デート・ア・オルフェンズ   作:鉄血

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夕弦虐はっじまるよーッ!!

なお、真那とは違って精霊組は虐めすぎると反転化しかねないのでほどほどにしますが


第九話 忘れていたもの

「耶俱矢?」

 

夕弦は真っ暗な世界で耶俱矢の名前を呼ぶ。

だが、誰もその夕弦の声に答えるものはいなかった。

 

「疑問。・・・此処はどこでしょうか?」

 

先程まで自分は耶俱矢と一緒に真那の部屋に居たはずだ。そこで彼女の机の引き出しの中に入っていた銃に触れようとした時───

 

「・・・・っ」

 

そうだ。そこから先が何も思い出せない。

耶俱矢とその銃を見てどう思ったのか。───何も思い出せない。

───と、何処からか声が聞こえた。

 

「・・・・?」

 

夕弦は振り返ると、そこにはいつのまにか扉があった。

声はその先から聞こえてくる。

 

「疑問。・・・誰かいるのでしょうか?」

 

夕弦は警戒しながらもその扉のドアノブを握り、ゆっくりと扉を開ける。

その先は薄暗い廊下だった。

そして廊下の先に微かに光が見える。

夕弦はゆっくりと薄暗い廊下を進みながらその光の先へと足を進めていった。

廊下を進み、階段を音を立てないように降りていく。

どうやら光の場所はリビングだったらしい。

夕弦はゆっくりと足音を立てぬよう、リビングへと向かった。

微かにリビングの扉に隙間が開いているのを見て、夕弦はその隙間から覗き込むように顔を近づけた。

そこで引き返しておけば、夕弦は何も知らないままで“幸せ”でいられたかもしれない。

───その扉の先には士道と“自分”がいた。

 

 

『そう言えば耶俱矢は?一緒じゃないの?』

 

『返答。耶俱矢は真那達と一緒にゲームをしています』

 

『ふーん』

 

夕弦のその言葉に素っ気なく返事を返す士道。

 

「・・・し、どう?」

 

夕弦は小さく、だが震えた声をこぼす。

この扉の先にいる士道は自分の知っている士道とは違っていた。

右腕が肩から下げられた布で固定され、右目は光が灯っていない。そして士道らしくない何処か落ち着いたような雰囲気に夕弦は身体をこわばらせる。

 

『・・・で、何の映画見る?』

 

『回答。これを見ましょう』

 

『・・・アニメ?』

 

『回答。前に耶俱矢が借りてきた映画だそうです。気になったので持ってきました』

 

『・・・へぇ。なら、それ見ようか』

 

おかしい。自分はこんな事を士道とした事はない。

では、これはなんだ?

夕弦はここで引けばいいのにも関わらず、その光景を食い入るように夕弦は見続けていた。

扉の先の夕弦は士道の横へと座ると、士道の左腕を取りそのまま身体を寄せると、士道が不思議そうな顔をする。

 

 『何やってんの?』

 

『独占。今夜だけは、士道は夕弦のものです。そして、今夜だけは、夕弦は士道のものです。────そうでしょう?』

 

『・・・好きにしたら』

 

ぶっきらぼうに答える士道に、夕弦は士道の左肩に体重をかけ、映画を見始める。

ああ───そうだ。そうだった。自分はあの時、士道と一緒に映画を見た。

耶俱矢に内緒で勝手に持ち出し、士道と一緒に見た。

夕弦はその場から動けなかった。

なぜなら、これは忘れてはいけない記憶だったのだ。忘れてはいけない筈なのに───

立ち尽くす夕弦に扉の先の二人は映画を見続ける。

そして映画が終わり、首を回す士道に扉の先の自分は言った。

 

『呼掛。────士道』

 

『ん・・・なに?』

 

『感謝。ありがとうございます。おかげで有意義な日でした』

 

『・・・そっか。ならよかった』

 

そう。あの時間はとても有意義だった。士道と二人で一緒に映画を見るだけだったのに、士道の隣に座った時の自分はドキドキと心臓が高鳴り続けていたことをどうして───

     ───どうして忘れていたの?───

 

『追加。今度は耶俱矢と一緒に見ましょう』

 

『うん。今度は三人で見ようか』

 

『予想。きっと耶俱矢は怒ります。なんで今日呼ばなかったのよ!というふうに』

 

『そうかもね』

 

苦笑混じりの会話を聞きながら扉の前で立ち尽くしていた夕弦はその場に座り込む。

 

