デート・ア・オルフェンズ   作:鉄血

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ランキング50以内に、入っててビックリした鉄血です。
来週、投稿出来るか分からないので投稿します。
三日月ぽくなかったらごめんなさい。

「この声・・・あんたチョコの隣の」

「ガエリオ・ボードウィンだ!!」

「ガリガリ?」

「貴様わざとか!!」

三日月・オーガス

ガエリオ・ボードウィン


第三話

あの後、十香の荷物を全て空き部屋に移動させた士道は流し台に溜まった皿を洗って、自分の部屋に戻っていった。

時計の針を見ると、もう十一時を回っていた。

十香と琴里は、既に各々の部屋で寝ている状態だ。

普段はこの後にトレーニングを行っているのだが、今日はもう遅い。

 

「明日も早いし、今日はもう寝るか」

 

士道はそう呟いて慣れないベッドに入り、眠りに落ちた。

 

『・・・里。琴里、起きてくれ。時間だ』

 

皆が寝静まった深夜。右耳の鼓膜が震わされる感覚に、琴里は眉をピクリと動かす。

 

「ぅ・・・んー・・・」

 

だが、それで起きるほど、五河琴里の眠りは浅くはない。

ベッドの上で身をよじると、タオルケットを身体に巻き付けるように寝返りを打ち、再びすやすやと穏やかな寝息を立て始める。

 

『・・・琴里。琴里。寝直さないでくれ』

 

「んー・・・・・」

 

琴里は手の甲でショボショボの目を擦り、のろのろと身を起こした。

 

「なぁーにぃ・・・おにーちゃぁん・・・」

 

『・・・悪いがシンではない。私だ、令音だ』

 

小さく首をひねり、ふぁぁぁぁぁぁああ・・・と大きなあくびを一つ。

 

「令音ぇ・・・?どぉしたの、こんな時間に・・・」

 

琴里は片手で目を擦りながら、枕元をぺしぺしと叩き、手探りで携帯電話を発見すると、画面を点灯させて表示された時刻に目を這わせた。

午前三時二十分。大人も子供も皆、寝ている時間だ。

 

『・・・準備ができた。指示を頼む』

 

言われて、琴里は、「あ」と小さく口を開いた。

 

「ん・・・そっか・・・起こしてって頼んでたっけ・・・」

 

琴里は令音のように頭をぐらぐらと揺らしながら、再び枕元をぺしぺしと叩いていった。

そしてそこに置かれていた一口サイズの棒つきキャンディを手に取ると、雑に包装を破りとって口に放り込んだ。

 

「──────っ!」

 

瞬間、舌の上で爆発が起こるかのような感覚が脳に伝わり、琴里は全身をブルブルと震わせた。同時に、スーッとした刺激的な香りが鼻腔を通り抜ける。

琴里は黒のリボンを手に取ると、髪をいつものツインテールに括った。

 

「あー・・・目が覚めたわ。悪いわね、令音」

 

『・・・構わないさ。───早速だが、報告だ。シンが熟睡状態に入ったよ』

 

「そう。それで、要員の方は?」

 

『・・・言われたとおり待機させてあるよ。いつでもいける』

 

「けっこう」

 

琴里はそう言うと、足音を殺して部屋を出、階段を降りて玄関までたどり着いた。

そして、カチャリと音をさせて、錠を開ける。

玄関前には、黒い戦闘服に目出し帽という、特殊部隊みたいな格好をした男たちが数名、待機していた。

「ターゲットは二階よ。頼むわ」

 

「了解」

 

男たちは琴里の指示に従い、足音なく五河家に侵入していった。

 

「・・・さてと、うまくいくかしら?」

 

琴里はそう呟きながら士道の部屋を見る。

いかんせん、昼間の作戦は全て失敗に終わったのだ。

士道の天然さというか、なんというべきか、あれやこれやと回避されて全て空回りで終わっている。

士道が寝ている今なら、この作戦は成功するだろう。

そう思いながら、琴里は背を向けた時────。

 

ダァァァン!!

