デート・ア・オルフェンズ   作:鉄血

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久しぶりの投稿!

「・・・撃って良いんだよな?」

「当たり前じゃん」

ガチムチと三日月


第七話

士道とよしのん、そして十香がいるこの空間が凄まじい重圧がかかっているのを士道は感じた。

そして十香が何かしらに怒っているのも。

雨に当たりながら走って来たのだろうか、その全身はびしょ濡れで、全力疾走してきたかのように、荒く肩で息をしている。

 

「─────シドー」

 

士道の疑問を遮るかのように、十香が身体をゆらりっ、と揺らしながら声を発してくる。

なぜか、アトラが怒った時よりも凄まじく威圧を感じる。

そんな十香に、士道は何ともないように言った。

 

「なに?」

 

すると十香は、肩をフルフルと震わせながら士道に言う。

 

「・・・・今、何をしていた?」

 

「・・・・何って・・・えーっと、お出かけ?」

 

士道の誤魔化しに、十香は気にいらなかったのか、まるでぐずる子供のような表情を作ると、のどの奥から震える声を絞り出した。

 

「───あ、あれだけ心配させておいて・・・」

 

「・・・ん?」

 

「女とイチャコラしているとは何事かぁぁぁぁっ!」

 

だんッ────!

 

十香が叫び、足を打ち付けた瞬間、その位置を中心に床がベコンッ!と陥没し、周囲に放射状の亀裂が入った。

 

「どうなってんの?」

 

突然の事態に、士道は呟く。

普通の女子は、地団駄を踏んだくらいで床をへこませたりはしない。

無論十香は普通ではないのだが、今精霊としての力はないはずで、身体能力は常識的な範囲内のはずだった。

 

「どういうこと?琴里」

 

士道は冷静にインカムで問うと、琴里がため息交じりに返してくる。

 

『だから・・・前々から言ってたでしょ。士道と十香の間にはパスが通ってるから、十香の精神状態が不安定になると、力が少し逆流する恐れがあるって』

 

「へぇ・・・んじゃ今、十香の精神状態は不安定って事?」

 

『ええ。状態が悪化する前に、なんとか十香の機嫌を直しなさい』

 

「・・・・分かった」

 

そんなことを言っている間に、十香は士道と『よしのん』のもとに到達した。

そして鋭い視線で二人を交互に見たあと、「むむむ・・・」と唇を引き結んでから、士道にキッ!と視線を向け、『よしのん』にはビッ!と指を向けた。

 

「・・・シドー。おまえの言っていた大事な用とは、この娘と会うことだったのか?」

 

「あー、うん」

 

士道は十香に正直に答える。

どのみち何時かは話さないといけない事だったのだ。なら、今話した方が幾分か楽だろう。

士道の返答に気に食わなかったのか、十香はキッ!と士道を睨み付けてくる。

と、そこで・・・

 

『・・・いやぁー、はやぁー・・・そぉーいうことねぇ・・・』

 

今の今まで十香の登場にキョトンとしていた『よしのん』が、甲高い声を出した。

一体どうやっているのかわからないが、ウサギの顔が、いたずらっぽい笑顔を作っている。

 

『おねーさん?ええと───』

 

「・・・十香だ」

 

パペットに言われ、憮然とした様子で十香は返す。

 

『十香ちゃん。君には悪いんだけどぉ、士道くんは君に飽きちゃったみたいなんだよねぇ』

 

「な・・・・っ」

 

「・・・・は?」

 

十香は息を詰まらせ、士道は訳がわからないという表情を作りながら、パペットの方に目を向ける。

 

『いやさぁ、なんていうの?話を聞いていると、どうやら十香ちゃんとの約束をすっぽかしてよしのんのとこに来ちゃったみたいじゃない?これってもう決定的じゃない?』

 

「・・・・っ」

 

十香が肩をぴくりと揺らし、今にも泣き出してしまいそうな顔を作る。

 

「アンタ・・・何言ってんの?」

 

士道がパペットにそう言うが、十香がそんな士道にキッ!とした視線を向けて言った。

 

「シドーは少し黙っていろ」

 

「分かった」

 

有無を言わせぬ迫力を発しながら、自分を睨み付ける士道はすぐに返答した。

十香の目を見ればすぐに分かる。

テイワズのボスであったマクマード・バリストンのような鋭い目だ。あれはテコでも動かないだろう。

パペットはそんな様子が愉快で仕方ないというような調子で、言葉を続けた。

 

『やー、ねー、ごめんねぇ、これもよしのんが魅力的すぎるのがいけないのよねぇ』

 

「ぐ、ぐぐ・・・・っ」

 

『別に十香ちゃんが悪いって言ってる訳じゃぁないのよぅ?たぁだぁ、十香ちゃんを捨ててよしのんの元に走っちゃった士道くんを責めることも出来ないっていうかぁ』

 

「う・・・・・うがーッ!」

 

十香が我慢の限界とばかりに叫び声を上げた。

 

「う、うるさい!黙れ黙れ黙れぇっ!駄目なのだ!そんなのは駄目なのだ!」

 

『ええー、駄目って言われてもねぇ。ほらほらぁ、士道くんもはっきり言ってあげなよぅ、十香ちゃんはもういらない子、って』

 

「・・・・・っ!」

 

瞬間、彼女の言葉に対して十香はガバッとパペットの胸ぐらを掴み上げた。

無論小さなパペットだ。少女の手から容易く外れ、上空に持ち上げられてしまった。

 