「・・・・ああ」

 

と、夕弦は呟く。

何となく、知識で知った。

これは。

“五河士道という少年の役目を背負った彼の───三日月・オーガスの思い出なんだと”

 

『確信。耶俱矢は、普段“あんな“ですが、士道のことが大好きですよ。夕弦が言うのだから間違いありません。夕弦と耶俱矢は元々一心同体。夕弦の嫌いなものは耶俱矢も嫌いです。同じように────夕弦の好きなものは、耶俱矢も大好きなんです』

 

『・・・そっか。俺も夕弦達が好きだよ』

 

彼のその言葉が全てを忘れていた夕弦の胸に突き刺さる。

 

『送ってく。もう遅いし』

 

『返答。ではお願いします。それと、耶俱矢は、士道のことをとても気に入っています。だから────耶俱矢のこと、よろしくお願いします』

 

『うん』

 

夕弦は。

自ら望んで、顔を上げた。

眼の前に広がる忘れていた光景を、焼きつけておきたかった。目の前の少年を。私達の為にみずからを犠牲にした少年を。

扉が開かれる。

そして彼の顔は───

 

黒く───塗りつぶされていた。

 

記憶が変わっていく。士道と始めて出会った時。士道に皆とお揃いのお守りをプレゼントした時。そして士道と二人で映画を見たあの時の気持ち。

 

───夕弦ッ!

 

その瞬間、誰かが夕弦を呼ぶ声がした。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「夕弦ッ!夕弦ッ!」

 

「おい、大丈夫か!?」

 

「───かぐ、や?・・・し、どう?」

 

夕弦が目を覚ますと、視界には二人の顔がいっぱいに入っていた。耶俱矢の目には涙が浮かんでおり、どれだけ心配させたか予想できる。

 

「良かった・・・急に倒れたから心配で・・・」

 

「質問。・・・急に倒れた、とは?」

 

夕弦は小さく首を傾げると、耶俱矢は言う。

 

「覚えてない?夕弦があの銃に触った途端、急に倒れて・・・夕弦?」

 

銃と耶俱矢が言った途端、夕弦は──全てを思い出した。

 

「・・・ぁ・・・」

 

夕弦は小さく声を漏らすと、士道を見る。いや、より正確に言うなら、士道の左手首を・・・だ。

“そこには何もなかった。“士道と耶俱矢と夕弦を繋ぐソレを士道はしていなかった。

 

「夕弦?」

 

様子が可笑しい夕弦に士道が声をかけると、夕弦が震えた声を返す。

 

「質、問。・・・士道・・・私達が、どう出会ったのか、覚えてますか」

 

「えっ?確か・・・或美島で二人の勝負に巻き込まれる形で出会って、“俺が大声を上げるまでは”二人とも止めなかったよね」

 

違う、そうじゃない。士道はあの時、バルバトスを使って私達の動きを止めた。大声を上げて止めたのではない。

 

「それでは、私達が喧嘩をしたときは?士道は・・・なんて、言いって止めました?」

 

「精霊の力を失う代わりに、二人で生き残る・・・だったかな。あの時のこと焦っててあまり覚えてないけど、それは覚えてるよ」

 

そう言う士道に夕弦は顔を俯かせた。

違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。何もかもが自分の知る士道と違う。

 

今だって二人は“一緒に生きている“。なら、そんなどうでもいい決闘なんか止めて二人でこれからも生きていけばいいじゃん

 

士道はあの時、そう言った。真の八舞になることをどうでもいいと一蹴りしたあの士道と違う。

 

「質問。・・・これ、が最期です。・・・士道、“私達の作ったお守り”は何処にありますか」

 

これが最期。自分の知る士道はそのお守りをずっとつけていた。学校にいるときも、お風呂に入るときも、寝るときも。肌身離さずずっとつけていた。

だが、士道の言葉は夕弦の最後の期待を裏切るものだった。

 

「お守り?“二人からお守りは貰ったことない”よ?」

 

その言葉に───“ビシリ”と夕弦の何かにヒビが入る音が嫌にはっきりと聞こえた。




狂三「よりにもよって、原作とはかけ離れたこのシーンを選びます?作者さん?」

作者「人の心をへし折るのはね、まずは追い詰めることなんだよ。まあ、追い詰め過ぎるとヤケ起こして無敵の人になることあるけど」

狂三「・・・夕弦さんは自分で自分の首を締めましたわね」

作者「夕弦の場合は完全な自爆だから・・・」
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