久しぶりの投稿なので三日月っぽくなかったらごめんなさい。
もうそろそろ、バルバトスが出でくるよー
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大将っつうのはでっかく構えとくもんだろうが。
ノコノコ出て行くなんてみっともねぇまねは俺が許さねぇ!
テメェらもだ!!なんでもかんでもオルガに頼ってんじゃねぇぞ!
ユージン・セブンスターク
士道は自分と同じ教室にいる彼女の質問に答えていた。
「シドー」
「なに?」
「───早速聞くが。ここは一体なんだ?初めて見る場所だ」
言って、歩きながら倒れていない机をペタペタと触り回る。
「ああ・・・ここは学校って言って俺と同じくらいの奴と一緒に勉強する所。知りたい事とか教えてくれる」
「なんと」
少女は驚いたように目を丸くする。
「これに全て人間が収まるのか?冗談を抜かすな。四十近くはあるぞ」
「本当だよ」
言いながら、士道は頬をかく。
彼女が現れるときは、街には避難警報が発令されている。彼女が見たことのある人間など、ASTくらいのものだろう。人数もそこまでいないだろう。
「なあ───アンタ、名前ってあんの?」
「ぬ?」
士道の問いに彼女は眉をひそめてくる。
そしてしばらく考えを巡らせるようにあごに手を置いたあと、
「・・・・そうか、会話を交わす相手がいるのなら、必要なのだな」
そううなずいて、
「シドー。───おまえは、私を何と呼びたい」
手近にあった机に寄りかかりながら、そんなことを言ってきた。
「・・・・ん?」
彼女が言っている意味が分からず、目を細めて問い返す。
少女はふんと腕組みすると、尊大な調子で続けた。
「私に名をつけろ」
「・・・・・・は?」
士道は彼女が名前をつけろと言った事に困惑しながら言う。
「俺が、アンタに名前をつけるの?」
「ああ。どうせおまえ以外と会話する予定はない。問題あるまい」
◇◇◇◇◇
「うっわ、これまたヘビーなの来たわね」
艦長席に腰掛けながら、琴里は頬をかいた。
「・・・ふむ、どうしたものかな」
艦橋下段で、令音がそれに応えるようにうなる。
艦橋にはサイレンが鳴っているものの、スクリーンが多過ぎて表示しきれないのだろう。
AIでランダムに名前を組むだけでは、パターンが多すぎて表示しきれないのだろう。
「士道、貴方ネーミングセンス最悪だから変な名前言うんじゃないわよ?」
「え、もう決めてるんだけど?」
インカムから士道の返答が返ってくる。
「へぇ、まぁ一応聞いて上げる。一体どんな名前にしたの?」
琴里の返答に士道はインカム越しで言う。
「十香」
士道の考えた名前に琴里は目を丸くしながら言った。
「士道にしては、まともなネーミングじゃない」
「別に。考えた理由も十日にあったから思いついただけだよ」
士道はそう言って琴里に言う。
そして琴里は士道に言った。
「じゃあ士道。その名前で言ってみて」
「分かった」
士道はそう言って目の前にいる彼女に言った。
「十香」
「ぬ?」
「どう?」
「・・・・・・・・」
少女はしばらく黙ったあと────
「まぁ、いいだろう」
少女の反応に士道は頭をかいた後、ポケットに手をいれる。
するとすぐにトン、トンと士道に近づいてくる。
「それで────トーカとは、どう書くのだ?」
「ん?ああ、それは───」
士道は黒板の方へと歩くと、チョークを手に取り片手で、『十香』と書いた。
「ふむ」
少女が小さくうなってから、士道の真似をするように指先で黒板をなぞる。
「コイツを使わないと字が書けないよ」
言って、言葉を止めた。
士道の視線には、彼女が指でなぞった後が綺麗に削り取られ、下手な字で『十香』の二文字が書かれていた。
「なんだ?」
「コイツを使わないと字が書けないって言ったけど、書けたならそれでいいや」
十香の問いに、士道はそう言ってチョークの粉がついた手を払うと、再びポケットに手を入れる。
「そうか」
十香はそう言うと、しばしの間自分の書いた文字をじっと見つめ、小さくうなずいた。
「シドー」
「なに?」
「十香」
「え?」
士道は十香の言葉に顔を向けて言うと、
「十香。私の名だ。素敵だろう?」
「あー、うん」
何とも言えない気分になりながら、士道はポケットのデーツを食べる。
だが、彼女───十香は、もう一度同じように唇を動かした。
「シドー」
・・・・さすがの士道でも、もう十香の意図は分かった。
「十香」
士道がその名前を呼ぶと、十香は満足そうに唇の端を上げ笑った。
「・・・・笑ったじゃん」
そういえば十香の笑顔を見るのは、これが初めてだった。
