デート・ア・オルフェンズ   作:鉄血

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マキオンでヘビーアームズewの変態機動で二分間ずっと生き残って相手にガン無視を決められた鉄血です。
なぁんで無視されるんですかねぇ?ではどうぞ!

お嬢様っていい匂いするんだろうなぁ!なあ、三日月!

お嬢様っても同じ人間なんだし、そんなにかわんないだろ

はあ?

女に飢えていない三日月さんに、んなこと言っても無駄っすよ

ノルバ・シノ

三日月・オーガス

ダンジ・エイレイ


第十話

折紙は士道が教室を出るのを横目で確認してから、ゆっくりと立ち上がった。

士道が昼食も摂らずに、しかも夜刀神十香まで放って向かった場所も気になったが────今はそれより先にやらねばならないことがある。

しょんぼりと肩を落とす十香の脇を通り抜け、目的の人物の席まで歩いていく。

 

「────少し話がある」

 

そして、その席の主───時崎狂三に、冷たい視線を投げながらそう言った。

狂三は大仰に首を傾げると、右目をまん丸に見開いてきた。

 

「折紙さん・・・でしたわよね。わたくしに何か?」

 

「きて」

 

折紙は短く答えると、そのまま教室の外に歩いていった。

狂三は数秒の間、逡巡するようにあごに指を当てていたが、折紙が廊下に出てしまうというところで、慌てた様子で席を立った。

 

「ま、待ってくださいまし。一体どうしたんですの?」

 

「・・・・・・・」

 

ちらと後方を一瞥する。

触れれば折れそうな華奢な手足を振りながら、必死に折紙に付いてくる狂三の姿が目に映る。なるほど、どこか庇護欲を掻き立てられる姿だ。

だが────今折紙にはその姿に、得体の知れない気味悪さしか感じなかった。

そのまま歩調を緩めることもなく、すたすたと屋上前の扉に歩いていく。

以前、士道を連れてきたこともある場所である。平時であればまず人が訪れない、耳を気にせねばならない話をするときには便利な空間だった。

 

「はぁ・・・はぁ・・・っ」

 

階段を一気に上がったからだろうか、狂三が肩で息をしながら手すりにもたれかかる。

それから数十秒。呼吸が落ち着くのを待って、狂三は唇を動かした。

 

「ええと・・・何かご用ですの?わたくし、まだお昼を食べていないのですけれど・・・」

 

少し不安そうに眉を八の字にしながら、狂三が言ってくる。

折紙はそんな狂三の様子に表情をぴくりとも動かすことなく応じた。

 

「あなたはなぜ生きているの」

 

「え・・・・?」

 

「────あなたは、昨日死んだはず」

 

そう。折紙は昨日、確かに見た。

狂三が真那によって四肢を断たれ頭を潰され、完全に絶絶命させられたのを。

真那としては不服そうだったそうだが、燎子の命令で招集された折紙たちAST隊員は、万が一真那餓精霊を仕留め損なったときのために、周囲を固めていたのである。

 

「・・・・・・」

 

狂三が、ぴくりと眉の端を動かした。

その後数秒間、外気に晒されている右目で、折紙の顔を睨め回してくる。

そして────。

 

「────ああ、ああ。あなた。あなた。昨日真那さんと一緒にいらっしゃった方ですの」

 

「・・・・・」 

 

狂三がそう言った瞬間、折紙はその場から飛び退いた。

根拠はない。ただ脳が得体の知れない違和感を覚え、折紙に逃げろと警告したのだ。

 

「まあ!まあ!素晴らしい反応ですわ。素敵ですわ。素敵ですわ。でぇもォ」

 

「────っ!」

 

折紙は息を詰まらせた。後方に飛び退いた先で、何者かに足首を掴まれたのである。

見やると、いつの間にか折紙の足下にまで狂三の影が伸び────そこから、白く細い手が二本、生えていた。

しかも影はじわじわとその面積を増すと、壁をも這い上がっていった。

そしてそこからも無数の手が生え、後方から折紙の腕や首をがっちりと拘束してくる。

 

「く────」

 

もがくも、細い指は折紙の身体から離れようとはしなかった。それどころかさらに力を増し、折紙を壁に磔にしてくる。

 

「きひひ、ひひ、駄ァ目ですわよぅ。そんなことをしても無駄ですわ」

 

狂三が、笑う。

数刻前の狂三からは想像も付かない歪んだ笑みを顔に貼り付け、聞いているだけで腹の底に冷たいものが広がっていくかのような声を発しながら。

 

「昨日はお世話になりましたわね。きちんと片付けしてくださいまして?わたくしのカ・ラ・ダ」

 

狂三が、髪をかき上げながら折紙の方に近づいてくる。一瞬、前髪に隠されていた左目が見えた気がした。無機質な金色。

およそ生物の器官とは思えない形状をした瞳に見えるのは、十二の文字と二本の針。そう────それは、まるで時計のように見えた。

 