 

まるで重い物を地面に叩きつけるような音と数人の男のうめき声が士道の部屋から聞こえてきた。

 

「・・・嘘でしょ?」

 

琴里は顔をひきつらせながら士道の部屋に向かう。そしてその部屋の光景に琴里は絶句した。

琴里の目に映っていたのはあり得ない光景だった。

数人いた男の内二人は、床に叩きつけられて伸びていた。

そして後の一人は・・・・。

 

「ガ・・・・ッ!?ガハ・・・助け!?・・・・」

 

「・・・・・・」

 

士道に片手で首を締め上げられ、壁に叩きつけられるように密着し、もがき苦しんでいた。

士道はその状態の男を見ても表情を変えないまま、不機嫌そうな顔でその男を見ている。

 

「ちょっ!?士道!?待ちなさい!!今すぐ手を離して!?」

 

琴里はその様子を見て、士道にすぐに止めるよう慌てて言った。

 

「・・・ん?」

 

琴里の言葉に士道はすぐに男の首もとから手を離すと、琴里を見て言う。

 

「どうしたの?琴里」

 

「どうしたの、じゃないわよ!?どうしてこんなことしたの!?」

 

琴里の言葉に士道はすぐに答える。

 

「いや・・・コイツらが俺に何かしようとしてたから・・・」

 

士道がそう言うと、琴里はすぐにこの手のネタばらしをする。

 

「士道待ってそれはスタッフ!?〈ラタトスク〉のスタッフだから!?」

 

「・・・スタッフ?じゃあ・・・」

 

士道は琴里の言葉を聞き、先程まで締め上げていた男を見て、状況を理解した。

 

「・・・あの・・・すみませんでした」

 

「・・・何が・・・すみませんでしただ・・!」

 

男は士道に拳を振りかぶるも、士道はそれを横へずれて回避する。

そして再び、警戒するように士道はその男を見る。

すると琴里はその男に言った。

 

「・・・ごめんなさい。今は下がって」

 

「・・・了解」

 

琴里の言葉にその男は士道の部屋から出ていく。

そして琴里は士道に言った。

 

「・・・はぁ、これじゃあ訓練どころの話じゃないわね」

 

「・・・えっと・・・さっきはごめん」

 

士道は琴里にそう言うが、琴里は別に気にしていないという風に言う。

 

「別に気にしなくていいわよ。先に言わなかった私も悪かったし・・・」

 

琴里も反省するように士道に言った。

 

「次は言ってくれたらちゃんとするよ」

 

「・・・ええ、次はそうするわ」

 

士道の言葉に琴里は頭を悩ませながらも、他の事を考えていた。

今のままだときっといつか、絶対に不味い事が起きるという予感が琴里の中で渦巻いていた。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

「おーう五河。・・・て、どうしたんだ、おまえ」

 

朝、士道は教室に入るなりかけられたのは、殿町の怪訝そうな声だった。

 

「・・・ん、なに?」

 

「・・・いや、大分今のおまえかなりピリピリしてるからさ、なんかあったのかってな」

 

「何にもないよ。ただ、夜中に面倒な事があっただけ」

 

士道がそう言って鞄を担ぎ直すと、珍しく本を読んでいる殿町に聞いた。

 

「そういえば、殿町は何読んでるの?」

 

殿町は、シノ辺りが好きであろう本を深刻そうに眺めていたのである。

 

「ああ、これか。───そうだ、五河にも訊いておきたいんだが・・・」

「ん?」

 

士道が首を傾げると、殿町はいつになく真剣な様子で言葉を続ける。

 

「ナースと巫女とメイド・・・どれがいいと思う?」

 

「・・・・は?」

 

よく分からない単語に士道は間の抜けた声を出す。

 