「む?」
十香は目を丸くしながら士道を見て言う。
「そうなのか?」
「うん」
「そうか・・・そうか・・・」
十香はそう言って士道を見て笑う。
「士道と会ったからかもしれないな」
「ん?」
と、そのとき、
突如、校舎を凄まじい爆音と震動が襲った。
咄嗟に教卓に手をついて体を支える。
「なんだ?」
『士道、床に伏せなさい』
と、インカム越しから右耳に琴里の声が響いてくる。
「っ!!」
士道は教卓を倒し、床に伏せた。
次の瞬間、ガガガガガガガガ───ッと、けたたましい音を立てて、教室の窓ガラスが一斉に割れ、ついでに向かいの壁にいくつもの銃痕が刻まれていく。
「チッ!!」
『外からの攻撃みたいね。精霊をいぶりだすためじゃないかしら。───ああ、それとも校舎ごと潰して、精霊が隠れる場所をなくすつもりかも』
「それはマズイな」
『今はウィザードの災害復興部隊がいるからね。すぐに直せるなら、一回くらい壊しちゃっても大丈夫ってことでしょ。───にしても予想外ね。こんな強攻策に出てくるなんて』
と、そこで、士道は顔を上げる。
十香が、先ほど士道に対していたときとはまるで違う表情をして、ボロボロになった窓の外に視線を放っていた。
無論、十香には銃弾はおろか、窓ガラスの破片すら触れていない。
だがその顔は、ひどく痛ましく歪んでいた。
「───十香、こっち」
「・・・・っ」
ハッとした様子で、十香が視線を、外から士道に移してくる。
未だに銃声が響いていたが、教室への攻撃は一旦止んでいた。
外に気を張りながらも身を起こす。と、十香が悲しげに目を伏せた。
「早く逃げろ、シドー。私と一緒にいては、同胞に討たれることになるぞ」
確かに逃げなければならないのだろう。だが────
『選択肢は二つよ。逃げるか、とどまるか』
琴里の声が聞こえてくる。
だが、士道の答えは決まっている。
「・・・・・べつに、慣れているから問題ないよ」
冷静にそして何ともないような声で、そう言った。
『馬鹿ね』
「・・・・なんとでも言えば?」
『褒めてるのよ。────素敵なアドバイスをあげる。死にたくなかったら、できるだけ精霊の近くにいなさい』
「わかった」
士道はそう言って十香の後ろに回る。
「は────?」
十香が、目を見開く。
「何をしている?早く───」
「知った事じゃないでしょ・・・今は俺との話をするんだろ?だったら気にしたって仕方ない。それに十香は、この世界の情報が欲しいんでしょ?俺に答えられることだったらなんでも答えるよ」
「・・・・!」
十香は一瞬驚いた顔を作ってから、士道の向かい合わせになった。
◇◇◇◇◇
「────────」
ワイヤリングスーツに身を包んだ折紙は、その両手に巨大なガトリング砲を握っていた。
照準をセットして引き金を引き、ありったけの弾を学舎にぶちまける。
テリトリーを展開させているため、重量も反動もほとんど感じないが、本来ならば戦艦に搭載されている類の大口径ガトリングである。
実際、四方から砲撃を受けた校舎は、みるみるうちに穴だらけになってその体積を減らしていった。
とはいえ────顕現装置搭載の対精霊装備ではない。
ただ単純に、校舎を破壊して精霊を燻り出すためのものだ。
『────どう?精霊は出てきた?』
ヘッドセットに内蔵されたインカム越しに、燎子の声が聞こえてくる。
燎子は折紙のすぐ隣にいるのだが────この銃声の中では肉声などが届かないのだ。
「まだ確認できない」
攻撃の手を止めないまま、答える。
折紙は自らも銃を撃ちながら、目を見開いて崩れゆく校舎をじっと見ていた。
通常であればまともに見取ることすらできない距離だったが、テリトリーを展開させた今の折紙には、校舎脇の掲示板に張られた紙の文字を読むことだって可能だった。
と────折紙は小さく目を細めた。
二年四組。折紙たちの教室。
その外壁が、折紙たちの攻撃によって完全に崩れ落ち───ターゲットである精霊の姿が見えたのだ。
だが─────
『・・・・ん?あれは────』
燎子が訝しげな声を上げた。
それはそうだろう。教室の中には、精霊の他に、もう一人少年と思しき人間が確認できたのである。────逃げ遅れた生徒だろうか。
「な、何あれ。精霊に襲われている────?」
燎子が眉をひそめながら声を発する。
だけれど折紙はそれに反応を示すことなく、教室をじっと見つめ続けた。
精霊と一緒にいる少年の姿に、みおぼえがある気がしたのである。
「─────!」
折紙は、目を見開いた。
なぜならその少年は────折紙のクラスメート・五河士道その人だったのだから。