「わたくしのことを知りながら、一人で接触を図るだなんて、少々迂闊なのではごさいませんこと?しかもわざわざ、人目につかない場所まで用意してくださるだなんて」

 

「・・・・っ」

 

確かにその通りだった。昨日のあまりにもあっけない幕切れを見て勘違いしていたのか────それとも、学校での狂三の姿から錯覚していたのか。いずれにせよ、折紙のミスだった。

精霊を脅威と言っていながら、心のどこかに油断があったのだ。

 

「あなた───は、何が・・・目的」

 

のどを締め付けられながらも、声を発する。すると狂三はにぃぃ、と唇の端を上げた。

 

「うふふ、一度学校というものに通ってみたかった、というのも嘘ではございませんのよ?でも、そうですわね、一番となるとやはり────」

 

そこで一拍おいてから、息がかかるくらいの距離にまで顔を近づけてくる。

 

「────士道さん、ですわね」

 

「────ッ!!」

 

士道の名前を出されて、折紙は声を詰まらせた。

そんな反応を見てか、狂三がいたく楽しそうに笑みを濃くする。

 

「彼は素敵ですわ。彼は最高ですわ。彼は本当に────“美味しそう“ですわ。ああ、ああ、焦がれますわ。焦がれますわ。わたくしは彼が欲しい。“彼の力が欲しい“。彼を手に入れるために、彼と一つになるために、この学校に来たのですわ。一度手を出そうと触れたのですけれど、あの“怪物“のせいで阻まれてしまいましたけど」

 

────戦慄。折紙は背中がじっとりと湿るのを感じた。まさか、精霊が一個人を────しかもよりにもよって士道を狙って現れるだなんて、予想だにしなかった。

しかし。そこで折紙には疑問が生まれた。

今し方狂三が発した言葉。『彼の力』とは士道のあの想像を絶するあの力なのだろうか。

 

「・・・・・っ」

 

そんな思考は、狂三によって中断させられた。

狂三が、折紙の身体に妖しい手つきで指を這わせてきたのである。

 

「折紙さん。鳶一、折紙さん。あなたも────とても、“いい“、ですわよ。すごく、美味しそうですわ。ああ、たまりませんわ。たまりませんわ。今すぐにでも食べてしまいたい」

 

頬を上気させ、息づかいを荒くしながらそう言ってくる。

 

「・・・・っ、触らないで」

 

「ふふ、そうつれないことをおっしゃらないでくださいまし」

 

「く・・・・・」

 

「ああ、ああ、でも駄目ですわ。とても惜しいですけれど、お楽しみはあとにとっておかなくてはいけませんわ」

 

狂三は大仰に首を振ると、折紙の口づけを残し、身体を離していった。

 

「あなたは、士道さんのあとに。────もっと、もっと美味しくなっていてくださいまし」

 

そう言うと、狂三はくるりと踵を返し、階段を下りていった。

 

「・・・っ、けほっ、けほっ」

 

床にうずくまるような格好で咳き込む。

廊下に広がった影は、主のもとに帰るように、階段の方へと収縮していった。

 

「士、道────」

 

なぜかは分からないが、狂三は、士道を狙っている。

早く本部にそのことを伝えなくてはならない。否、たとえそうしたとしても、精霊が個人を狙っているなんて話を信じてもらえるかどうかは分からなかった。

────もしその時は、私が士道を守らなくては。

折紙は奥歯を噛みしめ、くっと拳を握った。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「・・・むぅ」

 

十香は椅子に座ったまま顔を上げ、黒板の上にある時計を見やった。そろそろ昼休みが終わってしまう時間である。

お腹がコロコロと鳴る。朝ごはん以来食べ物を口にしていないものだから、健啖家の十香はもう目眩がするくらいお腹がペコペコだった。

でも、弁当はまだ開けていない。士道は先に食べていろと言ったが・・・士道と一緒に食べるご飯のおいしさを知ってしまった十香は、どうもそういう気になれなかったのである。

 

「・・・シドー」

 

もう教室には、外に遊びに行っていた生徒がちらほらと戻り始めていた。気の早い者などは、もう次の授業の準備を始めている。

だが、まだ士道の姿は見えなかった。

 

「う・・・う・・・」

 

なぜだろうか、目がじんわりと熱くなって、鼻で呼吸をするのが苦しくなってくる。

ずずっと鼻をすすって、目元を拭う。服の袖が少し濡れていた。────と、そこに。

 

「────あれ?どしたの十香ちゃん」

 

「何、まだご飯食べていないの?」

 

「もう授業始まっちゃうよー」

 

外で昼食を摂っていたらしい女子三人組が、教室に入るなり、十香に声をかけてきた。

よく十香を構ってくれる女子たちである。確か名前は、右から亜衣、麻衣、美衣。似たような名前が縁で仲良くなったのだという。

 

