デート・ア・オルフェンズ   作:鉄血

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今回は、三日月っぽくないかもしれない気もせんでもない


我ら地球外縁軌道統制統合艦隊!面壁九年 堅牢堅固!

カルタ・イシューと愉快な仲間達


第八話

「十香」

 

士道は固く閉めきった扉をコンコン、とノックをする。

しかし、反応はない。

 

「・・・・・」

 

ドアノブを握り、押してみるも鍵がかかっており開く気配がなかった。

すると───ドンっ!と凄まじい音が扉越しに聞こえ、家全体がビリビリと震えた。

そして士道が今までノックを続けていた扉の向こうから、くぐもった声が響いてきた。

 

『・・・ふん、構うな。・・・とっととあっちへ行ってしまえばーかばーか』

 

そしてそれきり、反応がなくなる。完全に、拗ねているようだった。

 

「・・・・・はぁ、面倒くさいなぁ」

 

士道は半端面倒くさがるように溜息を吐き出した。

『よしのん』が隣界に消失してならおよそ五時間。

士道達はあの後、〈フラクシナス〉に回収してもらい、家に帰って来たのだが・・・家に入るなり、十香が自分の部屋には閉じ籠もって出てこなくなってしまった。

 

『───士道。ちょっといい?確認しておきたいことがあるのだけれど』

 

と、右耳につけっぱなしにしていたインカムから、琴里の声が聞こえてくる。

 

「・・・なに?」

 

士道は若干苛立たしげに琴里に返事をした。

今、士道が苛ついている理由は琴里に対してだ。

彼女の指示がちゃんと出来ていなかったせいで、先の接触で自分は死にかけた。作戦内容も、まるで自分が一回は死ぬであろうと始めから想定された作戦。

生きてオルガの命令を果たす為に生きている士道は自分の妹、琴里に対してかなり不信感を抱いているのだ。

そんな士道の心情を知らない琴里は言ってくる。

 

『士道、あなた、ちゃんとよしのんとキスをしたのよね?』

 

「・・・・・まぁ」

 

『ふむ・・・・・』

 

彼女達が考える声が聞こえてくる。士道はそんな彼女達に言った。

 

「その反応だと、封印とかなんとか出来てないんでしょ。よしのんを見れば分かるよ」

 

よしのんとは事故とはいえ、キスをした。だがあの後も、〈天使〉とかいう精霊の力を振るっていた。

それだけの判断材料があるのだ。理解は出来る。

士道の言葉に琴里は冷静に返した。

 

『まあ、十香の時ほど好感度が上がっていたわけでもないし、全ての力を封印することはできないのは当然だとしても───少しもできていないっていうのはちょっと引っかかるわね。数値的には、あの段階でも二、三割くらいいけると思ったのだけれど』

 

言って、彼女はまた唸り始める。

 

『・・・何かよしのん特有の能力があるのかしら。それとも───』

 

「そんなことどうでもいいよ。十香はどうすんの?」

 

『───ああ、十香のことね。どうなの、様子は』

 

「呼びかけても、意味がない」

 

『なるほど。数値を見るに、一時的に顕在化した力は経路を通して再封印されたみたいだけど───早めに機嫌を直しておいた方がよさそうね』

 

「ふーん」

 

士道は無関心にそう呟くと、インカムから琴里が言ってくる。

 

『何無関心に言ってるの。士道貴方がやるのよ?しっかりしなさい』

 

彼女の無責任極まりない言葉に士道は言い返す。

 

「は?なんで?」

 

『なんでって、それは・・・』

 

琴里が何か言おうとしてくるが、士道はそれを許さない。

 

「さっきから琴里は俺に言ってるけどさ、これって“そっちのミス”なんじゃないの?」

 

『三日月』はそう言って琴里に聞く。

普段は仲間のミスを責めたりしない士道だが、今回は違う。

今、士道は琴里が自分の敵か、味方か、今見極めている。

 