「───折紙?」
隣から、燎子が怪訝そうに話かけてくる。
だが折紙は答えず、ただ頭の中に指令を巡らせた。
全身に纏った顕現装置への、最速機動の指令を。
「ちょっと、折紙!?」
『────危険です。独断専行は避けてください』
さすがの異常に気がついたのか、燎子と本部からの通信が、ほぼ同時に響く。
しかし折紙は止まらなかった。すぐさま両手に携えていたガトリングを捨て、腰に携えた近接戦闘用の大精霊レーザー・ブレード〈ノーペイン〉を引き抜き、校舎へと向かっていった。
◇◇◇◇◇
銃弾か吹き荒れる教室で、十香と向き合いながら話す。
十香の力なのだろうか、夥しい数の銃弾は、二人をさけるように校舎を貫通していく。
とはいえ目の前を弾が通り抜けるのは久しぶりだった。
それにその銃弾の嵐の中で話している内容自体は、なんてことのないものばかりだ。
十香が今まで誰にも聞けなかったようなことを質問し、自分が答える。ただそれだけの応酬で、十香は満足そうに笑った。
どれくらい話した頃だろうか───士道の耳に、琴里の声が聞こえてきた。
『────数値が安定してきたわ。もし可能だったら、士道からも質問してみてちょうだい。精霊の情報が欲しいわ』
言われて、少し考えてから士道は口を開く。
「十香」
「なんだ?」
「十香は、どこから来たの?」
「む?」
士道の質問に、十香は眉をひそめて言った。
「───知らん」
「知らないの?」
「ああ、仕方ないだろう。────どれくらい前だったか、私は急にそこに芽生えた。それだけだ。記憶は歪で曖昧。自分がどういう存在なのかなど、知りはしない」
「ふーん、そういうもんか」
士道はそう言うと、十香はふんと息を吐いて腕組みをした。
「そういうものだ。突然この世に生まれ、その瞬間にはもう空にメカメカ団が舞っていた」
「メカメカ団?」
「あのビュンビュンうるさい人間たちのことだ」
「ああ、アイツらか」
士道はASTのことだろうと思いながら言う。
と、次いでインカムから、軽快な電子音が鳴った。
『!チャンスよ、士道』
「は・・・・?何が?」
『精霊の機嫌メーターが七〇を超えたわ。一歩踏み込むなら今よ』
「踏み込むって・・・なにすればいいの?」
『んー、そうね。とりあえず・・・デートにでも誘ってみれば?』
「ああ、一緒に出かけるあれか」
士道はそう呟くと、十香が反応する。
「ん、どうしたシドー」
「あー、十香」
「ん、なんだ」
「今度、俺とさ」
「ん?」
「デートってやつやらない?」
十香はキョトンとした顔を作った。
「デェトとは一体なんだ?」
「良くわかんないけど、なんかどっかに出かける事みたい」
士道がそう言った瞬間。
『───士道!ASTが動いたわ!』
「ん?」
目前にいる十香にも聞こえているだろうが、士道は構わず声を発していた。
瞬間───いつの間にか解放感に溢れていた教室の外から、折紙が現れる。
「あれ?銀髪の人?」
「────っ!」
十香が一瞬のうちに表情を険しくし、そちらに手のひらを広げる。
それから一拍もしないうちに、手にした無骨な機械から光の刃を現出させた折紙が、十香に襲いかかった。
溶接現場のような火花が、辺り一面に飛び散る。
「く─────」
「────無粋!」
十香は一喝するように叫ぶと、光の刃を受け止めていた手を、折紙ごと振り払う。
「・・・・・・っ」
微かに歯を食い縛りながら、折紙が後方へ吹き飛ばされる。が、即座に姿勢を整えると、
銃痕だらけの床に着地してみせた。
「ち───また、貴様か」
光の刃を受け止めていた手を軽く振りながら、唾棄するように十香は言う。
折紙は士道を一瞥すると、安堵したかのように小さな息を吐いた。
しかしすぐに見慣れない武器を構え直し十香に冷たい視線を放つ。
「・・・・・」
その様子を見た十香は、ちらと士道を一瞥してから、自分の足下の床に踵を突き立てた。
「────〈鏖殺公〉!」
瞬間、教室の床が隆起し、そこから玉座が現れる。
「おー・・・凄いな」
士道は簡素な感想を言うと、耳から琴里の声が聞こえてくる。
『士道、離脱よ!一旦〈フラクシナス〉で拾うわ。できるだけ二人から離れなさい!』
「わかった」
士道がそう言った後、十香が玉座の背もたれから剣を抜き、折紙に向かって振るう。
その際の衝撃波が士道を襲うが、士道はそれを使って校舎の外へと飛び降りる。
『ナイスっ!』
琴里の声が響くと同時、士道の身体が浮遊感に包まれる。
宇宙にいた時の事を感じながら、士道は〈フラクシナス〉に回収された。
感想、誤字報告よろしくです!