「読者投票で次号のグラビアのコスチュームが決まるらしいんだが・・・悩むんだよなあ」

 

「・・・あっそ」

 

グラビアだとかコスチュームだとか分からない言葉を言う殿町に、士道は興味をなくして自分の席に向かおうとする。と、殿町が此方に雑誌を突きつけてきた。

 

「で、おまえはどれがいいと思う!?」

 

「・・・ん?・・・じゃあ、これ」

 

士道が適当に指を指すと、殿町がピクリと眉を動かした。

 

「どうしたの?」

 

「───まさかおまえがメイド好きだったとはな!悪いが俺たちの友情はここまでだ!」

 

「・・・あっそ」

 

士道は殿町にそう言って、自分の席に歩いていく。

 

「あっ、おい、どこに行くんだ五河!」

 

「・・・友情はここまでなんでしょ?」

 

「なんだよノリ悪すぎだろおーい。メイド好きとナース好きが手を取り合う。そんな世界があってもいいとは思いませんかー」

 

「・・・俺にそんな事言っても分からないって殿町は知ってるだろ。大体その"なーす"だとか"めいど"とかあんまり良く分かんないし」

 

士道はそう言って自分の席に鞄を置いた。

その際、既に隣の席に着き、分厚い技術書を読んでいた折紙が、ちらりと士道に目を向けてくる。

 

「・・・・・」

 

「・・・・なに?」

 

こちらを見てくる折紙に士道は眉間を細めていうと、折紙の方から挨拶をしてきた。

 

「おはよう」

 

「・・・・おはよう」

 

士道は彼女の挨拶にぶっきらぼうに返すと、教室から出ていこうとする。

すると後ろから抑揚のない声で、折紙が声をかけてきた。

 

「メイド?」

 

「・・・あん?」

 

どうやらさっきのやり取りを聞いていたようだ。

士道はその答えに言った。

 

「・・・別に、アンタには関係ないだろ」

 

「そう」

 

折紙はそうとだけ言って、再び書面に視線を戻した。

 

「おはよー」

 

と、次いで殿町が手を振るが、折紙はぴくりとも顔を動かさなかった。

殿町は大仰に肩をすくめ、士道の脇腹をぐりぐりと押してくる。

 

「毎度のことだけど、なーんでおまえだけ挨拶してもらえんだよー。くぬっ、くぬっ」

 

「知らない」

 

鬱陶しげに殿町を振り払い、席に着く。

と、そこで教室の扉がガラッと開かれ、十香が入ってきた。

無論十香は今五河家に住んでいるわけだから、通学路もまったく同じなのだが、一緒に登校すると隣にいる折紙に勘ぐられそうだったため、家を出る時間をずらしたのだ。

ただでさえ、十香が転入時に発してくれた台詞が、未だに尾を引いているので、新たな爆弾を投下されてはたまらなかった。

 

「・・・・・」

 

十香は無言のまま士道の右隣の席に座ると、視線を合わせぬまま唇を開いてきた。

 

「・・・その、昨日は世話になった」

 

昨日の引っ越しの件の事だろう。士道はなんとも無いように頭をかく。

 

「ああ、別にいいよ。ちょうどいい運動になったし」

 

「む?そうか」

 

十香が小さくうなずく。そこでようやく───士道は気がついた。

 

「・・・ん?」

 

二人の会話を聞いた数名のクラスメートが、興味深げな視線を送ってきているのに。

しかし、十香はまだそれに気づいていないらしい。

 

「・・・なに?」

 

士道はそう言って周りのクラスメートを見る。

が、周りは何も言わず視線を士道から反らした。

 

「・・・・?」

 

士道は目を細めながら、視線を十香に戻す。

 

「・・・・・」

 

なんだか、すぐにボロが出そうな気がする。士道は少しだけ息を吐いた。

───そして、その懸念は以外と早く的中してしまうことになるのだった。




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