どうしても仕事の関係上、今の時期に休みが余り取れないので投稿が遅れました。
もしかしたら、暫くはこんな事があるかもしれませんが気長にお待ちください。
ソード・オラトリア・オルフェンズも地味道に投稿していきますのでよろしくです。メインはこっちだけど。
では、どうぞ!
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「ああー!!ヤマギやべぇ!スラスターのガス補給するの忘れたー!」
「ええっ!?」
「どうしよう・・・」
ヤマギ・ギルマトン
ナディ・雪之丞・カッサパ
士道が画面に目をやると、今し方少女──〈ハーミット〉と呼ばれる精霊がいた場所に煙が渦巻いていた。
恐らく、ミサイルか何かを撃ち込まれたのだろう。
そしてその周囲には、物々しい機械の鎧を着込んだ人間たちが数名、浮遊していた。
陸上自衛隊・対精霊部隊。通称AST。
琴里たちの組織〈ラタトスク〉とは違い、武力を以て精霊を排除する事を目的とした特殊部隊である。
と、煙の中から、小さなシルエットがぴょん、と飛び出した。〈ハーミット〉である。
彼女は左手のパペットを掲げるような格好のまま宙を舞うと、周囲を固めるAST隊員たちの間を抜けるように身を捻り、空に躍った。
だが、AST隊員たちはすぐにそれに反応すると、一斉に〈ハーミット〉を追跡する。
そしてそのまま、身体中に装着していた武器から、夥しい量の弾薬を発射する。
「・・・当たるね」
士道はそう呟くと、画面越しの警告には何の力もなく、AST隊員の放った無数のミサイルや弾丸は、無慈悲に〈ハーミット〉の身体に吸い込まれていった。
そして再び、〈ハーミット〉は反撃しようとはせず、ただ逃げ回るだけだった。
「・・・攻撃しない?いや、出来ないのか」
士道は前にあった彼女の性格を思いだす。
人も殺せないような、タカキみたいな性格だ。
だったら逃げ回るのも仕方ないのだろう。そして士道のその呟きに琴里は言う。
「ええ。いつものことよ。〈ハーミット〉は精霊の中でも極めて大人しいタイプだし」
「・・・へぇ」
士道は興味などないように答えると、再び画面を見る。
ぴょんぴょんと飛び回って素早い動きでASTから逃れようとする〈ハーミット〉に、ミサイルや銃弾を撃つAST達を見て士道は言った。
「琴里」
「何よ」
「精霊の力がなくなれば、アイツもASTに狙われる事はなくなるの?」
士道が言うと、琴里は眉をピクリと動かして、士道へ視線を向けて言った。
「ええ。───その通りよ」
「ふーん。じゃあ、さっさと行くか。琴里、準備お願い」
「───ふふ」
士道はそう言うと、琴里はどこか嬉しそうに、キャンディの棒をピンと立てた。
「それでこそ───私のおにーちゃんよ」
「別に。仕事だよ」
士道はそう言って身体の向きを変えて歩き出す。
琴里も艦橋正面へ向きを変え、艦橋下段のクルーたちに向かって声を投げた。
「総員、第一級攻略準備!」
『はッ!』
クルーたちが一斉にコンソールを操作し始める。
琴里はそんな光景を眺めながら、唇を舐めた。
「さあ───私たちのデートを始めましょう」
◇◇◇◇◇
「───なあ、タマちゃん先生よ」
高校地下に設けられた大型シェルターに避難していた十香は、そわそわする心地を抑えるようにスカートの裾をきゅッと握りながら、すぐ隣に座っていた珠恵に声をかけた。
「や、夜刀神さんまでその呼び方・・・」
先ほどよりは幾分か落ち着いた様子で、珠恵が顔を向けてくる。
しかし十香は、抗議めいた視線など気にもとめずに、言葉を続けた。
「先ほどの音は、一体なんなのだ?ここは一体どういう場所なのだ?」
「な、何言ってるんですかぁ。さっきのは警報ですよ、空間震警報。空間震が起こる可能性があるから、みんな地下シェルターに避難してるんです。ここにいれば安全ですからね」
「空間震・・・?なんだそれは」
十香が首をかしげると、タマちゃんはさらに予想外といった表情を作ってきた。
「え?空間震ですよ?知らないんですか?」
「・・・・むぅ」
言われて、十香は気まずげに口を結んだ。
どうやらその空間震とやらは、誰もが知っている言葉のようだ。
