デート・ア・オルフェンズ   作:鉄血

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さーて、ブチギレ三日月の登場だ!

「お前、消えろよ」


シノをやられて猿にキレる三日月


第二十一話

カツカツ、と靴が鳴る音が学校の廊下に響き渡る。

 

「・・・・・」

 

士道は無言のまま屋上へ向かう階段を見上げると、そのまま階段を上がりだす。

時刻は十六時三十分。辺りにからは、部活に向かう生徒たちの声が響いていた。

結局今日はあれきり、狂三と会話をしていない。一限目が始まった時に屋上から妙な感覚があったのだが、士道は特に気にすることなく、放課後までずっと待っていたのだ。

 

『・・・大丈夫かね、シン』

 

と、右耳に装着したインカ厶から、やたら眠たげな声が聞こえてくる。令音だ。

 

「別に。緊張する事なんてないでしょ。そう言えば琴里は?声がしないけど?」

 

『・・・ああ、琴里は今少し席を外している』

 

「ふーん。まあいいけど」

 

そう言えば朝から琴里の姿を見ていない。おかげで謝る機会がなかったのだが、また今度でいいかと考える士道に対し、令音が言う。

 

『今、この場にいなくてはいけないのは琴里も重々承知している。だが、それを考慮した上で、こちらの方が作戦の成功率が上がると判断したのさ。・・・今は邪魔者の横槍が一番厄介だからね』

 

「・・・真那の事か」

 

士道は小さく令音達に聞こえない声で呟いた。

確かに、接触しようにも真那が一々乱入してこようものなら面倒極まりない。

それに昨日壊れたインカ厶を真那に渡しているのだ。もしかしたらそれに対し、話し合いでもしているのだろう。

士道はそこまで考えた後、その瞬間に辺りを襲った異変に、眉を動かした。

 

「・・・なんだ?」

 

士道にも何が起こったのかは分からない。だが周囲がふっと暗くなったかと思った刹那、全身に強烈な違和感が襲ったのである。

 

「・・・へぇ」

 

士道は階段下から見える気を失った生徒達の状態を見て、そう呟いていた。

 

「よっぽど他の奴に聞かれたくないのか」

 

『・・・そのようだ。今、高校を中心とした一帯に、強力な霊波反応が確認された。この反応は─────間違いない、狂三の仕業だ。広域結界・・・範囲内にいる人間を衰弱させる類のもののようだ』

 

「十香は無事?」

 

士道は令音のその言葉を聞き、すぐさま十香の状態を確認する。この状況で十香を人質でも取られたら不味いと考えたからだ。

 

『・・・ああ。無事のようだ。少し倦怠感はありそうだが、それ以外は安定している』

 

「そっか。ありがとね」

 

士道は令音の言葉を聞いて十香が無事だというのを確認すると、そのまま屋上へと続く扉の前までたどり着いた。

扉に、鍵はかかっていない。

否───正確にはドアノブの下辺りが、銃で撃ったかのようにボロボロになっていて、その役割を果たしていなかった。

考えずとも狂三の仕業で間違いないだろう。士道はそのままノブを握り、扉を開けた。

そしてそのまま視線を中心に向ける。

そこにいたのは。

 

「───ようこそ。お待ちしておりましたわ、士道さん」

 

狂三がフリルに飾られた霊装の裾をくっと摘み上げ、微かに足を縮めてみせる。

そんな狂三に対し、士道は口を開く。

 

「此処までするってことは、よっぽど他のやつに話を聞かれたくないみたいだけど、それにしてもなに?この変なヤツ」

 

来禅高校の屋上で士道は周りを見渡しながら狂三に問いかけると、狂三は士道の反応が楽しくて仕方ないといった様子で、さらに笑みを濃くする。

 

「うふふ、素敵でしょう?これは〈時喰みの城〉。わたくしの影を踏んでいる方の『時間』を吸い上げる結界ですわ」

 

「時間を吸い上げる?」

 

士道は怪訝そうに目を細める。吸われている感覚など一切ないが、他の奴が倒れているのを見ると、実際そうなのだろう。

そんな士道に狂三はくすくすと笑いながらゆっくりと歩み寄ってきた。

そして、優雅な仕草で髪をかき上げる。常に前髪で隠された左目が露わになった。

 

「・・・!」

 

士道はそれを見て、眉をひそめる。

明らかに、異様だった。無機的な金色に、数字と針。

そう───狂三の左目は、時計そのものだったのだ。

しかもおかしなことに、その時計の針が、くるくると逆方向に回転しているのである。

 

「なにそれ?」

 

「ふふ、これはわたくしの『時間』ですの。命───寿命と言い換えても構いませんわ」

 

言いながら、狂三がその場でくるりとターンする。

 

「わたくしの“天使”は、それはそれは素晴らしい力を持っているのですけれど・・・その代わりに、ひどく代償が大きいのですわ。一度力を使うたびに、膨大な私の『時間』をくらっていきますの。だから───時折こうして、外から補充することにしておりますのよ」

 

「・・・・・」

 

狂三の言葉に士道は表情を変える事なく、聞き続ける。

それが本当だとするのなら、この結界の中で倒れている人たちは今、狂三に残りの命を吸い上げられていることになる。

狂三はそんな士道の表情を見ると、なぜか、少しだけ寂しそうな顔をした。

だがすぐにその顔に凄絶な笑みを貼り付けると、指先で士道の肩に触れる。

 

「精霊と人間の関係性なんて、そんなものですのよ。皆さん、哀れで可愛い私の餌。それ以上でもそれ以下でもありませんわ」

 

まるで士道を挑発するように眉を歪め、続ける。

 

「ああ───でも、でも、士道さん。あなただけは別ですわ。あなただけは特別ですわ」

 

「・・・・俺が特別?」

 

「ええ、ええ。あなたは最高ですわ。あなたと一つになるために、わたくしはこんなところまで来たのですもの」

 

「へぇ・・・」

 

士道は声音を低くし、狂三に返事を返す。

 

「一つになるって言ったけど、どういう意味?」

 

「そのままの意味ですわ。あなたは殺したりなんてしませんわ。それでは意味がありませんもの。───わたくしが、直接あなたを“食べて“差し上げるのですわ」

 

 

その『食べる』という表現が文字通りの意味なのか比喩的なものなのか───それに判別はつかない。

そして狂三は未だに黙ったままの士道に対し、士道を怒らせるに十分な地雷を踏み抜いた。

 

「もちろん、士道さんを一人にはさせませんわ。“十香さんも同じように食べて差し上げますので“安心してくださいまし」

 

狂三がそう言った瞬間だった。

 

ゴッ!!

 

「・・・ガフッ!?」

 

狂三の横腹に強烈な衝撃が炸裂する。

放物線を描くように凄まじい勢いでグラウンドに叩きつけられた。

 

「ケホッケホッ!?」

 

砂煙を上げて狂三はグラウンドで倒れ伏す中、士道はバルバトス越しで狂三に言った。

 

「俺の家族に手を出したならアンタは“俺の敵だ“。それにもう十香にも手を出しているんだろ。ならお前はここで消えろよ」

 

三日月はそう言って、巨大メイスを狂三に目掛けて振り下ろした。




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