「アンタにも弟がいるのか。なら、お互い無くさないようにしなきゃな」
ロックオン、シャギアとペアの時の昭弘
「ほら士道。せっかく来た訳なのだから、遊びましょ」
「まぁ、いいけど」
琴里の言葉にぶっきらぼうな調子で、士道はそう言葉を返す。
「でもなにで遊ぶの?」
「そこら辺は自分でも考えなさいよ。たまには頭を使うこともしなさい」
「・・・・・」
琴里の言葉に士道は少しの間、黙り込む。
そして、視界に大きく広がるウォータースライダーを見て指を差した。
「あれなんてどう?」
琴里は士道の指の先をしばらく眺めていたが、ふぅと息を吐くと身体の向きを変えた。
「ベタな気はするけど・・・まぁ、妥当よね。いいわ、行きましょう」
琴里はそう言って、足をスライダーの方へと向ける。
と、そんな士道と琴里の様子に気付いたのか、プールでぷかぷか浮いていた十香と四糸乃が、こちらに視線を寄越してくる。
「シドー、琴里。どこかに行くのか?」
「え?ああ、ちょっとあれでも滑ってくるつもりだけど」
「あれ?」
十香は目を丸くしながら首を傾げる。士道はそんな十香にもう一度指を岩山の方へと向けた。
「あれだよ」
「おお・・・・!人が流れてくるぞ!」
十香は目を輝かせると、浮き輪を腹部に塡めたままプールから上がってきた。
「私も、私も行きたいぞ!」
「まぁ俺は構わないけど、琴里はどうなの?」
士道の言葉に琴里は頭を押さえながら口を開く。
「・・・変に十香の好感度下げるよりかは一緒に連れていった方がいいわ。四糸乃はどうするのかしら?」
琴里は十香に関しては連れていってもいいと言ってはいるが、そうなると、四糸乃が一人になってしまう。その問題をどうするか考えていたが、そんな二人に真那が言った。
「なら、私が四糸乃さんを見てやりましょうか?先ほどの一件の事もありますし」
先のプールの一部を凍らせた事件を目の当たりにした真那が四糸乃は任せろと胸を叩く。
「そう?なら頼むよ」
「ラジャーです」
真那が心良い返事を返す中、琴里は士道と十香に言った。
「話は終わったかしら?なら、十香は浮き輪を置いていきなさい。士道は上着を脱ぐ事ね」
「着たままは駄目だったっけ?」
「駄目に決まってるじゃない。それにそれを濡らしたら、この場所で行ける場所が限られるわよ」
「そっか」
琴里の言葉を聞いて、士道は上着を脱ぎ始める。
上着を脱いだ事によって鍛え上げられた士道の上半身と、背中に並ぶ阿頼耶識があらわになった。
「・・・!兄様・・・それは・・・」
「ああ、気にしなくていいよ。昔からあるやつだから」
真那が士道の背中にある阿頼耶識を見て、息を呑む。
だが、そんな真那が息を呑む理由も大まかに理解している士道にとって気にすることはない。
「・・・そうですか。なら、何も言いません」
士道が何でもないと言うのを聞いて、真那はこれ以上口をつぐむ事はなかった。
「じゃあ、行ってくるね」
「・・・行って・・・らっしゃい」
『感想、また聞かせてねー。士道くん』
士道達は四糸乃達に見送られてウォータースライダーへと歩いていった。
◇◇◇◇◇
「おい、ユージン。話聞いてるか?」
「あ、悪ぃ。聞いてなかった。で、何だって?」
ユージンは同級生の友人に言葉を返す。
「だから、あの夜刀神十香っていう二年に入った子の水着姿!可愛かったよなって!!お前見てないのかよ?」
「悪ぃ。考え事してたから見てなかった。てか、どうせソイツは士道とか言う奴と一緒に来てるんだろ?学校でも噂で持ちきりなんだぞ」
ユージンの言葉にその友人は首を縦に振った。
「そうなんだよ!ほら見ろよアレ!!あんなハーレム築いてんだぜあの男!!羨ましいとは思わねえのかよ!!」
「いや、俺は別に・・・」
ユージンはハーレムと聞いて名瀬・タービンの事を思い出す。
かつて、前の俺達の世話をしてくれた俺達の兄貴分。そんな彼もハーレムを気付いていたが、あれはあれで羨ましいが大変そうだった。
そんな事を考えながらユージンは親友が指差す方へと視線を向ける。
五河士道と夜刀神十香。学校では噂で持ちきりの二人だ。三年である俺達ですら、その噂を耳にしている。
そんな彼等の周りには鉄華団にいた時のアトラと同い年くらいの三人の少女。
小さいながらも、彼といるその姿はビスケットの妹達が三日月と一緒にいた時の事をどうしても思い浮かべる。
「・・・って、何考えてんだろうな。俺・・・」
前に学校で『バルバトス』を見た時に、この平和な場所でつい三日月がいるんじゃねえかとつい思ってしまう。
俺達のもとへ帰ってくる事なく、オルガの命令を果たした三日月をユージンは許していなかった。
アイツにはアトラやクーデリアのいる帰る場所があったにも関わらず、アイツはオルガ達のいる所へと行った。
それがどうしようもなく“羨ましかった“。
俺も彼奴等と一緒に行きたかった。けど、オルガの命令を果たさないといけなかった。だから、“俺達は精一杯死ぬまで生きた”。
死ぬまで生きて、彼奴等の居る場所へと行ける。そう思って目を開けた時には新しく生まれ変わっていた。
昭弘の言った通りに。
「・・・まぁ、もしアイツがいたら一つ文句を言ってやらねえとな」
「誰に文句だって?」
「なんでもねえよ」
ユージンはそう言ってもう一度、彼等に視線を向ける。
そして──────
「────────」
言葉が出なかった。
ユージンの視線の先。五河士道の首の付け根から背中に並ぶ、三本のピアス。
ユージンはそれに“見覚えがあった“。
阿頼耶識。かつて俺達が持っていた物。
「────ッ!!」
ユージンは走り出す。
歩き始める彼等のもとへと。
「お、おい!何処に行くんだよ!?」
「悪い!ちょっと用事ができた!!」
「はぁ!?」
呼び止める親友の声に振り返って返事を返す。そして再び視線を戻した時は────
「くそっ!どこ行きやがった!」
彼等の姿は何処にも見当たらなかった。
右へ左へ辺りを見渡す。
だが、人混みもある中で、彼らの姿は見当たらない。
もしかしたら。もしかしたらでもいい。アイツが三日月であって欲しい。そしたら、オルガの奴もきっと・・・。
見失ったユージンは、拳を握る。
そして、誰にも聞こえない声で呟いた。
「ちょっとくらい話させろよ。三日月」
話したい事がいっぱいあるんだ。と思いながらユージンは歩いていった。
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