デート・ア・オルフェンズ   作:鉄血

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「オルガに見捨てられないように、俺ももっと頑張らないと」
 
三日月・オーガス


凜祢バスタイム 中編

それから十数分後。士道たちは五河家をあとにしていた。

凜祢の提案は単純明快。みんなお風呂に入れなくて困っているのなら、一緒に銭湯にでも行こうというものだった。

水が出るようになるまでどれくらいかかるか分からない以上、是非もない。士道たちは凜祢と同じように替えの服やタオルなど詰め、街灯に照らされた暗い道を歩いていた。

 

「銭湯ってなんか久しぶりだけど、あそこまだやってんの?」

 

確か前に行った時は、相当客数が少なかったはずだ。

もう潰れているかと思うが・・・と、士道の疑問に凜祢が小さく首を回してくる。

 

「うん、年季は入ってるけど、まだまだ現役だよ。っていうかあの銭湯、地主のおばあちゃんが趣味でやってるようなものだから、極端な話常連さんが入りに来てくれれば十分らしいんだよね」

 

「へー」

 

士道は興味なさそうに返事をする。まあ趣味人のおばあちゃんと常連のおかげで風呂に入るのだ。感謝せねばなるまい。

 

「でもそっか、士道も行ったことあったんだね、あの銭湯」

 

「まあね」

 

士道は凜祢にそう言いながら、十香を見る。

なぜか十香は妙に戦慄した面持ちになって、士道の腕をつついてきた。

 

「シドー。・・・やはりもう一度しっかりと準備した方がよいのではないか?」

 

「ん?多分十香が思ってる事とは違うよ」

 

「ぬ?」

 

恐らく十香は戦闘と勘違いしている。なので、十香に軽く説明した。

 

「俺達が今、向かってるのはでかい風呂場。戦いに行くわけじゃないから別にこれでいいよ」

 

「大きな風呂・・・温泉か!?」

 

十香は目を見開き、驚いたような声を発する。家で準備している時からやけに険しい顔をしていると思ったらやはり勘違いだったらしい。

 

「温泉とは違うと思うけど、まあそんなもんだよ」

 

「そうか、大きい風呂か。うむ。それは、なんだ、いいと思うぞ!」

 

十香はそう言って、前を走る。

士道はソレを見ながら視線を前方に戻すと、件の銭湯が見えてくた。

 

「んじゃ、また後で。一時間後に此処でいい?」

 

士道はそう言うと、皆がそれに応ずるように首肯する。

 

「うん、じゃあね、士道」

 

「うむ。ではまた後ほどだ」

 

「はい・・・」

 

「覗くんじゃないわよ。家でならいざ知らず、こんなところでやったら一瞬で豚箱コースだからね」

 

「別に興味ないから」

 

琴里の軽口を士道はそう言い返し、『男』と書かれた藍色ののれんをくぐる。

脱衣所の中を見渡すと、見る限り士道以外に人影はなく、脱衣カゴも使われていない。どうやら男湯には今、士道一人しかいないらしい。

幸いなことに、四糸乃の冷気はそう広い範囲に影響を及ぼしたわけではないようだ。

 

「・・・貸し切りか」

 

言いながら、士道は手近なカゴの前に立ち、服を脱いでいく。

普段は『阿頼耶識』の関係上、こういった人が集まる所には行かないのだが、まあ一人しかいないので気楽でいける。

士道は肩を鳴らしながらタオルを片手に、風呂場に歩いて行く。

扉を開けると、今のもわっと白い湯気が視界いっぱいに広がった。

 

「・・・蒸し暑い」

 

士道はそう呟きながらも適当な所で身体を洗い、湯船に入る。

こういった習慣は昔はなかったものだから、慣れないと言えば慣れない物だ。

 

「・・・久しぶりだな。こんなデカイの」

 

鉄華団にいた頃にも確かに湯船はあったが、正直な所、士道はシャワーで済ませることが多く、湯船に入る必要がなかった。ある意味で新鮮でもある。

と、士道はゆっくりしていると、後ろの壁の方から、何やらガラガラっという音が聞こえてきた。

 

「・・・・ん?」

 

士道はすぐにそちらに視線を回すが、その先にあるのは壁のだけだ。だが、その原因はすぐに知れた。

 

『おおっ、本当に広いな!とうっ!』

 

『あっ、駄目だよ十香ちゃん。みんなが入るお風呂なんだから、身体を洗ってから、ね?』

 

『ぬ、うむ。そうだったな!』

 

ペタペタと足音に続いて、くぐもった声が聞こえてくる。

どうやら、十香達の場所から音や声が響いてきているようだ。

 

「十香達か」

 

士道がそう呟くと、琴里の声が反響してくる。

 

『あー、いいお湯ね。今日はお風呂抜きになると思ってたから特に』

 

『す、すみません・・・』

 

『だから、気にしないでって。むしろ四糸乃のおかげでここに来れたことでいいじゃない』

 

『そうだよ四ー糸乃。みんなでお風呂楽しいじゃなーい』

 

『う・・・うん、そうだね、よしのん』

 

十香達の楽しそうな声に、士道は目を瞑りながら耳を傾ける。

そんな十香達の声と共に、あははっという朗らかな笑い声が聞こえてきた。────凜祢だ。

 

『そうだね。たまにはこういうのもいいかもね。それにしても・・・』

 

『ぬ?どうした凜祢?』

 

凜祢が言葉を切ったかと思うと、十香の不思議そうな声が聞こえてくる。

 

『・・・改めて見てみると、なんていうか、十香ちゃん本当にすごいなあって・・・』

 

『すごい?何がだ?』

 

『いや、それは・・・ほら、ねぇ?』

 

凜祢が言うと、他の面子も皆がうなずく様子が分かる。

 

『ぬぅ、一体何なのだ?皆で何を納得している?』

 

十香の疑問の声が響きながらも、士道は湯船に肩まで浸かる。

と、そこで凜祢の声が響く。

 

『ねえ・・・みんな。ちょっと話は変わるんだけど』

 

凜祢が、静かにそう言った。

 

『────士道のこと、皆はどう思う?』




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