デート・ア・オルフェンズ   作:鉄血

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ちょっと短いですが、キリがいいので投稿です。
三日月ぽくなかったらごめんなさい。
ソード・オラトリア・オルフェンズの投稿は出来たら今週中か、来週になります。

では、どうぞ!!


クジャン家当主、イオク・クジャン。

レギンレイズ、でるぞ!

このイオク・クジャンの勇姿、その目に刻め!


グシオンに潰されたペシャン公


第六話

「・・・・・・・」

 

折紙は、全身にワイヤリングスーツと、ありったけの弾薬を積んだアウトレンジ装備を纏った臨戦態勢で、デパートの上空を浮遊していた。

周囲には、同じ装備のAST隊員が数名浮遊し、あたりに気を張っている。

AST──対精霊部隊は、陸上自衛隊の特殊部隊の中でも、ひときわ特殊性の高い部隊だ。

空想を現実に再現する装置・顕現装置を用い、世界を殺す災厄たる精霊に対抗するための部隊。

しかし、顕現装置を戦術的に運用するための装備───戦術顕現装置搭載ユニットを使用することが出来る人間が限られているため、折紙のようなイレギュラーな隊員が存在するのだった。

駐屯地外に住居を構え、あまつさえ学校に通いながら、有事の際にのみ出動する。

扱いとしては、出動頻度が極端に高い予備自衛官のようなものだった。

 

「・・・・・」

 

周囲に展開されたテリトリーの表面を、ひっきりなしに雨粒が叩いている。

精霊───〈ハーミット〉がビル内に侵入してから、およそ一時間が経とうとしていた。

しかし、〈ハーミット〉は屋内に潜伏したまま、今なお姿を現そうとはしない。

 

『───随分と粘るわね』

 

と、通信機を通して、部隊の隊長である日下部燎子の声が聞こえてきた。

 

『〈ハーミット〉にしては珍しいわね。こんなに一ヶ所に留まっているなんて。いつもはもっとビュンビュン飛びまわってるイメージだったわ』

 

そう。〈ハーミット〉は、行動パターンのほとんどが逃げの一手なのである。

折紙たちがいくら攻撃を仕掛けようとも、反撃をしてくることもなく、逃げ回るだけ。

それが、もし屋内でロストまでの時間をやり過ごす知恵を付けたのだとしたら───折紙にとってはあまり面白くない事態だった。

 

「攻撃許可は」

 

静かな声で折紙が問うと、燎子が嘆息めいた声を返してきた。

 

『────一応要請はしてみたんだけどね。待機だってさ』

 

「建造物なら倒壊しても、修復は可能」

 

『・・・・ま、合理的に考えればそうなんだけれどね。そう簡単にはいかないものなのよ。復興部隊動かすのだってタダじゃないし。───第一、前回の〈プリンセス〉クラスならまだしも、今回のターゲットは弱虫〈ハーミット〉よ?』

 

「・・・・・・」

 

〈プリンセス〉。

 

その識別名に、折紙は小さく眉を動かした。

どんないきさつがあったのか知らないが、その識別名を持つ精霊は今、人間の少女───夜刀神十香として折紙の学校に通っているのである。

無論、折紙は十香の存在を確認するなり、燎子に報告をした。

だが、なぜか彼女から精霊の反応が確認されなかったため、攻撃許可は出なかったのである。

無理言って戸籍なども調べてもらったが、そちらからも不審な点は発見されなかった。

少なくとも現段階において───折紙としては不満極まりないものの───彼女は折紙たちの守るべき日本国民であったのだ。

と────

 

「・・・・・っ?」

 

折紙は不意に目を細めた。

一瞬、視界の端に、美しい闇色の髪が映ったように感じたのである。

そう。まるで十香のそれのような。

下方───ひとけの無くなった、雨の降りしきる大通りに顔を向ける。

 

「・・・・・」

 

だが、十香の姿は確認出来なかった。

折紙は無言でかぶりを振った。どうもナーバスになっているらしい。

こんなことで精霊を取り逃しては目も当てられない。

折紙は細く息を吐くと、さらに気を張って警戒を続けた。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

──『よしのん』と遭遇してから、約一時間くらいか。

士道と『よしのん』は、デパートの中を歩き回りながら、口数の少ない士道と『よしのん』は会話に花を咲かせていた。

もちろん時折琴里から指示が飛ぶのだが───妙に笑いの沸点が低いらしい『よしのん』は、どんな些細なことでもカラカラと笑っていた。

実際、彼女の精神状態をモニタリングしている〈フラクシナス〉艦橋でも、いい数値が出ているらしい。

 

