阿頼耶識でバルバトスに繋がっている時は動くんだ。だからまだ働ける。
三日月・オーガス
翌、六月二十一日は水曜日だった。
祝祭日でも振り替え休日でもないのだが・・・士道たちの通う学校は今日、臨時休校となっていた。
しかしそれも無理からぬことである。何しろ学校にいる生徒・職員の全員が倒れ、一時意識不明状態に陥ったのだ。
幸い症状が重い生徒はいなかったが、高校はガス管等の徹底検査をするらしく、今週いっぱいの臨時休校が決定されたらしい。
「・・・まぁ、ちょうどいいか」
『・・・は、そろそろ十時だ。こちらからも先ほど四糸乃をマンションの屋上に転送した。もうすぐそちらに着くだろう』
士道が家の扉に鍵をかけながら息を吐くと、不意にそんな眠たげな令音の声が士道の右耳に響いてきた。
「あっそ」
士道は軽く返事を返すと、令音に今日の事を聞いた。
「で、今から駅前のビルに行けばいいんだよね?」
『・・・ああ。そこで、二人に水着を見繕ってやってもらいたい』
「分かってる」
士道は適当に返事をし、数段の階段を下っていく。
そして、家前で立っている琴里に士道は言った。
「悪いね。今日、十香達の買い物に付きあってもらって」
「別に構わないわ。どうせ、私もそろそろ新しい水着見繕わないといけなかったし。で?士道はどうするのよ?」
「俺?」
琴里の視線に士道は首を傾げる。
「士道も買わないのかって聞いてるの。貴方の場合、背中の阿頼耶識があるから上着がないといけないけど、どのみち行かないといけないから必要じゃない」
「・・・あー」
別に入らなかったらいいかと考えていた士道だが、そう言われると必要になってくるかと思い始める。
「んじゃ、適当に買うか」
士道はそう答えて、マンションの前まで歩いていく。
と───。
「シドー!」
『やっはー、おっまたせー』
歩いて数十歩、五河家の隣にそびえたマンションから、そんな声が響いてきた。
そちらに目をやると、淡い色のキャミソールとスカートを纏った十香と、サスペンダースカート姿の四糸乃が立っていることがわかる。
「あれ?結構早いね十香、四糸乃」
十香と四糸乃の姿を見て、士道はそう言う。
「今日はシドー達と買い物だからな!準備をして待っていたのだ!」
「・・・はい。士道さん達との買い物・・・楽しみです」
二人の言葉に琴里は唇を歪めて笑う。
「良かったじゃない。二人は今日、楽しみにしてたみたいよ?」
「琴里はどうなの?」
「私?そりゃ私も楽しみにしてるわよ。久しぶりに買い物行くわけだし」
士道の言葉に琴里はそう言って足を進める。
「ほら。行くわよ士道。他にも色々と見て回りたいんだから、さっさとしなさい」
「・・・・分かった」
士道はそう言って、十香達と一緒に駅近くのデパートへ向かった。
◇◇◇◇◇
「まぁ、こうなるか」
士道はデパート内に設置してあるベンチへ腰を下ろす。
視線の先には十香達が楽しそうに店の商品を手に取りながら喋っていた。
寄り道である。
気になる店があれば彼方此方へ見に行く三人に、士道は疲れて休憩をしているのだ。
しばらくあのまま、放って置いて問題ないだろう。
ベンチに座る士道は琴里達から視線を逸し、此方へと向かってくる人物に視線だけ向けて、口を開いた。
「・・・で?今日は何の用。チョコの人」
士道の言葉に仮面を付けていない“マクギリス”は言った。
「やはりバレてしまうか。三日月・オーガス。だが、今日は時間が少ししか空いていないのでね。少し君に関係する話をしに来たのだよ」
「・・・俺に関係する話?」
マクギリスの言葉に士道は首を傾げる。
そんな士道を見て、マクギリスはいつもの顔から一変、真面目な顔つきになり士道に言った。
「ああ。“この世界の阿頼耶識システムと御伽話の厄祭戦について“の事だ。後者はともかく前者は君に深く関わる話だ」
「──────」
士道の表情が少しだけ変わる。
チョコの人が真面目な顔をした時は大抵、何かしらの情報を握っている可能性がある。
なら、聞く必要はあるだろう。
「・・・分かった。なら、隣に座れば。長話になりそうだし」
「君ならそう答えると思ったよ。三日月・オーガス」
マクギリスはそう言ってベンチに腰を下ろし、そして───
問答が始まった。
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