バカ野郎!!バルバトスのリミッターは三日月用にしてあんだ!!お前じゃその処理に耐えられる訳ねえだろうが!!
ナディ・雪之丞・カッサパ
「修学旅行?ああ、聞いてるわ。沖縄でしょう?」
五河琴里は空中艦〈フラクシナス〉の艦橋で、口にくわえたチュッパチャップスの棒をピコピコ動かしながら部下の報告に応じた。
「・・・いや、急に目的地が変更になった。行き先は或美島だ」
目元に分厚い隈を蓄えた軍服姿のおんな────村雨令音が、酩酊しているかのように頭頂部をゆらゆらと揺らしながらそう言葉を続けてくる。
「変更?こんな時期に?なんでまた」
「・・・ああ。ひと月ほど前、クロストラベルという旅行会社が学校側に接触してきた。なんでも観光PRのため、ランダムに学校を選び、島に招致しているらしい。パンフレット用の写真を撮ることが条件となるが、修学旅行の費用は全て会社持ちという話だ」
「はー、随分太っ腹ね。・・・でも、いくら好条件とはいえ、そんな土壇場で行き先変えちゃうものかしらね。宿泊先とか決まってたんでしょ?」
「・・・なんでも、予定していた宿が突然崩落し、利用できなくなっているらしい。そこにそんな申し出があったものだから、学校側としても飛びついたというわけだ」
「崩落?」
穏やかではない話だ。琴里は訝しげに眉をひそめた。
「・・・ああ。まだ詳しくはわかっていないが、恐らく老朽化が原因だろうということだ」
「ふうん・・・ま、タイミングが良すぎる気がするのだけれど・・・先方がそれでいいって言っているんならいいんじゃないの?令音も羽を伸ばしてきなさいよ」
琴里は小さく肩をすくめながら言った。
だが、令音はふっと顔をうつむかせると、難しげにうなった。
「どうしたのよ」
令音の様子に琴里は言葉を投げる。
「・・・いや、思い過ごしであればいいのだが。どうやらこのクロストラベルという旅行会社────もとを辿ると、DEMインダストリーの系列会社のようでね」
「なんですって?」
その名を聞いて、琴里は不審そうに顔を歪めた。
デウス・エクス・マキナ・インダストリー。英国に本社を構える世界有数の巨大企業であり〈ラタトスク〉の母体の一つであるアスガルド・エレクトロニクス社を除けば世界で唯一、顕現装置を製造することのできる会社である。
そして、精霊を平和的に封印しようとする琴里たち〈ラタトスク〉とは、正反対の理念を持つ組織でもあった。
「・・・きな臭いわね、どうも」
琴里はチュッパチャップスの棒をピンと立て、眉の間に深いしわを刻んだ。
修学旅行に行く来禅高校の面々の中には、士道と十香が含まれているのである。万一の事を考えて準備をしておくに越した事はないだろう。
「旅行は何日からだっけ?」
「・・・七月十七日から二泊三日だね」
「げ。そうなの?その日、私本部出向なのよね。まずったな」
と、琴里が困ったようにあごに手を当ててうなっていると、「あっ」と声を上げる。
「真那は?真那はどうなのよ?」
「・・・真那はその日に辞表を出しに行くと言っていた。行くとしても、途中参戦になる上にDEMに目をつけられない」
「・・・うっ、タイミングの悪い」
息を詰まらせると同時に琴里は頭を抱える。
「うー、うー」と頭を抱える琴里はふと神無月を見て、ある人物の髪の色を思い出した。
「ん?どうかしました?」
「あーっ!!」
「・・・・?どうしたんだい。いきなり」
突如叫びだした琴里に令音が尋ねる。
「ユージンよ!!ユージン・セブンスターク!!」
「ああシンの・・・だが、彼は三年生の筈だが?」
彼にはその時期は遠足があった筈。それに、二日間は学校がある。彼に無理強いするのも気が引けると言うものだ。
「でも、それ以外適任者はいる?令音だけだと気が重いでしょう」
「まあ・・・そうだが」
「だったら、早速聞いてみるわ。後は彼次第なのだけれど」
琴里はそう呟きながら部屋を出ていった。
そんな琴里を見届けながら令音は息を吐き、彼女と同じように部屋を出ていった。
感想、評価、誤字報告よろしくです!!