デート・ア・オルフェンズ   作:鉄血

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「もっとだ。もっと。もっと寄越せバルバトス!!」


悪魔にメンチを切る悪魔


第ニ話

「ちょっと。何してるのよ、士道」

 

「ん?」

 

自宅のリビングで。五河士道は、不意にそんな声をかけられ、振り向く。そこには長い髪を黒いリボンで二つ結びにした制服姿の女の子が、腰に手を当てて仁王立ちしていた。

士道の妹・五河琴里────の、“司令官”状態である。

双眸は不機嫌そうに歪められ、口にくわえられたチュッパチャップスの棒は、傍から見れば威嚇する動物の尻尾のようにピンと立てられている。

 

「何って、学校に行くんだけど?」

 

士道はそう言って琴里を見るが、しかし琴里は肩をすくめながら首を横に振った。

 

「オーケイ、話を整理しましょう。士道が左手に持っているものは何?」

 

「・・・?弁当だけど?」

 

「自分が食べるもの?」

 

「十香のだよ」

 

自分の分は鞄の中に入っている。これは家の隣のマンションに住む十香の為に、士道が別で作ったものだ。

 

「それをどうやって十香に渡すの?」

 

「郵便受けに入れるけど・・・それが何?」

 

別に手渡しでも良いが、そうなった場合、士道が十香の家に直接行く事になるので、いつも朝が早い士道に関してはまだ寝ているであろう十香を、起こしたらいけないという配慮もあっての事だった。

 

「へぇ・・・じゃあなんで郵便受けに入れるのよ」

 

「登校時間違うのに、渡せるわけ無いじゃん」

 

「そこよ」

 

琴里が口にくわえていたチュッパチャップスを指で摘み、ビシッと士道に向けてくる。

 

「は?」

 

「十香が隣に越してきてから、約二週間。───士道、十香と何回一緒に登校した?」

 

「え?ええっと・・・」

 

視線を上に上げ、頭の中で数えてみる。

 

「多分ないと思うけど・・・」

 

士道はそう言って視線を上に上げた。

わけあって士道と十香は、この家で少しの間同居していたことがあったのだが、その際、士道が朝一番速いので問題なかった。

だが、十香の弁当を作って十香を待つと、学校で栽培している野菜に手がつけられなくなってしまう。

なので、行きは別々だが帰りは一緒に帰るというのが、日課になっていた。

琴里はやれやれといった調子で額に手を当てた。

 

「せっかくお隣に住んでて、クラスも同じだってのに、わざわざ登校イベントを潰す理由がわからないわ。────今後また別の”精霊“が出現したら、十香にかかりきりになってるわけにもいかなくなるんだから、一緒にいられるときはいてあげなさい」

 

「・・・分かった」

 

士道は短くそう言って立ち上がる。

 

「分かってる?士道。次の精霊が現れたら、またデレさせなきゃいけないんだからね」

 

「分かってるって。“仕事“なんだから覚えてる」

 

士道は鬱陶しいと吐息を漏らしながらそう答える。

 

「よろしい。それじゃあ、今日は十香と一緒に登校すること。オーケイ?」

 

「はいはい」

 

別に嫌と言う訳ではないが、ただ単純に面倒くさいなと思った士道は、鞄を手に持つと、玄関の扉に手をかける。

 

「ちょっと士道。忘れ物よ」

 

と、その途中、琴里に声をかけられ、士道は自分の手元を見直した。

 

「?他に何かあった?」

 

「これよ、これ」

 

琴里が小さなインカムを左手の平に載せ、腕を伸ばしてくる。

そして右手の人差し指を立てると、ちょいちょい、と自分の耳を指さす。

────まるで士道に、そのインカムを今装着しろとでも言うように。

 

「・・・・なに?」

 

「ちょうどいいから、訓練も兼ねちゃいましょ。ほら、装着装着」

 

すると琴里はにい、と唇の端を上げ、半ば無理矢理士道の右耳にそれを装着させた。

 

「訓練って言っても、次はなにするの?」

 

「そうね────今日の課題は、十香に嫉妬させないように振る舞うこと、よ」

 

「嫉妬をさせない?どういうこと?」

 

十香が嫉妬?誰に嫉妬したのだろうか?士道は頭を傾けながらそう思ったが、琴里が言葉を続ける。

 

「先月、四糸乃が現れたときの十香のことを覚えてる?」

 

「ああ、あの時か」

 

四糸乃と一緒にいた時、十香が妙に拗ねたあの時のことを思い出し、士道は納得する。

 

「そ。要はあれ、士道が他の女の子と仲良くしてるのが、十香は面白くないわけよ」

 

「へぇ、そういうことか」

 

士道がそう言うと、琴里は息を吐く。

 

「まあ、とにかく。士道が他の子と仲良くしてると、十香は段々と精神状態が安定しなくなって────結果、精霊の力が逆流してしまうのよ。新しい精霊が現れるたびにそれじゃあ、やっぱり困るのよね。────そこで、よ」

 

琴里が、立てていた指を士道に向ける。

 

「今日の登校中、〈ラタトスク〉の機関員が十香の嫉妬を煽るようにいろいろと工夫するわ。士道はそれを受けつつ、上手く対応してちょうだい」

 

「・・・・分かった」

 

士道は頭をガリガリとかきながら、ボソッとそう呟いた。

 

 




おまけ

夏祭り

「四糸乃、どうしたの?」

士道はそう言って四糸乃を見る。

「・・・あっ、あの子・・・かわいいな・・・って」

『四糸乃はねー、あの台に乗ってるあの緑の丸いぬいぐるみが気になるんだってー』

四糸乃の視線の先に目を向けると、ハロとか言う、ぬいぐるみが台の一番上にのっていた。
そして、そのぬいぐるみを扱う店が────。

「射的か」

士道はそう呟くと、四糸乃に聞く。

「アレが欲しいの?」

「・・・えっと・・・はい」

小さな声でそう言った四糸乃に、士道は射的屋に足を進める。

「いらっしゃい!やってくかい?」

「うん。これでやれるだけお願い」

店主の言葉に士道は千円を渡して、おもちゃの空気銃を手に取る。

「ああ、ありが・・・」

パン!パン!パン!

店主が言い終わる前に、空気の乾いた音が屋台に鳴り響いた。



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