デート・ア・オルフェンズ   作:鉄血

36 / 279
投稿!


それ、お守りなの。私とお揃いで

アトラ・ミクスタ


第十三話

・・・ここか」

 

左手に菓子折りの入った紙袋、右手に地図のかかれたメモ用紙を持った士道は、目の前に聳えるマンションを見上げる。

しかし、それにしても。

 

「これ、仕事じゃなかったら絶対やらない」

 

『仕方ないでしょ。鳶一宅に招き入れられるのなんて、士道くらいしかいないんだし』

 

ぼやく士道に、右耳に装着したインカムから、琴里の声が聞こえてきた。

そう─────今士道は、鳶一折紙の自宅であるマンションを訪れていた。

四糸乃が消失した際の映像を解析してみたところ────基地に帰投する折紙が、パペットを拾い上げ、持ち去ったことが分かった。

それをどうにか入手する為に、わざわざ折紙に家に行っても良いか聞いて、家に招いてもらうことになったのだ。

 

「・・・というか、そもそも俺が行く必要無いんじゃないの?パペット一つ取るくらい簡単に─────」

 

『・・・やったわよ、とっくに』

 

出来るでしょと言おうとした時、琴里に遮られる。

 

「数日前から三度にわたって侵入を試みたけど、全部失敗したの。────部屋中に赤外線が張り巡らせてあるわ、催涙ガスは噴射されるわ、要所にセントリー・ガンまで設置されてるわ・・・うちの機関員六人が全員病院送りよ。一体何と戦ってるの彼女は?』

 

「聞いただけでも面倒だな」

 

『数に物を言わせて強引に押入れば奪取は可能でしょうけど───向こうからお誘いいただけるなら、それに越したことはないじゃない?』

 

「それもそうか」

 

正直に言って、気が進まない仕事ではあったが・・・四糸乃にパペットを探すと言ってしまった以上はやるしかない。

それに─────士道自身、折紙に聞いておきたいこともあった。

と、士道は思い出したのように、琴里に問いかける。

 

「十香の様子はどう?」

 

『相変わらずよ。部屋に籠もってるわ』

 

「あっそ」

 

士道はそう言ってマンションの入り口に向かって歩き始める。

十香も昨日から様子がおかしいが、それよりも今は、目の前の仕事が先だ。

自動ドアをくぐり、エントランスに設えている機械に、折紙の部屋番号を入力する。 

と、すぐに折紙の声が聞こえてきた。

 

『だれ』

 

「俺だよ。五河士道」

 

『入って』

 

短く応えた士道に、折紙はすぐにそう言葉を返して、エントランス内側の自動ドアが開く。

士道は、促されるままにマンションに入ると、そのままエレベーターに乗って六階まで上がり、指定された部屋番号の前に到着する。

 

「なんか、案外拍子抜けなんだけど」

 

『・・・え、ええ。何事もなかったわね』

 

士道は琴里にそう言うと、琴里もその事に驚いて困惑する声が聞こえてくる。

 

「じゃあ、サポートよろしく」

 

『ええ。任せてちょうだい』

 

士道はそう言って、呼び鈴を鳴らす。

するとすぐさま────折紙が玄関で待ち構えていたかのようなタイミングで、扉が開けられた。

 

「ごめん、銀髪の人・・・何やってんの?」

 

士道は練習した言葉を言おうとした矢先、折紙の格好を見て態度をすぐに変えた。

ここは確かに鳶一の家だ。彼女がどんな格好をしていようが、自分には関係ない。

だが、今の彼女の格好は前に殿町に見せてもらった本の格好に良く似ていた。

確か、メイドだとかなんとかいうヤツだった筈だ。

 

「何でそんな格好なの?アンタ」

 

士道は折紙にそう言うと、折紙はいつものように人形のごとく無味な表情のまま、小さく首を傾げる。

 

「きらい?」

 

「別にどうでもいいけど?」

 

三日月は彼女の言葉に対して短く答える。

 

「そう、なら入って」

 

だが、三日月の言葉に折紙は気にすることなく、折紙はそう言って部屋の中へ招き入れる。

 

「じゃあ入るね」

 

士道はそう言って靴を脱いで部屋には上がる。

 

「・・・・?」

 

と、士道は眉をひそめる。急にインカムから、ノイズのような音がなったのである。

 

『く・・・・っ、まさ────ジャミング────士────、通────ない───、なんとか────』

 

そこまで聞こえたところで、ぷつん、と音声が途切れた。

 

「ジャミングか」

 

「どうしたの?」

 

「別に。なんでもないよ」

 

士道は折紙にそう言ってさっさと歩き始める。

通信が使えない以上、後の事は自分一人でやらなければいけないだろう。

士道は短く息を吐いてから、折紙の後についていく。

そして、折紙に促されるままリビングに足を踏み入れた瞬間、甘い香りが部屋に充満していた。

 

