デート・ア・オルフェンズ   作:鉄血

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アンタの機体、派手だな。囮役にちょうど良さそうだ。

あの機体やたら目につくな。眩しいからさっさとやるか。

金色の機体をみた、三日月


第七話

「しかし・・・妹、ね」

 

琴里が、半眼を作って真那を睨め付ける。

普通に考えれば、突然「私はあなたの妹だ」なんて言われても信じられるはずがない。

だが士道に関しては、そんなことあり得ないとは言い切れない事情があったのである。

もともと士道は、この五河家の本当の息子ではないのだ。

幼少の頃に、実の母親に捨てられて以来、この家の子供として育てられた。

だから真那の言葉を、完全に嘘や妄言と断ずることができないのである。

士道が覚えていないだけで、真那が本当に血の繋がった妹という可能性だってなくはないのだ。

 

「ねえ・・・ちょっと質問してもいい?」

 

「はい!何でしょう、兄様」

 

士道が声をかけると、真那は心底嬉しそうに、跳び上がらんばかりの勢いで答えた。琴里はなぜか不機嫌そうに、フンと鼻を鳴らす。

 

「悪いけど、俺はアンタの事覚えてないし、知らないけど」

 

「無理もねーです」

 

真那は腕組みをし、うんうんとうなずく。

 

「じゃあ聞くけど、アンタの親は?」

 

士道はそう聞くと、予想外の言葉が返ってきた。

 

「さあ?」

 

真那は首を傾げると、あっけからんとした調子でそう言った。

 

「・・・・・・」

 

士道は無言のまま、眉根を寄せる。────まさか、コイツも自分と同じか。と、士道が思った所で、真那が士道に首を振った。

 

「あ、ちげーますちげーます。そういうことじゃなく───」

 

真那は恥ずかしそうに苦笑すると、手元に置かれた紅茶を一口飲んでから言葉を続けた。

 

「私───実は昔の記憶がすぱっとねーんです」

 

「・・・へぇ」

 

「・・・なんですって?」

 

その言葉に、不審そうな色を濃くしたのは琴里である。軽く姿勢を直して真那に向かい、再び唇を開く。

 

「昔のって、一体どれくらい?」

 

「そうですね、ここニ、三年のことは覚えてやがるんですが、それ以前はちょっと」

 

「二、三年って・・・じゃあなんで士道が自分の兄だなんてわかるのよ」

 

琴里が問うと、真那が胸元から銀色のロケットを取り出し、中に収められていた、やたらと色あせた写真を見せてくる。士道達は覗き込むように見ると、そこには、幼い士道と真那の姿があった。

 

「これ・・・俺?」

 

「シドーとそっくりだな」

 

士道は少しだけ驚くような声音になりつつ、そうつぶやく。しかし────琴里は怪訝そうな顔を作った。

 

「ちょっと待ってよ。これ、士道十歳くらいじゃない?その頃にはもう、うちに来てたはずでしょ?」

 

「・・・そうだっけ?」

 

士道はそう言って写真を見直すが、この写真の人物が今の自分にしか見えないのもまた、事実だった。

 

「そうなのですか?不思議なこともあるものですねぇ」

 

士道と真那はこういった細かい事を気にしない所が似ている・・・気がしないでもないが、琴里は真那に言った。

 

「不思議って・・・他人の空似なんじゃないの?確かに・・・かなり似てはいるけども」

 

「いえ、間違いねーです。兄様は兄様です」

 

「・・・なんでそう言い切れるのよ」

 

琴里が問うと、真那は自信満々に胸をドンと叩いた。

 

「そこはそれ、兄妹の絆で!」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「・・・そうなのか?」

 

琴里は話にならないといった調子で肩をすくめ、はふぅと吐息した。・・・少しだけ、安堵しているようにも見える。

士道に関してはまあ、それもあるかと思っていた。

十香に関しては士道と真那に首を振りながらそう呟く。

そんな三人に真那は、感慨深げに目を伏せて言葉を続けた。

 

「いや、自分でも驚いていやがるのです。本当にびっくりしました。兄様を見たとき、こう、ビビッときたのです」

 

「何それ。安い一目惚れじゃあるまいし」

 

