女が、片膝を立てるようにして座っていた。

幻想的な輝きを放つ目を物憂げな半眼にし、ぼうっと黒板を眺めている。

 

「───ぬ?」

 

少女が士道の侵入に気づき、目を完全に開いてこちらを見てくる。

 

「・・・ん?」

 

こちらを見てくる彼女に、士道はただ見つめ返す。

そして彼女が無造作に手を振るったかと思うと、士道の頬を掠めて一条の黒い光線が通り抜けていった。

そして一瞬のあと、士道が手を掛けていた教室の扉と、その後ろにある廊下の窓ガラスが盛大な音を立てて砕け散る。

士道は掠めた頬を指でこすって確認するが、血もついていなかったので、少女を見て呟く。

 

「・・・・アンタ・・・何のつもり?」

 

士道はそう言って彼女を見る。

本来であれば士道はこの場で殺しにかかるが、今回の仕事は彼女の保護だ。

なら殺したり、彼女から嫌われるような事はしてはいけない。

その事にめんどくさいなと思いながら、士道は言う。

 

「なぁ、俺はアンタの敵じゃないけど?」

 

士道の言葉が通じたのか、彼女は再び士道を見つめる。

 

「入るよ」

 

『ちょっと!?』

 

琴里を無視し、士道は扉がなくなった教室に入る。

 

「・・・・・」

 

そんな士道に、少女はじとーっとした目を向けていた。

一応攻撃はしてこないものの、その視線は猜疑と警戒が満ちている。

そんな彼女に士道は一歩教室に足を踏み入れると、

 

「───止まれ」

 

少女が凛とした声音を響かせると同時───ばじゅッ、

と士道の足元の床を光線が焼く。

士道は先の行動に足を止める。

 

「あのさ、さっきも言ったけど俺は敵じゃないけど?」

 

士道の言葉を無視し彼女が士道の頭頂から爪先までを舐めるように睨め回し、口を開いてくる。

 

「おまえは、何者だ」

 

「?・・・・俺?俺は五河士道だけど?」

 

士道はそう言って彼女を見る。

 

「・・・・・」

 

士道がそう言うと、少女は訝しげな目を作りながら士道の机から下りた。

 

「───そのままでいろ。おまえは今、私の攻撃可能圏内にいる」

 

「・・・・分かった」

 

士道は了解を示すように、姿勢を保ったまま言う。

少女が、ゆっくりとした足取りで士道の方に寄ってくる。

 

「・・・ん?」

 

そして軽く腰を折り、しばし間士道の顔を凝視してから「ぬ?」と眉を上げた。

 

「おまえ、前に一度会ったことがあるな・・・?」

 

「ああ・・・確か今月の───10日の街中で会ったよ」

 

「おお」

 

士道が思い出したかのように言うと、彼女は得心がいったように小さく手を打つと、姿勢を元に戻した。

 

「思い出したぞ。確かあの時におかしな事を言っていた奴だ」

 

「・・・?そんなおかしな事、言ったっけ?」

 

士道はそう言って頭をかく。

 

「それで、貴様、私を殺すつもりがないといったな?ならおまえは一体何をしに現れたのだ?」

 

「ん?それはアンタに会うためだよ」

 

「私に?一体何のために」

 

士道は彼女の予想外の問いにどう答えるか考えるが、すぐに話す為だと思い出し、言う。

 

「えっ?えーと、アンタと話す為?」

 

士道が言うと───少女は意味がわからないといった様子で眉をひそめた。

 

「・・・・どういう意味だ?」

 

「そのままだよ。俺は、アンタと話をしに来たんだ。別にアンタを否定したり、どうしようなんて思わないよ」

 

士道はそう言って彼女を見る。

 

「それに、アンタはオルガに会う前の俺に似てるからさ」

 

「・・・・・っ」

 

彼女は眉根を寄せると、士道から目を逸らす。

 

「・・・・シドー。シドーといったな」

 

「うん」

 

「本当に、おまえは私を否定しないのか?」

 

「しないよ」

 

「本当の本当か?」

 

「・・・じゃあこれ食べる?」

 

士道はそう言って、当たりだと分かったデーツを制服のポケットから出す。

当たりなので、あまり他の人に渡したくはないがそれでも分かってもらうためだから仕方ない。

 

「これは?」

 

「ん?デーツ。当たりだから気にしなくていいよ」

 

「───ふん」

 

少女はそう言って、複雑そうな表情で士道に手を出す。

士道は彼女にデーツを渡すと自分もポケットからデーツを取り出し口に入れる。

彼女は恐る恐るデーツを口に入れて咀嚼すると、顔を明るくして士道に言った。

 

「うまいな!シドー!」

 

「でしょ」

 

少女の言葉に士道は少し表情が和らぐ。

そして、そんな彼女に士道は再び言う。

 

「だからさ、少しだけ話そうか」

 

「そうだな・・・おまえにどんな腹があるかは知らんが、まともに会話をしようという人間は初めてだからか。・・・この世界の情報を得るために少しだけ話をしてやる」

 

彼女の改心に士道は頭をかきながら思った。

やっぱり話し合いは難しいなと。

ここから彼の物語は加速する。




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