『───ふむ、存外いい感じじゃない』

 

琴里が、そんなことを言ってくる。

 

『そもそもが人なつっこい性格なのかしらね。好感度も上々よ。今すぐキスしようっていっても、拒まれはしないんじゃないの?』

 

「・・・まだ早いんじゃないの?」

 

冗談なのか本気なのかわからない言葉に、士道は小声で言う。

・・・・・だが。

 

『やっぱりお喋りするのはたーのしーいねー。どうもあの人達は無粋でさー』

 

「ふーん」

 

パペットがパクパクと口を開きながら言うのに、士道は余り興味がない調子で返す。

・・・・だが、なんというかやはり気になることはあった。

会話が弾むのは願ったり叶ったりではあるし、数値的にも機嫌や好感度が上がっているのなら、何も問題はない。・・・・はずなのだが。

 

「・・・・・」

 

士道は無言で視線だけをパペットを操っている少女の方を見やった。

昨日会った時も、そして今日も。雄弁に喋るのはパペットの腹話術だけで、本人の口はぴくりとも動いていないである。

まるで、人形のようだった。

 

『────おぉ?』

 

「・・・・・ん?」

 

と、不意にパペットがこちらを向くのを感じて、士道はよしのんを見る。

 

『すっごーい!何かねありゃー!』

 

パペットが興奮気味に手をバタつかせると、その場からとてとてと走っていく。───まあもちろん、走るのは本人の足なのだが。

『よしのん』が興味を持ったのは、玩具売り場の一角に組まれていた、お子様用の小さなジャングルジムだった。

やたらカラフルな強化プラスチックのお城に、両足と右手だけで器用に上っていく。

そして頂点に到達すると────

 

『わーはは、どーよ士道くん。カッコいい?よしのんカッコいい?』

 

なんて、声を弾ませて訊いてきた。

 

「そこに立ってると危ないよ」

 

あくまで子供用の室内用ジャングルジム。そこまで大きくないとはいえ、てっぺんから落ちては怪我をするだろう。

いや、彼女が空を飛べるというのは分かっているのだが、どうも士道のイメージでは昨日のドジした彼女イメージが強かった。

士道はそう言って、ジャングルジムに近づく。

しかし『よしのん』は不満げにパペットの手を振った。

 

『んもうっ、カッコいいかどうかって訊いてるのにぃ───っと、わ、わわ・・・っ!?』

 

「────!!」

 

その動作でバランスを崩してしまったのだろうか、『よしのん』はジャングルジムの上で踊るように手を振ってから、士道の上に落下してくる。

士道は落下してくる『よしのん』を両腕でキャッチするが、その衝撃で士道と『よしのん』の顔が軽くだが、ぶつかった。

そのぶつかった衝撃で─────

 

「─────ん?」

 

ちょうど、口のあたりに、妙に柔らかい感触があった。

数秒のあと、今自分の状況を直ぐ様理解した。

 

『・・・・わぉ。やるわね、士道」

 

さすがに琴里も予想外だったのだろう。驚いたような声を響かせてくる。

それはそうだ。だって今士道は───上から落ちてきた少女と、ばっちり口づけを交わしてしまっていたのだから。

 

『・・・・・・・・』

 

───無言のまま、『よしのん』を士道は降ろす。

その時、ようやく二人の唇が離れた。

これで、『よしのん』の力は封印できたはずである。

だが、何故だろうか、見た目が変わることなく通常のままだった。

───と、そこで再びインカムの向こうから、けたたましいサイレンが鳴り響いてきた。

 

「・・・なに?」

 

眉をひそめ、士道は声を発する。

この音は、精霊の機嫌が悪くなると、鳴るものだった筈だ。と、いうことは、『よしのん』は今───。

 

『あったたたぁー・・・ごめんごめん、士道くん。不注意だったよー』

 

しかし『よしのん』は、パペットをパクパクと動かすと、平然とそんな声を発して来ている。

ならこのアラームは一体・・・・。

すると、耳元のインカムから琴里の声が何時になく焦った様子で言ってくる。

 

『───士道、緊急事態よ。・・・・それもたぶん最強最悪の』

 

「・・・は?何が・・・」

 

と、後方から、ザッ、という足を踏みしめるような音がして、士道は首を後ろへと向ける。

そこには───意外過ぎる、顔がそこにあった。

 

「あれ?十香・・・?」

 

士道は意外そうな顔をして、そこに立っていた少女の名を呼んだ。

そう、そこにいたのは、来禅高校の地下シェルターに避難している筈の十香だった。




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