グエル君、主人公になってない?
『霊力値、カテゴリーE!鳶一折紙、反転しました!』
『く───やっぱり、令音の仮説が正しかったわね!』
右耳のインカムから、琴里とクルーの声、そしてアラームの音がひっきりなしに聞こえてくる。
「・・・・・」
士道はそんな声を聞きながら、静かに反転した折紙の姿を見据えていた。
戦場では冷静さを欠いたら最後命に関わる。無意識下で発現させてしまった治癒の炎を目撃したことによる反転化であれば、目標である士道が消えない限り、彼女の反転は収まらないだろう。
それに折紙を取り囲むように漆黒の光を放つ幾つもの『羽』───〈救世魔王〉が士道達に濃密な闇を濃縮したような黒い光線を放つ。
「───っ!お前等!避けろ!」
ユージンのその叫びに皆はそれぞれ散り散りに散開し、回避する。
「皆!無事か!」
十香のその声に皆は頷く。
そして十香達はそれぞれの限定的な霊装を纏う。
「それで───シドー」
十香は士道を守るように天使〈鏖殺公〉を構えると、油断なく折紙を睨みつけながら唇を動かした。
「・・・凄まじい霊力を感じる。あれは一体なんだ?」
「あれ、反転化ってヤツだよ」
「・・・反転化?」
「精霊の反転化・・・世界に絶望して反転化した姿だった筈です」
十香の問いに士道は短くそう答えると、近くにいた真那が詳しく十香に説明する。その説明を聞いた十香は怪訝そうに顔を顰めた。
しかしそれも無理のないこと。この世界の十香達は折紙と顔を合わせてまだ日も浅い。そして何より、あの漆黒の霊装を纏った折紙が自分達もなり得るという可能性があると言われていい気分ではない。
DEMのあの白髪は、反転した精霊を魔王と言っていたが───今の士道達の目の前にいるそれは、その表現が大げさではないと分かった。
士道は足を一歩、前に踏み出す。
「シドー・・・?」
「兄様・・・?」
近くにいた十香と真那が一歩踏み出した士道のその行動に、眉をひそめる。恐らく、危険だと言いたいのだろう。
だが、このまま折紙を空に解き放ってしまったなら、眼下に広がる天宮市は廃墟に成り果てるだろう。
「おい、バルバトス」
士道は一度目を閉じると、自分の内に燻るバルバトスに───
「───“俺の全部やるからお前の全部、よこせ。バルバトス”」
士道のその言葉にバルバトスは応えた。
バルバトスのツインアイが緑色から赤色に変わり、残光が溢れ出る。
「シ、ドー・・・?」
「・・・士道、さん?」
「士道?」
「疑問。あれは・・・一体?」
「あの赤い光は・・・」
「・・・なんなの?」
それぞれがバルバトスの変化に気づく中、琴里と真那、そしてユージンの三人は必死な声で叫んだ。
『おにーちゃんッ!!止めてッ!!その力は駄目!!おにーちゃんッ!!おにーちゃんッ!!』
士道と真那がつけているインカムから琴里の泣き出しそうな叫び声が響く。
「兄、様・・・それは、駄目・・・です」
「三日月ッ!お前!!」
精霊の皆には伝えていないバルバトスの危険生。三人は知っていた。バルバトスのリミッターを外せば士道がどうなるのかを。
だが、”三日月”はそんな彼等に返事を返すことなく、折紙を見て呟いた。
「───正直、俺はお前が気に食わない。けど、お前が悪い奴じゃないのは今日で分かった。それに───」
三日月は一度口を紡ぎ、再び喉を震わした。
「俺は───“オルガ”に嘘はつけないから」
精霊を助けるとオルガに言った。
なら、それに嘘はつけない。
「行くぞ───バルバトス」
三日月が代償を払ったバルバトスに言葉を投げる。その言葉と同時に、バルバトスのそのツインアイはより強く赤く光を灯させた。
三日月がバルバトスに捧げた代償。それは三日月自身と自分とバルバトスの内側に眠るモビルアーマーの力───その全てだった。
バルバトス「ホントに消えることになるけど、いいの?」
三日月「うん。俺が居なかった事になればモビルアーマーもいなかった事になるでしょ。原作・・・だっけ?元に戻って皆が幸せになるならそれがいいじゃん」
バルバトス「・・・・・」
作者「いや、引き留めようよ!?バルバトスさぁん!?」
狂三「そうですわ!?まだ、わたくしを含めて四人?いえ、あの状態の十香さんを含めればまだ五人残ってますのよ!?」
戦車「お前らメタすぎるだろ・・・」
ネコキング「え?もしかして皆、三日月の事を忘れる落ち?」