真那虐は一旦ここまで!(終わるとは言っていない)
次に始まるのは夕弦虐になるかも?
「・・・・・・」
気がつけばいつの間にか私は五河家の前にいた。
時間は分からないが辺りは暗くなっているのを察するに、もう夜ということはわかる。
だが、私にはもう何もかもがどうでも良かった。
兄様が士道が三日月は───此方へと帰ってきてはいけない。
マクギリス・ファリドにそう言われ、その現実を突きつけられた。
兄様が帰ってくれば、それは厄災を呼び起こす火種にしかならないと。人類滅亡の危機にしかならないと。
それを聞いた私は泣き叫んだ。他に方法はないのかと。本当にまた会える方法はないのかと。
だが、マクギリスは何も言わなかった。それが答えなのだと言わんばかりに。
兄様との繋がりは失った。自分に残っているものは、兄様が肌身離さず持っていた銃と十香達を頼むという言葉だけ。
これからどうしようかな、と私は考えた。今までは兄様にもう一度会いたいという思いがあったからこそ、この二十日間、自分は生きてきた。
けれど、それは叶わない泡沫になってしまった。
空元気で十香さん達に心配をかけまいと振る舞い続けた。
だが、その気力も最早ない。
しばらく考え続けてから、私は、朝になったらこの家から出ていこうと決めた。兄様と過ごした思い出を兄様に託された思いを捨てることになるけれど、背負い続けて思い続けてズルズルと一生引き摺ってしまうよりは───と私は思った。
一度決めてしまうと気持ちが楽になり、私は玄関前の階段に座ったまま、何も見ず、何も考えずに朝を待った。
最悪の日を迎えた最後の夜にしては、悪くない気分だった。
◇◇◇◇◇
真那は何も考えず、ただ蹲りながら朝になるのを待った。すっかり周りも静まりかえり、冬の寒さが身を突き刺す。
そんな真那に誰かが近づく足音が耳に響く。
そして誰かが自分の横に座った。
「・・・そんな所で蹲って何やってんだ?寒いだろ」
「・・・・・放っといてください」
知らない男の声に思わず真那はそう返事を返してしまうが、とにかくこの男が鬱陶しくて仕方なかった。
だが、そんな真那に男は喋り続ける。
「悪いがそれは出来ねえ。見つけちまった以上はな」
そう言う男に真那は今まで心の底に押さえつけられていた激情に身を委ねながら目の前の男に向けて怒鳴りつけていた。
「───放っといてくださいよ!・・・…私は、そんなお節介頼んでねーです!」
突然視界が歪んだ。頬に、熱い感覚があった。自分の両眼に涙が溢れ、滴っていることに、真那はすぐには気づかなかった。
目の前に立つ背の高い男に、固く拳を握って胸に打ち掛かる。二度、三度、力任せにどんどんと叩きつける。
「何も知らないくせに・・・何もできないくせに、勝手なことを言うんじゃねーですよ!十香さんも四糸乃さんも琴里さんも耶俱矢さんも夕弦さんも美九さんも七罪さんも折紙さんも・・・誰も、兄様を覚えていない!あの日の事を誰も覚えていない!大切な人がいた事を誰も覚えていない!そんな中で、貴方に何が出来るって言うんですか!?何も知らない貴方が!!───何をなせるって言うんですか!!」
真那はその男の琥珀色の目を見ながらそう叫ぶ。
兄様は帰ってこない。帰ってきたとしても、沢山の人を犠牲にしてしまう。
そんなどうしようもない選択しかない中で、自分に何が出来る?そんなの諦めるという選択しかない。
「嫌いです・・・皆、皆、大っ嫌いです!!」
真那はそう叫びながら、あとから溢れ出る涙が地面に溢れ落ちる。誰にも泣き顔を見られるのが嫌で、勢いよく俯くと、額をどすんと男の胸にぶつかった。
両手で強く男の襟首を掴んだまま、力まかせに額を押し付けて、真那は押し殺すように嗚咽を漏らし続けた。幼子のように号泣し続けた。
そんな中で、男は真那に言う。
「・・・そうか。済まねえな。お前が“ミカをそんなに思ってるなんて”知らなかったわ」