「・・・・・!?」

 

と、パペットを取り上げられた少女が、目を丸くした。

次の瞬間には目がぐらぐらと揺れ、顔面が蒼白し、顔中にびっしりと汗を浮かんでいた。ついでに目に見えて呼吸も荒くなり、指先がぷるぷると震え始める。

 

「よ、よしのん・・・?」

 

士道は、急な変化を見せた『よしのん』に、怪訝そうな視線を送る。

 

「雰囲気が変わった?」

 

だが、十香はそんな『よしのん』の様子に気がついていないのか、両手で摑み上げたパペットに、ナイフのように鋭い視線を向け、詰め寄っている。

 

「わ・・・ッ、私は!いらない子ではない!シドーが・・・シドーが私に、ここにいていいと言ってくれたのだ!それ以上の愚弄は許さんぞ!おい、何とか言ったらどうなのだ!?」

 

パペットが声を発していたと思っているのだろうか、ウサギの首元を摑み上げながら、ぐらぐらと揺らす。

 

「・・・!・・・!」

 

そんな様子に、『よしのん』が声にならないように悲鳴を上げていた。先程までの悠然とした調子が嘘のように、全身を小動物のように震わせている。

そして『よしのん』が、視線を避けるようにフードを目深にかぶり直してから、おっかなびっくりといった調子で、十香の服を引っ張った。

 

「ぬ。な、なんだ?邪魔をするな。今私は、こやつと話をしているのだ」

 

「───かえ、して・・・っ、くださ・・・っ」

 

十香の両手で高々と上げられたパペットを取ろうとしてか、『よしのん』がぴょんぴょんと飛び跳ねる。

 

『───何してるの士道。よしのんの精神状態まで揺らぎまくりよ。早く止めなさい!』

 

と、右耳に、琴里の声が響く。

そんな争いの言葉が行き交う中、士道は静かに“キレた“。

士道はポケットに仕舞ってあった銃を取り出し、天井に向けて“発砲”した。

 

パンパン!!

 

銃声がデパートの中に響き渡る。その音に反応するように十香と『よしのん』が動きを止めた。

そして士道、いや『三日月』が言う。

 

「ねぇ、いい加減にしてくれない?“仕事の邪魔”」

 

十香と『よしのん』が士道から発せられる怒気に全身が硬直する。まるで自分達が“狩られるような“錯覚に陥る中、『よしのん』が動いた。

 

「・・・っ、〈氷結傀儡〉・・・っ!」

 

『よしのん』がバッと右手を上げたかと思うと、それを真下に振り下ろした。

 

「・・・へぇ」

 

全長三メートルはあるかと思われる、ずんぐりしたぬいぐるみのようなフォルムの人形である。体表は金属のように滑らかで、所々に白い文様が刻まれていた。

そしてその頭部と思しき箇所には、長いウサギのような耳が見受けられる。

そして“バルバトスもソレに反応した”。

 

「コイツ、“あの鳥と一緒か“」

 

「───なっ、これは───!?」

 

士道と十香が、同時に声を発する。

次の瞬間───人形の目が赤く輝き、その鈍重そうな体躯を震わせながら咆哮する。

ソレに合わせるかのように、人形の全身から白い煙のようなものが吐き出された。

 

「冷たいな」

 

その煙に士道は十香を抱えて距離を取った。

 

「な、何をする!?」

 

腕の中で十香が暴れるが、士道はソレに気にすることなく肩で十香を担ぐように背負った。

と、突然右耳から琴里の叫び声が響く。

 

『───このタイミングで“天使”を顕現・・・!?士道、まずいわ、逃げなさい!』

 

「分かってる」

 

三日月は十香をお米様抱っこで廊下を走る。

と、後ろから人形───〈氷結傀儡〉が低い咆哮とともに身を反らした。

すると、デパート側面部の窓ガラスが次々と割れていき、フロア内部に雨が入ってくる。

 

「チッ」

 

士道は軽く舌打ちをして、エスカレーターを十香を抱えたまま駆け降りていく。

三日月は降りた後、上を見上げると〈氷結傀儡〉はエスカレーターをそのまま通り過ぎ、先程まで自分達がいた場所を通り抜けて、十香の手から落ちたパペットを口に加えて、屋外に飛び出してしまった。

 

「ふぅ・・・」

 

士道は『よしのん』の背を視線で追ってから口を開く。

 

「助かった」

 

『・・・ええ。反応は完全に離脱したわ。なかなか無茶をするわね、士道』

 

「無茶なんて今に限ったことじゃないでしょ」

 

と、言ったところで、

 

「いいから早く離さんか・・・ッ!」

 

髪を引っ張られる三日月は未だに暴れる十香を降ろす。

彼女は頬を紅潮させ歯を食いしばるという、駄々っ子のような表情を作りながら、その場に立ち上がり、十香は顔を背けてしまう。

 

「何怒ってんの?」

 

「うるさいっ!話しかけるな!わ、私より、あの娘の方が大事なのだろう・・・・・っ!」

 

「そういうことか」

 

士道が納得したように呟くと、十香が苛立たしげに地面を蹴り始めた。

 

「う、う、う、ううううう─────────ッ!!」

 

十香が地面を蹴るたびに地面に亀裂が走り、陥没していく。

十香に話を聞いてもらえない士道は困った表情のまま、その場所で立ち続けた。

 




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