もしかしたらまずいことを訊いてしまったかもしれない。十香は士道から余り目立つ言動を控えるように言われているのだ。極端な無知は、晒さないに越したことはない。
と、そんな沈黙をどう受け取ったのか、タマちゃんが慌てたように手を振ってきた。
「あ、いえいえ、大丈夫ですよ。そうですよね、知らない人だっていますよね」
「・・・ぬ、すまん」
タマちゃんはもう一度「いえいえ」と言うと、指をピンと立ててきた。
「空間震っていうのは、突発性広域災害の総称です。まあ、簡単に言えば、ある日突然世界のどこかで、どんっ、と爆発が起こってしまうんですよ。気圧変化説やプラズマ説など、様々な説が唱えられていますが、原因は解明されていません」
「───爆発、だと?」
タマちゃんの説明に、十香は眉をひそめる。
「はい。今までで一番大きかったのは、およそ三十年前。ユーラシア大空災ですね。実に一億五千万人あまりの死傷者を出した、有史以来最悪の大災害です」
「な、なんだそれは、危ないではないか!」
「ええ。だからみんなシェルターに避難するんです。───まぁ、現在はそこまで大きな空間震は起きていませんが、この近辺は、数年前から小規模な爆発が頻発しているんです」
一通り説明をしたタマちゃんの言葉に、十香は眉根を寄せた。
「な、ならシドーはそんな危険なときに、どこへ行ったのだ?」
「え・・・?え、ええと・・・それは・・・・」
珠恵は、困ったように眼鏡を動かしながら、周囲に座り込んだ生徒たちを見渡した。
「・・・・・・」
十香は無言のまま、一層強くスカートの裾を握りしめる。
「・・・・・シドー」
どく、どく、と胸の辺りから音が聞こえてくる。
なぜかわからないが・・・とても嫌な予感がした。そう。どこか遠くへ行ってしまうような感覚。
そして、動悸が最高潮に達したとき。
「・・・・・っ」
十香は、バッと顔を上げた。
「え・・・・と。だ、大丈夫ですよ。ちょっとこの辺りには見えませんけど・・・きっと忘れ物か何かを取りに戻っただけだと思いますし、きっともうシェルターのどこかに・・・・」
と、シェルターの中を見渡していた珠恵が、十香に視線を戻すと。
「あれ・・・・?や、夜刀神さん?」
そこに、十香の姿はもうなかった。
◇◇◇◇◇
「・・・・ここでいいの?」
〈フラクシナス〉下部に設けられた転送装置で地上まで送られた士道は、右耳に装着した小型のインカムに向かって声を投げた。
『ええ。精霊も建物内に入ったわ。ファーストコンタクトを間違わないようにね』
「分かってる」
士道はそうと言って、インカムから手を離す。
そして、周りを警戒しながら昨日あった〈ハーミット〉を探し始めた。
士道は今、商店街の先に聳える大型のデパートの中にいた。
なんでも〈ハーミット〉は、比較的出現回数が多い精霊らしく、その行動パターンの統計と、令音の思考解析を組み合わせれば、おおよその進路に目算がつくのだという。
無論、ASTの出方によっては微妙に進路が変わってしまう可能性もあったが、そのときはまた士道を回収して、次の予測地点に向かえばいいとのことだった。
ASTの主要装備であるCR─ユニットは、屋内での戦闘は不向きである。
無論、十香のときのように建物を破壊して精霊をあぶり出そうとしてくる可能性もあったが、とりあえずしばらくの間は、精霊が建物内から出てくるのを待つだろう。
そしてその間が、戦場において士道が精霊と会話するための貴重な時間なのであった。
最初の時は、士道がバルバトスで街中に降りてASTを片付けてから接触という手段もあったのだが、いかんせん士道がバルバトスを顕現させると、バルバトスの巨体による被害、都市部機構の停止、通信機の使用不可、電気機器などの電気を使うものが軒並み機能しなくなってしまうので、よっぽどのことがない限りはバルバトスの使用を許可されていなかった。
その代わりに、士道には護身用に拳銃を渡されていた。
実弾と麻酔弾、両方を渡され今この場へと立っている。
「バルバトスが使えないから、暫くコイツでやるしかないか」
士道はカチャっと手の拳銃のセーフティをいれた後、実弾をセットして懐のポケットへと入れる。