「・・・・ぇ?」
“ミカ”という言葉に真那は顔を上げる。
その時、真那はその男の顔をはっきりと見た。
白い髪に浅黒い肌。琥珀色の目はまるで猛禽類のように鋭いが、今は申し訳なさそうな表情を作っていた。
「なあ、お前は確かタカミヤ・マナで良いんだよな?」
「・・・え?そ、そうですけど・・・」
突然目の前の男が自分の名前を言ってきて困惑する真那だったが、男の質問に頷いた。
「なあ・・・お前は本気でミカと一緒に居たいか?」
男のその質問に真那は頷く。
「居たいです・・・ずっと、ずっと兄様と一緒に居たいです!皆さんと一緒に買い物に行って、ご飯をまた一緒に食べて、一緒に寝て・・・ずっと!ずっと、兄様と一緒に居たいです!」
「これから先、どんな地獄が待っていようと、か?」
「はい・・・!」
どんなに辛くてもいい。どんな地獄が待っていてもいい。また、兄様に会えるならそれだけで───
「───フッ、そうか。そんなことを平気で言うのはあのお嬢様だけかと思ったが・・・お前もか」
男は少しだけ苦笑の笑みを溢すと、真那にある物を渡した。
「ほらよ」
真那は投げられたソレを上手くキャッチした後、ソレに目を向ける。それは機械製のリングだった。
「それをお前にやる。ソイツが示すポイントに行け。そしたら何か分かるさ。───ミカにまた会いたいんだろ?」
そう言って男は身を翻す。
そして歩き出そうとする男に、真那は呼び止めた。
「───これは何なんですか!!それに貴方は兄様のなんですか!?」
「俺か?」
男は振り返り、真那を見る。
そして、困惑の表情を作る真那に言った。
「俺は───鉄華団団長のオルガ・イツカだ。ミカは俺の一番大事な“家族”だ」
「──────」
オルガ・イツカ。それは兄様がたまに言っていた───兄様の一番大事な人。
「どうして、貴方が私に───」
こんな事をと言おうとした時、オルガは言った。
「お前、さっき言ったじゃねえか」
「えっ?」
真那はオルガのその言葉に首を傾げる。さっき言った。それはどういう───
「───“ミカと一緒に居たいってよ”」
「──────」
その言葉に真那は何も言えなかった。まさか───それだけの為に?
「ミカの家族は俺らの家族だ。だったら───家族のワガママくらい聞いてやるくらいしてもいいだろ?」
そう言って、オルガは真那が持つリングに指を差す。
「そのリングは本来、大昔に人類が失ったヤツを見つけ出す手がかりのようなモノだ。それを使ってバルバトスと一緒にミカを探し出せ。ただ、お前一人だけじゃ駄目だ。他の奴等も一緒にな。出ないとソイツは手がかりを出さねえ」
オルガはそう言って真那を見る。その目は真那に何かを期待しているような目だった。
「───ミカはまだ完全に消えちゃいねえ。そのミカを此方に引き止められるのはお前等だけだ。やるからには最後までやって皆でバカ笑いしようぜ」
そう言ってオルガは消えていった。
そして一人残された真那は、自分の手の中に収まっているリングを見る。
「これがあれば、兄様にまた会えるかもしれない。また、話せるかもしれない・・・」
一度は諦めようとしていた。けれど───その希望をあの人がくれた。
もう、失いたくない。もう、離したくない。ずっと皆と兄様と一緒に居たい。
だからこそ真那はもう一度立ち上がる。───大切なものをもう失くさない為に。
暗くなっていた空はいつの間にか太陽が顔を覗かせており、辺りを明るく照らしていた。
狂三「ここでウルズハントネタを組み込んだみたいですわね?作者さん?」
作者「まあ、元から似たような設定を考えてたからウルズハントが出てから土台か固まった感じかなー」
狂三「そういうことですの。まあ、それより真那さんが立ち直ってくれて良かったですわ」
作者「一応先に言っておくけど、まだ真那は苛めるつもりだからね?」
狂三「はい?」