「はっ、これは一目惚れでしたか。───琴里さん、お兄さんを私にください」

 

「やるかッ!」

 

琴里は反射的に叫んだあと、ハッとした様子でわざとらしく咳払いをする。

 

「とにかく、よ。そんな薄弱な理由で妹だなんて言われても困るわ。第一、士道はもううちの家族なの。それを今さら連れていこうだなんて────」

 

「そんなつもりはねーですよ?」

 

「え?」

 

あっけらかんと答えた真那に、琴里が目を丸くする。

 

「兄様が家族として受け入れてくれやがったこの家の方々には、感謝の言葉しかねーです。兄様が幸せに暮らしているのなら、それだけで真那は満足です」

 

言って、真那がテーブルを越えて、再び琴里の手を取る。

 

「む・・・・」

 

琴里が、ばつが悪そうに口をへの字に結ぶ。

 

「ふん・・・何よ、一応分かってはいるみたいじゃない」

 

「ええ。───ぼんやりとした記憶ではありますが、兄様がどこかへ行ってしまったことだけは覚えています。確かに寂しかったですが、それ以上に、兄様がちゃんと元気でいるかどうかが不安でした。───だから、今兄様がきちんと生活できていることがわかってとても嬉しいです。こんなに可愛らしい義妹さんもいやがるようですし」

 

言って、真那がにっと笑う。琴里は頬を染め、居心地が悪そうに目を逸らした。

 

「・・・十香、飯作るから手伝ってくれる?」

 

「うむ!シドーの手伝いだな!」

 

士道は琴里達をもう大丈夫だと判断して、十香に夜ご飯の準備を始める為に、台所へ向かう。

そして士道が冷蔵庫を開けた次の瞬間。

 

「まあ、もちろん。“実の妹には敵わねーですけども“」

 

「・・・・・・」

 

瞬間。ぴきッ、と、空気にヒビが入るような音が聞こえた気がした。

士道は視線だけを琴里達に向け、フライパンを用意する。

無言の空間の中、琴里はピクピクとやたら引きつった笑みを浮かべている。

 

「へぇ・・・そうかしら?」

 

「いや、そりゃそーでしょう。血に勝る縁はねーですから」

 

「でも、士道が言ったように遠い親戚より近くの他人とも言うわよね」

 

琴里が言った瞬間、今度は終始にこやかだった真那のこめかみがぴくりと動いた。 

そして一拍おいたあと、真那が琴里の手を放し、テーブルに手を突く。

 

「いやっはっはっは・・・でもまあほら?やっぱり最後は、血を分けた妹に落ち着きやがるというか。三つ子の魂百までって言いやがりますし」

 

「・・・ぐ。ふ、ふん。でもあれよね、義理であろうと、なんだかんだで一緒の時間を過ごしているのって大きいわよね」

 

「いやいや、でも結局他人は他人ですし。その点実妹は血縁ですからね。血を分けてますからね!まず妹指数の基準が段違いですからね!」

 

真那が高らかに叫ぶ。妹指数。聞いたことのない単語だった。

しかし、琴里は差し挟むふうもなく言葉を返す。

 

「血縁血縁って、他に言うことないの?義理だろうが何だろうが、こっちは十年以上妹やってんのよ!」

 

「笑止!幼い頃に引き裂かれた兄妹が、時を超えて再会する!感動的じゃねーですか!」

 

「うっさい!」

 

琴里はそう言って、近くにあったクッションを真那に投げつける。真那はそれを咄嗟の瞬間で躱すと、“ガチャン“と窓縁に置かれていた“野菜の苗”が植えてあった鉢が落ちて“壊れた”。

 

「「あ」」

 

琴里と真那はそう呟いて動きを止める。

と、次の瞬間────。

“パン”、と士道が不機嫌そうにフライパンを手のひらで叩いた。

憤怒のオーラを撒き散らしながら士道はフライパンを手に持ち、動けない二人に近づいてくる。

十香に至っては、部屋から逃げ出してしまっている。

そんな動けない二人に、士道は静かに言った。

 

「ちょっと、反省しろ」

 

そう言って、手に持った鈍器(フライパン)を琴里と真那の二人に振り下ろした。




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