『なに言って・・・』

 

「確かに俺の不注意もあったけど、琴里のとこの人居たよね?あのシェルターに」

 

『・・・・!?』

 

息を呑む声が聞こえる。

士道はそんな事を気にせず、続けた。

 

「じゃあさ、なんでソイツに十香を止めさせないの?外は危ないって止められた筈なのに」

 

『・・・それはっ!』

 

「それは、なに?」

 

士道は琴里に聞く。

 

「いいよ、話せば?“聞くから“」

 

士道の言葉に琴里は口をつぐむ。

モニター越しから見える士道の目がまるで狼を思わせるように鋭かった。

下手な事を言えばすぐさま首を噛みちぎられるような錯覚に琴里は喉を詰まらせる。

 

『シン、ソレについてだが・・・』

 

「アンタには聞いてないけど?」

 

士道はそう言ってくるが、令音は臆せずに言葉を続けた。

 

『いや、私が説明する』

 

令音は士道に言葉を強く発する。

そんな彼女の言葉が届いたのか、士道は言った。

 

「・・・・あっそ。じゃあアンタに聞く」

 

『・・・すまないね。で、先程の理由だが、それは下手に十香をあの場所で止めてしまうと、先程起こった霊力の逆流がシェルター内で起こりかねない。だから止める事は出来なかった』

 

令音の言葉に士道は眉を上げて、聞き続ける。

そんな士道に令音は続けた。

 

『そうなってしまえば、シェルター内の人達の安全も保証ができなくなる。だからコレが最善の方法だった』

 

令音の説明に納得したのか、士道は分かったと言って息を吐く。

 

「じゃあ、もう一つ聞くけどあの作戦を決めたのは誰?」

 

士道が一度死ぬ前提で考えられたあの作戦。

士道はソレを考えたのは誰か聞く。

 

『“それも私だ”。君が十香の時、一度生き返っているのを見たから“私が“提案した。それについてはすまない。謝罪として出来る限りの事はしよう』

 

「・・・へぇ。じゃあ、俺がアンタを“殺してもいいわけ“?」

 

士道はそう言って令音に聞く。

 

『シンがソレを望むならね』

 

令音は三日月の言葉にそう答え、頷く。

そんな彼女の言葉を聞いて“納得“したのか士道はいつもの調子に戻って言った。

 

「・・・分かった。今回は俺や十香に怪我なんてなかったからいいけど、“次はないから”」

 

『ああ、約束しよう。“次は必ず無いように“する』

 

「じゃあ、十香をお願い。今、ピリピリしてるから“俺だと話聞いてくれないだろうしね“」

 

士道の言葉に令音は答える。

 

『任せてくれたまえ。今回の件は私が引き受けよう。十香に伝えておいてくれないか?名目は、そうだな日用品の買い出しとでも伝えておいてくれ』

 

「分かった。そっちは頼んだよ」

 

「ああ」

 

令音はそう言ってマイクを落とす。

 

「・・・・・ふう」

 

令音は力が入っていた肩を降ろし、息を吐く。

そして“琴里“を見て言った。

 

「シンは君が“思っている人間ではない“ようだね。琴里」

 

「うん・・・お兄ちゃん、“人が変わったみたいだった“」

 

琴里は指揮官として状態ではく、五河琴里の状態でそう呟く。

昔の士道とは違う。自分の邪魔をするのなら、たとえ家族であろうと叩き潰す。そんな目をしていた士道を思い出して、琴里は身体を震わせた。

そんな彼女を見て、令音は息を吐いて一つの画面を見つめる。

それは暴走した十香と士道の一枚の映像。

おとぎ話としての存在かと思われたモビルスーツ。悪魔の名を持つガンダム。そして天使を操る“天災“精霊。

 

「シン、キミは・・・一体どうしたら“救われる“のだろうね」

 

ポツリと呟かれた令音の言葉は誰の耳に聞こえる事はなかった。




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