「・・・なんだ?この匂い・・・」

 

食べ物の匂いといった感じではない。どちらかと言えば、香水や

それに近い匂いに士道は足を止める。

 

「どうしたの?」

 

再び振り向いた彼女に、士道は言った。

 

「この匂い、なに?」

 

士道の問いに折紙は首を傾げた後、近くにあった机の上にあるモノに指を指す。

 

「あれの事?」

 

折紙が指を指す方向へ目を向けると、そこにあったのはお香だった。

 

「お香?」

 

「そう」

 

「へぇ」

 

士道はそう言って、部屋へと入る。

 

「座って」

 

「ん」

 

言われて、リビングの中央に置かれた背の低いテーブルの前に座る。

 

「・・・・・」

 

そして、士道が座ったのを見届けてから、折紙も腰を降ろした。

士道の、すぐ隣の椅子に。

 

「・・・何で隣に座るの?」

 

士道は折紙にそう言うが、彼女からの返答が返ってくる。

 

「ここは、私の家。だから何処に座ろうと自由」

 

確かにそうであるが、流石に隣に座られると思っていなかった士道はあっそと、短く答えた。

そして、士道は折紙に聞きたかった事を口にした。

 

「なあ、アンタ」

 

「なに」

 

「アンタは、なんで精霊ってやつが嫌いなの?」

 

「・・・・・」

 

士道がその言葉を発した瞬間、折紙の雰囲気が変わった。

自分がそんな話題を出したことを訝しむように、小さく首を傾げる。

 

「なぜ」

 

折紙は、士道の目を真っ直ぐ見ながら、聞いてくる。

 

「別に。気になっただけだよ」

 

正直に言えば、コイツが俺の敵になるなら早いうちに潰すとしか考えていない士道に聞く必要などない質問だったが、琴里の指示だ。

士道の言葉に折紙は答えた。

 

「精霊は現れるだけで世界を壊す。そこに『居る』だけで世界を殺す。あれは害悪。生きとし生けるものの敵」

 

「へぇ────」

 

「───私は、忘れない」

 

士道は短く返事を返し、折紙は言葉を続ける。

表情も、声のトーンも、何一つ変わっていないというのに、彼女からは威圧感が感じられた。

 

「五年前、私から両親を奪った精霊を」

 

「・・・五年前?」

 

何かあっただろうかと、思った士道に彼女は話し続ける。

 

「五年前、天宮市南甲町の住宅街で、大規模な火災が発生した」

 

「ん?」

 

火災。そう言えば、そんなのがあった気がすると思いながら、士道は話を聞く。

 

「公式には伏せられているけれど、あの火災は────精霊が起こしたもの」

 

「へえ・・・・」

 

士道は鳶一の言葉に表情を変えずに、短く口を開く。

 

「その身に、真っ赤な炎を纏った精霊。私は────あの精霊に全てを奪われた。絶対に、許さない。精霊は全て、私が倒す。もう、私と同じ思いをする人は、作らせない」

 

静かな、しかし強固な意志を思わせる声でそう言い、折紙は拳を握る。

 

「そして、無論それは────夜刀神十香も例外ではない」

 

彼女がそう言った瞬間。

 

カチャリと、士道は彼女に取り出した銃の銃口を彼女に向けた。

 

「どういうつもり?」

 

鳶一の問いに、士道は答える。

 

「アンタが、十香や俺の仲間に手を出すつもりなら俺は此処でアンタを殺すだけだよ」

 

士道はそう言って、引き金に指をかける。

そんな士道とは裏腹に、折紙は坦々と答えた。

 

「───しかし。上層部の方針として、精霊の反応が確認できない限り、それは人間と認め得ざるを得ない。私の独断で攻撃をすることはできない」

 

「じゃあ、アンタの上の奴が今の十香を敵として見てないから、アンタは手は出せないのか」

 

「その質問には、肯定を示す」

 

銃口を向けられてもなお、折紙は落ち着きを払った様子のまま答える。

 

「分かった。なら、俺も“今は“アンタに手は出さない。此処で殺したりすると、後がメンドイし」

 

士道はそう言って銃をポケットにしまい込む。そして彼女に最後の質問をした。

 

「アンタらは、俺達の“敵”?」

 

士道の問いに折紙が答えようとした、その時だった。

 

 

ウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ─────

 

と、外から空間震警報が鳴り響いた。

 

「警報?」

 

「・・・・・・」

 

折紙は数瞬の間黙り込むと、小さく息を吐いてその場から立ち上がった。

 

「───出動。あなたは早くシェルターへ」

 

それだけ言って、折紙は廊下に出ていった。

残された士道は─────

 

「パペット探すか」

 

そう呟いて、椅子から立ち上がった。




感想、評価、誤字報告よろしくです!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。