「・・・・んじゃ、探すか」
士道がそう言った瞬間に右耳のインカムから琴里の声が聞こえてきた。
『───士道。〈ハーミット〉の反応がフロア内に入ったわ』
「・・・・・分かった」
士道が琴里にそう言った瞬間。
『───君も、よしのんをいじめにきたのかなぁ・・・?』
「・・・・・!!」
急に頭上からそんな声が響き、士道は懐の銃を直ぐ様取り出し、セーフティを解除した後、頭上へと向ける。
そこには、件の少女〈ハーミット〉が、重力に逆らうような逆さの状態で浮遊していた。
『 駄目だよー。よしのんが優しいからってあんまりおイタしちゃ。・・・・って、んん?』
と、少女は逆さになっていた身体を空中でぐるんっ、と元に戻して、床に降りたった。
「なんだ、アンタか」
士道は敵でなかった事を知り、拳銃を上に上げた後、足元に銃口を向けた。
そんな士道に、彼女はパクパクとパペットの口を動かす。
『ぉおやぁ?誰かと思ったら、ラッキースケベのおにーさんじゃない』
士道の顔をまじまじと見たのち、パペットが器用にぽん、と手を打ってくる。
「そのらっきーなんとかってのは、あんまり分かんないけど、久しぶり」
士道は気にしてないように彼女に言った。
すると、ハーミットはそんな士道にパペットを士道の顔に視線を合わせて口をパクパク動かす。
『やー、しかしラッキースケベのおにーさん。珍しいところで会うねー。ぁっはっは、おにーさんみたいなのは歓迎よー?どーもみんな、よしのんの事が嫌いみたいでさー。こっちに引っ張られて出てくると、すーぐチクチク攻撃してくるんだよねぇー』
言って、パペットが、またも笑ってみせる。
「そう言うアンタはあんまり気にしてないみたいだね」
士道がそう言うと、琴里もインカム越しから聞こえてくる。
『随分とまあ、陽気な精霊ね』
右耳に、士道が思ったままの言葉が聞こえてくる。
やはり、琴里もそう思ったらしい。
そしてふと、〈ハーミット〉の言葉の中に、気になることがあったのでハーミットに言った。
「なあ・・・よしのん、ってなに?」
士道が言うと、パペットは驚きを表現するように、口を大きく開けた。
『ああっ、なんてみすていくっ!よしのんともあろう者が、自己紹介を忘れるだなんてっ!よしのんはよしのんのナ・マ・エ。可愛いっしょ?可愛いっしょ?』
と、パペットが士道にずずいっと顔を近づけてくる。
「・・・う、うん」
やたらハイテンションなパペットに気圧されるように士道は頷いた。
すると、右耳に琴里の怪訝そうな声が聞こえてきた。
『────よしのん、ね。ふうん、この精霊は十香と違って、名前の情報を持っているのね』
「そうだね」
言われてみればその通りだ。十香は、名前を持っていなかった。
『十香』いうのは、士道がつけた名前であり、彼女自身が持っていた名前ではない。
と、パペットが再びずずいっ、と顔を寄せて来てその思案は中断された。
『ぅんで?おにーさんはお名前なんてーの?』
「五河士道」
士道はぶっきらぼうによしのんに言う。
『士道くんねー。カッコいい名前じゃないの。ま、よしのんには勝てないけどねぇー』
「あー、うん」
士道はそう曖昧に言ってよしのんを見て言った。
「なぁ、何でアンタはこんなトコにいるの?」
『んー、あの飛んでる人達から逃げてきてさー、建物の中にいればあんまり狙われないから此処にいるんだよねー』
「そうなんだ」
よしのんの問いに士道はそう答えて、本題に入った。
「んじゃ、どうせ此処にいても暇なんだろ?だったら一緒に見てまわる?」
士道がそう言うと、よしのんはパペットの小さな手をバタバタさせて言ってきた。
『ほっほー!いいねー。見かけによらず大胆に誘ってくれるじゃーないの。うふん、もちろんオーケイよん。というか、ようやくまともに話せる人に出会えたんだし、よしのんからお願いしたいくらいだよー』
言って、カラカラと笑う。
「・・・・調子狂うな・・・」
士道は琴里やよしのんに聞こえない声で呟きながら、『よしのん』とともに、デパートの中を歩いていった。
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