「ってうわ!どーしたのよ十香ちゃん!泣いてんじゃん!」

 

「なになに、誰かに何かされたの!?」

 

「おいコラ誰だよ出てこいやぁッ!!」

 

見事なコンビネーションで十香を囲い込み、三人が口々に言う。

教室の男子たちがビクッと肩を震わせた。

 

「ち、違うぞ!別に何もされていないぞ!」

 

十香は慌てて手を振ると、三人に訴えかけた。

 

「ええ?そうなの?」

 

「じゃあ何、どうしたの?」

 

「花粉症?花粉症なの?」

 

十香はブンブンと首を振ると、手元の弁当箱に視線を落とした。

 

「シドーがな、まだ戻ってこないのだ。・・・それで、今日は、あまりシドーと話せていないなあと思ってしまって、そうしたら、なぜか、こう・・・」

 

それを口に出すと、目からポロポロと大粒の涙がこぼれた。

 

「あぁっ!十香ちゃん!いいのよ辛いならそれ以上言わなくて!」

 

「ていうか五河君あり得ないんですけど!こんなかわいい子を泣かせるとか!」

 

「首を落として豚の餌にしてくれるッ!」

 

三人がやたらテンション高く叫ぶ。十香は再びアワアワと制止した。

 

「し、シドーは悪くないのだ!ただ、私が・・・」

 

十香は乏しい語彙の中から言葉を拾い集め、士道に非がないこと、十香がちょっと士道がいることに慣れてしまっていたことが原因なのだと説明をした。

それを聞いて、亜衣、麻衣、美衣がふぅむとうなる。

 

「十香ちゃん的には、五河君とお話できて、ご飯とか食べちゃって、あまつさえ遊んだりできたらスーパーハッピーなわけね?」

 

亜衣が言ってくる。十香はこくこくと頷いた。

 

「くぅッ、なんて純真なの。もうこれ五河君百叩きじゃ済まないでしょ」

 

次いで、麻衣が芝居がかった調子で涙を拭く真似をする。十香は目を丸くした。

そんな十香の様子を見ていた三人は「よし!」と膝を叩いた。

 

「十香ちゃんのためなら人肌脱ぐよ私は!」

 

と亜衣が言うと、自分の鞄から紙切れを二枚持ってきた。

 

「あ、亜衣、あんたそれは・・・!」

 

「そう、天宮クインテットの水族館のチケットよ・・・ッ!確か明日開校記念日で休みでしょ?十香ちゃん!これあげるから、明日五河君と行ってらっしゃい!」

 

「亜衣!それはあんたが────」

 

麻衣が言いかけるのを、亜衣が手で制する。

 

「それ以上言うんじゃあねぇ!十香ちゃんが遠慮しちまうだろぃ・・・」

 

亜衣が言うと、麻衣と美衣は涙を堪えるような仕草をして、十香の肩をそれぞれ掴んだ。

 

「十香ちゃん・・・!黙って受け取ってちょうだい・・・!」

 

「亜衣を!亜衣を女にしてやってくんなせぇ・・・!」

 

「ぬ、ぬぅ・・・・?」

 

十香はなんとなくこの場の雰囲気を壊してしまうことが躊躇われて、大人しく亜衣からチケットを受け取った。

 

「って、いやいや」

 

急に冷静になった亜衣が、十香に言う。

 

「つまりね十香ちゃん。これ持って五河くんにお誘いかけてみなさいって」

 

「お、おさそい・・・?」

 

「そ。明日デートしていらっしゃいって言ってんの」

 

「・・・・!」

 

言われて、十香は目を見開いた。デート。確か、男女が一緒に遊びに行くことだ。

────嗚呼、それはとてもいい。

思えばここ最近ずっと、士道とデートに行っていない気がする。久しぶりにデート。それは、とっても素敵なことに思われた。

だが────一つ問題があった。

 

「わ、私が誘う・・・のか」

 

十香は緊張に汗を垂らしながら言った。

 

「ええ。たまには女子から誘うのもいいモンよ」

 

「だ、だが・・・もし断られたら・・・」

 

十香は不安げにそう言うと、三人は肩をすくめ、「はふぅ」と息を吐いた。

 

「おっけおっけ。まず断られはしないと思うけど、というか断ったりなんかしたら五河くん、しばき倒すけど、私達がとっておきの秘策を授けてあげるわ」

 

「ひ、秘策・・・?」

 

「そう。結局男なんてエロで動いてるモンなのよ。十香ちゃんがこの誘い方をすれば、一国を制圧できるレベルの兵力が集まるわよ」

 

「い、いや、そんなにはいらんのだが・・・」

 

「いーからいーから。まずはね・・・」

 

十香は、こくこくとうなずきながら亜衣の秘策を聞いた。




三日月

「面倒くさいことになりそうだなぁ」

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